国道を走っていると突如看板が現れ、農道を走っていくと農村の中に佇む秘湯の一軒宿に出合います。金沢市と加賀市を結ぶ小松バイパスから10分足らずとアクセスが良い。しかし、南には加賀温泉郷があり北には金沢があるので、中間にある赤穂谷温泉さんに足を運ぶ観光客は少ないのではないかと思います。日常では口にできない食材と源泉かけ流しの湯、諸々をゆっくりと味わえるのは小さな旅館ならではです。
※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。
旅情
案内に従って車を進めると白い土塀に黒塗り瓦の建物が見えてきました。
玄関前が駐車場になっているので白線に沿って自由な感じで駐車しました。訪れた時の車は、どうやら宿泊客ではなく日帰り入浴のお客さんだったようです。
到着が少し早かったので、お宿の方が出てくる様子はなく荷物を持ってお邪魔しました。玄関は屋根が張り出した豪華な車寄せです。
入り口手前には温泉と料理の案内がありました。予約サイトでは2,3種程度の会席だけでしたがジビエはジビエでも獣だけではなく、川魚・山幸など色々なジビエがいただけるようです。
玄関を上がって左手を見るとフロントがあります。ロビーには囲炉裏もありました。ロビー前のショーケースの向こうは客室と個室のお食事処があります。この画像を撮っている後方は大広間と浴場となっています。お茶出しなどはなく早々にお部屋へ案内でした。流行り病への対策でしょう。
玄関には金魚?鯉の幼魚?モロコ?賑やかな水槽が置いてあります。
有名人の方が訪れるのか沢山の色紙が飾ってありました。九谷焼の絵付け体験もできるようです。
赤穂谷温泉さん縁の物なのか、ショーケースがあり甲冑などが飾ってあります。表札には伊勢家とありますが・・・自分の知識には及ばず。
客室と個室食処から参ります。ショーケースのある所からすぐに分岐があり、右が個室食処、左が宿泊棟です。
右折すると長い廊下には個室の食事処が並び奥には階段が見えます。防火扉までは鉄筋コンクリートのようですが、ここから先は木造建築のようで木の軋みを感じます。
階段がありましたが完全に封鎖してありました。旅館の規模からするとかつては2階にも部屋があったのかも。
階段奥を左に曲がるとさらに個室が並んでいました。使われていないのではなく、お食事前だったので消灯されているだけでした。
個室廊下から中庭を眺めた景色です。手前には鳥よけのネットが張られた池に、画像右端には川が流れています。赤矢印がやって来たロビーです。訪れたときはあいにくの雨な上に、初春だったので芽吹き前で殺風景です。季節が変われば良い景色になるのでしょう。
戻って分岐路を宿泊棟に進むと、奥に屏風とストーブが見えてきました。ここでも二手に分かれ青矢印に3部屋、赤矢印に3部屋と、いずれもドン突きなので繋がっておらず、離れのような構造になっています。
青矢印の棟を向かいましょう。外観が太鼓橋の廊下を進みます。
渡り廊下右手から中庭を臨むと、先程反対側から見ていた個室のお食事処の建物があります。階段は封鎖されていましたが2階があります。窓の付き方から察するに大部屋・大広間といった感じかと。
廊下を挟んで中庭の反対側を見ると、外には出れなさそうでしたが、飛び石があり失礼ながらも中庭と比べると手入れがかなり行き届いていました。こちらは客室から見える庭というのもあるのかもしれません。
庭の見える廊下を渡りきると更に長い廊下が続きます。これだけ敷地があれば大型旅館化していても不思議ではないですが、離れのように庭を愛でながらゆったりと過ごすための工夫なのかなと思います。本当に時間の流れがゆったりで、お腹が減ってもまだ夕食の時間じゃないの!?というほどです。
客室前のワンポイントの飾り棚。旅館としてはとても古い。しかし、端々は綺麗にされてあり、細かな飾り付けなどは季節の物など目が引くものが多くあります。
