いい温泉宿、おいしい料理宿

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再び訪れたいお宿探訪と趣味のブログ

柳屋【和歌山県 南紀白浜温泉】~食通が癖になるクエは冬季が旬本番、真珠のように光る白身を会席料理で味わい尽くし、湯量が豊富すぎる源泉かけ流しの上質「あつ湯」が冷えた身体に沁み入る~

 12月になると南紀ではクエを提供するプランがちらほらと現れます。白浜温泉周辺ではクエ料理を通年出しているお宿やお店もありますが旬はやはり冬季。希少な魚だけあって、揚げ、焼き、刺しとスタンダードな会席を出しているお宿は多くはありません。他に気になるお宿もありましたが、源泉かけ流しの風呂にスタンダードな献立を確認して、柳屋さんに白羽の矢が立ちました。

※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。

旅情

 柳屋さんは今でこそ旅館というよりはホテルに近いような様相ですが、その歴史は古く白浜の地で創業400年という老舗です。白浜の中心地である白良浜からも歩いて行ける距離で立地が良く、建物向かって左手隣にコンビニもあるという利便性も申し分ありません。

 建物は景気のいい頃に建てたようでバブリーな雰囲気があります。エントランスの上はオーシャンビューのお食事処のようです。こういう建造は昨今ではまず見ない。

 玄関からお邪魔するとロビーとフロントがあり、チェックインもホテル形式です。

 フロント横には売店があります。昨今では昔の温泉街にあった、お土産専門店みたいな店も激減しており、館内に売店を持つホテルや旅館も多くなっています。

 少し離れたところに有名な「とれとれ市場」という、鮮魚からお土産全般の総合店がありますが車がないとやや不便でもあります。

 フロント正面にはラウンジがありコーヒーなどもいただけるようです。お酒も飲めるのかな。

 白浜と言えばパンダが有名な某アドベンチャーワールドがあります。とはいえ、なぜかパンダ愛好家さんの写真展ブースもありました。

 ロビーの奥には二階に上がる螺旋階段があります。古き良きを感じる階段は若者には新鮮に見えるかもしれませんね。

 階段を上がるとエントランス上にあったレストランがあります。

 着々と夕食の準備が進んでいました。

 レストランの反対側にはゲームコーナー。

 自動販売機も設置されてあり、お値段は安定の価格です。まぁ、お隣にコンビニがあるので高くするぐらいなら定価にした方が隣に行く手間が省けるので客としてもありがたい。

 4階にはキッズプレイスペースと屋外にはプールがあります。プールは子供用の大きさでした。

 6階には浴場への廊下があります。廊下奥の階段を上がった所にも自動販売機があります。

 廊下を最奥まで進むと大浴場が見えてきます。

 2つの大浴場の間に階段が付いており・・・

 ここにも自動販売機があります。そして、個室のカラオケBOXが2つに、何故かここに貸切風呂もあるというミスマッチな組み合わせ。利用はしていませんが、公式HPの画像を見ていると貸切風呂の雰囲気よさげです。

 

お部屋

 案内して頂いたのは408号室です。

 館内は完全にホテルスタイルですが、お部屋は上がり框のある旅館スタイルです。玄関は広々と長い1.5畳程の土間に、2畳程の上がり間。

 上がり間を振り返るとトイレ洗面一体のユニットバスがあります。後付け設置の下駄箱は年代を感じさせます。下駄箱裏側には冷蔵庫もあります。お部屋はバブリーな様相からリフォームを隔てた感じです。

 ユニットバスのトイレはシャワータイプで、洗面には化粧水とドライヤーも置いてあります。温泉ではありませんがバスも付いています。

 冷蔵庫のビールと天然水は有料です。

 本間は8畳で2人で過ごすには十分な広さです。フルリフォームされたのかと思いますが、所々にバブルの名残が見受けらるお部屋です。

 床の間には電気湯沸かしのポットも備えてあります。テレビは釣り棚に合わせてコンパクト。

 広縁には最新式ではありませんがマッサージチェアがあり、テラスにはびっくりの岩露天が見えています。

 お部屋のお風呂は次項の「お風呂」で詳細を。

 タオルはクローゼットにバスタオル2枚とフェイス1枚、露天風呂出入口の棚にバスタオル1枚、フェイス1枚とタオルもたっぷり用意です。

 タオルは足りているかというお尋ねが夕食時にあったので、足りなければ追加してくれそうな雰囲気ではありました。

 お茶請けは、かつて金賞受賞した「柚もなか」。流行り病がなければお茶出しもあるのだろうおもわれます。 夕食後に仲居さんが忘れてしまったような形跡があり、本来であれば茶セットの入れ換えがあるのかもしれません。

