伊香保温泉と言えば伊香保神社に向かう急階段の途中途中の両端に、宿、飲食店、土産屋店が建ち並ぶ風情が有名です。千明仁泉亭さんは階段の袂にあるカフェを併設した老舗旅館です。
さてさてお宿の名前はどのように読むのか・・・「ちぎらじんせんてい」と言います。伊香保温泉において1502年創業の旅館。伊香保温泉名物である階段街のメインストリートにある好立地で伊香保温泉を堪能するには最上の条件が揃った立地にあります。
※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。
旅情
温泉街から急な小道の上り坂を上がっていくと、総部屋数30部屋余りの建物からすると、想像していたよりも大きな建物が現れました。
玄関で車を着けて荷物と車をあずけ、少し離れた所にある駐車場に停めました。
夜のライトアップからは木造建築だということを忘れさせます。
伊香保神社に続く名物階段の最下層付近にある千明仁泉亭さん。参道は賑わっており昔ながらの鄙びたというよりは、風情を残しつつ露天風の今時スィーツ店など立ち並び、関西では城崎温泉や有馬温泉のように時代の改革に成功した温泉街という佇まいです。
階段がある温泉街からの入り口はこちらで、左手には直営のカフェがあります。
カフェも大層賑わっているようでした。
玄関の車寄せは立派。年末年始に訪れたので門松も老舗らしく飾ってあるのはさすがです。
館内は複雑ではないものの浴場や貸切風呂、宴会場は各所別々にあるため説明は不可なので、画像で想像を膨らましていただければと。
年末ということもあるのか滞在時間中は常にいずれの場所も人の往来が激しく、ゆっくりと館内探険というわけにもいかず、記憶に残った断片での館内です。
玄関の間口とても広く取られており、古い木造の建物とはかけ離れたリフォームで綺麗に使われています。玄関左手にはフロントが見えます。
このように画像を撮りたくても常に人が動いているという、これまで宿泊したお宿からは想像ができないほどに宿泊客の往来が館内にありました。玄関には円柱の水槽が置いてあり中には海水魚?いや?汽水域の熱帯魚?いやいや海水魚もいるやん? 珊瑚が沈められているので、海と河川の間に生息するアルカリ汽水魚水槽っぽい。熱帯魚は淡水海水に関わらずお世話が大変です。
玄関左手にはフロントがあります。既に迷路のように階段が張り巡らされており言葉では館内の案内はやはり不可。
フロントでチェックインをして早々にお部屋への案内でした。
フロント前の階段横からは奥にエレベーターがあり、左手には売店とロビーがあります。
売店では名物というよりはちょっとした小物から高級な陶磁器などが販売されている高級旅館な品揃え。
売店と隣接したロビースペース。ここでも高級旅館らしく、生花が生けられています。
廊下を進みエレベーター前を左に向くと、左の壁がロビーで右壁には浴場の1つである滝湯があります。最奥にはcafe&barの「楽水楽山」があります。
もう説明無理ですわww自分で打ち込んでて構想みえてこないっす。雰囲気だけ感じてもらえればと思います。
夕食後のバータイムはお客さんがお酒を楽しんでいたようです。
こちらは伊香保参道階段にあるカフェと繋がっているようで、表からも来店できるようです。
ぐるりと回廊のような館内。大浴場「仁乃湯」の前を抜けるとspace藏という館内スナック?と隣には「こるりの間」があります。
自動販売機もありますが少々割高値段設定。
自動販売機の前を通り過ぎると、大浴場の案内が掛かる階段があります。
階段を降りるていくと裏口のような場所にでます。露天風呂と別館へ行くためには、外履きに履き替える必要があります。
別館は雪国らしく二重扉となっています。
内装は改装したようでかなり新しく見えます。こちらは本館とは違い鉄筋造のようなしっかりとした造りでした。
さて、本館に戻ってフロントを中心としてぐるっと玄関前に帰ってきました。フロント横に位置するステンドグラスが印象的な「鶴の間」は中広間の個室宴会場。
宴会後に覗かせていただきました。ファミリー宴会だったのか15人ほど入れそうな長いお部屋。
玄関の廊下奥にある階段から二階へ。階段の途中から見下ろした構図です。
鏡に映っているのは別館と大浴場への階段です。
鶴の間は廊下左側、右側はフロント帳場裏側の厨房?事務所かな?