この棟の装飾もまたまた目を引くものでバブリーだが新しく見えます。赤穂谷温泉さんの歴史は分かりませんが、ここのショーケースにも縁の物と思われる物が飾ってありました。
反対側から見ると平成の良き時代の匂いが漂っています。昭和53年に温泉湧出とあり40年余り半世紀近くになりますが、展示してある物はもっと古そうです。湧出と同時に建物をやりかえたのなら平成初期あたりだろうか。
屏風とストーブがあった所まで戻って反対側へ。ジグザク廊下の合間にお部屋があったりします。
角にある飾り棚にはやはり丁寧な飾り付けが成されてあります。棚には埃はなく、びっくりするほどに清掃が行き届いています。
廊下の末端は枯山水の内庭と奥にはお部屋がありました。最奥のお部屋は池に張り出した赤穂谷温泉さんで最も良いお部屋です。窓の向こうは外道路の目隠し外壁のようです。
客室棟は満喫したので、お風呂へ向かいます。ロビーの暖炉には火がくべられていました。薪の香りが漂います。お隣にはかわいらしい小さな小熊の剥製。訪れた当時は石川県では人間の居住地にも熊が出ているというニュースを耳にしました。熊さんも美味しい物があれば山から里に来たくなりますなぁ・・・。
小熊の剥製傍らからは浴場と大広間の廊下があります。T時路左の大広間はご時世的にも使われていないようです。団体客の利用はまだ先のようです。右手は男女別の浴場がありあます。そして、ここには自動販売機があります。
自動販売機はアルコール飲料は割高で、ソフトドリンクは通常料金といったところです。
T字を曲がると男女別の浴場がそれぞれあります。
お部屋
案内して頂いたんのはジグザク廊下の途中にある「釣舟」というお部屋です。
本間8畳+前室2畳+踏み込み+広縁2畳程+洗面トイレ。間取りは京間よりも江戸間に近いこじんまりとした空間です。
ジグザク廊下の途中に設けられた入り口は、靴脱ぎ石ならぬ靴脱ぎ板があります。壁の角に竹の飾り覆いなど粋がある客室です。
玄関を上がると1畳程の踏み込みがあり、冷蔵庫とグラスやお茶セットが水屋棚に置いてあります。
踏み込み側から本間スペースを見ると京間2畳の小さな次間があり奥には洗面所。左に本間があり、本間からの木漏れ日が左の飾り窓に移ります。
襖の取っ手は桐紋があしらわれてありました。紋がある取っ手は珍しく、いつ頃の物でしょうか・・・花はなく戦国武将の豊臣家家紋とは違い花がない。
お宿の古さはあるがお部屋の水回りはピカピカの最新式で不自由はありません。
感染症が流行っていたこともあり、最近ではよく見る風景である、あらかじめお布団敷き。これはこれで、お風呂上りにゴロゴロできるので、これがスタンダードになるお宿も多くなるのかもしれません。
床の間のあつらえも少し変わっています。書院下に地袋があり、書院の棚板?はL字で見たことがありません。ひょりょりと伸びる飾り柱と風変りで実に面白い。
別角度からの風景です。全てのお部屋ではないですが、角部屋の様な構造になっているので2面が庭に面しているお部屋が多いようです。明かりの入りがとてもよくお部屋全体が広く感じます。
広縁は2畳ぐらいの大きさがあり、テーブルセットにも余裕があります。反対側にある客室が見えてしまうので簾が掛けてあります。向かいのお部屋に泊まっていたお客さんは、敢えて布団を窓際に持ってきて庭を眺めながらゴロゴロと過ごしていました。本当に時間が停まったかのような、のんびり異空間なので思考を停止してボッサりと過ごせます。
もう一方はテラスの様になっていて表へ出る事ができます。
廊下の角々に部屋があるので、お隣のお部屋が丸見えになってしまいます。こちらから見えるということは、こちら側も丸見えです。いつも通りお安く泊まっているので、庭の景色は全容が見えないのでランクは他の部屋に比べる低い? ただ、庭の水は清流で濁りはなく山清水が常に入れ替わっているのかと思います。