 

お風呂

 男女別の浴場に露天風呂が併設されており、時間帯により男女入れ替え制となっています。 共同源泉の配湯なのに源泉かけ流しという贅沢な湯量で泉質はナトリウム-塩化物泉です。ナトリウム泉独特のツルツルとした肌感は強烈でヌメリすら感じる程です。強塩味かなと口に含むと、意外とゆるやかな塩味に、すこ~しだけニガリのような味はするがとてもまろやかで口当たりはどんでもなく柔らかい。とにかく口の中は軟水のような飲み口で、浴感も湯にまったり包み込まれるような感覚を憶えます。ただ、湯上がりは油分が持って行かれてカサカサ肌にww 化粧水乳液をたっぷり塗りましょう。

内湯1

 楕円の湯舟を配して洗い場が10に満たない程です。宿の規模からすると洗い場は少ないように感じましたが全く混む気配はなく。

 湯舟は10人入っても余裕がありそうな大きさです。気候により源泉の温度も変わるようで、内湯は適温を常時維持していました。白い細粒の湯の花も沈殿している一方で、砂のような析出物の欠片も足の裏で感じるという、温泉の成分の深みを感じることができます。浴感も身体全体がまろやかな化粧水に包まれているように柔らかい。

 源泉の温度は78度ということもあり、浴槽への直接な掛け流しは難しいのだと思います。画像のように拡散させながら湯を冷まして注ぐ掛け流し様式をとっているようです。

 なので、源泉の注ぎ口は熱すぎるので立ち禁としてありました。だが、この広くスプレッドした掛け流しのおかげで湯舟は熱すぎることなく、内湯は適温調整されていました。

 湯口から流し込まれる湯は贅沢の極み源泉かけ流しです。

 湯が溢れ出している縁の色は真っ白に成分が付着しており、かなり大きな湯舟であるにも関わらず縁が変色している部分は1/3ほどで湯量の多さが目でみても明らかです。

露天風呂1

 内湯の奥から屋外へでると石畳を移動して露天風呂へ。

 訪れた時には雨天で屋根のある露天風呂がとてもありがたく。

 温泉成分により石造りの湯舟全体が白く変色してのか少し湯も白濁としているようにも見えます。入ると「あっつ!!あれ?ぬっる!!」と謎の「熱い温い」はうわばみが熱くなっており、底が温く2層の温度層ができていました。混ぜると冬季の露天では丁度良い「ややあつ湯」になりました。

 注ぎ口はとんでもない「あつ湯」が注がれており素手では触れない温度です。しかしとんでもない湯量で湯口の傍にいるとかき混ぜてもすぐに地獄の釜茹でのような温度になります。注ぎ口には透明色の玉髄のような析出物がゴテゴテに出来上がっていました。

 捨て湯口もかなりヤバく、白い塊がごってりとへばりついており、捨て湯口の塩ビ管?はいまにも詰まってしまいそうです。何日ぐらいでこの塊が出来上がるのだろうか。泉質にもよるのでしょうが、長野県の渋温泉では1週間ほっておくと管が詰まると聞いたことがあります。

 ザブザブ捨てられていく様はやはり勿体なさを感じるが自然の有難い恵みです。

 露天風呂に絶景はありませんが、小庭が付いており雰囲気は悪くはない。関西で白浜温泉と聞くと夏をイメージしますが、湯温の高い源泉だと冬に訪れて湯を楽しむのも悪くないかもしれません。