電気が「電氣」とあるかなり古い案内板。昭和初期中期でしょうか・・・。というよりも、電気火災報知器とあり、電熱や動力という表記はブレーカーとかの事なのか。電源が表記されているなど、今では考えられないですなぁ・・・。内装は新しく調えてありますが、古めかしい情景を残してあるのは旅情としては時代を感じられのは面白い趣向です。いつまでも残してほしい。
こちらはフロント前の階段を上がった所です。上がったところには「うぐいすの間」があり、個室のお食事処のなっているようでした。
ここはフロント真横にある階段を上がってきた所です。階段の裏側にはべニア板が張ってあり高度成長期の昭和時代の趣きを感じます。
階段を回り込んで反対側へ来た所です。木造建築は玄関周りだけなのか、かなりしっかりとした構造で耐震のためか鉄筋造のように見えます。やはり、階段の付き方からすると昭和築。
大きくはない客室階で、リフォームされてかなり綺麗にされていますが、廊下の狭さや扉の造形などを見ていると、有形文化財ですといっても遜色は雰囲気が残っています。
3階もほとんど同じ造りとなっています。
客室階の丁度ど真ん中にある個室のお食事処に、上画像を反転した景色です。
上画像のやまどりの間前から右に曲がった景色です。正面と右壁には客室が並びます。こちらもリフォームしたのかと思いますが、外観は和風の新しい趣きです。
廊下を奥まで進んで振り返った385号室は飾り窓は何を模した物だろうか。
扉、荷置き棚、扉上部の換気窓、100年建築ではないかという大正浪漫な感じが随所に残っておりました。
廊下最奥は鉄筋構造に変わった建造となり、3階から1階まで階段が付いています。
ここは2階部分ですが、2階と3階に貸切風呂があります。
階段を傍には貸切風呂へのアクセス。
廊下左右には靴箱があるように貸切風呂となっています。
奥の扉は・・・トイレだったかなぁ・・・。
とにかく館内は文化財の建物のように蜘蛛の巣様に階段や連絡路があり、人によっては自身の部屋が分からなくなるほどではないかと思うほどでした。
お部屋
案内して頂いたのはスタンダード客室の334号室です。
お部屋は本間9畳+踏み込み1畳+広縁3畳程+洗面+トイレです。
踏み込みは一畳ほどのスペース。
玄関戸の上を見ると擦りガラスというには荒々しい、目隠しガラスよりも換気窓としての機能が多いような窓は、しっかりと可動します。
踏み込みとお部屋の欄間になるのか、豊臣家と同じ桐紋が掘られています。
本間は純和風ながらも和の風情を失わず、文化財のような古めかしさを残しながらも明るい基調に改修済みです。
欄間には見た事がない細工と、天井も竹を梁にした一枚板の天板という、一般客室ながらも魅せる装飾が豪華なお部屋。
洗面がある広縁からは玄関前を見下ろします。
部屋からのビューは絶景で安く泊まる我が家に、このお部屋を割り当ててくれたのは不思議です。翌朝には良く晴れて谷川岳や苗場山方面まで見えました。
縁から振り返ると床の間には狆潜り(ちんくぐり)の一種のような壁に穴が開いてあり、
生花が生けられています。
広縁からはトイレも備えてあります。
床の間にある掛け軸の絵はスズメでしょう。何か目を引かれた一枚。
流行り病もあってか、お茶出しはありませんでした。茶菓子は有馬温泉で見るような炭酸煎餅風、部屋にはあらかじめの冷水の用意もあります。
