観光地である飛騨高山の市街地から南下した喧噪穏やかな地にある倭乃里さん。その歴史と共に生きた古民家の離れと本棟はわずか8部屋という空間。冬季は豪雪に閉ざられ限られた者だけが訪れるお宿です。かと思いきや、昨今の温暖化事情により公共交通機関で来るお客さんもいるという時代ギャップに驚かされます。
※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。
旅情
駐車場は玄関より50mほど離れたところにあります。私的には苦にはなりませんが、遠いと言えば遠く、車を停めるとご主人さんらしき方が荷物を取りに来てくれました。
スキー用品が入った思い鞄で申し訳なく。
門を潜り導かれるように歩みを進めると、左手には離れが見え正面に母屋があります。
玄関にはいると正面に囲炉裏、左にはフロントと思わしきカウンターがあります。
エントランスと囲炉裏は飛騨古民家らしく大きく吹き抜けのようになっています。
建物自体は200年近く、以前は民宿として営業していたそうで、囲炉裏のある土間にも部屋があったのだとか。
玄関入って右側には元来はフロントであったであろう場所にはアンティークな受付カウンターがありあます。
このタイプの洋風カウンターの移築は時折見ることがありますが、エントランスに置かれていても使われていることは稀かなと思います。本来は使う予定であったが、都合が合わなかったのかと言う感じです。自分には価値の査定は測りかねますが、使用されていなくとも歴史かつ由緒あるカウンターである事も多い。
囲炉裏はアイランドスタイルとなっており周辺は下足の土間となっています。
これは今までにないタイプです。
奥飛騨の古民家らしく囲炉裏の煙りが逃げるように天上が高く取られ、自在鉤を通す魚を模した横木は炭で真っ黒になっています。
囲炉裏には炭がくべられ激しく火がいこっておりました。周辺には薪も置いてあります。
囲炉裏でウェルカム茶のおもてなしを受けます。お茶請けは林檎餅です。プニュふわの餅生地にはリンゴの果汁が練り込んであるのか、中身はリンゴジャムのような蜜が入っていました。これは何個でも食べれてしまいそうに美味しかったです。
館内の全ては赤矢印の暖簾の向こうにあります。
暖簾を潜ると客室とお食事処への誘い。
ここからは館内振る憶えでご容赦を。手前のお部屋は御食処だったか。
最奥は本館の「一の宮」という贅沢間取りのお部屋。
襖の向こうは個室ではありませんが、当時としては感染症が流行っていたので間仕切りの配慮はありがたし。
目隠しだけで個室空間になるのだから、大広間の食事もこれでいいのではと思う。
本館は3階造りだったと思います。途中浴場があったりします。
浴場前には麦茶の用意がありました。
本館の客室は往訪時お客さんを入れていなかったのかもしれません。
流行り病等々により離れだけの販売のように見受けました。
本館のお部屋も少々見学させていただきました。
照明はなく本館はどうやら稼働はしていないようです。
部屋を休ませている感じがします。
3部屋あるうちの一室である「ひだ」の炬燵。
雪見戸の旅情がたまらない一室は書斎のようです。
高級旅館ですが、館内は余計な物はなく自動販売機もなく。
周辺には何もない一軒家なので必要な物は買い込み推奨です。
離れのお部屋は一度玄関から表に出る必要があります。
手前には「天領」という最もお値段が高い一軒離れがあります。
天領の前を通り過ぎるとさらに奥に別棟の離れが見えてきます。
奥には合掌造りの「苅安」と「位山」という離れ家です。
離れという特性上、プライベート感は満載ですが風呂や食事に母屋まで出向くという必要があり、豪雪であったり豪雨であったりしても一興と感じるのが風情。
お部屋
この度は苅安の方に案内して頂きました。
古民家風の扉を潜ると玄関は土間です。
外の足元は雪で悪くなっており、雪で濡れた際に拭くためのタオルが用意されていました。
玄関は竹細工の天井飾り。
丸い飾り窓には女の子の人形がぽつり。
踏み込みから最初にある部屋には炬燵。
間取りは公式HPを見て頂く方が分かり易いと思います。
苅安と位山のお部屋の特徴である吹き抜け?天上はとても高い。
炬燵部屋には埋め込まれたようなテレビと冷蔵庫。
無茶苦茶高そうな誂えの箪笥。
箪笥の中にはびっしりと張られた和歌?