お部屋の備品ですが、過不足なく消臭スプレーから化粧水の小瓶まで付いて高級旅館の備えです。
周辺は山間部で何もありません。車だと3分、徒歩だと25分でコンビニがあります。車があれば不自由はない距離ですが、徒歩だと往復1時間近い距離なので必要な物はあらかじめ用意があるといいと思います。
お風呂
露天風呂が併設された男女別の浴場が1カ所ずつあります。浴場の入れ替えはありませんでした。泉質はアルカリ性単純温泉となっており、スベスベとした肌触りが特徴的な湯感です。
浴場に合ったかなり古い分析表では微白濁に戯?味に微腐卵臭とあります。ほとんど無味無臭ともあり、実際の湯は硫化水素の匂いもなければ濁りもない無色透明の温泉です。40年以上前とは泉質が少し異なるのかもしれません。内湯は源泉を入れながらの加温循環放流で、露天風呂は源泉かけ流しとなっています。
源泉を大事に使っておられるのか、源泉かけ流しの露天風呂は翌朝は楽しむ事ができないので、宿泊当日にしっかりと入浴をしておきましょう。
男湯
脱衣所からは内湯と露天風呂へ直接アクセスできるようになっています。どなたかスリッパ脱ぎ捨てていかれたようですね・・・さみしく待っていました。
まず露天風呂へ向かいます。石の道を進むという野趣が溢れる雰囲気です。
湯舟まで辿り着くと、3人では気まずい大きさの湯舟に、源泉が惜しみなく満たされていました。湯舟への源泉直接注入だと思うのですが波も立たないので注ぎ口は分かりません。
注ぎ口が見当たらないので色々探っていると何と足元湧出でした。黒丸が注ぎ口で青矢印に湧き出した気泡と水面の波紋が見て取れました。空気に触れない足元湧出にしてあるので質のいい新鮮湯です。
露天風呂は源泉100%掛け流し。オーバーフローが凄まじく、湯は注がれ滔々と溢れ出ていきます。実に勿体なく感じてしまう・・・ツルスベ感の浴感に源泉38度しかないので加温はされていると思いますが、季節的には「ぬる湯」でゆったりと長湯を楽しめるのは極まっています。この湯は翌朝には湯舟が空になるので、源泉を楽しみたい方は往訪日にしっかりと堪能することをお勧めします。加温無しで湯を楽しむのであれば、夏季に訪れるのがいいかと思います。夏には源泉温度のまま掛け流しにしていると公式HPにありました。
湯舟から建物を振り返ると右手が入ってきた脱衣所、左手には内湯があります。とても綺麗にされた箱庭です。
左扉の露天風呂から内湯に移動してきました。風呂の風情はとても落ち着いていて、客室数も多くなく他のお客さんとも接触もほとんどなりませんでした。
内湯は5,6人並んでも窮屈さはなさそうです。最初に入浴した際は溢れ出しなどはなく。最初はわずかに消毒臭を感じるも、すぐに気にならなくなり、翌朝には全く感じられませんでした。
洗い場も客室数からすると余裕のあるシャワー数。張り替えたばかりなのか壁のヒノキ?が香っています。
湯舟の角にある湯口は循環湯のようで茶褐色の温泉成分が付着していました。源泉が38度しかないので冬場は加温されています。口に含むと微消毒臭を感じますが、入浴している分には全く気になりません。
こちらは源泉と思われる湯舟の端にある湯口です。やはり無味無臭で、露天風呂に比べるとぬるく湯量は多くはない。
翌朝は源泉かけ流しの露天風呂が入れなくなるためか、内湯への源泉投入量が多くなっているように見えました。なので、朝に行くとはっきりとしたオーバーフローが確認でき消毒臭は無くなっていました。
女湯
女性側の内湯は三角形ですが、男湯の湯舟の面積はそこまで変わらなさそうです。窓が小さいので男湯に比べると閉塞感があります。
湯使いは男湯と同じ注ぎ口があり循環併用となっています。
画像だけ見ると男湯よりも多く見える溢れ出し。
シャワー数も客室数からすると十分な数が設置されていました。訪れた時は他のお客さんに合うことはなく貸切だったようです。
