ゆとうやさんの名前の由来は、本家の油屋さんと井筒屋さんが縁を結んで「油筒屋」となったとあります。その後、ひらがなで「ゆとうや」となり、6代目から宿業を創業、大名諸侯の逗留に合わせて好みにあった館を、敷地内に建てさせたことから始まりました。何とその建物が現存しており、今では泊まれる文化財に指定されています。
※2017年の宿泊ですので情報が古くなっている可能性があります。
旅情
玄関の手前に駐車場があるので、そちらに停めてからチェックインしました。
車寄せの屋根の装飾は重みのある木造で、電飾も何かとゴージャスな感じです。エントランスは昭和の良き時代の佇まい。
玄関の広々としたスペースは、木造であることを忘れそうな程に綺麗にリフォームしてあり現代風です。
玄関上がって正面には、ゆとうやさんの歴史を物語る展示物が置いてあります。有名な著名人では島崎藤村さんや与謝野晶子さんも訪れたことがあるようです。
玄関左手にはロビーがあり、新聞等が置いてありました。このロビーとフロントがある建物は「臥竜閣」と言う建物です。
臥竜閣は3階建てとなっています。フロント横に階段が付いており、重厚な雰囲気に天井が格子?格調のある誂(あつら)えです。見た感じは鉄筋コンクリートに見えますが、確かな木造の軋みを感じます。
2階は個室の宴会場で、3階への階段はスタッフオンリーの柵が立ててありました。見取り図では3階は大宴会場でしょう。
フロントに戻ってロビー横からは宿泊棟になります。歩みを進めると開けた空間は三叉路になっており、宿泊棟である「桂雲館」、「雲生亭」、「滴水楼」に分かれています。
こちらは桂雲館への廊下。廊下向こうが先ほどの三叉路のホールです。
桂雲館には男女別の大浴場と貸切風呂があります。男性浴場前には湯上がり処があります。竹細工の天井に石材を埋め込んだ床、蜂の巣状の装飾壁と珍しいデザインです。もともとの使用用途はどういった空間だったのか。
さらに奥へ進んでいくと画像右の入り口女性浴場と客室が並びます。
桂雲館は2階建てとなっていて女性浴場前にも湯上がり処があります。階段周りの天井は格子天井となっていました。歩くと床は柔く木造ですが、昔のままの所もあれば改修したように新しいところもあります。
三叉路に戻って、上画像が雲生亭、下が滴水楼への廊下です。こちらも柱などは昔のままで、壁や窓などはしつらえ直している感じがあります。何となく大正と昭和感の名残があるこの棟は有形文化財となっています。
皇族の方々が宿泊されたとされる離れの扶老亭と詠帰亭は、改修工事中で残念ながら見学ができませんでした。詠帰亭はなんと江戸時代の物だそうで、昭和天皇さんが宿泊したとあり、今でも皇族専用として保存しているのか一般客は宿泊はできません。扶老亭は宿泊できるようなのですがプランが見当たらず。直接予約が必要なのかな。
お部屋
案内して頂いたのは雲生亭の「夕立」というお部屋です。間取りは本間8畳+次の間4.5畳+踏み込み1畳+広縁+洗面+トイレです。
文化財に指定されたお部屋ではあるものの、凝った装飾は少なくシンプルで落ち着いた面持ちです。
と、思いきや天井は何とも贅沢な一枚木で造られています。建材は杉でしょうか。これはシンプルゆえに美しい。
広縁からは裏庭を臨みます。男性浴場と桂雲館の建物が見えました。お部屋の備えには浴衣、タオル類、足袋、ドライヤー、金庫、冷蔵庫、電気ポットと不便はありません。安心のシャワートイレに、女性には色浴衣、お布団上げ時にはお茶セットの入れ替えもありサービスは充実しています。
お風呂
