いい温泉宿、おいしい料理宿

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再び訪れたいお宿探訪と趣味のブログ

旅館あづまや【和歌山県 湯の峰温泉】~鄙の温泉街にある木造建築の湯宿は、郷土美食料理と熊野の硫黄泉が心に沁み入る旅情~

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 湯の峰温泉は数件程のお宿しかない小さな温泉地です。ですが、世界遺産に登録されている「つぼ湯」に訪れる日帰り客は絶えません。湯の峰温泉は世界遺産の熊野古道の通り道でもあり、開湯1800年上質な硫黄泉が沸き続け、これまで多くの旅人を癒してきたのでしょう。その歴史ある温泉街の中心にあるのが「旅館あづまや」さんです。

旅情

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 温泉街の中でも一際目立つ旅館あづまやさん。一部は木造4階建てという驚異の建屋です。山の傾斜に沿って建てられているので2階建て+2階建てという構造とも言えます。

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 旅館あづまやさんの建物は玄関がある「本館」、その上にある3,4階部分に位置する「上家」、横に伸びた木造の「新館」から成ります。

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 立地はたくさんのお客さんが訪れる外湯の目の前にあります。県外からの訪問客もいるかと思いきや、和歌山ナンバーが多く地元に親しまれた温泉です。

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 車寄せに停めるとお宿のご主人らしき方が駆け寄ってきました。車は50m往路を戻ったところにある、姉妹館の「民宿あづまや荘」の駐車場に停めるようです。流行り病感染予防のためかセルフで車を置きに行きます。普段は車のお預かりがあるのかもしれません。旅館あづまやさんの凄いポイントは、13時からチェックインが可能という驚異の早さ。お宿を楽しむには最高のアーリーチェックインができます。

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 客室数は多くないためか玄関は建物に対して小振りです。玄関の看板を見てみると「あづまや」は「東屋」なんですね。名前の由来はゆっくりとのんびり寛ぐなどの意味を込めたものでしょうか。

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 文化財に指定されていても、おかしくはない風情ある玄関は帳場も年季が入っています。お値段からするとハイクラスのお宿ですが、外湯に出たりするときは仰々しさがないので気楽な湯治宿といった感じでもあります。

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 玄関には併設されたロビーがあり観光パンフレットや新聞などが置かれてありました。換気が良くなされています。

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 ロビーから振り返ると本館2階に上がる階段と、階段横の大浴場に通じる小路(こみち)があります。この小路を進んでいきます。

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 小路の先には大浴場前の売店と喫茶があります。

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 浴場前には大きな暖簾が掛けてあり回り込むと、昔ながらのタイル張りの洗面が味わい深い。売店は酒類、珍味、乾物などが置いてあります。湯上がり処にあるので冷えた地ビールなどがあるとうれしいかも。

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 売店から歩みを進めると、本館2階にある大宴会場への昭和な階段がついています。階段の麓にも小さな玄関がありました。宴会客が直接大広間に上がるためのものでしょうか。宿泊客と日帰り宴会利用客の玄関を分けているのかもしれません。

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 階段を上がっていくと大広間の前に出ます。

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 大広間の内装は新しくリフォームした感じがします。当日は衝立で目隠しをした半個室のお食事処となっていました。

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 大広間の広縁からは玄関と温泉街を見ろせる風情ある眺望。

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 大広間前からの連絡路を抜けると本館2階へ戻ります。ここからさらに「上家」の宿泊棟へ上がることができます。

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 上家は赤絨毯があつらえてあり、コロナ自粛のためかしばらく使用された感じはありませんでした。ここは館内で最も昔の趣きが残る場所のようです。お部屋は草木の名前が付いており、それぞれの名前に因んだ材質が使用されているそうです。一度こちらも泊まってみたいものです。

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 本館からは新館に移ることができます。左画像は新館の廊下です。「上家」の廊下と比べると現代的な雰囲気です。右画像は新館もっとも奥に位置する特別室への廊下。こちらは特別室らしいノスタルジックな雰囲気が残ります。

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 新館1階を突き当りまで戻ると、館内をぐるっと1周して玄関に戻ってきました。棟それぞれは木造と思われますが、つないでる部分だけはコンクリート造でしょうか。かつては建物同士が繋がっていなかったのかもしれません。

