いい温泉宿、おいしい料理宿

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再び訪れたいお宿探訪と趣味のブログ

坂聖 玉樟園【静岡県 土肥温泉】~文人達が訪れたという温泉街にある木造建築の湯宿では、ほとんどの部屋で楽しめる源泉掛け流しに、新鮮な駿河湾の季節の味覚も余すことなく堪能できる~

 公式HPを見て頂けると最も分かりやすいのですが、CM・旅行・映画・ドラマ系列番組で数多くのロケ地にとして取り上げられた玉樟園さん。さらに数々の囲碁や将棋の対局のステージとしても利用されているという。ロケ地の宿でありながら、歴史のある土肥温泉にあって現代化とモダン化が進む時代に、古い木造建築の佇まいを残し源泉かけ流しの湯を提供し続けておられます。

※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。

旅情

 少し早く着いたのですが、玄関にはすでにドアマンの方々が待機しておられました。玄関に車を着け荷物をあずけてチェックインです。

 玄関は昔ながらのノスタルジーを感じさせる日本旅館の情景です。

 玄関の前には中庭に入るための勝手口もあります。

 全26部屋からすると小さな間口の玄関で隠家的な情景です。

 下駄箱もあり、かつてはここで上履きに履き替えていたのかと思います。昨今は外国人対応のためか下足のまま部屋に向かうようになっているところも多くなりました。

 この玄関は本館となっており木造建築らしい木の軋みが堪らない。玉樟園さんでは最も古い建物だそうです。

 水色の矢印は同じく木造の離れ家のような「石心亭」「海華亭」と鉄筋造の客室「詩季亭」への廊下。赤矢印は本館客室と露天風呂への道筋。

 フロント前にはロビーがあり「茶房」とあるので喫茶スペースでもあるようです。

 赤矢印の奥には売店があります。土肥温泉街には商店らしきものはなくお土産は館内での購入がよいかも。

 この先に大浴場があるので、飲料は物凄く充実していました。しかも料金は良心的な価格です。

 ここは吹き抜け様になっており木造建築ではとても珍しい。

 物凄くでかいタカアシカニの標本が飾ってありました。

 木の根っこ状の流木の傍らには本館客室への階段。

 階段暖簾袂にはランクが高い露天風呂客室があります。

 2階客室廊下は昭和な懐かしい雰囲気で、古めかしさもありながらも壁紙などは綺麗にされていました。

 さて、一階に戻り自動販売機の横にある階段から別館へ参ります。

 恐らく玉樟園さんの私道だと思うのですが、道を跨ぎ一度表へ出て別館へ移動です。

 自動販売機のあった階段から黄矢印の所から表へ。赤矢印が大浴場への入り口。青矢印が大人数利用の宴会場への誘い。上空を見ると屋根が設けられていてかつてはテント屋根が付いていたのかもしれません。

 青矢印の宴会場1階では団体客が入っていたようで宴会の用意が進んでいました。

 2階への階段には立札がありましたが「宴会場です」ということだったので、ちょいと拝見。

 かなり立派な宴会場です。地方では法要利用などで旅館の大広間などが使われることも多い。伊豆ではどうでしょう。東京からも近く社員旅行とかで使われていたのかもしれませんね。