内湯2

 もう一方の大浴場は檜の湯舟です。こちらも大きく横並びで10人は入れそうです。

 洗い場も宿の大きさからすると少なく感じましたが一杯になることはなさそうでした。この浴場リニューアルしたのかとても新しく見えます。

 足を踏み入れると湯の花の沈殿によって足形ができました。湯も少し白濁としています。湯舟は白くはなるが、こびりつくような感じでもなく材質がら析出物が出来にくいのかな。

 湯口は「その1」ほど思った以上に熱くはない。丁度、朝一番にこの内湯に入っていると、従業員の方が湯温を計りにこられました。湯の管理をきちんとしているのにも好印象。湯量としては石造りの湯船の浴場の方が湯量が多いように見えました。

 あいにく訪れた時は雨でしたが、こちらの浴場からの景色はオーシャンビューと最高のロケーションです。

露天風呂2

 露天風呂へ行こうと表へ出ると、空が開けたところに玉砂利で踏み踏み足つぼを刺激する健康処がありあます。

 露天風呂はその1の反対側に位置します。何故かタヌキの置き物が見張っております。

 その1の露天風呂に比べると少し小振りのように見えます。同じように白濁として白い析出物も気持ちのいいほどに付着しています。

 湯口はやっぱりびっくりの湯量が注がれており、半透明の玉髄の温泉成分の塊がごってごてです。夜に冷え込んだこともあるのか、そこまで熱さを感じることはありませんでした。

 捨て湯口も反対側の「その1」の方にくらべると、堆積された析出物は少なく最近剥がされて一掃されたのかもしれません。

 小庭はあるが「その1」よりも屋根が占める割合が大きく空の開放感は少な目です。流行り病で客室数を減らしているのか浴場で一緒になったお客さんは2人程でした。

 大浴場のアメニティも抜かりはなく、ウォーターサーバー、化粧水類、髭剃り等々揃っていました。

408号室の露天風呂

 さて、風呂の項目はここからが本番です。館内には源泉かけ流しの露天風呂が付いているのは2部屋?しかないようで、普通なら御影石や檜の湯舟になると思うのですが、バルコニーに当たるところにはがっちりとした岩風呂がドーン!!とあります。

これまで泊まったお宿の中でも、こんなにごっつい露天風呂が部屋にあるのは異質すぎます。

 冬は風がかなり冷たく、ここで洗髪洗体はかなり厳しい寒さです。画像左側に寄ると下から見える場所がありきわどいスポット。

 知っていて予約したわけではないのですが、何と源泉の注入量を好みで調整できるレバーがあるというのです。画像上は源泉、画像下で白湯の温度調整ができます。

 チェックインした時の湯量がこれぐらいに調整されていました。源泉の温度は70度を超えるが、初冬の日中ではこの湯量でも湯舟の中は入れないぐらいの熱湯。一瞬で足が真っ赤になりました。

 湯口周囲には湯の飛沫が溜まっていくのでしょう。岐阜県濁河温泉のような析出物の剣山が出来上がっています。

 さて、この熱湯どのように入ろうかと思案していたところ、もちろん加水なんて野暮な入り方は想定していない。源泉100%を楽しむために源泉を調整できる最終兵器を使うしかない。

  

 最終兵器スイッチオン!! 画像を見て頂くとレバーDOWNするとチョロチョロ。レバーUPにすると人を殺めてしまえそうなほどの激熱の源泉が滝のように注げてしまいます。画像を撮っているさなかから太ももが焼かれ絶叫状態!!源泉レバーはまさに諸刃の波動砲源泉の温度が「ぬる湯」とかなら至高のかけ流しですが、いかんせん熱すぎる源泉は無尽蔵に注げないのでもどかしい。

 とりあえず、源泉を最小にして湯揉みして、外気にさらして自然に湯の温度を下がるのを待ちます。

 岩のつなぎ目からはこれでもかと惜しみなく溢れ出す湯は贅の極みです。

 湯舟の底にはじゃりじゃりとした析出物及び砂利のような塊はあれど、大浴場のような白い湯の花や白濁がないのは湯が新鮮で酸化する時間がないからだと思ってみる。

 翌朝には雨が上がり晴れ間も覗いて絶景のオーシャンビューでお風呂を満喫しました。どうやら夜間に随分気温が下がったようで、浴槽内の温度は下がり源泉の投入量が調節しやすくなっていました。ツルヌルのとろみのある新鮮湯を楽しむならお勧めのお部屋です。

