いい温泉宿、おいしい料理宿

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再び訪れたいお宿探訪と趣味のブログ

春陽館【長崎県 小浜温泉】~リーズナブルに泊まれる古き良き有形文化財のお宿で、熱量日本一の温泉を源泉かけ流しで味わい。ぴちぴち食材の手作り料理で、まったりと過ごす一日~

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 春陽館さんを発見してから訪れてみたいと思いつつ5年が経過。九州には2回訪れていますが、関西からは幾分遠く登りたい山や観光地を選別していたら、お泊りにくる機会に巡り会わなかったのです。

旅情

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 海沿いにある小浜温泉街は、至る所から温泉の蒸気が噴き出し、火山が多い九州らしい情景を呈しています。コンクリートの建物に置き換わっていく温泉街において、1軒だけ時が停まったかのような建物があります。それが春陽館さんです。建物は木造の本館に、画像左手にある鉄筋コンクリート造の別館に分かれています。

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 丸みを帯びた寺社で見る唐破風(からはふ)という印象的な車寄せでお出迎え。本館は木造3階建ての昭和12年築、改築改装を繰り返しながらも有形文化財に登録されています。感染症対策の一環と思われる、車はセルフ駐車で荷物もセルフでお邪魔します。

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 玄関の間口はとても広くとられています。 早くにチェックインしましたが、すぐにたくさんのお客さんが来訪しフロントスペースは一杯に。どうやら常連客の方が多く訪れていたようです。

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 別館と合わせると40部屋程なので、それを思うと玄関はかなり広くとられています。建物は当時のままですが、内装はかつて雰囲気を残したまま改装されて新しい。

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 玄関上がってすぐ右にはロビーがあり、ロビーに沿って奥に行くと階段が付いています。

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 ロビーには喫茶も併設されています。当日は営業していたのかは分かりませんが、ロビーには雑誌も置いてあったので、お茶を楽しみながらゆっくりと時間を過ごせそうです。

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 ロビー奥には喫煙室が設けてありました。同じ灰皿を共有するのではなく、喫煙するにも一席ずつソーシャルディスタンスが成されている。有形文化財での火災が続いているので、部屋を禁煙にしているお宿が多くなっています。あわら温泉のつるやさんから始まり、先日は湯田中温泉よろづやさんの松籟荘が消失してしまいました。松籟荘好きだったんですけどね・・・。

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 フロント横、本館のど真ん中には2階への階段が付いています。この階段の構造が複雑なので、後程ふれてみたいと思います。

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 ロビー横の廊下を進むと途中にエレベーターがあります。文化財の木造建築にエレベーターがあるのはとても珍しい。建築してから後付けのエレベーターを設置するのは、かなり大変と聞いたことがあります。ましてや木造ですし。

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 廊下を進んで突き当りには本館の大浴場があります。右手の扉には貸切風呂がありますが、稼働はしておらずお風呂の項目でその真相を。

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 玄関に一度戻ります。玄関上がって左手、ロビーの反対側には売店があり、酒類や菓子類、お土産物が置かれていました。

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 売店内には、必要があれば浴衣もセルフでサイズ選びができます。これも感染症対策の一環なのかな。女性には色浴衣のサービスがありました。

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 売店前を抜けていくと、ショーケースに飾られた恐らく春陽館さん縁のお皿や漆器の展示。周辺の観光パンフレットや特産品の展示があります。奥へ行くと個室の宴会場があり、別館の建物に繋がっています。

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 売店には良心的な料金の自動販売機も設置されています。

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 さて、冒頭で後程ご説明といった本館ど真ん中の階段へ戻ります。ロビーから上がってきたと想定して、建物裏手になる奥が宴会場、2階客室と3階客室はすべて海側に面しておりオーシャンビューとなっています。

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 こちらは3階客室です。本館は内廊下で少し薄暗いですが、すべてのお部屋で海を臨めます。べニア木の内装が昭和館を漂わせます。床や壁紙は新しく張り替えて清潔にしてありました。2階客室廊下も思う気は若干異なりますが同じような造りです。

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 各お部屋には庇(ひさし)が設けてあり、当初の和建築のこだわりが垣間見えます。

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 天井には網代のあしらいかと思いきや、網代風の壁紙リフォーム。昔は網代天井だったのでしょうか。昭和建築らしく板張りの天井や壁が特徴的です。

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 別館方面と逆の方向へ行くと、廊下の端に下り階段が付いています。

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 階段の吹き抜け上方を見ると、雨漏りらしき天井と受け皿の発泡スチロールがありました。これまで宿泊してきた古き良き旅館でよく見た光景です。今の若い方にはこの感覚が分かりにくいと思いますが、中年以降には響く・・・。少しずつやり直して、大事に建物を使っておられるのがよく分かります。

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 2階に降りるとバックヤードになっている洋風の部屋があります。かつては客室だったのか、個室食用のお部屋だったのか。

