いい温泉宿、おいしい料理宿

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再び訪れたいお宿探訪と趣味のブログ

湯本館【静岡県 湯ヶ島温泉】~時が止まったように覚えるひっそりと佇む秘湯宿、熱い源泉に身をあずけ身体にやさしい美味料理は文豪の片鱗を覗き見る~

 伊豆湯ヶ島温泉にある湯元館さんは、川端康成が「伊豆の踊り子」を執筆した際に滞在していたというお宿です。その当時の趣きを現代まで残されているだけでなく、とにかくキメの細かいサービスと、湯量豊富な源泉かけ流しの湯は、物書きにでもなったような逗留が満喫できます。

※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。

  湯本館さんに往訪する前に富士山が眺められるハイキング道で遊んできました。よろしければ合わせて訪れてみてはどうでしょう。

旅情

 以前同じ温泉街内で泊まった「おちあいろう」さんや「白壁」さんの正面玄関とは違い、いかにも秘湯宿という路地を狩野川へ下った所に湯本館さんの玄関があります。

 よければ、おちあいろうさんと白壁さんの記事も合わせてどうぞ。

 

 建物が谷に向かって立っているため正面玄関からは全景を見ることは難しいです。

正面は屋根付きの駐車場となっていて、早く着いたのですが快く車を誘導して出迎えて下さいました。

 日本秘湯を守る会の提灯と玄関は昭和のノスタルジーが漂います。

 このような見た目から推察すると有形文化財なのかと思いきや指定は受けておられないようです。

 玄関戸を開けると文化財のような木造の造形が飛び込んできます。

 こじんまりとしたお宿でもあり玄関の間口は小さくひっそりと落ち着いています。

 玄関の帳場はとても小さくチェックインはここではなく奥にあるロビーの案内です。

 玄関の天上は格子天井となっています。木造建築として文化財になっていないのが不思議なぐらいです。有形文化財にすると規定があるようなので、指定しないほうが楽だと他のお宿で聞いたことがあります。

 階段後ろは廊下を挟んでロビーがあります。

 こちらでチェックインの手続きをした際、お客さんが新聞を読んだりとくつろいでいました。慣れた感じがあり常連客なのかなと思う装い。ロビーは露天風呂へのアプローチでもあります。

 ここには新聞や温泉雑誌類など読み物があるので、時間に余裕があれば・・・「生ビール冷えてます」とあります。

 周囲にはなにもなくチェックイン前には必要な物は揃えておく必要があるお宿です。ロビーにある自販機は良心的なお値段です。

 ロビー前の廊下を行くと大浴場と貸切風呂があります。

 廊下の端までいくと左手に女風呂への階段がついています。この辺りはまだ木造レトロな雰囲気が残っています。

 少し進むと鉄筋造の昭和レトロの男性浴場がある階段が現れます。

 階段の踊り場にある部屋と言うのも珍しい構造。

 2階まで上がりきると木造築に戻る廊下がついていました。

 3階への階段は閉じられていました。

 2階までいくと、これまた古めかしい伊豆の踊子ポスターが目に入ってきます。

 ポスター前を進むと柔らかい木の感触が伝わる足元に変わります。

 ぐるっと廻って玄関上の階段に出ました。

 この階段実は曰く付きなようです。

 フロント前に掛けられた写真では川端康成さんが9段目に座り踊り子を眺めたという。

 103年前に川端さんが眺めた景色を、相方も9段目に座って川端康成ごっこを始めました。まさか!?文豪と同じインスピレーションがリンクしたのか!?

「なんか執筆できそうか?」と問うと、

「今晩の相手はどの踊り子にしようか」と思うぐらいやろww と言う。

 昨今だと冷ややかに炎上しそうな発言だが、時代からするとあながち外れていないかもしれない。文筆家は少々世離れをしているところがある。

 階段の上が川端康成さんが滞在したという部屋になっています。

 表札も掲げてあり宿の目玉として文化的保存もされているようです。

 一般客室として宿泊はできず縁の物が部屋には置かれています。本来は茶室なのか・・・江戸間4畳に中心は炉畳のようにも見えます。とても狭い。

 傘天井となっており、床の柱や梁の装飾も素晴らしく確かに創作意欲が駆り立てられそうです。

 ガラスのショーケースの中には生原稿が?

 火鉢も当時使っていたものだそうです。

 お宿の方が他のお客さんを案内していたので、希望があれば直接お話が聞けるかも?