左下の画像は箪笥の中にあった折り畳みのフックです。建築当時としては面白い造りなのでは。冷蔵庫は有料、布団敷時にお茶セット、冷水、お湯の入れ替えがありました。朝食後もお茶セットの入れ替えがあるという、今時高級旅館でもないキメの細かいサービスです。
お風呂
男女別の内湯付き露天風呂と、さらに男女別内湯、予約不要の貸切風呂が4カ所、館内の湯めぐりだけでも8ヵ所も巡る必要があるので、全て入浴するとなると嬉しくもかなり忙しいです。
湯使い等についてはかなり詳しい説明書が浴場に貼ってあります。泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉となっています。口に含むとやや鉄錆風味だが、湯面で鼻を覆い嗅ぐと口で感じるよりも強い鉄錆臭があります。薄い茶褐色の濁りがあり、湯感はツルツルスベスベで湯上がりはしっとりと保湿されたようになります。基本源泉かけ流しのようですが冬季のみ加温しているそうです。多くの湯船はぬる湯設定となっており、冬季だと長湯でしっかりと温まれます。
大浴場
仁乃湯
訪れた時には最初は男湯となっていました。
湯舟は長方形となっていて10人ぐらいは余裕を持って入れる大きさです。
変わっているのが最も深いところで腰ぐらい1mの深さがあります。
千明仁泉亭さんでは最も大きい浴場で洗い場の数も多い。貸切風呂が人気なのかなと思いきや広い湯舟に浸かりたいというお客さんが多かったのか明るい時間は次から次に入浴客がやってきます。
源泉掛け流しの湯口は驚きの湯量です。貸切風呂もいいですが、この湯口の傍でくつろぐのが、最も源泉を楽しめるかもしれません。
滝湯
最初は女性風呂となっていた滝湯です。
湯舟は仁乃湯と同じほどの大きさです。しかし、湯舟の端には大きな柱が立っているので少し閉塞感があります。
手前には仁乃湯と同じ湯口があります。奥には滝湯の名前に由来する滝があります。
滝はいわゆる打たせ湯のようになっています。二つの湯口の湯量だけをみると仁乃湯よりも多いように思えます。
湯舟の縁全体から豊満にザブザブと溢れ出す凄まじい湯量。
新鮮な源泉を求めてなのか、こちらの浴場も常にお客さんがいる状態でした。
露天風呂
ほとんど男女同じ造りの露天風呂です。こちらは男性側です。女性側は少々目隠しが多くしてあるようです。
岩の間から注がれる源泉に、鉄泉らしい茶色の析出物に目を奪われます。湯の色は茶色というより緑濁色で濁河温泉と似ています。
溢れ出しは源泉の湯口よりも多いように見受けられます。他に注ぎがあるのかもしれません。
冬に訪れると加温はされているものの、長湯が気持ちがいい程の温度になっており、早朝の晴れた露天風呂は最高の入浴を堪能できます。
露天風呂には内湯も併設されており洗い場もあります。訪れた時は流行り病もありサウナは営業中止となっていました。
内湯は完全な茶色で2人で手一杯の浴槽。向かって浴槽左手には捨て湯口があり、もしかしたら露天風呂へ流出していたのかも? 露天風呂よりも遥かに温かく加温されており露天風呂との交代浴ができます。
浴槽の栓に繋がる鎖かと思いますが、水面にある部分だけ析出物が肥大して付いているという。この光景、栃木県にある柏屋旅館さんを思い出しました。
貸切風呂
仁(MEGUMI)
貸切風呂はどれも新しくリフォームされたのか新造されたのか。
こちらは白い基調で明るい浴場です。
貸切風呂では最も眺めがよく、部屋から見えていた冠雪した苗場山方面が見えます。
小さなお子さんなら家族風呂として入れるます。大人なら2人で余裕がある大きさの湯舟。黄金湯というには濁りは浅く酸化していない新鮮湯。