男湯に比べると一回り小さい湯舟の露天風呂です。
覗き防止のためなのか壁はかなり高く景色は無く小庭だけの露天風呂です。
こちらの湯舟は足元湧出ではなく湯舟の底へ塩ビ管で注入するタイプのようです。
溢れ出しの湯量も申し分ないようでしたが、画像を比較すると露天風呂に関しては男湯のほうが湯量が多いようにも見えます。
さすがに露天風呂が入れないわけではないでしょう?と、朝一番に浴場へ行くと石造りの湯舟はからっぽにw 源泉かけ流しを堪能したいのであれば、何度も言うようですが、宿泊当日にがっつり浸かっておきましょう。
脱衣所のアメニティは無駄な物はなく、乳液と化粧水に綿棒、ドライヤーだけの備え付けでした。
お料理
朝夕ともに同じ個室でいただきました。赤穂谷温泉さんに訪れる際はジビエのフルコースを是非に食べようと思っていました。使われる食材はイノシシ、シカ、カモ、クマと普段あまり口にしない肉達が揃っています。内容はかなりヘビーな獣肉会席となっています。全体としては癖のある奴らなので、濃い味のお料理が配されるので、私的には一番合うお酒はビールでしょう。
お品書がなかったので、給仕係の方から聞いた内容と、実際に食べた感触から献立を作っています。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
最初の配膳は小鉢と先付のような3品。お品書きはなかったので、献立はじゃらんの予約サイトに掲載されていたものから。お料理の説明も、配膳時には流行り病対策のためか、簡単な説明だけだったので、舌で感じた味覚と勘でしたためてあるので本当にご参考程度に。
【付出し】:①ワサビ菜お浸し、②猪の肝佃煮、③猪すき焼
①緑の爽やかな一品はワサビ菜のお浸しです。甘醤油味に仕上げてシャキシャキ感をたっぷりと残してあり、ワサビの辛味もかなり強く感じられカツオ節で風味付け。初品からお酒が進む濃い味です。
②器は牡丹?水仙?のイメージかな。イノシシの肝をこってりと炊き上げてあります。ショウガなどの臭い消しの薬味は使用していないようです。こってりと表現しましたが、味は濃いが甘露のようにしてあるわけでもなく。鳥や牛のしっとりとした肉質ではなく、パサパサでタンパク質の塊のような味わいで、表現するなら「肝まで筋肉かよ!」というグモグモした歯応え。
③お酒をたくさん使ったとおもわしき、甘辛の割り下で炊いた一品はイノシシのすき焼煮です。糸唐辛子とのRED色が食をそそります。
イノシシの養殖なんて聞いたことがないので、野生の肉質はたくましく赤身部位と思われる筋繊維がすごい。薬味は入れていないようで、血抜きと下ごしらえがいいのでしょう。噛めば噛むほど野生種溢れる野豚の旨味を感じます。この小鉢だけで生中一杯いけそうです。
【向付】:鯉or岩魚or赤鱒
その時の良い物を3種から出してくれる楽しみのお造りです。宿泊した当日は脂がギラギラ活かったニジマスでした。3枚おろしにして2人で一匹分の盛り込みです。しっかりとした身振りですが、腹身はつるっと脂が乗った中トロ、尾身はかなりゴロゴリとした食べ応えがあり筋肉質です。噛めば噛むほどに甘味と紅味が増す生け簀からの揚げたてかと。加味のしょう油は濃口と薄口の中間のような味わいの出汁醤油のようです。つまは大根けん、大葉、ワサビ、ワカメ。
【焼物】:岩魚塩焼き
川魚は無駄な脂を削ぎ、骨までほろほろにじっくり焼くという、飛騨や長野で口にするような物ではなく、高温でカッ!と焼き上げてジューシーに味わうかの如く、箸で持ち上げると脂が滲み出てきてます。頭から口で頬張るとさらに脂が溢れ出します。ワタを抜いて熱々の焼きたてで柔いがほっくりとした身振りで、養殖だと思うのですがヒレや頭が結構硬く口に残ります。熟された炙りイワナもいいですが、私的には肉汁が滴るイワナも大好きで美味い。