 階段の所まで戻って左右の客室前を通りながら進んでいきます。

 川端さん部屋からするとかなり新しくリフォームしてあります。

 廊下の入り口には昔の装飾をそのまま使用したかのような分厚い欄間飾り。

 フロントのある本館から別館?に移行する場所です。

 別館らしき建物に入ると、昔懐かしき昭和だが雰囲気はまた違った様相です。

 消火栓の袂には上下の階段それぞれ着いています。

 階段の上を見ると竹細工と漆喰で施された造形美。

 上階は訪れた時には使われている様子はなく、個室のお食事処だったりしたのかのでしょうか。昔は客室だったのかと思わしき共同洗面所があります。

 今度は下階へ向かいます。

古い記事ではありますが、3店の宿泊記事もあります。

よければ寄ってみて下さい。

ゆとうやさんは2024年時点で建物が解体されており閉業されたのかもしれません。

 

お部屋

 案内して頂いたのは「もみじ」というお部屋です。

 プランには多くの文豪が愛した8畳とあります。

 間取りは本間8畳+広縁4畳程+踏み込み1畳+トイレです。

 ウェルカム茶はお部屋に案内されてからでした。煎茶と生菓子のふかふか温泉饅頭です。

 玄関入ってすぐに安心のウォュレット付きのトイレがあります。

 文豪が愛したとあるので、さすがに書院戸は組子細工など凝った趣向にしてあります。ただ、新しいので当時の物ではなくモダン折衷。

 違い棚と床の地袋は当時のままでがっこいい。

 床にある生け花はもちろん生花です。

 床には瓢箪の埋め込みや、何の木材でしょうかイボイボ木の梁?が渡してありました。

 広々とした広縁は4畳ぐらいあります。

 灰皿がおかれていましたが、タバコ臭はほとんど感じられませんでした。

 木造建築のお宿の火事が多くなっている昨今、そのうち禁煙になりそうにも思えます。

 広縁には洗面所が増設されていました。

 あるのとないのでは全く快適性が異なります。

 広縁の天上は竹細工に仕上げた風情。

 部屋からの景色は露天風呂がある手入れが行き届いた河庭を見下ろします。

 アメニティ類は歯ブラシと髭剃りぐらいです。

 浴衣丹前、冷蔵庫は有料、金庫 冬季はガスファンヒーターとエアコン。

 お布団敷の際に冷水とあたらしいお茶セットの入れ換えなど心遣いは充実しています。

 

お風呂

 男女別の入れ換え制の大浴場が1カ所ずつあり、当時は20:00~22:00の間だけ入れ替えがありました。さらに貸切内湯と貸切露天風呂が1つずつあります。泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉となっており、ツルヌル感とした肌触りが素晴らしく、湯量が豊富過ぎる故にシャワーも温泉です。湯ヶ島温泉では湯本館以外でもシャワーが温泉というところもあり湧出量が凄まじいことが伺えます。湯使いはもちろんの源泉かけ流しです。しかし、源泉の温度が高く長湯が少々難しい湯温です。無臭ですが口に含むと微塩味で湯上がりはしっとりサラサラと潤います。

内湯

殿方風呂(一時入れ換えあり)

 男湯時間がメインの内湯はとても大きく2面の窓がとられているので開放感がすごい。

 宿の規模も大きくないので洗い場が不足することはありませんでした。というより、大浴場で他のお客さんと会うことがなく、ゆったりと入ることができました。

 こちらの内湯は10人が同時に入っても気にならない大きさを有してします。右側に石の蓋をした湯舟の一角は何だったのか。

 湯口からは遠慮なく生源泉が注がれており、手で辛うじて掬えますがかなり熱いです。白い析出物が湯口にびっしりと付いており泉質の濃厚さが垣間見えます。飲泉も可能なのでコップも置いてありましたが、飲むにしても熱く火傷に注意です。

 湯口から注がれる量に比例したオーバーフローがあり、湯舟の縁全体から溢れ出る様は壮観です。恐らくですが源泉の温度が高い故にこの量しか注げないのではないでしょうか。

 熱さによりすぐのぼせてしまうので、ゆっくりと浸かりたいのであれば湯口から遠い場所だと適温です。

 2面窓の開放感のよい森林浴ができる景色は、窓を開け放つと半露天として満喫できる空間でした。湯の温度からしてゆっくり入るのであれば、虫も少ない晩秋以降がいいかもしれません。

女湯風呂(一時入れ換えあり)

 男湯サイドに比べると物凄く小さく横向きに3人入るときっちりの大きさ。

 女性客が少ないのでしょうか。

 湯舟が小さいためか男湯サイドよりも熱かったです。

 常に一定量の源泉が投入されているわけではなく、注ぎが強くなったり弱くなったりしていました。こちらにも飲泉カップが置いてあります。

 脱衣所は繋がっていましたが入り口が二つあり、かつては男女別入り口の混浴だったとか?