 館内の設備に大浴場前に良心的なお値段の自動販売機。売店にはお酒。公衆浴場前にも売店や自動販売機があり、ちょっとしたお買い物には困ることはなさそうです。

 

お部屋

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 案内して頂いたのは新館の「つばき」というお部屋です。

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 間取りは本間8畳+踏み込み1畳+広縁+洗面+トイレです。

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 ウェルカム茶はお部屋で。冷たい麦茶と「柚子餡のもなか」でした。

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 赤絨毯が敷かれた広々とした踏み込み。

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 新館といっても木造建築なので、温泉街からの話し声や他のお部屋からの物音がよく聞こえます。

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 昭和の古めかしい洗面。綺麗にしてあり何となく懐かしく。

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 広縁からは温泉街を見下ろすことができる眺めのいいお部屋。公衆浴場の方を見ていると次から次へとお客さんが訪れる湯治の賑わいがありました。

 お部屋の設備に空の冷蔵庫と金庫があります。アメニティ類は不足はないですが、お茶セットや冷水の用意はありません。これもコロナ対策の1つでしょうか。

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 なので、あらかじめミネラルウォーターが1人1本置いてありました。ファブリーズや埃取りの粘着ローラーがあったりと備品は充実しています。

 

お風呂

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 旅館あづまやさんには男女別大浴場の内湯と露天風呂、家族風呂が1つあります。大浴場は入れ替え制となっています。「環(たまき)の湯」と名付けらた湯屋では、やさしい玉子の香りがするお湯を楽しめます。泉質は含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉となっており、源泉の温度が高いので源泉を投入しながらの一部加水です。湯力があるので加水しても全く気になりません。また、ヌルツルした肌触りに白い湯の花が踊り湯感もたまりません。コロナ対策の一環として、脱衣籠に空きがなければ入らないようにと人数制限を設けておられました。

大浴場(その一)

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 何とも懐古的な湯屋。浴場に入ると桧と硫黄の香り(硫化水素)に覆われ、湯舟の淵からはゆるりとお湯が溢れ出しています。

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 この湯舟に体を沈めてみたいと思い何年が経ったことか・・・。やっとこさ訪れることができました。思っていたよりも余裕のある7,8人ぐらいは入れる大きな湯舟。とにかく湯量が多く、贅沢に足を延ばして浴場全体を見上げると最高の癒しタイム。

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 湯口は左の蛇口が加水、右側の木造り湯口が源泉と思われます。ここの源泉はさほど熱くはありませんでした。温度は自動管理なのか、夏に入るには「ぬる湯」でゆったりと浸かっていられます。

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 浴場には源泉をそのまま冷やした100%源泉の「冷まし湯」があります。大きな湯船に比べると少し玉子の香りが強く、湯舟に浸かると溢れ出すお湯が贅沢。

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 投入量は多くはありませんが、白色と湯の花も相まって100%源泉の浴感も至極です。

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 浴場内からアクセスできる「むしぶろ」も付いています。温泉の湯気を利用した、いわゆるサウナです。やはり硫黄の香りが立ち込め、中毒にならないように窓が付いていました。

露天風呂(その一)

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 露天風呂へは一度脱衣所に戻ってから外にでます。外に出るとなんとも小気味がいい雰囲気の露天風呂が現れます。

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 岩の隙間から注がれるお湯は、館内で最も多い投入量ではないかと思えるほど。ぬる湯だったので、あらかじめ加水しているのかもしれません。しかし、ツルツルというかヌルヌルというかやはり肌触りが素晴らしい。

大浴場(その二)

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「その一」の浴場と比べると小さいですが、その情景は負けず劣らずまとわりつく鄙感。

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 こちらは5人ぐらいでちょうどの大きさです。静かに湯舟の淵全体からお湯が溢れ出ていました。こちらの湯口は1つ。あらかじめ加水したものが注がれているのでしょうか。

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 朝一の源泉100%の「冷まし湯」は濁りはなく深淵のブルー色で新鮮湯なのがよく分かります。朝一番から極上タイム。

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 源泉の注ぎ口はどの湯屋の物よりも析出物がびっしり。充満する硫黄の匂いはとても癒されます。

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 こちらにも蒸し風呂があり、脱衣所からの直結となっています。中はベンチのような木の椅子があります。

露天風呂(その二)

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 こちらの露天風呂も情調がくすぶられます。

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 両方の露天風呂は京都大学教授さんの設計だそうで、日本人の情に訴えかける何かがあるのでしょうか。まるで玄関の前にお風呂があるような。