浴衣とアメニティ、有料の冷蔵庫、エスプレッソマシーンや茶類。
炬燵部屋を入って左に洗面所。
洗面所入ってすぐ左にトイレ。
洗面所右手にはヒノキの内風呂があります。温泉ではありませんが、香りよくツルっとした感触があり水道ではない?天然水かも?
洗面所から振り返ると炬燵部屋の向こうに和室が見えます。
和室は12畳と広々ですが、テレビや水周りからは遠くこちらで過ごすのは寝るときのみです。
和室の奥角には書斎のような小部屋もあります。
和室からは裏手を流れる宮川が見えます。
景色はいいのですが冬季は寒すぎるので縁側で過ごすことはなく。
和室からはオンドル部屋があるのですが・・・機能していない?
むしろ床は冷たく、むしろ寒いぐらいで、床暖という訳でもなさそうで利用することはありませんでした。
その他のアメニティには、洗面所の歯ブラシとヘアーブラシはビジホクラスの物。
鍵は二本と高級旅館らしくありがたい。
女性用のスキンケアセット一式と男性にはカミソリ。
お風呂
岩風呂と檜風呂があり男女入れ替え制となっています。訪れた時は流行り病下とあってか、大浴場を貸切風呂として利用できる時間帯を設けてありました。湯使いは循環、加温、加水、消毒となっており、聞きはとても残念と思わざるをえないです。
しかし、それは聞きだけで源泉が投入された放流型で、消毒臭は全く感じられず、つるりとして肌触りに、微ラジウムということもあり湯上がりはホッカホッカに温まり汗が噴き出す良泉です。無味無臭で泉質はアルカリ性単純温泉となっており、温泉成分も強くはなく誰でもゆったりと入れる泉質となっています。
脱衣所には雪化粧の乳液や化粧水、アメニティ一式、ドライヤー、大小タオルが備えてあるのは高級宿ならではです。
岩風呂
一枚岩を洞窟のように掘ったです。公式HPに巨石とあるので彫り込んだ湯屋なのかもしれません。この巨石からラジウムが検出されたともあります。
画像では分かりにくいですが、手前は温泉で奥には水風呂があります。
奥の岩風呂は水風呂と標識が立ててあります。
サウナなどはないので温泉浴槽との交代浴用かな。
天然水なのかこちらも掛け流しにされていました。
手前が温泉湯舟となっています。足を伸ばして入るなら2人が限界な大きさです。
湯口は3口あり、食事の時に尋ねてみると竹筒が源泉だそうです。かなり湯量は少ない。加水の部分が恐らくまろやかな天然水かと。ただ、加水栓と思わしきところにも析出がついており源泉加温MIXなのだろうか。そもそも加温循環栓?
もう1つ湯口があり、滝湯となった注ぎはぬるく、岩には析出物が付着しており循環湯なのだろうか。吸い込み口が見当たらないのでさっぱり分からない。
加水は湯溜めの時だけで、この滝湯と蛇口は加温循環栓なのかもしれません。
竹筒の源泉の投入は少ないが、溢れ出しと比例せず目に気持ちいいほどにあります。どこかで加水されているから?どこが源泉かは不明ですが、オーバーフローがある湯使いはよい。スキーの後で疲れていたこともあってか湯感がまろやかで大変癒される湯でした。
洗い場は4つ部屋数からすると十分な備えです。
往訪時は3組のみで大浴場に入りにきてる客がいるのか?というほどに風呂桶や椅子は移動していませんでした。
檜風呂
シャワーは4基と岩風呂と同じ備えです。
床から天井まで総ヒノキ造り。
岩風呂と同じく全くと言っていい程に消毒臭はなく、横並びで5人ぐらいは余裕の湯舟です。
岩風呂に比べると開放感がある飛騨の山間景色は手入れがされています。
木の湯口は冷たいとにかく少ない源泉だが、完全循環ではなく循環放流を維持している努力感?