 一旦外に出て隣の入り口へ。

 こちらは男女別の大浴場がある温泉棟となっています。

 大浴場の利用には全ての客室からこの別館までの移動しないとなりません。客室によっては結構な距離を移動することになります。

 浴場前にはウォーターサーバーが置いてありました。

 一度フロント前まで戻り青矢印の宿泊棟へ参ります。

 すぐに本館2階へ上がる階段が左手に見えてきます。

 階段を上がると2部屋があります。とても綺麗にされているが何とも懐かしさを感じる情景。

 木造の建築美も気になりますが、もっと気になるのはこの階段。

 なにゆえ螺旋でもなければ斜めでもない。いや複合技か。捻りもあれば斜めにも付いているという見た事のない階段です。

 階段を降りてさらに奥へ進んで行きます。館内は時代と共に増設されたのか歪な廊下の付き方をしています。

 白黒の丸いタイルを埋め込んだ廊下に「聖」という特別室が見えてきます。

 廊下の途中には貸切風呂があり、往訪時は本館と離れの宿泊者のみが利用できました。

 白黒タイルの廊下の端からは再度外へ。

 時代の流れと共にでしょうか。とにかく景色に変化のある建物で面白い趣向です。

 この橋は飾りではなく敷地内にある池の上に渡してあります。

 橋を渡りきると左は「石心亭」、正面が「海花亭」、さらに奥に延びる廊下が「詩季亭」です。

 石心亭は1階と2階に部屋があるようで、こちらも木造建築ですが本館よりも新しく見えます。

 古い建物ですが恐らくリフォームで壁やら床をやりなおしてあるのかと思います。

 天井飾りは建築当時のままでしょう。桜と竹の細工が施してありました。

 海花亭も石心亭と同じ離れ家のような建物となっています。

 2階に上がると石心亭と同じく昭和感のある客室扉。

 最後の客室棟である詩季亭への廊下を最奥まで行きます。

 詩季亭からは鉄筋造の建物で古さはあるものの新しくやり直してありました。

 鉄筋造なのでここからはエレベーターでの移動となります。最上階へはエレベーターを1回乗り継ぐ必要があるので、この棟に泊まると大浴場がとても遠い。

 エレベーターホールには自動販売機。

 本館と離れは客室数が2部屋から4部屋程度ですが、新館の詩季亭は各階に3部屋あり計15部屋と多い。

 大浴場までは遠いですが、公式HPでは「詩季亭の部屋のお風呂は全て源泉が引かれている」そうです。標準客室なのに嬉しい湯使い。

 詩季亭には部屋のお風呂が源泉が引かれているにも関わらず、2階には詩季亭の宿泊者のみ利用できるという貸切風呂「山水」まであります。

 館内散策をしていて思ったのが、いずれの宿泊棟に泊まってもお風呂に困ることのなく温泉が堪能できるようになっている配慮が凄い。

 

お部屋

 案内して頂いたお部屋は「海花亭」にある「銭の花」です。

 間取りは本間10帖+次の間4畳程+バス+トイレ+縁側です。

 ウェルカム茶はお部屋でいただきました。郷土菓子は「どら焼き」のような小豆餡をサンドした物ですが、生地には硬さがありしっとりとした素朴においしいお茶請け。

 踏み込みは2畳程の大きさです。

 プランには応接間とある次の間。本来であればソファーセットになっているのかと思いますが、何故か横並びの椅子が4つ。

 次の間から高さのある敷居を跨ぐと江戸間10畳なので広々。

 床の間の装飾は見たことのないギミック。可動はさせませんでしたが、井戸にある「つるべ」が仕込まれていました。床の間の敷き板には竹をあしらってあり、これも今まで見たことがないタイプです。

 広縁はなく本間から窓を開けると外縁があります。リフォームはされていますが、お隣のお部屋との境もない昔ながらのスタイルです。

 目隠しはしてありますが、廊下や通路からも見えるので気になる方は障子を閉めましょう。

 水回りは本来であれば踏み込みや次の間からアクセスすることがが多い。しかし、このお部屋では本間から直接アクセスという珍しい間取りです。昔からの建物なのでトイレやら増設するとここにしか作れなったのでしょう。

 洗面横には清潔な最新のトイレ。

 洗面を挟んでトイレ反対側には埋め込み式の1人用の檜風呂があります。

 玉樟園さんでは別館以外のお部屋で源泉を楽しむ事ができるようです。湯量に自信があるからこその仕様です。

 レトロな昔ながらの蛇口を捻ると好きなだけ源泉を注ぐことができます。

 部屋のお風呂は小さいながらも、源泉かけ流しで使えるので極新鮮湯。ツルツル感は大浴場、貸切湯よりも強く、温泉好きなら源泉風呂付のお部屋での予約がお勧めです。

 冷蔵庫は有料で、お布団敷の際のお茶セットの入れ替えと冷水の用意があります。アメニティは高級旅館のようなブランド品ではないですが、部屋には化粧水乳液は完備されています。