ゆとうやさんのお風呂は男女別の大浴場と貸切風呂があります。貸切風呂は有料のようですが、どうやらお部屋のお風呂と同様に温泉ではないと公式HPにありました。なので好みによっての利用でしょうか。大浴場は源泉を追加しながら循環している放流・循環併用です。泉質は無色透明の微塩味で、誰にでもやさしい塩化物泉は湯上がりしっとりの温泉です。
男性の湯舟は7,8人が入れそうな湯舟の大きさに、源泉の投入量は多くはありませんが、一番風呂ではしっかりとしたオーバーフローが見て取れました。翌朝も溢れ出しがありチェックイン時と朝一はお湯を十分に楽しめました。女性側で円形の4,5人は余裕で入れる大きさだったようです。
お部屋から見えていた浴室の大きな窓は庭園の眺めです。客室数に対してのシャワー数は申し分なく混み合うことはなさそうです。
広々とした空間には湯気を逃がす塔屋窓?がありました。脱衣所のアメニティに過不足はなく、フェイスタオルの用意もあり毎回新しい物を使用できます。
城崎温泉は外湯めぐりで有名な温泉地でもあります。外湯は計7ヵ所あり、宿泊客は「ゆめぱ」という外湯入り放題のパスポートを、お宿から借りることができます。なので、温泉街でスィーツ、お酒、外湯を楽しみながらのそぞろ歩きができます。
お料理
朝夕ともにロビー横にある料亭「花心」という個室でいただきました。内容に派手さはありませんが、手作りで誰でも口にしやすい物を揃えてあります。といってもワンパターンではなく、季節の旬物、名物料理、新鮮な海鮮が盛り込まれています。
献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にして覚えている食感と映像記録から記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
【食前酒】:梅酒
【先付け】:鶯豆腐
食前酒の梅酒は酸味と甘みのバランスの良い口当たり。先付のうぐいす豆腐は舌触りは滑らかにプルもち仕上げ。うぐいす豆はグリンピースやえんどう豆と言ったほうが馴染があるかもしれません。裏ごしをしてから葛(くず)で寄せてカツオ出汁に浸してあります。青々しい豆の香りに赤い飛び子(トビウオの卵)と桜百合根で春らしい演出。
【前菜】:季節の彩五種盛り
①野菜の白和え、②蒸し海老、③尼子柚子煮、④桜餅、⑤バイ貝の旨煮
桜葉塩漬けに覆われた状態で配膳されました。①小松菜と人参は、大豆の濃厚さとほんのり塩味のクリーミーな白和え。②こちらもしっとりと塩を持たせて香ばしくエビそのままのお味。③旬のアマゴの佃煮です。柚子の香りが爽やかに香ります。さすがにこれはお取り寄せかな。④お手製の桜餅は緩く桜花に強めの塩漬け桜葉。⑤は献立に載っていなかったバイガイです。醤油とお出汁で炊いた濃い味。
【お造里】:本日の近海四種盛り合わせ
4種盛りはヒラメ、赤イカ、マグロ、天使エビです。日本海の幸はどれも活かっています。ヒラメはこりこりと確かなタンパクな白身。赤イカはよく聞く名前では剣先イカのことで振り柚子がしてあります。マグロは赤身と中トロの間のような脂の乗りで赤身の旨さがよく分かります。天使エビは調べると輸入物が多いようですが、日本海でも揚がるのでしょうか。つまは大根けん、大葉、ワカメ、紫蘇花、蓼、山葵です。
【蒸し物】:茶碗蒸し
熱々で配膳されます。玉子地はとても柔くお出汁たっぷりの蒸し立てです。やさしい合わせ出汁には銀杏、穴子の具材。彩と香り付けには三つ葉です。混ぜ合わせて食べると穴子の香りがとてもそそります。
【台の物】:ゆとうや流白湯スープ小鍋仕立て(中華麺付き)
やけにまろやかなパイタンスープです。鶏出汁をわざわざ但馬牛で合わせるのも勿体ない。魚介に豆乳というほど臭みはなく。具材に牛すじ肉と但馬牛しゃぶしゃぶ赤身肉が入っていたので牛骨ベースでしょうか。スープの正体は何だったのか。火が入ると牛の旨味がスープに滲みひろがります。お野菜は白菜、白葱、水菜に春らしく菜の花です。中華麺は少しコシのある物でした。