加温と吸い込み口が方々にあり循環加温されているようですが、赤い蛇口は加温された源泉か?否、析出物がないので温めた加水栓かと。
湯船の中にあるベンチような下からは吸い込み口がありました。
噴出口があったので循環加温用の吸い込み口かと思います。オーバーフローはなく湯船の隙間から抜けているようにも見える。
お料理
離れから本館まで足を伸ばします。訪れた時は我々を含めて3組だけのお客さん。個室ではなく大広間に仕切りを立ててテーブルが配置されています。
朝夕共に本館にある大広間での案内でした。季節の物と地物をどのように昇華すべきか、飛騨の郷土をいかにして盛り込むかが熟考されています。時節の華やかな和を基調としながらも、洋を醸し出すフレンチのような一品もあるモダン会席となっています。
献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
最初の配膳は食前酒と先付です。
【食前酒】:梅酒
「食前酒は自家製の梅酒です」とのご説明。大人味かな?甘めのまったりタイプかな?と思って、口に入れてみたらスパークリングしていて予想外の弾け具合にびっくりしました。酒度は飛ばしてあり、原酒は甘さがあることを連想させますが、炭酸により凄いスッキリとした飲み口となっています。
【先付】:木の芽の白和え 蕨 蝶々られし 桜長芋
白和えの地は濃厚大豆風味でねっとりとしたトロロ湯葉で食材に実によく絡みます。木の芽とあるが葉山椒の薫りはかなりおとなしく、あくまで白和えソースを楽しむもの。 ワラビは下ごしらえが良くシャキシャキの山菜の野性味は白和えで食材本来の味を堪能。 長芋は棒状桜を作って、微酢のサクラ風味の漬けにしてから輪切りしたものかと思います。 献立の「られし」はラデッシュのことで蝶々に飾り切りされ、ワラビやサクラに止まったように見せてありました。手が込んだ細かい演出。
先付けをいただくとすぐに箱重がやってきました。
【前菜】:①お雛様寿司 ②菱餅真丈 ③御手洗団子 ④からし菜お浸し ⑤白魚桜煮 ⑥金目鯛白酒焼き
蓋を開けると雛祭りが催されていました。 ②3段菱餅は上段は桜風味、中段はヨモギ、下段はプレーン。グググとした反発がありザクりと歯が入る歯応え。真丈とあるように白身カマボコ風味がしっかりとあります。 ③みたらし団子は砂糖醤油のタレは優しくもっちりと一口。 ⑤恐らくサクラを塩漬けにした時に出た漬け汁を使って、シラウオを染め上げたのかな。一方で塩加減は緩くゆったり繊細なサクラの薫り。 ⑥キンメダイは酒粕に漬けてから焼いてあるようです。これに味噌?を合わせたトッピングをした甘酒のような講尽くしの深みを持たせてあります。
④からし菜はシャキシャキ食感を残してあり、浸された汁は鮮やかな紫色を呈していました。紫色のからし菜を使い色が溶けだしたのでしょう。爽やかな辛子味で、汁を口にするとこれまた透明感のある清い品のある辛み。
①前菜のメインといえる季節のお雛様のお寿司です。お雛様には薄焼き玉子の着物を纏わせてあり、お内裏様には海苔。お雛様の帯は三つ葉軸を使い、さらに薄焼き玉子には切り込みを入れて襟を作ってあります。作り込みの細かさが目を引きます。
失礼ながらも衣を剝ぐと珍妙なお寿司の登場です。酸味と塩は控えて甘味のあるもっちり酢飯に、茹で海老、蒸し穴子?を背負わせて頭にはうずらの味付き玉子を半々という、面倒過ぎる作り込みには脱帽です。衣の薄焼き卵とうずら卵で口の中は玉子が泳ぎまくります。その間に海老とアナゴが時折顔を出すという面白いお寿司です。
