四万温泉と言えば有名なのは積善館さんですが・・・。実はもう一軒、文化財のような玄関と宿泊棟を残されたお宿があります。それが「四万温泉 たむら」さんです。館内は広く見所もあり、浴場もたくさんあり、食事の内容も凝っていて申し分なく、詳細をお伝えするには長丁場なのでお付き合い頂ければ幸いです。
たむらさんに訪れる前に、1時間半ほど離れた日光白根山で山登りをしてきた記録があるのでよかったらどうぞ。
旅情
やけに風情がある茅葺木造の玄関に車を付けると、ドアマンの方が出てこられたので、荷物をおろして建物横の駐車場に車を停めました。
この茅葺の建物はもともとは母屋だったようで、偉い方々が泊まれるように江戸時代に改築されたものだそうです。入館してすぐに検温・消毒を行います。時勢がら荷物運びやお茶だしのサービスなどはなく、このクラスで珍しくセルフで。
別角度から玄関入って右手にはフロントがありチェックインの手続きを行いました。確かに玄関というよりお部屋と言う面持ちです。
玄関正面の奥には上段の間と中の間があり、かつてはお偉い方と侍従の方が宿泊するお部屋があります。
ここにはたむらさんの昔の写真や縁の物が展示されてありました。天井は最近仕立て直したような新しさ。と思えば画像右の柱はとても年季物。
玄関棟から館内へ入ると、一変して鉄筋コンクリート造の近代的な建物に変わります。左の柱の奥が玄関に当たります。
ロビーには売店と自動販売機、チェックイン時には17時30分までノンアルコールビールやドリンクバーなどのサービスがありました。
ロビーからそれぞれの宿泊棟、お風呂及び宴会場などに通じています。造りが立体的で説明不可なので館内図を見て頂く方が早いと思います。宿泊棟は木造の金涌館、近代的な木涌館と水涌館に分かれています。さらには花涌館もあるのですがこちらは現在使用されていない様子でした。
金涌館はロビーからエレベーターで直結しており、廊下とお部屋の入り口までは鉄筋コンクリートにリフォームされています。お部屋だけが昔のままの木造仕様となっています。
金涌館に行くまでの廊下から玄関を見下ろします。なんとも風情のある景色です。
こちらは金涌館の外観は完全な木造家です。右に玄関棟の茅葺の屋根がわずかに見えるように、たむらさんの敷地内の最も手前にある建物となっています。
金涌館の地下?には2カ所の浴場があります。ロビーからエレベーターで下りると上下の階段が付いています。上に行くと「かえでの間」という広間があります。下に行くと「岩根の湯」が見えてきて、右側へ向くと「御夢想の湯」への階段が付いています。それぞれの浴場前にはアルコール飲料も入った自動販売機が必ず置かれていてます。欲しい所にあるという、いい商売されています。
ロビーに戻って木涌館方面へ移動します。こちらは売店を背にした場所です。
途中にはラウンジがあります。流行り病の影響か営業はしておらず。本来であればお茶や軽食などが楽しめるようです。夜にはお酒も頼めそうです。
さらに奥へ進むと夕食をいただいた個室のお食事処「山桜」を通りすぎます。
最奥にはエレベーターがあります。上に上がると木涌館の宿泊階となっていて、下ると4ヶ所の大浴場に向かうことができます。
まず上階の木涌館へ。あつらえは近代的な建物です。エレベーターホールには浴衣がおかれてあります。感染対策で従業員がお部屋に入らない配慮でしょう。
木涌館の2階には「四季」という食事会場があります。今回の宿泊ではこちらの利用はなかったのですが、木涌館のお客さんの朝食会場だったかな。
翌朝、食事会場前の待合場所ではfreeのエスプレッソマシーンが置いてありました。宿泊した金涌館には無かったので、ここで一杯お部屋にお持ち帰りさせてもらいました。
木涌館の4階からは別棟の水涌館への通路があります。こちらも鉄筋コンクリート造ので、景気のいい時代に建て増し増築したような造りです。
エレベーターホールに戻り木桶館の地下3階へと行きます。エレベーターホールからは上への階段と、階段袂からはさらに奥へ行くことが出来ます。
やけに時を経た感じのある階段を上がると、女性専用の「甍(いらか)の湯」があります。ここへはエレベーター地下2階で降車してもアクセスできるようになっています。
階段袂奥には男性専用の「甍(いらか)の湯」と露天風呂「森のこだま」の大浴場があります。ここにはウォーターサーバーも設置されてありました。
そして、浴場前に当たり前のようにビール自販機が設置されています。たむらさんは皆の欲求に応えるように欲しい所に必ず自販機がある・・・。宿泊客は現金を持って浴場にいく方は少ないでしょう。日帰り客は・・・。そら呑みたくなりますね!