貸切風呂

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 大浴場手前左に貸切風呂があります。

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 1人でも足を曲げないと入れないぐらいの大きさです。浴場に入るとやはり濃厚な硫黄の匂い。ここはシャワーがありません。

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 左の蛇口の源泉はとても熱く、湯舟右の蛇口は冷たく加水用の物かな。加水を止めると冷まさない源泉?が堪能できます。冷まし湯では味わえない、ヌルりとした透明感のある硫黄泉はダントツの浴感です。そのままの100%源泉は熱すぎるので長く楽しめないのが悩ましいところ。当日はだれも入浴した形跡がなく専用風呂状態でした。

つぼ湯 

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 湯の峰温泉に訪れたのなら、世界遺産の外湯「つぼ湯」も堪能します。 700円の別料金が必要ですが十分に価値のある入浴ができます。

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 日本最古の温泉と言われる「つぼ湯」。日に7回色が変わると言われる「つぼ湯」は2人定員の湯舟です。

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 手前にある2つの蛇口は温泉かと思いきやこちらは加水栓です。しかし、ほっておくと激熱になってきます。一見どこからも湯は注がれていないようですが、岩造りの湯舟の至る所から常に新しいお湯が沁み出しています。それどころか、湯が浸されていない壁からもちょろりちょろりと壁を伝って注ぎこまれています。前後左右下からも高温の源泉が自然に湧き出ています。古さもそうですが、泉質や湧出方法を見ても世界遺産に登録されるのは納得です。

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 浸かっていてると結構な量のお湯が溢れ出します。しかも、この捨て湯口の付近からも温泉が噴き出しているという贅沢さ。湯舟に注がれることなく流されていく温泉!!もったいない・・・。源泉湧出深度が浅く豊かなのでしょう。湧出量も多く2人分のお湯が溢れ出ても10分程でなみなみとしてきました。捨て湯は川に流されるため、ここは入浴専用で洗髪洗体ソープ類の利用は厳禁です。

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 つぼ湯の入浴券を買うと外湯の「薬湯」「一般浴場」のいずれかを入ることができます。

 

お料理

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 朝夕ともに大広間でいただきました。大広間はお部屋ごとに区切りを入れて半個室のようにしてありました。内容は南紀らしい素材が多く使われており、他では見ないような変わったものも配されます。また、温泉をベースとしたお料理が多く、一品一品手作りで美味しくボリュームも満載です。

 献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。

夕食

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【食前酒】:梅酒オリジナルブレンド

【先付】:胡麻豆腐 山葵

 梅酒はこってりとしたものではなく、酒度をほとんど感じないサッパリ吞み口。お部屋にあった案内に梅ジュースと地酒を混ぜて温泉水で割ったものとありました。 胡麻豆腐はものすごくもっちりでプルプルの食感。ゼラチンでしょうか。胡麻風味はマイルドだが深さがあります。掛けてあるのは大根の梅漬けかな。これを強い鰹出汁に浮かべてあります。

 

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【前菜】:珍味

①細魚と昆布の酢和え

②鰹佃煮

③梅クラゲ

④トウモロコシ真丈

⑤空豆

 お品書きには珍味とだけ書いてありました。説明もなかったので口にして感じたものを献立に。 ①細魚はあっさり酢に刻み昆布が濃厚で清らかな味。 ②食べた瞬間サバのような青魚特有の香りだが淡白。おそらくカツオ。紫蘇の種と一緒に炊いてあり風味が締まっています。 ③洗いにしたようなコリコリのクラゲを梅肉に合わせ、とびっこのような卵を混ぜ合わせてあります。食感がとても良く夏の涼を感じます。 ④トウモロコシとすり身が喧嘩をしています。両方とも前に出させろと風味が豊かな真丈です。 ⑤そら豆はゆったりと塩味をもたせた初夏の味。

 

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【造里】:鮪 白身 海老

 南紀はやはりマグロがうまい。白身はハマチでしょうか。出世魚独特の旨味にコリコリとした触感が新鮮さを物語っています。海老も大振りでプリッと歯ごたえがあるフレッシュさ。海老味噌も楽しめるように頭も添え付けてあります。これを少し甘味のあるたまり醤油で。つまは大根けん、大葉、蓼、ワサビです。

 