【吸物】:蛤の吸物 花びら人参 蕗 うぐいす菜 柚子
椀の蓋には霧を振ってあります。涼を取る、椀の前後を見る、盛ってから蓋を開けていない等々、いろいろと理由はありますが、冬季の季節では保温機に入れていたのではない、というのが最たる由かと。 蓋を開けると迷うことのないカツオの薫りが飛び込んできます。口にお出汁を含むと「忘れてくれるな」とハマグリの貝出汁は塩加減が絶妙上品。また、フキの旨味を引きずり出したような青々しさはどのような下ごしらえなのか・・・。
桜花を模した人参の花びらはしばらく乾燥させたのか、本物のように反りが入り風情を感じます。うぐいす菜もカブの一種で春の椀によく見る季節の彩り。
箸で掴み上げてみると、かなりの大振りハマグリです。地方によって異なるのかと思いますが、日本海からのお取り寄せと思うハマグリは春の旬物。一口に放り込み噛み進めると貝ワタと唾液が混ざり、一噛み毎にハマグリ雑のない旨味が広がる真ん中のお味。
【造里】:地採れ活岩魚 北陸産鮮魚三種
黒塗りの寿司大下駄に盛られた2人前の御造り。中心にはロウソクを置いて大根のかつら剥きを巻いた行灯(あんどん)、アブラナ科ストックと紫蘇花の飾り添え。
味付は、強甘薄口のたまり醤油、きめ細かいミネラル成分がある雪旨塩です。ワサビは本山葵で頭から擦れるようにしてあります。ワサビは頭からするとフルーティで甘々、足から擦ると辛味が増します。このワサビは郡上で育てた希少ものだそうで、足から擦っても辛味よりも甘味が強い。甘味と風味が強く辛味だけを横に除けたワサビです。郡上には何度もいっているのに郡上山葵は聞いたことがなったのですが、調べてみると郡上八幡に「山葵屋」さんというお店があるようです。
この季節の北陸からのお届けは甘海老の一品だけです。冷凍かと思いますが、甲殻類の臭みなくエビ味噌まで美味しい。 何故一品だけかというと、真ん中の紅身はサクラマスの山の物。通称名はヤマメ。身振りはトロトロに紅身の脂がとても甘い。脂が多いのか噛み心地は緩いトロ。 マカジキは昆布締め。産地は伊豆とかかな??これが一番美味かったです。旬ではないマカジキだが、料理長の目に止まったのか。それよりも昆布の熟成がとんでもなくDEEP。マカジキが悪いわけではないが、昆布に担がれたマカジキはコク旨をがっつりと引き出されていました。
離れた所にある落ち葉の器に盛られているのは天然岩魚です。これまで何度もイワナの造りを食しましたが、さすがの天然物はゴリユュ!!ゴリュ!!とした超絶筋肉質。かと思えば、腹身なのか緩い脂がコッテリ乗った盛りもあります。天然物はまさに春先からが旬で一番いい時の物を用意していただきました。
【煮物】:鰤大根
蓋を開けると香るのは意外にもブリではなく大根と柚子の強烈な匂い。厳冬期の寒ブリではないですが、名残旬の日本海産のブランド物。
ブリはともかくどの辺りが大根なのか思っていたら、浸してある出汁がみぞれ仕立てにしてありました。なるほど・・・出汁に大根おろしが融け込んでいるので、蓋を開けた時の湯気に激大根が漂っていたようです。こういうブリ大根のスタイルもありなのか。とても勉強になります。出汁は大根おろしと醤油でみぞれ煮にして、ブリの余計な臭みを落として、よりまろやかな味わいに落としているのかと。また、ブリの下には5㎜程の厚みがある大根も下敷きにしてありました。
