石川県にあるセイモアスキー場で遊んでから、車を1時間程走らせた山中温泉にある胡蝶さんにお世話になりました。表には目立つ看板はなく、玄関入った目の前にある胡蝶さんの銘が入った昔からあるという彫り物。玄関に飾られた彫り物が特別な物だと若女将さん?が話して下さいました。
近代観光地化が進む山中温泉地にあって、胡蝶さんは全10室のプライベートしかない厳かな高級旅館です。厳かとは言いましたが、とても人当たりの良い接客は付かず離れず心地よく、料理の配膳のタイミングなどは忍びかと思うほどで、和のステイの随が詰まったお宿です。
※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。
旅情
門の前に着けるとすぐにでも門番さんが飛び出てきそうではありますが、お宿前に停めてもよし、建物の隣にすぐに駐車場があるのでそちらでもよし。自分は駐車場の案内があったので建物のすぐ隣に車を停め荷物を持ってチェックイン。
冬季の積雪でがあっても庭の手入れはperfectで、品格の良さを感じずには居られない面持ちです。右にある椎(しい)の木はかなり太く樹齢がわからないのだそう。
門扉横、玄関前には雪がなければ中庭?への散策道がついており散歩ができるようです。
冒頭にもってきた胡蝶さんの銘が入った彫り物が飾られています。玄関は小振りだが見るからに数寄屋造りの装飾が施された造形美。部屋の総数からすると混み合うことのない大きさ。感染症と冬季ということもあってか、他の宿泊客と出会ったのはお風呂で2人のみでした。
チェックイン時はロビーは利用せず、お部屋への案内でした。
びっくりするぐらい綺麗にしてあり、さすが御もてなしのお宿です。
玄関上がってすぐ裏には特別室である聚楽第の入り口があります。
プランを見ているとここに泊まらないと口にできない懐石料理があるようです。源泉かけ流しの湯舟もあるので次は是非に泊まってみたいが・・・お値段張ります。
ロビーには加賀の銘品である九谷焼の展示販売がありました。とても普段使いできない5桁のお値段が付いております・・・。
展示販売のショーケースの横からは客室への廊下があります。
外観からは考えられない長い廊下が奥まで伸びています。
館内は離れを廊下で繋いだような造りとなっていて、時折このように分岐が出ててきます。これを右へ曲がると浴場があります。
浴場までの廊下奥に赤と黒の椅子が置いてあります。
廊下から中庭を臨むと特別室の聚楽第が見えました。文化財のようなかっこいい立て構えです。
廊下右手にはバーカウンターがある小部屋があります。
訪れた時には流行り病の影響もあってか営業はしておらず物置になっていました。
バーの隣には湯上がり処があります。
胡蝶さんではワインにも拘りを持っておられるようで、部屋の案内には沢山のワインの種類が載っていました。日本酒の好みはあるので多少分かるのですが、ワインも好みはあるにしても良し悪しが全く分かりませんww
読み物やパンフレット類も置いてあります。
冷蔵庫にはfreeのウーロン茶と緑茶のサービスがありました。
バーの前には藏を使った美術館があります。
こちらにも九谷焼の展示がありますが、どうやら売り物ではなく希少性の高い物かと。自分には焼物の価値が分かりませんが・・・料理を立てたい器、盛りたい器の拘りはあったりします。料理人によっては器も自作する方もいると聞きます。
廊下の窓から藏の外壁が見えました。いつの時代の物なのか内部は木造のようにも見えましたが、土塀ではなく石造りとは珍しい。
赤と黒の椅子の所までくると右手には「月かげの湯」があります。
浴場の反対側は客室となっています。1階2階と合わせて4部屋があるようです。
先ほどの分岐点まで戻ってきました。これを直進してもう1つの浴場と客室棟へ。
廊下の先には少し開けた場所に出ました。
階段の袂にもお部屋があります。ここは個室食としてのお部屋なのでしょうか。
盆を置くテーブルが置かれていました。流行り病がなければ宿泊用のお部屋のようにも見えました。
突き当りを右に見ると「川のかせの湯」と「家族風呂」があります。
廊下の飾り棚には干支の駒があります。訪れたのは寅年。訪れる年によって真ん中の主役が変化するのか。チェックアウトの際に「館内の隅々まで季節の催しに飾られていますね」とお話すると、大旦那さんが細やかに季節の飾りと花を添えておられるのだとか。
チェックインした時と、翌日のチェックアウトした時にはすでに飾り棚の小物が変わっているという・・・夜か朝に大旦那さんが季節の物に入れ換えたのだと思うのですが、後の項目でも述べますが、食事の配膳も完璧すぎる程で胡蝶さんは忍びの一族ですかww?