浴場前の待合場所からは庭に出ることができます。テラスのようになっていて夏はプールを楽しめるようです。が、流行り病により訪れた時はプールは閉鎖されていました。正面の建物最上階がロビーになります。建物が川床に向かって建物が建っています。また、かなり大型の宿泊施設であることも分かります。
プールサイドには足湯もありました。おっさんは敢えて足を浸けることもないですが、若いカップルが青春を満喫していました。
テラスを奥に進むと茶色に染まったタンクがありました。上の蓋らしき部分には白い析出物も付着しており源泉地でしょうか。
プールサイドから建物を回り込むように、源泉槽らしきタンク前をさらに進むと、赤矢印のところにある混浴川岸露天風呂「竜宮」があります。しかし、この道の先には青矢印に「甍(いらか)の湯」があり男性浴場が外から丸見えですw浴場の男女入れ替えがないのは覗けてしますのが問題のようです。
玄関前に建つ花桶館と思わしき玄関の前には飲泉所がありました。しかし、訪れた時は流行り病の感染予防のためか源泉が出ていませんでした。
お部屋
通して頂いたのは金桶館の特別室713号室です。近代化された建物の中でありながら、唯一昔の姿を残した宿泊棟が金桶館です。
たむらさんに泊まるなら、この特別室と決めていました。間取りは本間8畳+次の間6畳+周り広縁+踏み込み+洗面・ユニットバス+トイレです。
ここまではコンクリート造で木造の感覚はありません。扉も分厚い金属製。冷蔵庫もここにあり、あらかじめ冷水も用意してありました。
踏み込み部分には、あらかじめ冷水の用意があり下には空の冷蔵庫。
踏み込みからは洗面とバス。化粧水、乳液、ドライヤー、その他諸々の設備・アメニティは高級旅館としての備えは抜かりなく。
バスは温泉です。たむらさにはたくさんの湯舟があるので、敢えて部屋風呂がいるかというところですが、詳細は次項の「お風呂」でご確認下さい。
まず最初に新しい畳に入れ替えられた6畳の次の間です。
そして8畳の組子細工があしらわれた書院のある本間。
本間には、どなたの書か分かりませんが「金桶館」欄間額が掛かっています。
欄間の組子は欠損してましたが、所々に装飾がなされていて目を引きます。
襖を開けると布団がしまわれた押し入れの下にも箪笥が仕込まれてあったりと探険心が止まりません。
踏み込みから続く廻り廊下のようになっている広縁があります。こちら側からは横を流れる新湯川を見下ろします。
広縁の書院裏手から見た景色は温泉街を見下ろします。玄関棟の母屋と並び、たむらさんの歴史の中では昔の姿を色濃く残すお部屋ではないかと思います。
アメニティ類は洗面所にある物から足袋やタオル類の備えは完璧です。四万温泉街と周辺には商店は全くないので、必要な物があれば事前に揃えておく方がいいかと思います。飲み物に関しては館内には、たくさんの自動販売機があるので心配はいらなそうです。
お風呂
たむらさんのお風呂は男女別の大浴場が4カ所、混浴露天風呂が1カ所、貸切風呂が1か所と計9ヵ所あります。しかし、男女入れ替えがないので全てを楽しむことができません。湯屋の数は多く湯量も多いので貸切風呂は有料なので利用はしませんでした。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉となっており、ツルツルとした肌触りと、少し塩味のある石膏のような香りが特徴的です。湯量はとんでもなく豊富で説明書きには7本の源泉から毎分1600Lとあり、すべての湯舟でうれしい源泉かけ流しとなっています。
御夢想(ごむそう)の湯
湯舟と湯屋がすべて檜で造られた檜尽くしの湯殿です。
こちらは男性側の湯屋です。男女別となっていますが、構成はほとんど同じで対照的な造りです。なんとも悩ましい色気のある雰囲気の湯屋です。