 

お料理

 

 朝夕共にお部屋食でした。おしながきには食材の産地や生産者さんの名前が記載されていたりと地産地消+αと安心の国産食材です。

 柳屋さんでは海幸と熊野牛を中心とした豪華食材の祭典のようなお料理のプランが多い中、冬の季節だけ旬のクエづくし会席をいただくことができます。しかも、天然物です。これまで訪れたお宿の会席料理の中に造りや焼きなどで一品として入っていたことはありますが、クエの端から端まで味わったことはありません。ならばと冬季の白浜温泉でクエを食したいと探していると行きついたのは柳屋さん。クエという魚はどうすれば美味しく頂けるのかと、考えさせてくれる料理を配膳していただけました。

 献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。

夕食

 最初の配膳は先付、前菜、造り、鍋物です。冷たい・温かい物は後々に順次配膳されました。

【食前酒】:天然本九絵ひれ酒

 席に着いて運ばれてきたのは蓋物のスープかと思って改めて献立を見ると「クエのひれ酒」でした。あっつあっつの状態で蓋を開けると焦げ香ばしい焼ヒレと、日本酒の蒸気がミックスされた薫りは呑み助には堪らない止まらない。フグのヒレ酒とよく似ているがフグよりも風味が丸いのに濃厚です。アルコールが駄目な方は事前に連絡しておくと良いかと思います。

 

【先付】:天然本九絵皮と胃袋みぞれ和え

 色合いからすると酸味と塩気が強いように見えますが、まろやかポン酢で棘がなくクエ皮に絶妙に馴染んでいます。皮と胃袋?は湯引きにしてありますが、かなり硬さがありこれが逆にフグの鉄皮のように噛めば噛むほどにクエの脂が滲みだします。硬さがある一方で皮下脂肪のようなゼラチンタンパクは上品で嫌味がないうま味。

 

【前菜】:ゆで卵 エビ 甘露梅 九絵煎餅 九絵肝

 ゆで卵は黄身を半熟に、あおさ海苔を彩りよく降り。 エビは旨煮にして味を引き出してあるお口休めの一品。 甘露梅は甘露というには甘さは程よく梅風味が活かされています。どうやら和歌山県にあるプラム食品さんのお品だそうです。 クエの煎餅は天婦羅で仕上げたエンガワかな。 佃煮にはクエの肝とクエ皮を合わせてあります。 派手さのない前菜ですが、クエを使った2品はとてもタンパクで肝にしてもクセが無さ過ぎて、説明書きがなければ苦手な方でも分からないまま口してまうと思います。

 

【造里】:天苑本九絵重ね造り

 初食に近いので部位は分かりませんが、キラキラと活かり、かなり筋肉質でゴリゴリとしたフグのような食感の厚切りです。まったりはしているが水晶のような透明な白身味。塩味と甘味を抑えた濃いたまりに少し浸し口に入れると、風味はタイだが唾液に混ざるとフグ?いやアマダイ?脂味はどれでもない旨甘味は不思議味です。もともと大きくなる魚という事もあり筋肉質でいつまでも口中で泳ぎながら旨汁を出します。 つまには大根けん、茎ワカメ、赤トサカノリ、海藻シート、白キクラゲ?、わさび、蓼です。

 

【煮物】:天然本九絵荒炊き

 蓋つきでほんのり温かく配膳されたのは荒炊きです。かなり大きな骨も入っていますが、身離れはよくスルスルとすぐに食せてしまいます。

 身の部分はかなりしっかりとした歯応えがあるのに大して、皮になるとトロトロぷるぷるのコラーゲン満載です。アラはハラミに近いのか脂の乗りがとても良く。白身はタイに近いのですが、やはり皮下周辺の脂の乗った部位はゲンゲのような深海魚のような旨味がしっかりとあります。香り付けにゴボウを炊いて、強めの甘味に砂糖と酒でこってりと炊き上げてあります。ショウガの風味もほんのりあったかなかった・・・。

 