貸切内湯

 記事をしたためた時には公式HPや予約サイトには掲載がありませんでした。新設されたと思われる家族風呂は、訪れた時には無料で空いていれば自由に使える仕様となっていました。

 公式HPなどには2025年4月時点でも詳細がない貸切風呂。

 1.5畳ほどの湯舟は大人2人+小さな子供であれば窮屈ながらも一緒に入ることができそうです。

 蛇口からは湯舟の仲へ直接源泉の入れ込みがありました。投入量はかなり少な目にしてあるのか熱さは感じず、湯底にお尻を据えると首ほどになる深さがあり、しっぽりと浸かることができます。

 自然のオーバーフローはとろとろといった感じで、湯舟に対して湯量を調整しているようにも見えます。

 この浴場は蒸すので夏季はかなり暑いかもしれません。訪れた冬季は窓を開けて湯船につかっていると、オーバーフローして捨てられていく湯をサウンドにゆっくりと源泉を楽しめました。

貸切露天風呂

  貸切露天風呂へはロビーからテラスに出て階段で中庭に下りて行く必要があります。鍵を掛けた・貰った記憶がないので、入浴中は立札をロビーに立てていたかも?

 ん~如何にも昔ながらの野湯の雰囲気を残した脱衣所です。

 開放感しかない脱衣所は昭和な自分からするとこれぞ温泉の情景です。

 訪れた時は川の水位も低くありました。

 台風などで水位が上昇すると入れなくなりそうなほどに川岸に湯舟があります。

滝の注ぎがある湯口もあれば、ポコポコと足元湧出にしてあるものと2ヵ所の入れ込みがあり、いずれも結構なあつ湯です。

 塩ビ管の跡がありましたが無反応。かつての湧出口だったのかも。

 遠く見える吊り橋からは丸見えではあるが気にもならない距離。

 川岸露天風呂はツルヌル感のすばらしい肌触りで館内で最も湯感でした。

 捨て湯は川に向かってダバダバ流れていく。屋外ということもあり、熱さはなく適温で入れます。厳冬期はもしかしたら露天風呂は超ぬる湯になっている? 翌々考えれば源泉投入量を増やせば適温になりそうです。

 かなり暗がかりではあるがライトアップもなされ、清流の流れと共に景色も楽しめるようにしてありました。

 

お料理

 朝夕ともに席を広くとった広間の案内でした。

 御簾で個室風に目隠しがされていました。

 最初の配膳は台の物、前菜、酢の物が用意されていました。順次温かい物がやってきます。とにかく創作性が素晴らしいお品ばかりで、味付けが平成風にいうと「ナウい」とか「シブい」のですが、古臭いのではなく地物の名産を抑えながらも丁寧で引き込まれる味付けがなされています。品数は多いのでお腹一杯にはなりますが、野菜中心の食材なのでヘルシーなのに美味しい。

 このクラスのお宿では珍しくお品書がなかったので、給仕係の方から聞いた内容と、実際に食べた感触から献立を作っています。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。

夕食

【前菜】:干瓢甘煮 梅生麩 慈姑素揚げ 子持ち昆布 パプリカ甘酢 干柿白チョコ

 万両と菊花べんで季節の風情を皿に飾ります。①干しかんぴょうではなく生かんぴょうかと思われます。なので結びや帯で使われるような物ではなく、繊維がとろけ味が甘い炊き汁が沁み込んでいます。ピリリとしたショウがを混ぜ和えていただきます。②梅麩も個別に味付してありました。③くわいはしっかりと仕上げにしてチップスのようにしてあり香ばしく。④子持ち昆布は数の子のようなミネラルたっぷりというのではなく清いプチプチ磯食感です。⑤パプリカは上品な甘酢漬けに。

 ⑥干柿とクリームチーズを合わせる物は最近多いですが、湯本館さんのは何とホワイトチョコを包んであります。しかも、自家製っぽい干し柿です。新しいスィーツのようでチーズと同じ乳製品を使っているので合うのは当然だが盲点でもありました。これにさらにチーズを挟んであると最高の激旨ジャンクフードになりそうです。

 

【椀物】:葱ワンタン

 熱々で配膳される椀は「葱ワンタンです」とのご説明。和食完結かと思っていたらそうではなく何という変化球。椀を開けると香ってくるのは?何の匂いか?お出汁からいただくとカツオ?程よい塩加減に豚とネギが舌を撫でます。表面に浮く緑は三つ葉でもなく大葉でもなく主張がない青味はセリ?