掛け湯も温泉となっていて浴場にはシャワーもなければソープ類も置いていない昔ながらのスタイルとなっています。
湯舟には頑張れば5人ぐらい向かい合って入れそうほどの大きさがあります。湯舟の淵から豊かなオーバーフローがありました。
天井は熱気を逃がすように煙突に蓋をした形状になっています。しかし、檜の香りが充満した和の風情です。
露天風呂 甌穴(おうけつ)
「御夢想の湯」と「露天風呂 甌穴」の脱衣所は共有で、赤矢印が「御夢想の湯」の入り口です。正面が「露天風呂 甌穴」の入り口です。
扉から外へ出ると湯屋の横を少し移動します。
こちらは女性側の露天風呂「甌穴」です。男湯とは若干造りが異なるようですが、ほとんど同じです。湯が少し白濁しているようにも見えます。
竹の湯口から注がれる源泉は岩を伝い茶色に染め、水面高にはカルシウムの析出物が付き濃厚泉なのが分かります。
岩根の湯
モダンな感じの湯屋で脱衣所も新しくリフォームされています。朝に訪れると人が入った形跡が全くなくトロトロと源泉が溢れ出ていました。ここはわずかに茶色のような色付き。
この浴場には源泉を利用した「蒸し風呂」や「打たせ湯」といった今趣向な装備がありました。
5人ほどで丁度の湯舟は左の湯口からだけではなく、赤矢印のある湯舟底中央の茶色になっている所からの足元湧出もありました。新鮮湯で良いのですが、源泉の温度が高いので長湯はつらいが贅沢。
甍(いらか)の湯
男湯
吹き抜けの大浴場の内湯は、びっくりスケールとなっています。赤矢印の2階部分が女性風呂となっています。下の青矢印が男湯脱衣所からの入り口です。
一番奥の浴槽は手前が「ぬる湯」設定となっています。波が立たない水面反射が美しい。湯舟の底は玉砂利となっています。こちらは足元からもじわりじわり湧出しています。
誰も入っていない湯舟の切り口からは並々と溢れ出す源泉・・・もったいない・・・すすりたくなります。ここのお湯は色付きや濁りはなく透明です。
湯屋中央にある洗い場。恐らく源泉が溜められており、タンクに直結したシャワーとカランは温泉かと。目の前のタンクに溜めて直接シャワーにしている例は見たことがない・・・。
奥にある3カ所の湯舟に対して、入り口入ってすぐ左にある湯舟は「あつ湯」となっています。あつ湯好きの自分にしてはさほど熱くない。ですが、ゆるりと長湯を楽しみたいのなら奥にある湯舟がいいかなという温度。
男湯はびっくりの開放感がある「甍(いらか)の湯」。正直なところ収容数からすると、他の浴場が不要なぐらいに湯船の数は多く広く湯量も豊かすぎます。女湯はそれなりに賑わっていたそうですが、男湯はほとんど人はおらず貸切に近い状態でした。
女湯
甍(いらか)の湯の女性側は男湯に比べると小さい浴場になっています。男湯と同じ溜め湯の洗い場があります。
湯舟の構成は同じようになっていますが湯舟も小さい。1階への目隠しが低いので下を覗き込むと男風呂が良く見えたそうで・・・。広くていいなぁと眺め下した相方。
手前にあるのは丸太で仕切った湯舟は「あつ湯」。2階にありながらも足元湧出となっています。
奥には6人ぐらいは余裕で入れる湯舟が2つ並んでいます。こちらは「ぬる湯」となっています。女性の甍(いらか)の湯は明るい時間帯は、シャワーの数が多いので利用するお客さんも多くいたそうです。
露天風呂 森のこだま
男性側の甍(いらか)の湯の前から露天風呂へ行くことができます。
扉を出ると一度外に面した廊下をかなり奥まで進みます。
女湯
「森のこだま」の湯は1階が男湯、2階が女湯となっています。こちらは女湯の脱衣所です。なんとなく湯治宿のような雰囲気が感じられます。
浴場へ出ると女湯からは緑が覆い茂っていたのと、男湯の屋根が邪魔で川はあまり見えなかったとのこと。
湯舟の形はテトリスのブロックのような稲妻型?