精(KOKORO)
貸切風呂の中では最も大きい湯舟となっています。ただ、建物の構造上外せないのか、大浴場の滝湯と同じように柱がど真ん中に鎮座しています。
溢れ出しは、縁全体からザブリと捨てられる贅沢な湯使い。
湯口が無いなぁと思っていたら、湯舟の中へ直接投入のようで湯口らしきところから泡が浮遊してきます。
余談ですが広いのに柱が一本真ん中にあるだけで狭さを感じる不思議な違和感です。
泉(IZUMI)
仁とほぼ同じ造りですが、使われている石材が異なるのかややダークな様相。
湯舟の大きさもほとんど同じです。
注ぎと溢れ出しは相応しているようです。
全ての貸切風呂は浴槽の大きさ対して、源泉の投入量は多く透明度が高い新鮮湯が楽しめるようになっていました。
憩(IKOI)
貸切風呂では最もレトロで小さな埋め込み湯舟となっていました。
※こういう雰囲気の浴場はいつまでも残って欲しいと思うところです。しかし・・・この湯舟に現在は入ることはできません。公式HPをみると仁や泉のようにリフォームされているようです。
埋め込み式の湯舟は古い温泉地ではよく見かけるタイプで、自分が好きな野沢温泉の外湯のほとんどがこのスタイル。同じ長野県の諏訪の外湯も同様。数ある浴場でも最後の最後まで入浴していたのはこの湯舟でした。
この湯舟だけは残して欲しいな・・・と思っていたのですが、記事を起こす際に公式HPをみると仁や泉のようにリフォーム済みのようです。湯治の雰囲気は現代にはそぐわないのか、時代の流れですな。仕方ないとしながらも惜しまれます。
元の石材が分からない程に張り付いた茶色の析出物。これを汚いという人がいる一方で、自分のように「温泉成分の塊じゃ~」と楽しむ人もいる。自然の恵と管理者の努力に頭が下がります。
浴場の備品としては貸切風呂にもドライヤーと化粧水類がありました。
過不足なく不便さは感じませんでしたが髭剃り等は浴場に無かったように思います。
飲泉所は仁乃湯と滝湯前にあったように思います。その他の浴場にはなかったかと。
お料理
繊細な京料理のような味付もあるかと思えば、なかなかに濃い味の料理もありバランスよく配されています。変化球があるような内容ではないのですが、一品一品素材の風味旨味を活かし作り込まれ口に入れるの楽しくなるような品々がいただけます。
朝夕共にお部屋食でしたが、人数が多くなると広間や個室での案内となるようです。時間になると、日本語の発音がまだ不慣れなような外国人の仲居さんが配膳してくれました。どちらからこられたのかとお尋ねしたらベトナムから日本に働きに来られているのだとか。
献立はなく説明もなかったので、いつも通りmy tongueの解説となりますので、ご参考程度に読み見て頂ければと思います。
夕食
【食前酒】:葡萄酒
赤ワイン風だが渋みは全くなく清いブドウの風味です。ただ、ジュースというよりは甘味は抑えたワインテイストはそのままに、煮切ってアルコールを飛ばしたフルーティな大人のお味です。
【先付】:水雲寄せ
ゼリー地はしっとりとして「モソッ」と箸が入ります。モズク酢を寒天で寄せてあるのかと思いますが、酸味と塩味はかなり抑えてありコリッとしたモズクの海藻味がよく引き立つ自然を味わうゼリー。彩りには薄切りのキュウリと紫の菊花。
【前菜】:烏賊飛子和え 丸十レモン煮 鱈白子ポン酢 蟹真丈 紅白なます