 

お風呂

 お風呂は入れ替え制の男女別の大浴場が1カ所ずつあり、貸切風呂も2カ所利用することができます。ただし、本館と離れのお客さんは本館にある「玉竜」の貸切風呂、新館客室は「山水」の貸切風呂の利用となるため、今回利用できたのは「玉竜」のみです。公式HPには明記されていないので、時々により利用状況に変化があるかもしれません。

 泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉です。ツルツルとした肌触りがある無味無臭。析出物を削って舐めるとゆるかな塩味があり湯上りはしっとりと潤います。源泉は50度以上とかなり熱い。貸切風呂は源泉かけ流しですが、大浴場と露天風呂は源泉を足しながらの循環放流となっています。加水、加温、消毒となっていますが、本当に消毒しているのかと思うほど消毒臭がありません。

 脱衣所には男女別のスキンケアセットも置かれていました。

大浴場 男の湯

 「男の湯」と名前が付いていますが深夜に入れ換えがありました。

 天井を高く取り湯気が逃げるように作られた湯屋。

 手前には掛け湯用と思われる石造りの溜め湯があります。3本の塩ビ管があり温泉でしょうか?台座の足元は析出物で白くなっています。この掛け湯は浴場内で妙な存在感を出しているが、利用しようにも桶が置いていなかったのは何故?

 内湯の湯舟は変わった3種類。

 入って左奥にあるのは滝湯です。こちらは湯量もさほど多くなく「ぬる湯」となっており滝のしぶきで溶岩様の岩に白く成分が付着しています。

 大きな石がある湯舟に滝の湯から流れ出てくるようになっています。こちらには石の袂に吸い込み口がありました。この湯舟からのオーバーフローは見られず。

 縁が木造の湯舟は長湯は不可能な「あつ湯」となっています。この湯舟だけは掛け流しでかと思うほどです。

 滝湯側の湯使いといいこちらの湯使いも謎多く、左右の画像を見てもらうと、どういうタイミングか湯口の勢いが異なります。

 塩ビ管からだけではなく塩ビ管の外からも湯が出ているのが分かります。塩ビ管は源泉で外からは加水?して温度調整しているような感じでもあります。

 湯船の縁からはびっくりするぐらいの溢れ出しがあり、洗い場へがんがんフローしていきます。加水は本当の意味でも温度調整のためかと思われます。湯屋に入った直後は何となく感じる消毒臭だが湯船に入ると全く感じられない新鮮湯。

 玉樟園さんの湯屋にはサウナが設けられています。脱衣所から出てすぐの赤矢印のところにサウナがあります。源泉が引かれているお部屋が多いためか大浴場はお客さんに合わず。

 露天風呂はジャングルの緑に囲まれた風景です。左の湯舟には深さの高低があり寝湯のように浅い部分が設けられています。

 左のぬる湯から右の大きな湯船の方へ流れ出ていくようになっています。。ぬる湯側にある塩ビ管からは熱い湯が湯船に注ぎ込まれていました。恐らく源泉。もう1つの白い塩ビは恐らく循環湯かと。右手の湯舟には一番最奥に捨て湯口がありました。