湯口からはそんなに多くはない源泉が注がれています。しかし、溢れ出しはこの湯口よりも多いように感じられ、もしかしたら他の注ぎ口があるのかもしれません。
男湯
1階にある男湯は川に程近く眺めがいいです。夜はライトアップされており、川のせせらぎをを聞きながらの夜気が気持ちいい。
湯屋はなんとも風情がある造りとなっています。洗い場はありませんが、もともと「あつ湯」源泉ということもあって、夜気で湯冷まししながら最も長く入っていた湯舟かもしれません。水やお茶を持ち込んで、補水しながら川のせせらぎで長湯すれば良かった・・・。
オーバーフローが心地よし。やはり溢れ出しは湯口よりも多いように感じます。ここのお湯も透明色です。
幻の湯 竜宮
プールサイドから源泉槽の横を抜けて川岸に行く混浴風呂の「竜宮」があります。
目隠しはあるが籠も置いてない野ざらしの狭い脱衣所。混浴設定となっているので、女性にはかなりハードルが高い。いや!高すぎるだろ・・・
やはり湯舟の中のお湯は若干濁っているようにも見える。川はすぐ傍なので台風とか来るとすぐに水没しそうなほどです。ずぶりと浸かってしまうと川も見えないので敢えて裸体をさらす必要もないか・・・。風呂好きの強者は入るでしょうが、誰も入った形跡はありませんでしたw
部屋風呂
お部屋のお風呂も温泉となっています。他の源泉と比較したかったので、敢えてお部屋の項目では画像を控えました。何故か黄土色に濁りがあり茶色の湯の花もあります。そして他の湯舟の注ぎ口よりも塩気が強い。朝飯の温泉粥は、にがりのようなミネラルと塩がかなり強かったので使用していたのはこの源泉でしょうか。
お風呂事情外伝
チェックアウト前に館内散歩をしていたら、従業員の方がおもむろに管をもってきて湯舟に突っ込み始めました。
なんなんだろうかと思っていたら・・・Σ(゚Д゚)!! 甍(いらか)の湯の湯舟から湯捨てが始まりました。そして、浴場をゴシゴシと洗い始め・・・。もったいねぇーー!と思う反面、温泉をしっかりと管理されて、良いお湯に浸かれるように管理して頂いているのは本当にありがたい。
お料理
夕食はロビーから隣接する「山桜」の個室でいただきました。朝食は木桶館地下1階にある「はなみずき」という食事会場でいただきます。
ご時世的に安心して食事ができる個室食です。会場か個室かはプランによって変わると思います。お料理の内容は 大型旅館のやっつけ仕事かと思っていたのですが、とんでもない!!豪華食材を使いながらも、素材だけの味に任せることなく、手が込んだ創作性の高い素晴らしい料理が配されます。一品一品に対するこだわりが光る会席です。
夕食
食前酒、前菜、台物鍋、釜飯が事前配膳されていました。
【食前酒】:季節の食前酒 紫蘇酒
品のある紫蘇の香りが漂う食前酒です。紫蘇独特の苦みを、まるごと取り除いて爽やかな風味だけを残した夏の名残と、ほんのりと甘みを付けて上品に。紫蘇酒なんて聞いたことがなく自家製かなと思います。
【旬味】:秋の旬彩盛り
手が込んでいるのでそのまま流すには勿体ない。一品ずつ賞味してみます。
・柿釜秋の吹き寄せ盛り
生の柿を1.5㎝角に切ったものが2切れ、そして、旬ズワイガニのほぐし身を散らしてあります。掛けてあるのはコクと深みがある豆腐と白味噌の白和え味噌かと。これを柿をくり貫いた器に盛るという粋な計らい。白和え味噌をカニと柿に合わせるとは奇抜です。
左):沼田産湯葉 泡醤油 菊一片
とろとろの湯葉にトッピングしているのは出汁醤油をホイップした泡醤油です。混ぜて食べるととてもマイルドに食せます。
右):かます幽庵焼き 菊菜お浸し
カマスはゆるく幽庵地に漬け込んで味はゆったりと締まっています。ふわふわのサワークリームのようなホイップと紅葉はなんだろうか?菊菜は対照的にしっかりとした醤油味。
・秋鮭霙掛け 軸三つ葉 クコの身