この棟は折り返し階段を囲むように部屋が並ぶという今までに見た事のない建造です。
内廊下なので窓はなく閉塞感はあります。ただ、裏を返すとお部屋は全て外向きになっているという特徴もあるので、いずれのお部屋も何処も明るくなっているのではないかと思われます。
こちらの棟には胡蝶さん唯一の宴会場があります。
大宴会をするには難しい大きさではありますが、30人ぐらいで利用するぐらいなら余裕ある広さです。
お部屋
案内して頂いたのは「道明」というお部屋です。
間取りは本間12.5畳+副室4.5畳+次の間3畳+玄関6畳程+広縁3畳程バス+トイレです。
ウェルカム茶はお部屋で。抹茶と煎茶の2種、キンカン丸ごと饅頭の用意。
金柑の柑橘はきつくなく甘露に仕立ててから饅頭生地に包み焼き上げている爽やかな菓子。手作り感満載です。
一般客室ではありますが玄関もかなり広くとってあります。
玄関からまっすぐ進んでくると次の間は3畳。
物置棚にはチェックイン時にはすでに冷水が用意されていました。
玄関をまっすぐ進まず左手には副室への廊下があります。
廊下左手には洗面とトイレがあり、画像には映っていませんがバスも付いています。
ただし、バスは温泉ではありません。
書斎の雰囲気がある副室。文机でも置いてれば使うところですが、ほとんど出番がありませんでした。
本間は副室と次の間からアクセスができるという変わった間取りです。
広縁には外を眺めながら過ごせるようにと炬燵がおいてありました。
奥には冷蔵庫とお茶セットがあります。
炬燵からは大聖寺川を見下ろし、山中温泉の名所の1つである「あやとり橋」が見えます。訪れた冬は枝葉は枯れ落ち景色はありますが、夏になると見えなくなりそうな様相。
床の間には当然の如く、季節の生け花は高級旅館らしく。
襖の取っ手もそれぞれ違うものが当てがってあります。新しそうな物からかなり年季の入ったものまで色々です。真ん中は九谷焼をあしらってあるのか。建替えはしてあるのだと思いますが、有形文化財宿などで見るような拵えです。
備品の冷蔵庫には有料の飲料が入っています。
備品は何から何まで揃っています。寝巻用と外出用の浴衣で2枚。鍵は2本、バスタオルタオルも2枚、使い切り化粧水など無い物は無いといっていいほど充実しています。
館内に自動販売機はないですが、飲み物は充実しています。
胡蝶さんから徒歩5分ほどの所にコンビニがあるので入用物があるので不便はなく。
布団敷きの際にお茶セットと冷水の入れ替えがあります。なんと、翌朝も朝食をとっている間にお茶セットと冷水を入れ替えてくれます。かなりお高めの高級旅館でも見なくなった2回入れ替えです。
お風呂
入れ替え制の男女別の浴場が1ヵ所ずつ、家族風呂が1つ(有料)あります。泊まった部屋には温泉風呂がなかったので、当日1回限りですが家族風呂が無料でした。ただし、この家族風呂は、当時は翌朝5時から空いていればいつでも自由に利用できました。
山中温泉全体の取り決めなのか、源泉の投入量はとても少なく消毒臭があります。ただ、翌朝は揮発するのか消毒臭はかなり軽減されていました。加水の記載なかったのですが、加温、循環濾過、消毒ときちんと明記されているのは良心的。源泉は無味無臭のカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉の弱アルカリ性・高温泉です。もともと温泉成分は分析表から見ると強くなく、若干硬い水質を感じますが誰にでもやさしいスベスベの肌当たりです。
バスタオルはお部屋から持参する必要があります。フェイスタオルは各浴場の脱衣所に積まれていました。化粧水などは部屋に用意があるのでこちらにはなく、それ以外の物は概ね揃っていました。