【揚げ物】:天然本九絵天婦羅

 大きくはありませんが、一口サイズのクエを3切れとはじかみ、大葉を盛り込んだ天婦羅です。

 揚げたての熱々で配膳され、抹茶塩でいただきます。やはり部位によって食感や味わいが異なるようで、1切れはまるでフグ!!2切れはほろほろと砕けてしまうキスにずっしりと脂を乗せたような美味さがありました。マグロに赤身とトロがあるように、クエも同じ個体でも部位により味の変化があるようです。筋肉も脂もどちらもしっかりと熱を入れた方が味の違いが分かりやすく、今回のクエ献立では揚げが一番おいしく感じました。焼が美味いと言う人も多いようで、熱をしっかり入れる方が旨味が際立つのかもしれません。

 

【鍋物】:天然本九絵ちり鍋

 鍋には大アラが2切れと切り身が3切れとエンガワ少し。見た目はタイやハマチのような白さ。野菜には火の通りを良くするためあらかじめ茹でた白菜、白葱、三つ葉、人参、椎茸、エノキです。

 最初に出汁とりにアラと野菜を入れ込んで炊き上げりを待ちます。クツクツ・・・と煮立つ音が聞こえ蓋を開けると、クエと昆布の風味が飛び出しますが、いわゆる海鮮物のナベにしてはパンチがない。鍋用のアラはコラーゲン部位もありますが、骨周りのしっかりとした食感はフグで、フグに脂を持たせたような味ですが、タイのように火が入ると飛び出る脂ではなく、白身タンパクの極みのような脂です。

 水面には結構な脂が浮遊していますが、ぎっとりした感じもなく魚特有の臭みもまったくなく脂を感じることがない。かといって、やはりタイにあるような脂加減でもなく。

 切り身はしゃぶしゃぶでいただいたのですが、皮に近い部分が硬すぎてびっくり!!ゴリゴリと皮のゼラチン質と白身を味わっていると、雑い脂を削いで清い脂だけが残ったタイにフグの鉄皮で覆ったような?やっぱりタイとフグやんけと言われそうですが、クエと言う味なので表現の方法がなくmy tongueが知らない透き通るが主張もする白身味。完熟スダチのようなポン酢は、食材を浸しすぎても酸味と醤油味が全く邪魔をしない絶品の加減です。このポン酢は自家製かと思うお味。鍋出汁で割って飲み干してしまいました。

 

【酢の物】:天然本九絵うす造り

 造りがあるのに何故か酢の物での薄造り。こちらはかなり冷やされていて後から配膳されます。

 1枚拾い上げて何も浸けずに食べると何ともタンパク過ぎて頼りない。タイの脂を抜いたような風味で正直無味に近い。鍋物の味付と同じ絶品ポン酢に浸すと「なんじゃこりゃ!?」甘味がグググっと増します。さらに薬味の紅葉卸と刻みネギを包みポン酢で食すると、旨味がグイグイ引き出されて「てっさがやってきた~~~~!!」ではなく、てっさよりも食感は柔く歯切れよく、てっさにまろやかな甘味を足したような感じです。フグにはない甘味はやはり脂によるものでしょうか。造りはゴリゴリ触感に対して、薄造りは部位が違うのか柔くマイルドな歯切れを楽しむことができます。

 

【御飯】:天然本九絵柳屋飯

 献立にクエの柳屋飯とあり釜飯かな?と思っていたら変化球のクエの漬け丼でした。油物が一番美味かったと書きましたが、この漬け丼も甲乙が付け難い一品です。甘い出汁醤油のような物に漬けてあり、見た目はやや醤油辛そうに見えますが白米と食するには丁度の加減。さらに、小皿にある甘口出汁醤油に山葵を溶いて、さらに回し掛けて食べて下さいとのご説明。漬け具合が何ともクエのうま味を引っ張り出していて、白米炭水化物との融合が素晴らしい。やはり、ワサビや焼き海苔のアクセントがクエ味を引っこ抜いている感じがします。個人の感想は色々あると思いますが、クエは薬味への反応にかなり敏感のようです。たるたるの甘さがある出汁醤油はカツオ出汁?正体は分からず。香物も白浜町内にあるお漬物屋さん?から取り寄せた拘りです。

 