【台物】:鹿肉の朴葉焼き
最初から用意してあった台物に、シカ肉、ネギ、ゴボウ、サトイモ、ナスを彩りよく盛り込んだ朴葉焼きがセットされました。味噌の上に具材が載せてあり、シカ肉はあらかじめ「どて煮」のように煮込んであり、白いサトイモは蒸し、ナスは素揚げにしてありました。つまり、そのままでも美味しくいただける下ごしらえ。
鹿肉は血の気が多い赤身で極タンパクなお味です。鹿は何度か口にしたことがありますが、その時々に口にするたび味が異なり同じ味はなく。血抜き等の処理や部位によりかなりムラがあるのだと思います。サトイモやナスは田楽のように味噌がとても合います。そして、味噌にはクルミが練り込まれたクルミ味噌仕立てとなっているようで、塩と甘味がかなり強くてとても香ばしく、お酒の珍味にも、白米にも。肉料理が続くので若い方は、白米を早めに注文することをお勧めします。
【鍋物】:熊鍋
熊肉は「脂ばっかりやんけ!?」と言いたくなるほどに白い脂がギラギラしています。正直なところ肉を楽しむというよりも、お出汁に溶けだした美味出汁を楽しむ一品なので脂身のほうが良いのかと。お出汁のベースは恐らくカツオ、しょう油、みりん。野菜はエノキ、ハクサイ、白ネギ、豆苗です。
沸騰してきたところへ、さらに煮込みを強くしていきます。次第に肉の脂がお出汁に溶け出してきます。もともとみりんで甘めに仕立てたお出汁に、クマ脂の肉甘さが滲みだしさらに濃密さを加速させます。そして、初めて口にするクマ肉を口に入れて味わうと、牛脂のような脂の甘味を感じるが、牛ではなく独特で良い意味での野生種の臭味があり、同じ物を食べているということもあるのかイノシシに近い?牛、豚、イノシシを足して3で割ったような・・・そんな味ですw まぁ初めて食べるので熊味としか言いようがないw
血抜きや下ごしらえがいいのか灰汁は全くなく、透明な清い熊脂だけがお出汁に浮遊していました。お出汁は確実に美味だが、熊が美味いですかと問われると・・・珍味というには勿体ない。生態系が許すのであれば新たな味覚として流通してもいい旨さがあり、次も食べてみたいかというと、他の部位も是非に食してみたいものです。
【凌ぎ】:自家製鴨ロース
色艶最高の鴨ロースが来ました。表面にはグッと味が沁み込んでおり、中身の塩味は薄く、赤くジューシーな状態が維持され叩きや低温ローストのようです。表面をさっと焼いて旨味を閉じ込め、しょう油ベースの煮出汁に漬け込んで、じんわりと粗熱から冷によりしっとりと味を沁み込ませたような感じです。鮮度を落とさないために、あらかじめお皿に盛っているのではなく、配膳直前に切り分けていそうなほど艶やかで瑞々しい。野生種だともっと野性味がありそうなので、さすがに養殖とは思いますが、これは本当に肉汁溢れ、深い旨さがたまりませんでした。通販にしてもリピーターが付きそうです。
【蒸し物】:加賀蓮根の蓮蒸し
蓋を開けるとフワリと湯気が漂い三つ葉とカツオ出汁が溢れ出します。ハス蒸しとは、レンコンを擦り卸して具材を練り込み寄せた物に、餡を掛けた石川県加賀の郷土料理です。香り付けの三つ葉の他にはワサビとエビのトッピング。
レンコンと卵白を合せたもっちり生地で柔いウナギの蒲焼を包み込んでありました。餡に絡めて生地と一緒に食しても美味で、餡と生地に付け添えのワサビに溶き交ぜて食べても旨い。
【強肴】:猪ガーリック醤油焼き
最後にやってきたのは、ニンニクと黒胡椒のパンチが凄まじいイノシシのステーキです。山から直送だぜ!!と言わんばかりのワイルドなステーキです!!部位の見た目はロース?だが、食べっぷりは豚で言うモモやウデ以上の肉感です。とんでもない弾力でガリゴリ狩りゴリと硬く口の中では死して尚、イノシシが暴れているような歯応え!対照的に脂身はプルプルで溶けていきます。だが、赤身は硬い!繰り返すが硬い!これまで濃い醤油や味噌でのボタン鍋を食したことはありますがここまで硬い事はありません。ただし、噛む噛む噛む・・・と味は豚だが風味はコクがある野性。醤油辛い味付けのせいか変にクセになる美味しさです。