月かげの湯
「月かげの湯」は露天風呂が併設された浴場となっています。
湯屋に入ると結構な消毒臭です。と、思いきや翌日には不思議と消毒臭はかなり薄くなっていました。循環があるので塩素が揮発するのでしょうか。
シャワーは客室数からすると多くもなく少なくもなく。小さな子供連れのお客さんが多くなると足りなくなりそうです。
こちらの内湯は終始溢れ出しがありませんでした。ただ、湯舟の淵の向こう側である洗い場には白い温泉成分の付着があったので、溢れは無かったかもしれませんが、漏れ出しはあったかもしれません。
記憶が明確ではなくジェットバスではなかったと思うのですが、循環された湯でかき混ぜられていました。
壁に付いてある湯口には白い析出物が付いており、湯量もさほど多くないので源泉と思われるのですが浴槽の水位に変化なし。洗い場に温泉成分の付きがあったので、やはり漏れ出しがあるのかと思います。ここはぬるく消毒臭はない無味無臭。
何故か深夜に入浴に行くとこの湯口は完全に止まっていました。自家源泉ではなく集中管理で時間に寄り源泉が止めるのかと思います。
ふと、洗い場に目をやると・・・妙な溢れ出しではく、床材の隙間からお湯が洗い場に流れでています。床材の析出物の付き方からして、これって湯舟の湯が漏れ出てるのでは?真相は分かりませんが、浴槽の溢れ出しのようにも見えます。源泉の投入は確かにあるように考えられます。夜間に源泉と思わしき湯口が止まった時には気付かなったので真相は何ともです。
「月かげの湯」には露天風呂が併設されているので向かってみます。
完全にお宿の庭で露天風呂の眺望はなく、名前の通り空を眺めて月を楽しむかのような造りです。
湯舟は3人入ると一杯の大きさです。
露天風呂の注ぎ口も析出物の付きからして恐らく源泉? ただ、露天風呂に関しては他に噴出口がなく、こちらにも明らかな捨て湯口は見つからず、無味無臭ではあるがこれが循環湯かもしれません。
内湯と同じように、この湯口も深夜には止まっていました。ということは湯口は源泉?恐らくですが、誰も入浴しない時間帯には、資源保護のため源泉をストップしているのでしはないかと勝手に妄想してみる。
川かぜの湯
内湯の湯舟の大きさはこちらの方がかなり大きいですが形状は同じ。その代わりと言っては何ですが、露天風呂がありません。またまた、代わりと言っては何ですが名所の「あやとり橋」を見ることができます。つまり景色がいいという浴場です。
源泉と思われる湯口は、温度はかなりのぬる湯です。この溜め湯口には茶色の湯の花が付着しているのが見てとれました。溜め湯口は無味無臭で消毒臭はなく間違いなく源泉でしょう。
「月かげの湯」とは異なり、身を沈めると確かなオーバーフローが見て取れました。
目に見えるオーバーフローやサイフォン方式が最も安心する源泉投入。
洗い場は「月かげの湯」よりも多いシャワーが設置されているので、コアタイムを除けば一杯になることはないかと思われます。
山なみの湯 貸切風呂
真ん中に柱があるという不思議な浴場です。
L字形状の湯舟にはなみなみと湯が張られています。
貸切風呂として利用するにはかなり大きく、かつては大浴場としての用途があったのかも。
注ぎ口は大浴場と変わらないぐらいの湯量です。
多くはありませんが、オーバーフローもしっかりと見て取れます。利用人数が少ないということもあるのか、この貸切風呂が最も泉質が良かったように思います。
貸切風呂の脱衣所には冷蔵庫があり、ビール、ハイボール、ラムネ、お茶などを自由にいただけました。しかし、お部屋への持ち帰りは厳禁です。