 豚挽きと白身魚を合わせた真丈のようにフワフワ食感をワンタンで包むのではなく被せるように纏わせてあり、具材には椎茸?とネギを混ぜ込んであります。椀全体には豚の風味は緩く、ワンタンは蒸すか湯通しで豚の強味を落としているのように思えます。器に刻みネギを敷いてワンタンを入れ込んでから出汁を注いだものかと。ワンタンとあるがベースは豚の脂が浮く和の美味椀です。

 

【向付】:生しらす 鰆酢〆 鮪

 四方に柱が立つ見た事がないお皿です。艶々に活かった造りが照りを魅せています。

 それぞれの器には紫大根を敷き、つまにはニンジンけん、大根けん、茗荷の輪切り、ラディッシュとキュウリを彩りに、静岡では当然の激辛い本わさび。加味は薄口のたまりです。

 生シラスはそのまま食べるとあまり特徴がなく釜揚げよりも風味が劣ります。しかし、醤油を少したらし添え付けの擦りショウガを混ぜると、一気にシラスが飛び出汁プチプチ食感に変換された不思議な変化。加味が入る方が味が引き立つ食材です。薬味には紫蘇葉、卸しショウガ、紫大根。

 やや薄くピンクで透明感のある肉質は、本マグロではなく味見としてはビンチョウマグロの中トロなのかなという口当たりでした。3切れと多く盛り込まれています。本マグロには劣りますが、静岡名産らしい新鮮なマグロ。

 最もハマったのはサワラの酢締めです。背身とハラミの両方が織り込まれ、加味は不要でそのまま食するとサワラの旨味がジュルりと溢れ出てきます。絶妙な甘さと塩加減で昆布締めのような旨さがあります。噛めば噛むほどにサワラが溢れいつまでも口の中にいて欲しい幸せ味でした。

 

【温物】:鶏そぼろの南蛮茶碗蒸し

 「サワラの南蛮茶碗蒸し」と配膳された椀を覗くと、玉子地に茶色と緑の具材が映っています。上にはトロトロのべっこう餡で蓋をして熱々でやってきました。べっこう餡の下には風味漬けの三つ葉のあしらい。

 サワラの姿はなく中にいたのは献立通りの鶏そぼろです。献立の入れ換え時期に配膳係さんが間違えたのでしょうか。ネギを茶碗地の表面に入れてあることで南蛮と称しているのかと。べっこう餡はとても甘味の強いものですが元のお出汁は分からない。具材にはシイタケがゴロゴロ、鶏そぼろも口にたっぷりと、玉子地と蒸しあげてあり餡と混ざるとシイタケと鶏出汁が密に絡み合います。

 

【台物】:猪鍋

 お野菜の種類は多いが食べ切りの量なので丁度良く有難い配慮です。野菜はキャベツ、エノキ、ネギ、菊菜、トマト、薄揚げです。

 固形燃料の消えた時が食べ頃です。くたくたに煮えてくるとお出汁の香りが充満してきます。メインのイノシシは脂加減がロースぽい部位で、薄切り肉をロールアップし、あらかじめ灰汁抜きの処理をしているようでした。チェックアウト後に近くのスーパーで猪肉を観察しているとモモ肉のようにも見えました。猪肉はモモにも脂身がしっかりと付いているようです。

 シシ肉の脂はトロリと溶けてしまうほどに柔く、ロールされた肉を頬張ると甘味の強い脂と野性味のある硬い赤身の肉質は豚とは異なる。赤身は硬いといっても薄切りにしてあるので歯切れよく味わえ、下調理により臭みはなくシシ肉の旨いところだけを残してあります。透明度の高い出汁ですが、実はすき焼のような味わいで酒とみりんをかなり強く持たせてあるのは野性肉に合わせた割り下です。造りの本ワサビを添えると猪肉の旨味を清く包み込みます。