大浴場 美人の湯

 「男の湯」とは様相が異なる湯屋はシンプル明快。

 彩りも何となく女性らしさを感じます。

 湯屋に入って左にはサウナがあります。訪れた時には流行り病下で使用は不可でした。

 男の湯にあった縁が木造の湯舟とは一変して、こちらの内湯のオーバーフローはかなり少なく見えます。

 溢れ出しはあるので源泉の注ぎはあります。湯船の内には循環されれたと思われる湯が勢いよく放出されていました。

 窓側の縁から溢れ出す湯は恐らく循環用。

 湯口はかなり熱く析出物もついているので源泉の投入口で間違いないかと。

 美人の湯にも露天風呂が併設されてます。

 露天風呂は湯舟が小さめで目隠しが高く、湯舟に沈んでしまうと風情はあまりなく。

 奥にある滝のようになっているのは「あつ湯」で恐らく源泉でしょう。

 湯舟の壁からはショワショワと気泡と共に湯が噴き出していました。同じような湯口がもう1つあり、これは循環加温の湯口かな。

 捨て湯口は1ヵ所で滝の湯量とおおよそ同じぐらいの料が流れ出ているように見えました。

貸切風呂 玉竜

 貸切風呂というには立派すぎる大きさで、かつては大浴場だったのではないかと思われます。

 往訪時は本館と離れのお部屋に宿泊するとこちらの玉竜を1回だけ利用できます。到着してすぐに予約を入れて一番風呂をいただきました。こちらは完全な源泉かけ流しで循環、加水、加温、消毒なしです。

 テトリス形をもつ内湯は浅い所と深い所があり寝湯として入ることもできます。

 湯口の温度は源泉50度なのでかなり熱く、全ての湯口の中で最も多くの白い析出物がびっしりと付いています。

 湯口を上方とすると反対側縁の下方へ湯が流れるという、上方から下方に溢れ出る見事な放流です。内湯の投入量は湯船に対してはそこまで多くはないように見えますが、大人1人分程度の溢れ出たぐらいでは数分でオーバーフローが再開します。

 視覚的にもうれしく湯舟の中には細かい白い湯の花が舞っていました。

 高い目隠しがほどこしてあり、小庭のある雰囲気もまた何とも言えない。何故このデザインになったのか。

 甕の露天風呂には多くはない源泉が竹筒より注がれています。やはり激熱です。結構なあつ湯となっているので、熱いの苦手な方はまず入れない湯温。しかし、訪れたのは冬季だったので自分には具合がいい。大人一人が足を延ばして入れるぐらいの大きさがあり、のんびりと入れます。こちらには、画像に移らないほどの細粒の茶色い湯の花が浮遊していました。

 

お料理

 朝夕共に部屋食となっていたので、時間になると仲居さんが用意しにきてくれます。10人ぐらいのグループだけが別館の広間を使っているようでしたが、基本はお部屋食なのかもしれません。お料理の内容は公式HPなどを見ていると定番料理と季節料理の盛り込み会席となっています。駿河湾の新鮮美味な食材を手仕上げで雑なく上品な味に昇華されています。

 献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。

夕食

 配膳は一気出しだったので、温かい物も一度に配膳されています。こうなると温がある物を先に食するのが美味しくいただけます。。配膳が終わると牛陶板と釜飯に火が入ります。

 

【食前酒】:自家製梅酒

 梅酒とありますが厳密には酒ではありません。梅ジュースと言うわけでもなく、口に含むとほんのりとした超微弱な自然な甘さと梅の風味は何でしょうか。表現するには「水出し梅果汁」の抽出タイプ。

 

【前菜】:蛍烏賊沖漬け 他旬彩三種盛り

 ①ホタルイカは新鮮なコリコリ食感で、沖漬けというにはワタや磯の臭みは全くなく、醤油がホタルイカの旨さを純粋に引き立てています。 ②他旬彩三種の説明があったのは1つだけ。白子豆腐には飛子、紅葉卸、甘酢ジュレを乗せてあります。豆腐を割ってそれぞれの薬味で楽しめます。白子の匂いは残して口当たりはさっぱりとした杏仁豆腐のようです。白子はタラでしょうか。 ③高野豆腐の博多(織り重ねた料理)なのですが、しっかりとした高野豆腐に挟まれているのは椎茸出汁の豆腐かと思われます。豆腐で豆腐を挟むという何ともなお品。浸し出汁は高野豆腐の戻し汁と椎茸かなと思うのですが、味が柔らかすぎて判別が難しいほどです。 ④最近では冬の前菜の定番になりつつある、干柿とクリームチーズのミルフィーユですが、チーズかと思うとなんと発酵バターの。お取り寄せかと思いますが、まろりとした上品なバターです。