なのに、女将さんでしょうか。「お風呂のビールもお部屋に持って帰ってゆっくり楽しんで下さいね」と・・・流行り病下ということもあっての配慮だったのかもしれません。
お部屋の冷蔵庫は有料、お風呂の冷蔵庫は無料と不思議な感覚ですが、ありがたい御配慮でした。
やはり湯に浸かりながら一杯やりたくなるのが心情というもの。
あやとり橋のライトアップを見ながらビールと湯を楽しみました。
お料理
朝夕とも同じ個室での案内でした。本来であれば客室として使っていてもおかしくない立派な個室で食事をいただきます。お料理の内容は季節の物を使った素材本来の味を活かした物しかありません。とにかく棘がない角がない丁寧すぎる雑抜きされた京風の絶品会席料理となっています。何より、どこかで見ておらるのではないかと言うぐらいの完璧な配膳は、これまで訪れた旅館やホテルでは1,2を争うほどのタイミングで料理が運ばれてきます。
献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
最初の配膳は、深緑の盆に食前酒と先付3種です。
【食前酒】:かゞうめ酒
加賀梅酒は調べると小堀酒造さんの蔵元のブランド梅酒ではないかと。酸味と甘味に品があり原酒はやや濃厚で、小さく砕いた氷で薄く割られると丁度よい風味に仕上がります。
【先付】:かに茶碗蒸し トリュフ、ふぐこのわた和え、鴨ロースト
温かく配膳されていた茶碗蒸しは、温かいうちに口にしたく真っ先に手を付けました。蓋を開けると旬である蟹の赤身の上にかなり分厚く切り盛られた生トリュフが映えます。餡は昆布?と蟹?緩やか過ぎて分からないがしっかりとした風味は何だろう。
玉子地はプリンのような硬さ?柔さ?と表現が難しいとろける触感は、濃厚なのに卵本来の甘味はゆったりと薫ります。蟹は茹でではなく蒸しなのか、しっかりとした身振りなのに蟹風味は凝縮され玉子地と餡に絡めると、それぞれの味は主張するが握手もしている。
わた和えの先付が最高にハマりました。
山芋には賑やかに2品の盛り。ナマコの腸を塩辛にした「このわた」とピリッとした唐辛子を合わせて、フグ刺しに和えてあります。フグの品種は不明。流石にトラフグではないと思います。もう1つは旨味しかない生ウニに本山葵の散らし。彩りには黄金の菊花、香り付けには刻み大葉です。これを個別に食べるのではなく山芋に溶いてミックスしていただくと、味が混ざるのではなく、先ほどの茶碗蒸しと同じく、それぞれの素材が仲良く主張し、それぞれが譲り合って機能している何とも不思議。もちろん山芋との単体での味わいも好みです。ある時はフグわた、ある時はウニ、味変に山葵と大葉が入るが、素材の美味さは変わらないのは、山芋の粘りによって完全に混ざり切らないのが良い。
鴨の上には白葱を挟んで、酢で炊き上げたリンゴコンポートを掛けて、キャビアを添えピンクペッパーをアクセントに散らしてあります。
鴨のローストはかなり瑞々しくジューシー過ぎます。濃縮された鴨味ではなく噛み進めると、頼りないが旨さが染み出てくる肉汁は上品。既製品でも本職人のように仕上げてあるので自家製との判断がとても困ります。しかも、とても美味い。お宿さんもプライドをかけて自家製と信じたい。キャビアとピンクペッパーを鴨で巻き上げて食べると鴨の味がより鮮明になります。ここでも添え付けと主菜の相乗効果が際立ちます。
【椀もの】:蛤真丈
朱の椀が運ばれると蓋には水を打って椀を湿らしてあります。椀が保温機にいた物ではない作法。誰も触れて開けていないなどいろいろと意味合いがあります。
椀を開けると最初に香るのは柚子、すぐ後にはハマグリ出汁は豊満。口に含むと椀を開けた時の匂い程に強くなく、柚子とハマグリの味はなくゆったりとしたカツオ?のような品しかない。季節の入れ込みは、かなり早物のタケノコがコリっと若い品しかない味、真丈には薄切りの大根を被せ柚子皮の添えとワカメ。