旬の終わりということもあってか脂の乗りよりも、中性的な煮汁でしっかりと煮て濃くなく薄くなく味受けに筋肉質なたくましいブリ旨。柚子の風味は大根とブリにそっと手を貸しており、薬味の針葱で後口はさっぱりと戸締りをしていました。
【合物】:飛騨牛最高ランク A5等級陶板焼き にんにく塩 肉だれ
飛騨と言えばこれしかありません。ピンクと白の美しいコントラストは飛騨牛のロースです。
あらかじめ熱された陶板が七輪の上に乗っており、下には炭がセットされてすぐに焼けるようにしてありました。わざわざ炭火にしなくてもよいのに高温を維持する粋を感じます。
加味には献立には肉ダレとあり、中華料理などで使われる八角の薫りを移した甘口醤油ダレ、ポン酢は塩が強すぎず棘のない酸味は醤油を使わない白ポン酢のようです。ニンニクチップと炒ったようなガーリックソルトはそのままでもお酒の当てになりそうです。
ロース肉は焼き始めると霜振った脂が滲み出てきます。たくさんの薬味と味付けを用意してもらっても吟味することなく終了する肉料理が多く、倭乃里さんでは6切れあるので色々な焼き加減と味付で楽しめるのは嬉しい配慮です。
片面を低温でゆっくり焼いて、造里の本山葵を擦って刺身のようにレア造りで。
すし飯で飛騨牛の握りにした!!
今度は片面をこんがりと焼き上げてポン酢にしっかりと漬け込みます。
飛騨牛はがっつりと脂がでるのにサラサラとしており、胃もたれなくサッパリとした後口で甘味が強い。赤身ではまた違う品種で旨さはありますが、和牛というくくりで言うと私的には飛騨牛の「脂」が最も最高峰だと思っています。
【焼物】:天然岩魚の塩焼き
肉を食してからの魚料理とも珍しい順番。桶の様な火鉢には炭が入っています。わざわざ炭がなくとも皿に盛られても問題ないがうれしい演出です。これを配膳係の方がお皿へ取り分けてくれます。
ロビーの囲炉裏で90分かけて、熟成させるように焼き上げたそうです。余分な水分や灰汁が抜けて旨味が凝縮されています。瑞々しくホックリ焼くのではなく、干物のように噛み締めて楽しむという飛騨・奥飛騨ではよく口にする焼き方です。昨今養殖が多い中、天然物とは珍しく、とても大振りで余すことなく頭から尾まで食せます。ワタが綺麗に抜かれており独特の苦味がなく、辛くもなく物足りなくもなく絶品の塩加減です。
【酢の物】:里ふぐ昆布〆 とび子 独活 胡瓜 ほうれん草酢
まさかの酢の物が、見た目はまるでフレンチの前菜のような一品です。円柱のセルクルでまとめてあり、横からみると層になっているのがよく分かります。 献立には里フグとあります。陸上トラフグの養殖をしている飛騨地方・・・ではなく、奥飛騨には北アルプスの天然水が当たり前のように流れ込み、それを利用して密やかにナマズが養殖されています。アルプスの天然水で飼育することで、独特の泥臭さや生臭さがなくなるのだとか。その身は海のフグに食感と味が似ていることから里フグと呼んでいるそうです。あらかじめ酢漬けにしたと思われる白はウドに、青のキュウリは新鮮な生のままで、トップシートにはプチプチ食感飛子のあしらいです。
ほうれん草のペーストは強めに火を入れて、急速冷却で色落ちを防ぎ刻んで叩いた?かのようで薄っすらとした青美甘酢仕立てです。昆布で旨さがUPしたナマズのぐもぐもとした食感と、キュウリとウドのシャキシャキ触感に加え、飛子のプチプチ食感は実に不思議な移り変わる奇妙な感覚です。味は合間にほうれん草の青さとゆったりとした酢が入り、トビコが弾けると塩味とミネラルが加味され、ナマズの旨味が引き立つのにそれぞれ独立した味わいもあるという絶妙な組み合わせです。