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【煮物】:米茄子 鯰煮付 豌豆

 ナマズとはとても珍しい食材が出てきました。ショウガ、お酒、濃い口の醤油で煮付けてあり臭みや泥臭さなどは全くありません。ナマズといえばコラーゲンが多いという印象ですが、それどころかブリの様な食感と風味をそのままに、油を削いで更にタンパクにしたように品があります。肉厚の米茄子は素揚げしてから皮を剥いた揚げ浸しです。もちろんナマズとは別に味付けされた物。彩りのスナップエンドウも丁度良い火加減で、えんどう豆の旨さが閉じ込めてあり青色が映えます。

 

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【お凌ぎ】:鰻棒寿司 ガリ

 最初から配膳されている「東屋」と書かれた謎の重箱。

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 開けてみると何とも美味しそうなウナギの押し寿司。このお凌ぎはとにかく絶品過ぎでした。口に入れた瞬間、なんとも緩く酢も弱い酢飯で頼りない。ただ、パリパリに焼いたクリスピーなウナギと混ざりあった瞬間!馴染む馴染む。逆に米の緩さがもっとりとウナギに絡む。鰻の焼きと味付けも絶妙で、酢飯の浅い酸味がウナギを邪魔しない。口の中で混ざれば混ざるほど旨味が増します。前菜のトウモロコシ真丈はすり身と喧嘩して主張しているとしましたが、このウナギ棒寿司は握手してハグしてbrotherしていました。

 

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【酢の物】:生節 胡瓜 茗荷

 初めて目にした生節(なまりぶし)という言葉。調べてみるとカツオを蒸しや茹でを施した調理法のことらしいです。盛られているのは蒸した鰹です。温泉で蒸した物か?これに輪切りのキュウリは、しんなりと少し変わった風味がついている。もしかしたら温泉の回し掛けでしんなりさせている?考え始めると温泉ばかり出てきます。浸しているのは土佐酢のようですが、「生節」の旨味が三杯酢に滲み出たような気がします。茗荷を散らして爽やかに透き通るような酢の物です。

 

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【焼物】:鮎塩焼き 蓮の芽

 旬になってきた夏の代表川魚、アユの塩焼きです。初夏の若アユのはずが、やたら骨がたくましく頭は硬く、身はふっくらというよりもがっちりとした感触。もしかしたら天然物でしょうか。塩加減は程よく飾り塩と一緒に食べると丁度良く。味の変化に酸味がほどよい蓼酢も。熱々の焼きたて配膳です。

 

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【温物】:南瓜茶碗蒸し 梅麩

「南瓜だけを使った茶碗蒸しです」と配されたのがこの一品。王道の卵を使った出汁とふんわり玉子のものではなく、緩くポタージュのようにきめ細かい。

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 カボチャの果肉部分だけを炊いて裏ごししたものではないかと思います。これも温泉水なのか・・・。カボチャの滑らかさ、コク、濃密甘味を説明するにはこれしかないかと。これに銀杏、鶏もも肉、エビ、椎茸、梅麩の具材。どれも下ごしらえしてありカボチャの風味と溶け合っています。

 

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【鍋物】:美熊野牛温泉しゃぶしゃぶ

 お出汁はなんと温泉だけ。味見をすると硫黄の風味。カツオも昆布もありません。そして出てきた熊野牛はロースでしょうか。脂身と赤身が明確でありながら霜降る見た目で上物です。飛騨牛や近江牛は赤身と脂身の融合が極まっていますが、私的見解では熊野牛は赤身の旨味に底力がある印象です。

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 やはり口にすると赤身独特の確かな旨さです。そして、温泉成分により食材の旨味に深みが増し柔く炊きあがります。味付けはカボス、酢橘、柚子でもない柑橘の酸味が強いポン酢。和歌山県独自の酸味と苦味が強い柑橘「じゃばら」を使用した物でしょうか。売店に「じゃんばらポン酢」が売っていたので、これだったかもしれません。薬味に紅葉おろし、わけぎ。野菜はエノキ、白菜、水菜、マロニーです。

 

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【御飯】:温泉御飯

【香の物】:柴漬け、大根菜、お新香

【留椀】:浅蜊汁 みつば

 温泉で炊かれた白米は少し黄色がかった色合い。温泉によってお米の糖質を抑えてあるのにコクがある不思議な味覚です。留椀(とめわん)のアサリは塩加減を控えた「おすまし」。アサリを凝縮した酒蒸しのような椀はよくありますが、この「おすまし」はアサリと三つ葉のシンプルだが上品なのに豊潤な香り。