真丈は箸を入れると程よく弾けるが、口の中に入れるとマシュマロのような口溶け感があり白身魚は鱈?ゆるりと味舞う。とかと思えば、ハマグリは大きく刻んで練り込んであり、マシュマロから突然グニュグニュとハマグリのしっかりとした弾力に襲われます。お出汁を口に含んで真丈を解すと「おかわり」と言いたくなる極上の旨味。
【向付】:くえ 鰤 甘海老
甘海老はいわゆる甲殻らしい味はなく、エビ味噌もコッテリとしておらず、さっぱり味で新鮮が故に透き通るエビ味。つまは大葉、大根けん、蓼、本山葵。加味はゆるゆると酸味と甘味がある薄口の美味醤油。
旬のブリは意外にも歯応えはあまりないのは、ゴリゴリの背身ではなく恐らく脂ガッツリは腹身の柔さでしょう。醤油に浸した瞬間から水面に脂が広がります。意外にも味には深みはない。しかし、水臭いと訳でもなく、ブリと言うと逞しい筋肉質の背身ですが、腹身の油が乗ったブリも希少です。
献立を見て、日本海でクエ!? 多くは太平洋側での漁獲ですが、日本海側ではかなり希少のようです。仲居さんに聞くと「この辺りでは獲れないわよ」とのこと。たまたま揚がった物を使っているのか、太平洋側からのお取り寄せか。クエはタンパクな味わいながらも、旬で脂が活かっておりました。希少な魚を日本海でという板長さんの計らいでしょう。
【焼きもの】:のど黒塩焼き
画像を撮っている最中から旨汁がドロドロと溢れ出てきます。さすが激脂の白身トロであるノドグロです。熱々配膳で添え付けの栗は、甘露にしてから焼きを入れてあり、栗味が締まったスィーツの一品です。はじかみも自家製のようで酸味を抑えた甘酢仕立て。
滲み出た旨汁で池ができています。献立の中では珍しく塩味が強めで、肉汁を閉じ込めて焼き上げてあるので箸で掴むとフワッ・・・フワッと逃げていきそうです。皮はパリッと身はジュわっと脂が突出しているので、これほど味が分かりやすい白身魚はありません。白身の和牛と言ったら塑像が付くのか付かないのか。私的には白米が欲しくなる白身魚はそうはいないと思います。
【料理長からの一品】:ぶり大根
「せっかくお越し頂いたので、社長である料理長からのお品です」と説明を受けたのは献立にはないサービスの一品です。これをサービス品にするには豪華過ぎる椀です。
大根とブリは別々に炊いたのかと思います。大根は中にまで染まっており、見た目に反して醤油味はやさしく、ブリの移り香からするるとブリの煮汁を掛けたものかと。ブリの脂が冬大根の甘味とほろ苦さを引き立たたせています。中心まで均一まで味が染みており、調理としては超低温調理や数回にわけて芯まで滲み込むまで数回に分けて熱を入れたのかと。箸で辛うじて持ち上げれる程にホロホロに煮込んであるのに、くどさはなく気品のある煮。正直なところ煮椀の一品にここまで煮込みするには家庭では面倒過ぎるかと思います。
極厚のブリ切り身は火が入ってなお2.5㎝ぐらいあり、部位は背身でギュッと締まって食べ応えがあります。ブリも茶褐色で濃い味のように見えるのに、脂が乗ったではく締まりのある白身の青魚で、いわゆるコッテリ感はなく旨出汁が上品で素材が活きた青魚の臭みが全く無い「うまい」しかでない、いや「透明な旨味」である旬の一品。
【台のもの】:能登牛ローストビーフ
能登牛は初めて口にしました。綺麗なピンクに焼き蒸し揚げられた潤いのある肉質は、霜降り具合が良すぎるのか口の中からすぐに居なくなってしまうのでもったいないwお口直しの彩りにはミニトマトとクレソンです。