秋サケは打ち粉をして焼いてあります。脂加減は豊かだが、まろやかなのに身はしっかり。北海道の時鮭(とき)を連想させます。みぞれはうっすらと上品甘酢を持たせてさっぱりと。
・秋刀魚山椒煮 ・鶏松風
・むかご白扇串 ・季節の絹田巻 黄身酢 ・イチョウの栗寄せ
正直なところ、このお皿だけで前菜に匹敵します。サンマは極ほんのり山椒煮、サンマの旨味をやさしく包んであります。 硬くグッと締まった松風ではなく、ほろほろの甘味が詰まった鶏は、ふわっとした柔らかさにキメの細かく舌触りで珍しい松風食感。 絹田巻きは、干し柿、胡瓜、ニンジン、紫の菊花にゆるりと黄身酢を大根で巻き上げてあります。
見た目はサツマイモかと思ったのですが栗を寄せ直したお品。どれも手が込んでいますが、イチョウをわざわざ栗で模し盛り込むとは。さすがにこれはお取り寄せへの味付けか。
【吸旬】:旬肴と松茸 蓮根真丈
お出汁は恐らくカツオ。これに柚子と松茸の薫りを加えて、お品書きの説明から吉野葛でとろみを持たせて彩りに菊花を散らし華やかに。椀の蓋を開けると一気に松茸と柚子の香りが飛び出してきます。
旬の魚は鯛です。出汁が絡むように打ち粉をして焼いてあります。レンコン真丈はサクサクっとしているのに中はふっわふっわで濃厚なレンコン味は、揚げてからお出汁に浸してシットリと揚げ香ばしい。薬味に針葱と唐辛子。レンコン饅頭ではなく真丈にするとレンコンの旨味が引き立つように感じます。
【造里】:本日の鮮魚四種盛り
鯛、カンパチ、中トロまぐろ、銀ひかり(ニジマス)です。タイはこぶ締めにしてあり白身を熟してあります。カンパチと銀ひかりはコリコリとした新鮮な歯応えに脂がよく乗り素材の味がしっかりと美味い。特に銀ひかりは群馬でしか味わえないブランドニジマスです。中トロは脂身と赤身の2種と粋な計らい。あしらいは大根けん、大葉、紫蘇花、本わさびです。
【温物】:京粟麩寄せ饅頭 秋茸擦り流し餡かけ 蓮根煎餅 地物隠元
生麩(なまふ)に粟(あわ)を混ぜ込んだ物を京料理では粟麩(あわふ)と言います。粟麩生地はもっちりとしており柔軟性が高く箸では割くには難儀するほどに弾力があります。
雑穀風味が濃厚の饅頭で季節の味覚である百合根と銀杏を包んであります。餡のベースはやはりカツオか?秋茸は何のキノコかは不明ですが確かにキノコ独特の薫りは豊かです。キノコを摺り流しにする発想は今までなかったので勉強になります・・・。付け添えはカリカリの素揚げレンコン、献立ではインゲンでしたが甘唐辛子の彩りでした。
【焼肴】:赤い宝石のど黒塩焼き
とんでもなくジューシーな焼てたてのノドグロがやってきました。箸も触れていないのに脂がじわりじわりと流れ出てきます。北陸直送の別名アカムツは、配膳された時から脂が滲み出ていました。付け添えには「たむらさん」の焼き印の卵焼き。
箸をいれるとさらに脂が溢れ出し、塩加減は絶妙で熱々のホクホクです。口に入れるとさらにブシャーと弾ける脂。ノドグロで巻いてあるのは松茸。焼松茸の薫りがノドグロに移り香され、ノドグロ旨味と松茸がコラボレーションして、高級食材がそれぞれが握手をしている一品です。
たむらさんのお料理がすごいのは主菜だけではなく、メインの付け合わせも手抜きがない。何かに被せた大根甘酢漬けをペロリと剥くと、絶妙な酢飯のふんわり穴子押し寿司。香り付けには酢橘の用意。
【火炎】:米沢牛しゃぶしゃぶ アワビ茸 壬生菜 ぽん酢
牛肉は折りたたんであるのでわかりにくいですが広げると10㎝角はある大きさ。
上質の霜降りの和牛は昆布出汁に潜らせていただきます。献立にはポン酢とありますが、ごまダレの用意もありました。
程よくミディアムレアぐらいに火を入れて、シルキーなゴマダレ、柚子の酸味が効いたポン酢のいずれで食べてもとても旨い。漬けダレも自家製のものではないかと思われます。そして野菜も献立とは違い、青ネギ、アワビ茸、マイタケでした。このマイタケは風味がとても豊潤で、お出汁が真っ黒になるぐらいで恐らく黒マイタケでしょう。