 

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【水物】:メロン オレンジ ケーキ

 メロンは完熟でものすごく甘くジューシーでそのままかぶりつくと果汁が溢れます。オレンジは通称オレンジではなく、みかん味で甘夏のような味でほんのり甘い。ケーキは見た目はロールケーキなのに、ちゃんとしたお菓子屋さんのお味です。ロール生地は押すと戻ってこないぐらいの、しっとりふんわりとしたモカ味。クリームは風味がよいバターが先行し下味はなんでしょう。最初から最後まで悩ましくもおいしい夕食でした。

朝食

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・温泉粥

・切り干し大根と飛龍頭(がんも)の煮物

・温泉玉子

・小松菜のお浸し

・湯豆腐

・サバの塩焼き

・お海苔

・麩とワカメの味噌汁

・香の物(梅干し、塩昆布、胡瓜)

・温泉御飯

 名物温泉粥のしっかり硫黄風味にお醤油を少し垂らすと、温泉によるコクでそれだけで雑炊のようです。切り干し大根はあっさりとした味付けに、ほろりと解ける生地とサックリと蓮根が練り込まれた「がんも」。濃厚温泉玉子や小松菜もとても繊細で素材が活きてます。湯豆腐は温泉豆乳鍋仕立てにまろやか。しかも豆腐も半丁ほど入って、たっぷりと食せます。最後はやはり、温泉御飯を和歌山らしい自家製の梅干しでちょうだいしました。お粥、煮物、塩焼きと熱々で提供されたのは、とても美味くありがたく。

 

まとめ

 緊急事態宣言解除後の初めての他府県の宿泊です。100%のおもてなしをしたいが、模索をしながらサービスを提供されていると感じました。従業員の方は皆さんマスク着用、お食事処では食後のテーブルは徹底消毒、チェックアウト後の客室換気も徹底されておられるようでした。

 旅館あづまやさんに泊まる目的は、あの湯舟に体を沈めてみたいというのが一番でした。関西では珍しい硫黄泉は、泉質、風情、つぼ湯、どれをとっても非の打ちようがない温泉。温泉街は小さく華やかな物はありません。しかしながら、お宿と温泉街の旅情をゆったりと楽しみたい方には最高のロケーションです。お料理は正直なところ二の次かなと思っていました。ところが、旬の物、地の物、高い物を使った和歌山らしい美味会席。近代化されたホテルでは味わえない、鄙びの時間を過ごしたい方には最高の宿泊になるのではないかと思います。

宿泊料金

 非常事態宣言が出る前のじゃらんバザールでの予約です。その時は、キャンセルが相次ぎ、各旅行サイトでもクーポンが余りに余っていたので、解除されないならキャンセルしよう・・・と思い予約。通常40000円前後からのお宿ですが、定価で泊ってもそれ以上の宿泊が期待できるお宿と思っています。自分の調べでは旅館あづまやさんは、お部屋を安く売らないお宿でもあります。なので、「じゃらん」からのクーポン利用ができれば最も安く泊まれるのではないかと思います。

宿泊日:2020/6

旅行サイト:じゃらん 

プラン:2食付き■日本最古の温泉を堪能するプラン♪

合計料金:39600円

クーポン:7000円(じゃらんバザールクーポン)

支払い料金:32800円

獲得ポイント:328P

湯の峰温泉 旅館あづまや 宿泊予約

『じゃらん』

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おまけ

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 温泉街には湯煎場があります。温泉卵を作ったり、トウモロコシやジャガイモなどを源泉かけ流しで贅沢に茹でることができます。レトルトカレーとサ〇ウの御飯を湯煎してお昼ご飯にしようとする強者もいました。温泉で茹でると食材に深みが増すので、思い思いの食材を単純に茹でるという調理を楽しむのも面白いかもしれせん。

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 もう1つの楽しみに10リットル100円で源泉のお持ち帰りができます。お風呂に入れるもよし、お料理に使うもよし。旅館あづまやさんに則って汲んで帰ってお料理に使ってみました。匂いは硫黄泉。料理に使うと硫黄はなくお出汁要らず。いろいろ使いましたが、とにかくコクがでるのでお料理好きな方は是非に汲んで帰ることをお勧めします。



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