 

【御椀】:蛤潮汁

 椀の蓋を開けると香る葉山椒とハマグリの湯煙り。山椒はハマグリの邪魔をしないように控えてあります。白み掛かった清汁はハマグリの匂いをこれでもかと放ち、塩は控えて丁寧に酒蒸したかのよう。付け添えには梅素麺、梅生麩、帯湯葉を泳がせて、ハマグリはグモグモとしっかり食感で噛めば噛むほどにハマグリが濃い。

 

【造里】:手長海老 他三種盛

 手長海老は玉樟園さんの顔のような一品です。他の盛りにはマグロ、富士山サーモン、ホタテとイクラです。

 どれも新鮮でマグロはキハダとかでしょうか。ゾリゾリとした食感にしっかりとしたマグロ味。富士山サーモンは初めて口にします。最近では各地でブランドマスを口にできる機会が多くなりました。私的には信州サーモンはまろやかな脂、飛騨サーモンはゆるやかな脂、富士山サーモンは透きとおり過ぎる脂。紅味はどのブランドマスよりも透明で良い意味で主張がなく癖がない。肉厚のホタテにはイクラを添えて一緒に口に入れると濃厚なホタテとイクラの相乗コクを堪能できます。加味はまったり濃い口のたまり醤油と静岡らしい甘みと辛味が交錯する本ワサビです。

 さてメインディッシュである手長海老をいただきます。もともと淡水・海水いずれの生息域にもいる海老だそうです。小エビが前菜に入っているはよく口にしますが、この大きさの物は初めてです。

 足から甲羅を外して頭部のエビ味噌と分離させます。味噌が多い!この味噌いわゆるエビらしい風味がない。いや、あるのだけど磯感はなく透明感しかないエビ味は淡水物か?甲殻臭さが全くないウニの亜種のようで困惑します。濃厚ではないのに纏わりつくトロリとした上品なエビ甘さ。美味すぎて髄まで吸いつくしてしまいました。

 姿身を崩さない切り込みの背ワタ取りも丁寧至極・・・。

 尾身は揚物の加味である山葵塩でいただきました。かぁ!くそ!こいつは本当にエビなのか!と言うほどに甘味濃い?いや甘味水臭い?いやいや、表現に困る。エビ味噌と同様にどこまでも甲殻風味と磯風味を丸く包んだような透き通るエビしかありません。←それエビですか。とツッコミたくなるのですが本当に困るおいしさです。

 これは一度味わうと甘エビや車エビや伊勢海老よりも癖になること間違いなし。

 

【蓋物】:柚子饅頭銀あんがけ

 椀を開けると最初に頬を叩くのは柚子だが強くはない。饅頭を巻く帯柚子は饅頭を刺激しないように、あらかじめ薫りを抑える処理をしてあったのかと思います。彩りも年始らしく金時人参の梅、青味には春ブロッコリー、添えとは失礼なほどのプリプリのエビ。

 饅頭の地は白身魚のようです。深みのある白身魚の正体はなんとシラウオです。ふわふわ触感は山芋と卵白で仕上げたのかな? 箸で持ち上げるとほろほろと崩れそうなほどに柔すぎるほどの饅頭地!!しかし、銀餡の正体が分からない!油が浮いているのは何故?饅頭は揚げ仕上げ?