【油物】:甘鯛松笠揚げ 万願寺唐辛子 藻塩
ノドグロと同じく北陸直送の甘鯛です。北陸現地ではグジと呼ばれます。鱗が付いたまま脂を掛けまわしながら揚げると、松ぼっくりの様に鱗が開くことから、このような揚げ方の名前がついています。揚げたて配膳された甘鯛は、鱗がサクサクッッとした歯ごたえに、小麦粉?の衣で甘鯛のタンパクな甘み旨味を閉じ込めて身振りはほっくり。献立には万願寺唐辛子とありましたが、添え付けは旬の炒り銀杏。これも大振りで細粒の炒り塩が振ってあります。揚げには献立にあるように緩やかな藻塩の旨味。と、書していながらも、幽庵揚げのようで、そのままでも味付きがあります。
【酢の物】:鮑 車海老酒蒸し 翡翠茄子
このお品を酢の物と言っていい物か・・・。アワビと海老は酒蒸しにしてあるような下ごしらえ。アワビはもちろん美味しいのですが、付け合わせの海老の紅白の色は鮮やかに仕上げ、海老の甘味と甲殻香ばしさが密です。彩りに黄色の菊花をひねり添え。翡翠(ひすい)とはよく言った美の緑色の瑞々しい焼きナス。どこが酢の物かと悩むところですが、アワビに振ってあるジュレが土佐酢でした。優しい出汁酢汁がアワビに合います。さらに色と味の変化と見た目の豪華さにイクラと昆布を盛り込んであります。
【食事】:松茸釜飯 いくら醤油漬け 漬物二種盛り
【止椀】:袱紗味噌仕立て 粉山椒
釜飯は生米、ムカゴ、松茸1/2を入れ込んで目の前で30分程かけて炊き上げます。炊き上がってくると松茸の匂いが無限に沸き立ちます。
炊きあがってお茶碗に盛るとお焦げも付いており、ムカゴも入れ込んで山の土アクセントが効いています。漬物は柚子が香る白菜の浅漬け、大根の糠漬けカツオ風味。香の物も自家製でしょうねぇ。美味です。そして、癖になるシルキーな味噌汁は何杯でも飲みたくなる上品。
お好みでイクラの醤油づけを松茸御飯に混ぜていだきます。1杯目は松茸を楽しみ、2杯目は松茸にイクラの最上トッピングするという贅沢味で。本当は別々に食べるほうが味が分かるのでしょうが、たまの最強のコラボで極美味い。
【水菓子】:ほうじ茶ケーキ 紫芋羊羹 渋皮栗甘煮 ホイップ カスタードクリーム ミント 赤肉メロン 梨
は~~たまりません。水菓子まで手が込んでいます。ほうじ茶はブラウニーのようなシットリ生地にほうじ茶の茶葉を舌で感じる程に練り込んであります。紅茶に焦げ香ばしさを足したかのような深みがあります。これにカスタードクリームをあしらった洋菓子。紫イモの羊羹はイモの自然な甘みだけを寄せたような口当たりです。生クリームと一緒に食べると気品のあるスィートポテトのよう。栗の渋皮煮は甘く炊いたものよりも、敢えて塩気を多く持たせて栗本来の甘味をより強く引き出してあります。
一緒に配されたフルーツは、甘味の強いしゃっきりシャインマスカット、果汁タップリの豊水梨、赤身メロンは夕張産のような豊潤な甘さがあり最後までゴージャスな内容でした。
朝食
朝食は木桶館の地下1階にある大広間「花みずき」でいただきました。
衝立での間仕切りに各テーブルは十分な間隔を置いてあります。
先人の記録に見るとバイキング形式のようでした。しかし、プランによって内容が異なるのか、流行り病の影響なのか、ありがたくも手作り感のたっぷりの朝食が用意されました。温かいものは後々に配膳してくれます。
・朝の一杯(牛乳、オレンジジュース、おいしい冷水、ほうじ茶、コーヒー、紅茶)
・焼き海苔
・納豆
飲み物は選べるようになっていますが、何度でも頼むことができるようになっていました。ここらはバイキングのままの献立のようです。
・レンコンのきんぴら ・炭火焼地鶏の味噌和え ・明太子、かまぼこ
・しらす卸し ・ほうれん草おから和え ・茄子の揚げびたし