紅白基調尽くしの前菜は右から順に。 紅白なますは新年を祝う縁起物。大根、ニンジン、昆布を甘酢に付けてあり干柿の盛り込みアクセントで味の変化もおもしろく。 2品目は、カニ真丈を丸っと口に放り込むとジュワジュワ~と溶解していく食感に後から追いかけてくるカニ!カニ!カニ!風味が凄まじい。カニ身を混ぜ込んである真丈は濃縮カニ出汁を煮詰めて練り込んだのではないかと思うほどです。カニの赤とすり身の白で、やはり紅白のめでたい演出。 白子はスタンダードだが酸味の強いポン酢は何故かカラメルのように仕立ててあり絡みが良すぎるほど。ここでも紅葉卸しと白子の紅白の縁起物。 サツマイモレモン煮はレモンがとにかく微量な薫り付けでシットリやさしめ食感。
毬小鉢を開けてみるとイカと飛び子を合わせ、さらにイクラを盛り付けてあります。祝い席に合うように豪華な黄金の飛び子、イカはスルスル感が過剰で最初は白身魚かと思うほど歯切れがよい。イクラとイカという豪華演出紅白は年末年始のめでたい盛りです。
【椀物】:胡麻豆腐豆乳仕立て
配膳時に台の中に入っているロウソクに火を入れていただきます。固形燃料ではなく「ロウソク」です。群馬ってロウソクの産地だっただろうか・・・等と勘ぐってみるが分からない。その上にフィットするとように椀をセットします。もともと温かく配膳されるのですが保温を込めてという心遣いという演出でしょう。
蓋を開けると溶けたチーズの匂いが立ち上がり、その上の朱に粉パプリカが振ってあります。
胡麻豆腐というので底に敷いてあるのか茶碗蒸しのようにしてあるのかと思うと、やけに「ねっとりもっちり」とした湯葉のような薄長い生地。口に滑らせてみると味がほとんどない。が、咀嚼すると最初は豆乳出汁で、その後にほんのりとゴマ風味が舌をそっと掴みます。なんとやさしい・・・。チーズとパプリカの風味も合わさり和洋のバランスが絶妙な椀物です。豆乳を溶いてあるのはカツオ出汁かな?
【向付】:旬の盛り
群馬の山中なのに、ぴちぴちの海鮮盛り。やはり距離的には新潟や静岡からの直送でしょうか。 4種盛りは、ボタンエビ、本マグロ、ホタテ貝、ブリです。 エビは思ったよりもマッタリとした食べ応えやエビ風味はなく、エビ味噌を食べて感じたのはエビ甲殻臭くない・・・。熟さないほどに新鮮ということでしょう。生なのかは分かりませんが冷凍・解凍技術が上がっている昨今は場所を選ばず技術が良ければ食べることができます。 ホタテはレモンを挟み風味付けしてあります。 本マグロは中トロで噛めば噛むほどに幸せな肉のような脂が広がります。 つまは大根けん、大葉、キュウリ台座の上に本ワサビ。彩りは紫蘇花と黄菊。
盛りの最後尾に隠れていたのが旬のブリです。コリッゴリュとした歯応えにギラギラと脂の光沢を放ち醤油に浸けると脂がサッと水面に広がります。冬のブリは寒ブリと呼ばれ旨味と甘味がとても深まります。醤油は塩が強めの薄口のたまりです。
【焼物】:カレイ粕漬け焼き
朴葉の上にはあらかじめ火が通されたカレイが乗っています。このカレイ冷たい状態で配されているのに何故か脂が滲み出てきます。付け添えは揚げたサツマイモに蜜を纏わせてから白黒のゴマを絡ませた大学芋風。
ツインタイプの五徳の右側に配置されていました。2連五徳なんて初めてみました。
最初から配膳されていましたが、火を頂いて好みのタイミングで。
火を入れると、じわりじわりと焼きが入る音がジュ~~と響いてきます。火が消える頃には熱々の食べ頃になっています。酒粕によって味を閉じ込め、コクと甘味を付け足して、脂がぎっとりしているのに、粕効果で中和されておとなしく旨味を纏めてあります。塩は控えて麹の甘さで旨みを出すといった感じです。脂の乗り具合いからするとカラスカレイとかでしょうか。