 饅頭には柚子鶏そぼろを包んであったので、献立の柚子饅頭の正体が分かった気がします。鶏も柚子も前に出ないように味付されてあり、あくまで主役はシラウオ。1度、2度、味の変化を楽しめる椀です。銀餡の油は鶏の脂かな。

 

【強肴】:牛肉陶板焼き

 なんと献立に載っていない一品が配膳されていました。特に説明はなく最初に火が入り焼き上がりを待ちます。味付けには甘い味噌。

 ジュ~~と焼ける音が聞こえてきて、蓋を開けると赤身が残る程に食べ頃になっていました。和牛ならウデ、スネでも、もう少し霜降りがあるが、かなりの赤身で灰汁もかなり出ていました。しかし、海外産のような独特の臭さはありません。赤身が強いので、当然のように熱が入るとギュッと締まるやや硬い肉質。ブランド牛ではないが地元の国産牛のではないかと。伊豆牛とか? 色添えの野菜は赤・黄パプリカ、しし唐、白ネギ、牛肉の下にはシメジ。

 

【油物】:海老東寺揚げ 山葵塩

 最初から配膳なので少し冷めていましたが、温かさが残っていたので、最初に口に入れて美味しいうちにいただきました。盛りだけだと何があるか分かりません。味付はワサビ塩なのですが、塩なのにツーンと抜けるワサビの辛味が凄まじい。妙な旨味があり昆布も入っていそうです。お隣の戸田地区のお塩でしょうか。

 盛りを崩して見やすく。話は戻して揚げですが、左から、早こごみ、小フグの丸揚げ、アスパラ、湯葉でエビ真丈を包んだ東寺揚げです。フグはふっくらと頭から尻尾まで食せ、ヒガンフグとかでしょうか。揚げによりフグタンパク旨味が濃潤です。主のエビ東寺揚げは、湯葉衣はパリパリとしているが、中身はじゅわりと海老出汁が濃厚に滲み出してとてもジューシーです。

 

【酢の物】:あん肝ポン酢ジュレ

 アンコウの肝は濃厚まってりとしたものではなく、コクはあるがかなりサッパリと調理されています。そのまま食すると絡む旨味は、やはりアッサリとしています。これが、柑橘酸味が強いジュレと一緒に付けていただくと、唾液が分泌されて肝のまったり感が復活!喉が乾くほどに酸味が肝深甘味を包み至福に至ります。不思議だと思いながらも、ただただ深く濃厚な肝なのに後を引かないサッパリ感。あしらいにはラディッシュ、紅芯大根、フリルレタス、トサカノリ。

 珍味鉢にあるのは、甘酢ですが甘味も酸味も強くない緩々の漬けキノコ。ジュルころりとした食感はヒラタケでしょうか。

 

【食事】:桜海老の釜飯 香の物 渡り蟹味噌汁

 桜エビはよく見るスーパーの物ではなく尻尾を巻いてなお2㎝を超え、ひげは5㎝以上あるものです。釜には豆苗と京揚げが入れ込んであります。

 他の品々を食していると炊きあがってくる釜飯から、桜エビが豊満な蒸気に「早く食えよ!!」と横から殴りつけるほどに香ってきます。

 炊き上がって蓋を開けると不思議と甲殻香味のエビエビとしたものではなく、醤油も抑えてエビ風味はそのままに米に沁み込ませています。香の物も柴漬けとキュウリ糠浅漬けは明らかに自家製です。

 味噌汁は海鮮を活かす白味噌仕立てにしてあります。渡り蟹は半身を入れ込んであり「バリバリと噛んで味わって下さい」というご説明。つまり旨汁を啜って楽しむということでしょう。渡りガニは私的にはどの甲殻類よりも、高香とした味わいで本ズワイガニや甘海老よりも水臭さがなく濃密。このカニはさすがに小さいため身のそのものは食するのは難しく、柔くなった殻をバリバリとしがむと幸せな旨出汁が滲み出てきます。造りの手長海老を透明とするなら、この渡り蟹は斜めを行く甲殻類の猛々しさを持っています。

 