とにかく牛肉特有の臭いがなく、肉々しいガッツリ風味が好きな方には頼りないかも・・・良い意味で。というほどにクリアシルキーな味わいと融解感です。味付には黒胡椒を振って薫りを持たせて、タマネギの刻みと搾り汁を醤油で混ぜたソースでいただきます。と思っていたが、味わいに味わっていると、ソースはタマネギではなくとても甘い大根でした。加賀大根でしょうか・・・。調和としては和テイストの味変化球に笑みが出ました。
【煮もの】:山中がしらいも かにあんかけ
なんともBigな椀がやってきました。椀を開けると目に入るのはキツネ色に揚げられた里芋のフォルム。なのに、漂う湯気は蟹・カニ・かにです。もとのお出汁の味が分からないほどにカニが躍っています。彩りには季節先取りである菜の花と梅生麩です。
ガシラ芋は里芋のような小芋ではなく大玉の1球になるサトイモの種です。栄養素も高いそうでサトイモ独特の粘りがとても少なく、ほっくりとしたサツマ芋にサトイモのトロミを加えたような食感は苦手な方でも口にしやすいかもしれません。イモ類独特の土臭さもなく、ほっくりとサトイモの良いところだけを口にしたようです。蒸かしてから揚げてあるようでとても揚げ香ばしく、芋類の揚げは得てしてポテチのような揚げ仕上がります。芋揚げとカニのコラボは中華っぽい?感じでもあります。
【酢のもの】:サーモン昆布〆 リンゴジャム
イクラもトッピングした親子酢の物の登場です。
盛りを崩してみるとサーモンの間には大根を介在させ、上には濃密イクラではない新鮮さっぱりイクラに貝割れのトッピング。最近は日本各地でニジマスを主とした配合淡水サーモンの品種改良が成されています。北陸でも例外ではなく昆布で締めてイクラで色を取り、カイワレの辛味で口の中をリセットし、再度旨味を堪能できます。何故か献立のリンゴジャムは見当たらず。先付の鴨ローストに添えてあったのが恐らくリンゴ酢ジャムではないかと。
食べていると気にならないが、器の底に残った浸し酢を味わうと強くはないが酸味を感じました。いずれかの食材を浸けた物ではなく、梅のような掛け酢だったのかも。
【食事】:白米
【止椀】:赤出汁
【香の物】:3種
献立には赤出汁とだけ。白米はコシヒカリのような甘さがあるが、粘りが強くなくぱっさりとした歯切れのがある美味しさ。赤出汁は京風かなと思って口に含むと、意外にも酸味がなく甘味を強く感じました。自家製味噌でしょうか。巻麩、ワカメ、ネギの具材には、風味豊かに粗挽きの山椒を散らします。香の物は柴漬け、胡瓜ぬか漬け、大根甘酢漬けは漬物屋さんの味がします。
【水もの】:ガトーショコラ いちご
ガトーショコラは不揃いな形をしており自家製のようです。真ん中はチョコが濃厚で周りはケーキ地でしっとり柔く仕上げてあります。チョコとバターは控えめで、チョコのネットリ絡みつく感じはあるが味はあっさりとしています。ガトーショコラの甘味を抑えてあるので、完熟キウイとイチゴの自然の甘味。
朝食
時間になって夕食と同じお部屋に行くと既に用意がされていて、後から味噌汁だけ配膳されました。
・ハタハタの一夜干し
・里芋の煮物 絹さや添え
脂の乗ったハタハタは頭から尻尾まで丸っといただけます。 蓋の付いた椀は、里芋の煮物で濃い口醤油とお酒?で煮て甘辛く御飯に合います。三個の盛りは珍しいお腹一杯コース。
・烏賊素麺
・諸子甘露
・茎山葵と昆布の佃煮
・ちりめん山椒
イカそうめんはスルスルと甘味が強く感じられスルメかな。醤油は夕食のお造りの物と同じ薄口のたまりです。珍味の昆布にはワサビ茎の刻みが入っており、結構なワサビ辛さがありますお手製でしょうか。
・山芋細切り短冊
・温泉玉子
・揚げ出し豆腐
・香の物(梅干し、胡瓜ぬか漬け、茄子浅漬け、大根甘酢、野沢菜)