【鍋物】:赤城牛のすき焼
ツイン五徳の左側には牛すき焼の小鍋。赤城牛は和牛と交雑種とのかけ合わせですが、地元産の赤城牛はA4ランク相当の物をいう様です。「赤城和牛」という純粋な和牛も別品種として存在します。 厚み2ミリからの厚切り4枚を盛り込んだ贅沢なすき焼となっています。割り下は他の料理からするとかなりの強醤油で甘さは酒の甘味程度です。お野菜はしっかり大豆濃厚絹豆腐、ごん太マロニー?、白菜、菊菜、白ネギ、椎茸、エノキです。
一度に火が入ると硬くなり勿体ないので一度肉を取り出して脂の多い部分だけをお野菜と炊きます。煮あがったら一枚ずつ食して一枚入れてと丁寧に味わいたい。部位は恐らく純ロースで広げるとロースステーキと同じ大きさがあります。
ステーキと同じ広さがある肉質は全てを重ねると、まさにステーキを食べた150g相当あります。和牛交雑種だと思われるが臭みはなく、じっくり噛み進めると確かに和牛の風味は残しつつ雑がある赤身はむしろアクセントで、熟成和牛と出されても遜色のない味わいです。しっかりと火を通しても赤身を残しても美味で厚みから食べ応えも凄い。生卵も地物なのか都会のスーパーでは手に入らない濃厚黄身でこちらもうまい。
【揚物】:季節3種盛
モロッコいんげん、百日マイタケ?、サツマイモの3種です。衣が変わっていて泡を吹いたように薄く揚げてありシャクシャクです。野菜とキノコというなんとも胃に気を使った3品。サツマイモは蒸かしてから揚げてあるのか芋甘味がとんでもなく濃縮されていて安納芋?でしょうか。
最初口にした際には長野県の黒マイタケなのかと思いました。違うのは黒マイタケほどマイタケ味に癖がなく、後味がやけにサッパリとした風味の抜け具合。なので、調べてみました。この周辺では黒マイタケに似たような100日かけて育てるという「百日マイタケ」という品種があるようです。それに相当するかは分かりませんが、スーパーでみるマイタケではないの確かなおいしさ。
【旬彩】:リンゴのグラタン
リンゴをゆっくりとオーブンで丸焼きにしてから半分に横断して、それを器とし具材を詰め込み再度オーブンでグラタンにしたんだと思わしき季節の珍品。
3㎜角切りの温リンゴを多数入れ込んで、そして真ん中にはこれまたカニ身。合わせてあるのは牛乳仕立てのクリームソースではなく、ヨーグルト仕立てのクリームソースで、まるでサワークリームのグラタンです。トップにはチーズで蓋をした洋物。椀物と被りそうですが、椀は豆乳仕立てで、こちらはヨーグルト仕立て。
【煮椀】:海老芋 銀餡
最初から配膳されていた椀ですが、温かさがほんのり残っていました。蓋を開けるとお出汁の香りはカツオでしょう。真ん中には打ち粉をして揚げた海老芋を配し、醤油が強い銀餡を注ぎ周囲には彩あられを散らし、トップにはほうれん草の青味。醤油の強さがエビイモの甘味を引き立て、ほっくりもっとりとした食感。あられにより揚げ香ばしさがさらに増してエビイモの揚げに変化を持たせて面白い。
【食事】:白米
【留椀】:赤味噌汁
【香の物】:3種
白米はツンツン艶々だがコシヒカリのような粘りのあるものではないが甘味は強い。赤出汁は少し渋みのある京仕立てのようで三つ葉に青さ海苔を具材に。香の物はお新香、胡瓜ぬか漬け、大根酢漬け?だったか。お漬け物屋さん、もしくは自家製の美味しい物です。