 

【揚物】:パセリ 蓮根 パプリカ マッシュルーム 紫芋

 お野菜だけの胃に優しい天婦羅もあっつあっつ配膳。加味は紫蘇香る「ゆかり塩」。食感もそれぞれ楽しめる天婦羅となっていて、青味のパセリは揚げることでふんわりとしたほろ苦さになりサックサックとこぼれていきます。蓮根は2㎝ぐらいの厚みがあるカリっコりっと、前菜のクワイのようにチップス風になっていました。赤い色にはしゃくりシャキシャキの歯応えを残した生パプリカを。背面にはムラサキ芋を台座にしてあり豊潤なサツマイモの甘味と食感はほっくほっくです。

 マッシュルームの天ぷらとは珍しい。シイタケかと思うほどの大きさですが、プリッとした食感はまごうなきマッシュルームの食感です。配膳時には「特にマッシュルームは熱うございますから、火傷しないようにお気をつけお召し上がり下さい」と配膳係のお気遣いのお言葉。半分をかじるとマッシュルーム汁がジュワワアア~~~と溢れ出てきました。衣によってマッシュルームから滲み出たジュースが溜まっていたようでマッシュ味が濃厚すぎました。マッシュルームの天ぷら・・・有りです。

 

【煮物】:鮎の熟成煮付け椀

 献立をどのようにいっていいのか分からないので勝手に命名しました。「鮎の素焼きをじっくりと時間をかけて煮ました」と配された一品です。まさか鮎を煮物でいただくとは思いもせず。車麩はしっかりとした歯応えがありジュわりとお出汁が染み出ます。玉こんにゃくと後ろに配された聖護院かぶと思わしき根菜は別々に味付がなされた炊き合わせです。特にカブに関しては味は豊かに箸で挟むにしても、持ち上げるのに苦労するほどにほろほろに焚き上げてあり、本来の甘味に加え浸し出汁と合わさりとても美味しく。柚子皮の風味付けもありますが、出汁に溶け出していないので柑橘味が欲しい方はお出汁に浮かべても良いかもしれません。この柚子、たぶんですが柚子皮を干してから水戻ししてあるのではないかと思う下ごしらえか・・・。

 こんがりと焼き香ばしく黒々と焼かれた鮎がこちらを見ているようにも見えます。焼きと煮で二段階調理されてあるので丸っと全身食せます。お味のほどは・・・おおぉお・・・鮎の味はするが川魚の臭みが全く取れている。人によっては川魚臭さが頼りないと感じるぐらいです。鮎本体よりも気になるのが浸し出汁です。これは鮎を煮た煮汁なのか!?の割には魚風味は全く感じない、まったりとしたやはり酒?が強い出汁です。お・そ・ら・く鮎の煮汁なんだろうと思うのですが・・・悩ましくも酒が進みます。

 

【酢物】:山海の幸 梅ソース掛

 とにかく変わった酢の物です。掛けてあるソースは恐らくハチミツ梅をベースとして梅酢で伸ばしてあるのかと。甘味はハチミツと梅の自然の甘味で加糖はなさそうで、梅干しの酸味に加えお酢でさらに押し上げてあるが、散々「うめうめ」と言いましたが口当たりはとてもやさしくも爽やかな酸味です。これを素揚げのアワビ茸?、ししとう、蒸し栗に掛けてあります。彩りには素揚げの大葉チップと赤パプリカでアクセント。

 盛りの下には赤身を帯びた一杯のヤリイカ?の輪切りは、頭部、腹部、下足と梅ソースでそれぞれの食感と味が楽しめるようになっていました。歯が入るまでは弾力があり、入ってしまうとプツッスルリと緩く、温泉蒸しとかにしてあるのでしょうか。イカ味がソースにとても合います。味噌を使わない梅肉ソースの酢の物は他にはない贅沢すぎる逸品です。

 

【食事】:白米

【止椀】:赤出汁

【香の物】:胡瓜、人参、大根

【お供】:本山葵、かつお節

 湯ヶ島温泉街でいただく白米はいつも甘味が強いコシヒカリのような食感。赤出汁は関西からすると、とてもまろやかな口当たりの味噌で、たっぷりとあおさ海苔を浮かべてあります。香の物も自家製ではないかという3種とも1夜ぬか漬けかな。