・肉じゃが
・香の物(白菜、胡瓜、甘酢らっきょ)
お惣菜の盛り合わせはバイキング感はあります。地鶏やレンコンきんぴらはパック感ありですが、ほうれん草おから和えやナスの揚げびたしなどは手作りかと。肉じゃがは温かく配膳され豪華にも和牛脂の香りです。
・源泉蒸し料理(塩鮭、金目鯛麹漬け、卵焼き、フキ味噌)
着席後に配された青々とした竹を模した蒸し器からは湯気が立ち上ります。この蒸しの源は温泉です。蓋を開けると蒸気が立ち上る蒸し器のようになっています。朝からキンメに、サケの用意もあり魚2種とは豪華。卵焼きは手巻きのようで、ふわふわでホッコリ。フキ味噌でそれぞれ加味して旨い。
・豚しゃぶ(ブラウンエノキ、みずな、黒舞茸)
朝から味付き出汁の肉厚豚しゃぶは夕食の一品。朝から夕食の台物をいただくとは・・・。部位はロースかなと思いつつ、赤身の旨味はモモのよう。雑味のない旨さは国産か。
・蒸し豆腐ナメコ餡
豆腐を蒸してからナメコとカツオと思われる餡は温かく、混ぜこんだ海苔の磯風味が香ばしく漂い、ナメコのぬめりでトロリと豆腐によく絡みます。
・温泉粥
・白米
・しじみの味噌汁
塩気とミネラルたっぷりの温泉粥で胃を休めます。恐らく源泉は塩気が強い金桶館のバスに注いだ源泉ではないでしょうか。白米も源泉炊きなのか微妙に色づきと独特の風味がありました。
・水菓子(メロン、オレンジ、パイナップル、白桃ゼリー)
夕食に比べると見劣る果物と白桃のセリーです。3万円台のお宿では普通に夕食の水物で出そうなお味。ゼリー以外はバイキングで並ぶ品と言えばそうかなぁという素材です。夕食と朝食のメロンのお味は圧倒的に違います。としつつも、満足のいった朝食でした。
せっかく勧めて頂いたので、最後にコーヒーと紅茶をちょうだいしました。お食事会場で飲まなくても、お部屋へのお持ち帰りもできるように配慮され、最後まで行き届いた接客には感をいります。
まとめ
大型旅館なので料理やサービスは正直期待はしていませんでした。料理は豪華食材を使用しているので美味しいのは当たり前です。が、豪華食材同士がマッチングするように手を入れてあるので、素材が相殺されず相乗してあるのが凄いなと思いました。流行り病渦だったのでサービスはさすがに控えめでしたが、給仕して頂いたスタッフの方は物腰はやさしく、揚物に時間が空いたことへの詫びもあり遅れた事も気にならない程です。温泉もすべて源泉かけ流しとなっていて、浴場もかなり大きいため人数がいても気にならなかったですし湯も新鮮で大満足。gotoを利用しましたが定価でも余りある内容ではないかと思います。ちなみに朝食は他の方の記事を見ると、高いお部屋に宿泊すると食材がランクアップしているようでした。
宿泊料金
平日だと15000円/人ぐらいからのプランもありますが、特別室に関わらず20000円~ぐらいからのプランがあるお宿です。今回利用した宿泊プランは期間限定のプランのようなので、他プランと比較するのは難しいかもしれません。料理によって値段が大きく変わるようなので、金涌館で料理はそこそこでというのであれば、祝前日泊だと20000円以上はするようです。加算ポイントが10倍だったのでgotoと合わせて実質30000円ぐらいで宿泊させて頂きました。
宿泊日:2020/9
旅行サイト:じゃらん
プラン:【料亭食】緑と温泉三昧!四万たむらの優雅なGW・夏休み・SWプラン~個室の料亭にて料理長特選会席(ポイント10.2%)
部屋タイプ:長く湯治客を迎えて来た歴史と電灯が佇む客室【金涌館・特別室】
合計料金:57200円(2人)
クーポン:20020円(Go Toトラベルクーポン)
支払い料金:37180円
加算ポイント:5834p
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