【水菓子】:リンゴゼリー
今回のお料理では寄せ物は地はかなり硬い物が多かったのですが、リンゴゼリーも例外ではなく強弾力です。酸味ほどよく濃縮還元のリンゴジュースをそのままナタデココと一緒に寄せてあります。アイスはバニラビーンを混ぜ込んでありますが、どちらかというとバニラアイスではなくミルクアイスのようで口に放り込むと雪解けのように名残り惜しく溶けていきます。横には石チョコとミント。何かと組み合わせて美味しくなる相乗物ではなく、それぞれ単品で楽しむデザートでした。
朝食
朝食も部屋食となっています。かなり広い時間帯から選ぶことがからできました。朝から手作りしかない料理を堪能します。
【籠盛り】
・ひじきと大豆の煮物
・ほうれん草のお浸し
・玉子焼
・長芋とろろ
・納豆
・抹茶ババロア
ひじきは濃い味の物ではなく大豆、ニンジン、ちくわと一緒に煮込んであります。 ほうれん草のお浸しは珍しいピンク色のちりめんじゃこが入っていました。 玉子焼は砂糖の甘さが強いタイプで大根おろしと一緒に。 中央は粘りの強い長芋のトロロです。ヤマトイモのような品種なのかも。 納豆は群馬県産の大豆を使用した物だそうで粘りが硬く独特の臭みありません。 ババロアはしゅわしゅわとした口溶けに某寒天製品のようにも感じるが安くはないお味。
・鮭塩焼き
・お味噌汁
夕食にも登場した2連五徳には鮭と味噌汁です。鮭は朴葉焼きで、火が入っても1㎝以上の厚みがあり塩は控えて素材の味をそのままに、脂の乗りが素晴らしく時鮭のような旨味があり白飯がとまりません。汁はワカメとナメコの優しい味噌汁。
・サラダ、玉葱ドレッシング?
レタス、トレビス、サニーレタス、パプリカ、トマト、ヤングコーン、キュウリ、カイワレ、カリフラワーと何とも多種の盛り込みです。これに何と厚みのある和牛のたたきも2枚入って朝からゴージャスです。加味は自家製の酸味が強いタマネギドレッシング?
・焼き海苔
・牛乳
焼き海苔は手焼きで炙って一枚一枚手切りにしてありました。こんなサービス今まで見たことがない。地物消費に一役かなと思う美味しい牛乳。
・白米
・香の物
ご飯は淀みのなく白光して甘味が強く、香の物は夕食とは対照的に塩味控えめの4種盛りです。
まとめ
伊香保温泉はいつか訪れてみたい温泉地でした。やはり気になっていたのは石段の階段にお宿が点在するという旅情。そんなこんなで源泉掛け流しのお宿を探していたところ千明仁泉亭さんを発見。最初に発見したのは泊まりたいお宿は別のお宿でしたが、浴室の多さや湯の使い、料理の内容、「木造築」が決めてとなり千明仁泉亭さんにお邪魔することに。
訪れた当時では料理などは値段相応以上で良い物を出していただいた印象。これが記事をしたためた物価高の頃にはこの値段では口にできないかと。 黄金の湯も貸切4つに大浴場が4つと好みで湯巡りができるので温泉好きでも満足できます。 特別変わったサービスは無いものの総合的には、年末料金にしてもかなり良いステイを提供して頂けたかなと思います。機会があれば、また訪れたいお宿です。
宿泊料金
宿泊日:2021/年末
旅行サイト:じゃらん
プラン:【心にググっと】~愛郷ぐんまプロジェクト第3~スタンダードプラン基本お部屋食。貸切風呂無料。
部屋のタイプ:和室1間 9~12畳
合計料金:55000円(2人)
スペシャルウィークが更にお得になる5000円クーポン
支払い料金:50000円
加算ポイント:1375p