 食事と一緒に配膳された段々に重ねた椿が映える器。

 香の物要らずのご飯のお供が付いてきました。造りの物とは違うきめ細かく甘く擦った本わさびと風味豊かなかつお節。

 信州とは異なる富士の伏流水により育てた伊豆ワサビは甘い香り。カツオ節は香ばしく双方を白米にトッピングして醤油をたらして混ぜて食べると至福の出会い。シシ鍋のお出汁を取り置いて雑炊にしてよし、お茶を注いで山葵茶漬けにしてもよし、加味の素材だけでなく白米も上質で、おかわり御飯は当たり前でついつい食べ過ぎてしまいます。

 

【甘味】:苺 メロン オレンジ

 訪れた時は厳冬期であったため果物はお取り寄せかと思いますが、伊豆は温暖な気候で温泉の暖かさを利用して栽培していところもあるぐらいです。苺は紅ほっぺでしょうか。メロンもジューシーで果汁が滴る完熟。オレンジは一年通していろいろな品種がある静岡県産かと思う和オレンジ。生クリームとミントを添えて最後まで丁寧な盛り込みです。

朝食

 朝食も同じ席でいただきました。

 ご飯と焼き魚以外は出揃っていました。

・昆布の煮物

・蕪の酢漬け

・かまぼこ 山葵漬け 白豆?甘煮

・もやしと水菜のお浸し

・サラダ(レタス、トマト、細切り人参、紫大根、紫蘇ドレッシング)

・鮎の一夜干し

・湯豆腐 鰹粉 擦りショウガ 割り醤油(ゆず)

・焼き海苔

・香の物(山葵茎三杯酢、沢庵)

・味噌汁(ワカメ、大根、三つ葉)

・白米

 夕食と同じくお野菜をふんだんに使ってあります。昆布は甘醤油で緩く炊き、カブはパプリカとニンジンと共にカリコリとした生触感で漬け置いた物。かまぼこは贅沢に分厚くきってあり、白豆?もかなり砂糖甘くお口直しに。特産の山葵漬けは外さず、もやしのお浸しはシャッキシャッキ!で、どのように炊いてあるのか・・・。アユの一夜干しは焼き立てです。湯豆腐の割り醤油は恐らく昆布出汁で溶いて柚子皮を入れて柚子ポン酢に仕上げてあり、豆腐は大豆の甘旨みがとても濃厚です。香の物は自家製のワサビの茎を使ったシャクシャクとした酸味が強いすっきりとした香です。味噌汁も具沢山に大根とワカメが椀狭しと入れ込まれ、どれもこれも丁寧に品のある味付けがされていました。食べた時はお腹一杯でしたが、お野菜が多いので昼時にはしっかり空腹になるというバランスの良さです。

 チェックアウト時には「新年のご挨拶に」とお土産のお茶まで頂いてしまいました。

 

まとめ

 湯本館さんは文豪御用達の当時の姿を残した鄙びの空間が素晴らしく時間の流れを忘れさせてくれます。文豪部屋に泊まれば雰囲気も満喫できます。温泉は全て源泉かけ流しで貸切風呂まであるので、敢えて展望風呂付客室に泊まる必要はないのかなと思いました。

 料理は調理もさることながら、素材の味を活かした手の込んだ物が多く変わったものがいただけました。朝食は季節的に暖かいものが多ければと一点だけ気になったところです。

 美味い食事、超新鮮湯の温泉、スローステイは、俗世に浸かれた日々を癒してくれる宿です。金額と宿泊内容が本当に良い意味でバランスが取れておらず、再訪したいお宿であることは間違いありません。

宿泊料金

 前々から訪れてみたいと思っていたお宿の1つで、往訪の決め手となったのは、伊豆市のふるさとクーポンが配布されていたことです。これ以上の底値はないだろうという価格で泊まらせていただきました。

 日本秘湯を守る会のお宿ということもあってか、宿泊当時まで値引きをしているのを見たことがありません。秘湯の会のスタンプ目的でないなら、じゃらんのお得な10日間やspecial weekのクーポン利用が最も安くなるのではないかと思われます。

宿泊日:2022/厳冬期

旅行サイト:じゃらん

プラン:多くの文豪が愛した趣きのある和室8畳 1泊2食付プラン

部屋のタイプ:和室8畳 文豪愛した趣きのある部屋

合計料金:36900円(2人)

クーポン:10000円 ふるさとオトク【伊豆市】

     4000円 冬セールが更にお得になるクーポン

使用ポイント:7500

支払い料金:18100円

加算ポイント:1188p

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