【留椀】:菜の花と帆立の御飯
【香の物】:お漬物諸々
帆立の炊き込み御飯は余計な味付はなく豊満なホタテの薫りが口に広がります。ゴロゴロと遠慮なく貝柱が入っており、干しホタテからの戻しと思われるが貝柱はとても柔い。香り付けには三つ葉と菜の花の春を添えてあります。お味噌汁はシジミ出汁の飛騨味噌?でしょうか。飛騨高山で時々口にさせてもらう京風の様なまろやかな味噌。香の物は、大根にお野菜色々浅漬けに、スライス山葵の醤油漬けです。郡上山葵でしょうねぇ。
【水物】:レアチーズケーキの桜ソース掛け
中央に金箔をあしらった歪な八角形の皿。デザートは完全にお菓子屋さんの至高の一品のようなお味でした。色合いも見とれてしまう、濃ピンクのサクラソースをチーズケーキの上に掛けてあります。椀に顔を近づけるだけで甘い春の風が吹き抜けます。
ケーキとありますが実質はトロリと蕩けるレアチーズ地で、掬って見ると水抜きをして裏漉しした絹豆腐ぐらいに、もそっとした水分のない硬いというのか柔さを持ち合わせた不思議な感触。よく知るレアチーズと思い口に入れると脳の処理が追いつかないぐらい深淵に引きずり込まれる底の底なお味にびっくり。「悪魔のクリームチーズ」ですわ。サクラのソースも極薫SAKURA MAXの蜜があまーーい!やばい何杯でも食べたいw サクラソースはサクラの葉っぱや花びらを、塩漬けや酒に浸けて出てきたエキスを使ってある?直接煮だしてあるにしても保存方法は? 極々微量ながら甘さの裏側に保存用の塩味を感じたか否か。
【夜食】:ちりめんおにぎり
お部屋に帰ると竹皮に包まれたオニギリの心遣い。
小さな一口オニギリなのに甘辛く炊かれた、ちりめんがたっぷりと盛り込んでありました。
夕食後はロビーに行くと、竹筒に日本酒をいれて囲炉裏で温めた「かっぽ酒」をいただけます。郷土の歴史などを語り部として大旦那さんが口上してくれました。公式HPを見ると現在は若旦那さん?がされているようです。
朝食
夜の暗がりとは情景が一変します。
朝食も夕食と同じ席でいただきました。
席に着くと朴葉焼きの七輪に火を入れてくれます。
おかずのほとんどは常温での配膳です。初春でしたが部屋は温かく寒さを感じることがなかったので常温物が多くても気になることはありませんでした。
・飛騨牛の朴葉焼き
席に着くとまず火が入る朴葉焼きは、細切れの一口サイズの飛騨牛ロース程の霜降り肉が3切れも。朝からメニューではないですなぁ・・・固形燃料も焦げ付かないぐらいに配慮されていて火が消えると食べ頃で赤身が残るミディアムレア。塩と甘味が強いお味噌を白米にダイブさせます。
・飛騨牛の時雨煮
・鮭の燻製
・漬鮪山かけ
朴葉味噌だけでもメインなのに、さらにメイン三種のようなラインナップ。時雨煮は醤油とショウガを浅くスジ肉を炊いたのではないかと。 サケは恐らく自家製の燻製で囲炉裏で薪の強い移り香のような風味があり、添えの大根おろしと飛子のプチ塩が鮭に合う。本来なら飛び子ではなくイクラか?? マグロは薄く醤油に漬け込んだ物のようで、とろろとワサビにさらに醤油を垂らした一口に食べるとマグロ味が引き立ちます。 この3品で白米1.5杯はいけます。
・生ハムサラダ 自家製ドレッシング?