【焼き物】:水晶プレート焼(但馬牛、エリンギ、万願寺、山葵、岩塩)
世界屈指ブランドの但馬牛です。肩ロースと思わしき色艶は、程よい脂加減でA3とA4の間ぐらいでしょうか。味付けは岩塩、薬味はワサビと和テイストでいただきます。付け合わせは献立のエリンギと万願寺ではなく、椎茸とクレソンです。調べるとこの水晶プレートなかなかにいいお値段するんですねぇ。透明なので遠赤外線効果が高いのだとか。
【酢の物】:紅ずわい蟹
日本海冬の味覚カニです。訪れた春の季節ではシーズンぎりぎりの旬。旬料理というよりは名物料理かな。身離れのよい甘味のある身は酸味がほどよいカニ酢で。
【食事】:豊岡市但東町赤花産 能勢家の自然米こしひかり
【小付け】:縮緬山椒ふりかけ
【留め椀】:赤出汁
【香の物】:季節の物
お米は地産の「こうのとり米」かと思いきや、変化球のこしひかりでした。赤出汁は京風に酸味とほんのり甘い赤出汁。手作りのピリリとした「ちりめん山椒」と、壬生菜、柴漬け、桜漬けの香の物3種盛りで白米のお供に。
【水物】:メロン、ワインケーキ
完熟のジューシーなメロンと、白ワインベースのムース地ケーキです。ケーキの中に仕込まれたソースは赤ワイン。赤白のコラボが面白い。スィーツ店の味がしました。ミントの葉で彩をとって爽やかに。
朝食
・珍味:レンコンのきんぴら、タラコ、昆布ふりかけ
・蒲鉾
・サラダ(ホワイトアスパラ、ベーコン、ほうれん草、トマト)
・飛龍頭(がんも)
・アジの一夜干し、蕗の佃煮
・湯豆腐(水菜、エノキ、揚げ、昆布、カツオ醤油)
・温泉卵
・苺のプリン(桃、キウイ、生クリーム、苺のソース)
・アサリの味噌汁
・白米
・高菜漬け、梅干し
お取り寄せの物と海の幸、新鮮野菜を全体にバランス良く盛り込んであります。品数豊富でスタンダードな和朝食は、どれもおいしく口にすることができます。王道過ぎて多くを語ることはなく・・・。あ、苺のプリンは夕食の甘味と同じくお店の味でした。
まとめ
3年前の掘り起こしで文をしたためました。正直なところ当時の印象は今一つでした。しかも、映像からの画像切り出しは、なかなかに手間がかかる・・・。しかし、改めて文字と画像に起こしてみると、夕食は季節と地産感が合って手作りですし、公式HPをじっくり見ると、文化財としての見所を満喫していないと思いました。いいお宿ですやん。当時は興味がなかったのでしょう・・・。お風呂に関しては、いつ浴場にいってもオーバーフローがあり貸切状態でした。利用者が少なかったのが幸いしたのかもしれません。
宿泊料金
さて、宿泊料金です。2017年~2020年現在も通常40000円~の値段帯です。40000円~だとちょっとお高い感じはあります。この宿泊では楽天スーパーセール時に36768円で宿泊しているので、35000円~40000円の値段帯であれば、また再訪したいお宿であることは間違いありません。ゆとうやさんは、最近ではクーポンもあまり出されていないので、yahooのポイント倍増プランとクーポン併用が一番お得に泊まれるかもしれません。
宿泊日:2017/4(土曜日泊)
旅行サイト:楽天トラベル
プラン:【楽天スーパーSALE】最大10%OFF★立地条件NO1★緑豊かなお宿で過ごす当館スタンダード
部屋タイプ:本館【滴水楼】または【雲生亭】(hon)×1部屋
合計料金:42768円(2人)
クーポン:6000円(楽天スーパーセールクーポン)
支払い料金:36768円
獲得ポイント:367P