【吸物】:天然本九絵入り土瓶蒸し

 止め椀の変わりにはクエの土瓶蒸しです。火を入れるとあっという間に加熱されていきます。火を入れる前は薄い塩味のカツオ出汁で水面には脂が浮遊していません。

 温まった後、おちょこに注ぎ入れるとギラギラと脂の浮きがありますが、鍋物と同じく脂の嫌味は全くなく薄味の塩加減が絶妙でクエの風味がもろに楽しめます。クエは一欠けしか入っていないのに、鍋よりも脂の浮きが多く見えます。この脂の出ようはクエのトロ部分だったりするのでしょうか。何とも不思議な食材です。具材にはエビ、ぎんなん水煮、しいたけ、三つ葉です。

 

【水菓子】:季節の果物とアイスクリーム

【茶菓子】:手作り草餅

 献立の説明にはクレープ風でどうぞとあるのですが、メロンは皮があり柿も包むにはでかい。結局、フルーツはそれぞれにいただきました。

 草餅はお隣田辺市の和菓子屋?さんからのお取り寄せです。

 ミルクアイスは潰してクレープ生地に塗って、和歌山名品の温州ミカンと包みました。フルーツはどれも完熟手前のような熟し具合で、やはり和歌山の温州みかんは酸味が少ない甘い香りがたまりません。

 確実に手作り草餅は日持ちがしない本物の餅生地で粘りが強くヨモギがとんでもなく香り高い。餡は上品な甘さで甘味が引き立つように軽く塩を持たせてあります。きな粉には砂糖は入れず大豆本来の香りだけです。シンプルに素朴ながらも、むしろこういう手作りの餅菓子は昨今ではあまり口にできません。餡子タップリ餅もタップリの草餅は最後まで拘りのお品でした。

朝食

 朝食も部屋食でした。一口ずつのお品を沢山用意してくれており、魚だけでなく卵と肉類もあるうれしい献立です。

・蒲鉾

・烏賊素麺 鮪 あしらい一式

 海辺のお宿定番のかまぼこに、イカソーメンはスルメかアオリか。新鮮食感にマグロはビンナガかと思われます。朝から刺身2種盛りというのも贅です。南紀ではマグロは外せません。

・ほうれん草お浸し

・佃煮海苔

・じゃこ卸し

 ほうれん草は下味を持たせて醤油要らずにシャキシャキです。じゃこは柳屋さんで調理してあるのか炙ったようなこしらえがありました。

・かぶらと人参の蒸し

 「季節の物です」と配膳されたのは熱々のかぶら蒸しです。上品に出汁と塩だけかという、こういう一品がでるのはお宿の丁寧さを感じます。確かに冬季の食材ですが、カブラを選定したのか。ほっくりとしてどこを噛んでも同じ丁寧な焚き上がりでした。

・太刀魚みりん干し

 焼いて欲しいというお客さんには不向きですが、焜炉網の上で自身で好みの加減で炙ります。直前焼きの方が焼きたてホカホカで食せるので、焼いて配膳されるよりもこのスタイルがやはり好みです。

 火を入れ網焼きで炙っていると、小振りの干物なので熱が付き焦げ始めます。みりん干しのようにしてあり、甘味が強く米よりも酒が欲しくなる熟成です。実においしかった。

・サラダ(サニーレタス、赤トサカノリ、トウモロコシ、ミニトマト、海藻シート、ワカメ、白キクラゲ、和風玉葱ドレッシング)

・ベーコン ソーセージ ブロッコリー 茄子 バター

・卵

 肉料理も自身で焼くスタイルでバターを溶かしてそれぞれを鉄板で焼いていきます。

 卵は生、目玉焼き、スクランブルエッグ、ベーコンを閉じても良し。ご自由にどうぞというご説明でした。極まった素材といった感じではなかったのですが、朝に肉があるのは御飯の共のバリエーションが増えるのでありがたい。

・味噌汁

・白米

・香の物(燻りがっこ 蜂蜜梅)

 味噌汁は塩分がやさしい赤味噌仕立てで、白米はピンピンに立つコシヒカリのような粘りがあり、おかずが多いので「おかわり」が止まりません。香の物に大根の燻りがっこがあり、夕食と同じ所からのお取り寄せでしょうか。さらに、和歌山と言えば外せない蜂蜜漬けの南高梅。