揚げ出し豆腐はサックリとした揚げたてで、ネギ、カツオ節、もみじ卸を添えてあります。お出汁はサトイモの煮物と同じく濃い目の醤油ですが、こちらはそこまで甘くはないのですが、夕食からすると胡蝶さんのお料理では醤油濃く仕上がっています。 「山芋にはあらかじめお味が付いております」との説明があり、ほのかにミネラルのような風味がありにがり塩の味?岩塩?と、変わった味付けでした。
・蜆の味噌汁
・白米
お味噌汁は味噌っさはなくベースはシジミのお澄まし出汁で、味噌汁のなかには濾さずに入っていたのはお米のようです。塩は強くなく大粒のシジミが盛り盛りと入っていました。 夕食だけでなく朝食も手作りしかない内容で丁寧な味付けでした。どれもこれも白米に合う物ばかりですが、小料理屋だと完全にお酒の当てになる上品な味付けの料理が朝食に配膳されました。
・洋梨の氷菓
もう朝食は終わりかなと思っていたら、食べ終わったのを見計らったように「シャーベットをどうぞ」と配膳して下さいました。いや・・・食べ終わるのを知っていたかのようなベストタイミングに配されました。
朝食で最も不思議な一品だったシャーベット。説明がなく口に入れた瞬間から「お~洋梨しかない!」という香りが広がります。しかも、シャーベットなのになかなか口の中で溶けない。why?いわゆる氷菓子ではなく、舌触りはとんでもなく滑らかです。そして、まろいまろいわ~・・・。シャーベットなのに、もっちもっち食感で下で潰そうとすると抵抗感がある。果肉を裏ごしして洋梨の線維をそのまま残したらこうなるのか、感触的には餅?白玉粉とか練り込んであったりするとこんな食感になるのでしょうか。美味しくも食感まで楽しめるデザートでした。
まとめ
胡蝶さんはおおよそ70000円~のお宿で高いお部屋になると100000円を超えます。ただ、お部屋によって大きく料理の内容が変わるようでもないので一番ランクの低いお部屋の基本プランで泊まりました。本当は最も高い聚楽第での専用料理を食したかったのですが、やはり値段はうなぎのぼりです。
接客は冒頭やタイトル通り申し分なくきめ細やかなサービス、料理の説明もperfectと言っていい程に細やかな説明があります。一般会席からしての丁寧さからすると聚楽第専用会席も味わってみたいものです。
ハード面での唯一困るのがお風呂です。山中温泉は源泉の湧出量が減っているのか少なくなっているのか。源泉の投入量がとにかく少なく循環しながらもラジオネラを出さない消毒している湯舟がほとんどです。温泉好きの我が家は滞在中4,5回大浴場に湯浴みしに行きますが、他のお客さんとの積極は少なく、往訪時っは湯を楽しむというよりは食を楽しむというお客さんが多かったのかなと思います。
胡蝶さんは厳かに頂ける料理がメインで、温泉好きはおいて浸かっている満足感が強いのかなと感じます。
宿泊料金
加賀市の発行するクーポンとじゃらん冬セールのクーポンの合わせ技ができたのが決めてになりました。2024年6月現在でも70k台/2人を維持されていますが、今後は値が上がっても仕方がないのかなと思う接客と料理でした。
宿泊料金
宿泊日:2022/厳冬
旅行サイト:じゃらん
プラン:【加賀ていねい】【基本プラン】本格加賀懐石料理を味わう。通常12時チェックアウト
部屋のタイプ:【あやとり橋側客室】<12.5畳+4.5畳>鶴仙渓をの名所を間近に
合計料金:79200円(2人)
クーポン:ふるさとお得【加賀市】8000円クーポン
冬セールが更にお得になる7000円クーポン
支払い料金:64200円
加算ポイント:1980p
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