【デザート】;黒胡麻プリンと季節の果物

 プリンというには・・・ババロアのような硬さに豊潤な黒胡麻が香るが、口に入れるとしっかりとした地はプルっとした杏仁豆腐のような仕立てで、黒ゴマのパンチはホイップクリームで中和され驚くほどに落ち着きます。伊豆でパイナップルを作っていると聞いたことがありますが、さすがに国産ではないような。甘味は強く完熟にしてありました。

朝食

 朝早くから提供していただけるようでしたが、さして急ぎでもなくゆっくりと遅めの朝食です。

・鰺の一夜干し

・茶碗蒸し

・切り干し大根炒め

・しらす大根卸し

・かまぼこ、山葵漬け

・佃煮海苔

・焼き海苔

・サラダ(グリーンリーフ、紫タマネギ、赤黄パプリカ、水菜、ラディッシュ、キュウリ、ドライたまねぎ、ワサビドレッシング)

・白米

・味噌汁(ワカメ、揚げ)

・香の物(大根、壬生菜)

・マンゴーヨーグルト

 物凄くスタンダードな和朝食ですが、地物をシンプルながらも何から何まで一口ずつ盛り込んであります。アジは熱々ではありませんが、身振りは大きく温かみが残った焼きたてです。カマボコと山葵漬けは伊豆の名産で外せないお品。乗りの佃煮は塩辛さはなく青味が強く清い。これはもしかしたら自家製!? サラダも品目多くピリリしたワサビドレッシングで。このドレッシングはお取り寄せの和風ドレッシングに茎ワサビを足したかのようなお味です。白米はもっちりと焚き上げて、味噌汁は熱くいただけるように五徳で温めます。香の物の大根が美味しすぎました。柚子の甘酢漬けはお手製の味。

 茶碗蒸しは玉子が濃く地はしっかりと、エビ、椎茸、タケノコ、鶏、ギンナンとたっぷり具材。

 伊豆にはハウスでマンゴーを育てている農園さんがあります。そこのものかは分かりませんが、器の底にはゴロっとマンゴーの角切りが沈んでおり、マンゴーソースも一緒に混ぜてあるのでヨーグルトを自然な甘味でいただけるようになっています。

 

まとめ

 伊豆半島は関西からは遠方故に手付かずの未開の地が多かったのですが、調べてみると東京から近いこともあり良いお宿が多い。調べていくと、その中で見つけたのが古い建物を残した玉樟園さん。私的には好みのレトロは昭和感が満載です。ただ、館内はとても綺麗にしてあるので、年配には懐かしく若者には新鮮に映るかもしれません。

 温泉は浴場だけでなく源泉を部屋でも楽しめるので申し分なく。雰囲気ではなく泉質にこだわるのであれば湯は最高の状態で頂戴できます。料理は、献立にない牛陶板を出していただいたり、地物の食材をしっかりと使ってあり、とんでもなく見せてくる料理はないものの昔ながらの会席という意味ではお値段以上です。 1合しか頼んでないのに、間違って2合入れてしまった酒を「サービスです」と付けてくれました。

料金

 露天風呂付の部屋になるとお値段10000円ほど上がります。本館の内湯は風情はないながらも源泉かけ流しで湯を楽しめるので、ラグジュアリーな感じを求めないなら安価な本館がお勧めです。

 玉樟園さんは色々なセールに積極的に参加されている印象で、この度は楽天スーパーセールの10000円クーポン対象宿だったので往訪することとなりました。

宿泊日:2022/厳冬

旅行サイト:楽天トラベル

プラン:【朝・夕は部屋食!】《ヘルシー会席》ぷりぷりの手長海老お造り・桜海老釜飯/貸切温泉無料

部屋のタイプ:日本庭園の中の離れ【石心亭・海花亭】×1部屋本間10畳以上、応接間3畳以上

合計料金:37400円(2人)

楽天スーパーセールクーポン:10000円

支払い料金:27400円

加算ポイント:274p

土肥温泉 坂聖 玉樟園 宿泊予約

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