高級旅館朝食の定番になりつつある生ハムに、ヤングコーンとミニトマト、アスパラの盛り込みです。酸味は程よい醤油ベースにゴマ油を合わせたシンプルな中華風ドレッシングですが、実に香ばしくついつい何度も味見していまします。
・鰤の塩焼き
焼物までも主力で朝食のすべてがメインディッシュ。夜のブリ大根からは一変して、ハラミの部分を使ってあるので脂の乗りがすごい。冬は日本海では寒ブリが主力食材として使用されます。ここまでくると朝食ではなくランチです。いや、ディナー。後から熱々に配してくれるのですが、テーブルに置かれた瞬間から脂が滴っていました。塩加減は単品では少し辛い、白米には絶妙に合い表面はカリカリに焼き上げた素材を楽しむというシンプルでありながらも旨味がうまい。
・白米
・味噌汁
・香の物
白米は土鍋で炊き上げたもので茶碗5杯ぐらいはあります。席に着いた時に茶碗へ盛り付けて頂けます。しかし、おかずがどれも白米無しにはお話にならないのでペロリと食べきってしまいました。奥飛騨の天然水は静岡の富士伏流水に負けず劣らずで、もっちりと炊いてあり美味しかない純白な等級高い高級米の旨さ。味噌汁は夕食時と同じくシジミの味噌汁に、香の物はぬか漬け胡瓜とハチミツ梅干しです。
・リンゴジュース
・コーヒーゼリー
リンゴジュースは甘味がしっかりの富士?のようなお味で、飛騨地方でもリンゴジュースをよく目にするようになった気がします。コーヒーゼリーはミル挽きコーヒーを固めたような炭火焙煎のような焦げ香ばしく、葛仕立てとのご説明もありゼラチンではない、とろもちぷるりとした食感が小気味よい。ミルクを表面に浸して真ん中に金箔のあしらいで朝食までも豪華。
・コーヒーor紅茶
たらふく美味しすぎる、おかずと白米で腹が満たされました。食後はコーヒーと紅茶から選べます。広間から見える川を眺めながらいただいて、チェックアウトまでゆっくりとした時間を過ごさせていただきました。
まとめ
高山市街から少し離れたところにあるプライベート空間な高級宿です。本館宿泊もできますが、基本は離れ家がメインで、サービスは過不足なく高級宿らしく不便もなく料理も創作性があり美味しく飛騨の食を堪能できます。風呂は源泉かけ流しではありませんが、オーバーフローがある源泉投入は好感です。料理は同じような内容の物を提供しているところも多くありますが、繊細さと言う点では無二ではないでしょうか。ただ、風呂と食事を楽しむには離れに泊まると外移動があるので、冬季夏季問わずこれを風情と空間代と取るかは好み次第かと思います。私的には離れの要素を持て余して使い切れていなかったので、2025年記事をしたためた時点では本館の宿泊も受付しており、次回泊まるなら風呂が近い離れよりも本館で割安にとまりたいなと思いました。
宿泊料金
流行り病下でかなり安くなっていたのか、2024年末ぐらいから離れは10万前後で本館でも8万前後という宿泊料です。2025年ではさらに1万円ぐらいUP。10万を超えると・・・我が家の家計では躊躇してしまうお値段ではあります。
宿泊日:2022/初春
旅行サイト:じゃらん
プラン:【じゃらんスペシャルウィーク】星4つ!~ミシュランの味に舌鼓~
部屋のタイプ:茅葺スイート(苅安・位山)
合計料金:74800円(2人)
クーポン:スペシャルウィークがさらにお得になるクーポン:7000円分クーポン
支払い料金:67800円
加算ポイント:2244p
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