・みかんジュース

・ヨーグルト 苺ソース 

・わらび餅

 みかんジュースは甘味が強い物ではありませんが、さすがに直搾りではないとは思いますが・・・自信はありません。濃厚な和歌山地物でしょうか。ヨーグルトにはソース以外にバナナの輪切りが盛り込まれ、わらび餅は夕食の草餅よろしく、上品な手作りで弾力があり高香な「きな粉と抹茶」が振ってありました。

 

まとめ

 鼻たれ時代に父親に連れていかれた割烹料理屋の大将のご厚意で、初めて口にしたクエはハマチとマグロを白身にした最上のトロ脂という記憶がずっとありました。当時は本マグロ以外にも哺乳類のような脂が乗る魚がいるのかと驚愕したものです。もしかしたら最上のトロクエだったのかもしれません。古き良き時代だったので希少な部位の出回りもあったのかもしれません。自分が大人になって口にしてきたクエはタンパクな上質白身で同じ魚とは思えないほどです。今回のメインであるクエづくしはどうか? 柳屋さんで改めて色々な部位・食べ方でいただきましたが、やはりタンパクな中にも上質の脂と筋肉質の白身があり、薬味や味付によって新しい旨味が生み出されるフグに近いがそうでない至高感があります。ただ、鼻たれ時代に父親に食べさせてもらった脂の乗ったクエではない。調べるとトロクエ自体がさらに希少性が高々なのだとか。

 それを踏まえて改めて、冬になるとカニが恒例のように食べたくなるように、来冬も食べたいかいというとよく分かりません。クエをどのように楽しむか、自分にはまだ理解できていないというのが感想です。ただ、焼きクエの献立がなかったので、もっと色々な食べ方で味わいたいというのが本音です。クエ一匹5㎏が市場で50000円~なので一匹買って自分で捌いて調理は経済的には難しい・・・。しかもトロクエが乗っている個体に当たるのも難しい。なら、バリエーション豊かに食べさせてくれる柳屋さんで堪能しようかとなります。

 宿全体のサービスとしては普通の旅館で、温泉の泉質は大浴場も源泉かけ流しの良泉なので、プライベート感を重視しないのであれば、一般客室でコストカットするのもありかと思います。

 しかしながら、温泉好きな方からすると、標準客室から1万円足すと源泉レバー付きのお部屋に泊まれるので、他のお宿からするとかなり割安な値段設定ではないかと思います。

宿泊料金

 冷水の用意や新しい茶碗の用意はあるが茶セットの入れ替えはなく、アメニティもよくあるもので、備品やサービスからすると宿泊料はお高めの印象です。ただ、一番安いプランでも40000円前後からと思うと普通かなとも思えます。流行り病がなければ浴場にバスタオルなどがあったりするようなので、お願いすれば色々とサービスはしていただけそうではありました。

 他の料理を食べていないので何ともですが、公式HPの献立などを見ていると高級食材を使うことで値段が高くなっていくようです。今回の料金内訳としては料理は希少な天然クエが部屋食で、温泉は源泉かけ流しの湯舟が部屋にあり、そう思うと妥当な値段なのかなと。クエはフグやブランドカニと同じように時価の高級食材なら、特級のカニを民宿で食べても10万円近くするご時世なので相応にも思えます。

 ちなみにですが、参考程度に自分の調査では白浜温泉街では、民宿で焼き・鍋・揚げなどの会席風で用意してもらうと50000円~、大鍋だけでも30000円~です。旅館やホテルクラスになると会席で70000円~でした。

 「じゃらん」からの予約で7000円クーポンと溜まっている期間限定ポイント11000円使用での宿泊です。

宿泊日:2022/冬

旅行サイト:じゃらん

プラン:幻の魚【天然本九絵】をお造り・煮物・焼き物などでたっぷり堪能♪クエづくし会席

部屋タイプ:【温泉】露天風呂付・和室8畳【朝・夕お部屋食】

合計料金:84700円(2人)

じゃらん定期クーポン:7000円

期間限定ポイント:11000p

支払い料金:66600円

加算ポイント:2541p

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