【食事】:白米
【止椀】:虹鱒粗のお澄まし
【香の物】:白菜浅漬け、胡瓜醤油漬け
白米はいうことなく、しっとりとした炭水化物の甘味が強く硬さも程よいコシヒカリかなという粘り。お澄ましが昆布かなぁ・・・薄く醤油を持たせ、甘味はニジマスの造りから出たアラでしょうか。止椀までジビエの仕上げでした。香の物もキャベツの浅漬けに胡瓜の醤油漬けは自家製のお味です。
【水菓子】:パイナップル、フィンガービスケット、生クリーム、クコの実
これまでの料理からして、水菓子はとてもシンプルにパイナップル。そして懐かしくもある、フィンガービスケット?と言っていいのか、それに生クリームを添えクコの実で色を付けます。
朝食
朝食は夕食と同じお部屋でいただきました。夕食と同じく濃い目の味付けは手作り感満載です。量に関しては少な目で年配の方には丁度、若者にはやや物足りないが濃い味なのでしっかりと白米をかきこめます。
・大根のきんぴら
・ちりめん山椒
・烏賊の塩辛
大根のきんぴらは、みりんをよく効かし甘く仕上げ、ちりめん山椒は乾いた物でなく、「今炊いたの?」というほどにしっとりとして刻み大葉で味が締めます。イカの塩辛も自家製かなと思わしき、イカのプツリ・スルリという生触感がしっかりとあります。
・湯豆腐(昆布、豆苗、えのき、鳴門巻き)
湯豆腐の出汁は恐らく肉厚な根昆布で風味豊か。お水が美味しいので豆腐も大豆の風味がコクポン酢でさっぱりと。
・サラダ(水菜、玉葱、赤玉葱、とうもろこし、わかめ)
・鰆の西京焼き、生姜佃煮
水菜がシャキシャキのサラダにはタマネギドレッシング。白味噌がよく滲みたサワラは身が締まり脂の乗りも良く春の旬です。付け添えのショウガ佃煮も辛味が絶妙で、これも自家製でしょうねぇ。
・出汁巻き玉子
出汁巻き卵は後から巻き立て配膳であっつあっつ。醤油が強めで出し巻きというよりは厚焼き玉子です。
・白米
・味噌汁(椎茸、揚げ、三つ葉)
・香の物(キャベツ、ワサビ菜めかぶ、お新香、梅干し)
白米の素材はさることながら、やはり水がおいしいところは米が絶品でキラキラ光っています。味噌汁は優しい強白味噌仕立てで、とてもまろやかな味。具材に厚みがある原木シイタケがごろっとはいっています。香の物のワサビ菜は恐らく、湯豆腐の根昆布を刻み和えした物でしょうか。粘りと香りがたまりません。
まとめ
時勢柄、団体客の受け入れはされていないようで、宿全体の雰囲気としてはとても落ち着いていて、訪れたお客さんも家族、恋人同士でという方ばかりでした。周囲に宿以外なにもないので、ジビエと温泉を楽しみ庭を眺めていると、時間の流れがゆっくり過ぎて、時の刻みが半分ぐらいに感じられ浦島太郎状態になります。季節により料理のバリエーションが変化するのかと思います。スッポンや牛ステーキなどもあるようです。時勢柄か料理の説明はほとんどないので、せめて説明を記した献立でも用意してもらえたらと思いました。赤穂谷温泉さんの一味違うジビエ料理を、季節を変えて食してみたいと思う宿泊になりました。
宿泊料金
赤穂谷温泉さんは通年大きく料金が変わることがなく、休前日でも同じ料金で何とも親切な設定となっています。今回はジビエのフルコースのような内容だったので料金割り増しですが、料理によって値段が変わり30000円以下のお手頃会席もあるので好みや食べたい料理でプランを選択するのがいいのではないかと思われます。
宿泊日:2021/初春
旅行サイト:じゃらん
プラン:≪ドドーンと豪華に熊☆鹿☆猪☆鴨!!≫赤穂谷温泉でGETワイルド
部屋タイプ:池が眺めるお部屋
合計料金:37400円(2人)
春セールがお得になるクーポン:6000円
支払い料金:31400円
加算ポイント:314p