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 洋室風のお部屋の隣にはお食事処への廊下が伸びています。昭和館満載の板張り壁の廊下を行きます。小さい頃・・・お金持ちの友達のお家に遊びに行くとよく見た光景です。

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 お食事処へ進むと、夕食の準備がしてありました。建築当時の名残がある大宴会場でした。さすがに100畳はないですが、かなり立派な大広間です。そして、仲居さんの話声と笑い声が給仕室から聞こえてきます。従業員さんが賑やかなお宿は良いお宿。

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 宴会場前の廊下を果てまで行くと、二階客室の端と赤矢印の鉄筋造の別館への階段が付いています。3階も同じように別館へ行くことができます。

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 別館に足を踏み入れると、かつての昭和趣向の本館から、モダン昭和趣向の現代建築の雰囲気に変わります。木造からいきなりコンクリートの床に変わり、その硬さがよく伝わってきます。

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 大浴場の行灯の裏手には、清涼飲料からアルコール類、湯上がりの牛乳までオールラウンダーの自動販売機があります。欲しくなる良いところに設置されています。

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 2階にもう1つの大浴場があります。隣接した貸切風呂も同じ場所にあります。こちらは稼働していました。

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 エレベーターで別館1階に降りると、ダイニングと称したお食事処があります。不思議なのが本館1階ロビーから、この別館1階のダイニングに直接アクセスできないのも当時の建築様式を想起させます。別館宿泊のお客さんのお食事処だと思います。

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 別館客室廊下は古き良きバブルの遺産を感じる鄙びがあります。

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 別館のとある窓から本館の屋根を見下ろします。ん~芸実的な屋根だ。瓦屋根の木造建築の本館は雨漏りも大変と思いつつ、日本建築の古き良き有形文化財の風情も維持して欲しいと勝手ながらに思う。他のお宿の館主さんとお話をしたこともありますが、古い木造家を維持するのは本当に大変だろうと思います。

 

お部屋

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 案内して頂いたのは本館3階にある302号室です。

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 本間10畳+次の間6畳+洗面+広縁+トイレの間取りです。感染対策のためかお茶出しはありませんでした。

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 2畳程の踏込がある玄関スペース。

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 コロナ対策のためスタッフの方々が、お部屋に入らないように配慮して事前の布団敷が成されていました。

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 2人で過ごすには十分過ぎる広さ、お風呂上りに布団でゴロゴロできる幸せ。

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 本館の部屋は手を入れて小綺麗に改装されています。文化財のお宿らしく、欄間にはかつての装飾が残っていました。

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 広縁は3畳程ある大きさで余裕がありトイレも広縁から。建物は文化財であっても、トイレは安心のシャワートイレです。

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 本館の部屋は全てオーシャンビューとなっています。ヤシの木が植えられて暖かいイメージですが訪れたのは11月。それでも、温泉効果もあってか本州の11月より全然暖かい。

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 あらかじめ冷水も冷蔵庫に備えてありました。金庫、テレビ、アメニティ一式は必要最低限に化粧水などはありません。本館のお部屋には風呂がないので、1200円の貸し切り風呂がサービスとして付いていました。温泉街には酒屋、コンビニ、スーパーがあるので営業時間をリサーチすれば、いろいろと不便することはないかなと思います。

 他のお部屋も少し覗きましたが、昔のままの造りのようでしたが、このお部屋はリフォームされてあってモダン風に仕上げてあります。

 

お風呂

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 男女別の内湯が本館と別館に1ヵ所ずつ。別館には男女別の展望風呂が1ヵ所ずつあります。内湯は温泉ですが、展望風呂は沸かし湯の白湯です。貸切風呂も別館に2ヵ所あり、1つは内湯で源泉風呂、もう1つは眺望はいいが白湯です。泉質はナトリウム-塩化物泉となっており、本館の「山頭火の湯」は浴場に入ると特に匂いは感じられないが、湯舟に近づくと香ってくるほどよい玉子臭(硫化水素)。本館内湯の味は確かな塩味に、苦い鉄サビ臭の後に硫黄が鼻を抜ける。硫黄、鉄、塩と濁りはないがこれらの成分がミックスされた湯は贅である。一方、別館内湯「茂吉の湯」は同じように塩味はあるが、にがりのようなエグ味とオイリーな匂いで鉄サビ臭はない。お宿の方に尋ねてみると両方同じ源泉だという不思議です。自分の鼻と舌も当てにならないw 湯使いは源泉温が高すぎるので加水ありですが、ツルツル感が強く湯上がりはしっとり、湯量たっぷりの源泉かけ流しとなっています。

本館大浴場

山頭火の湯

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 本館1階にある浴場へ入ると何とも歪な形の湯舟が現れます。昔のままのレトロな浴場で半露天のようになっており雰囲気は抜群です。左の枝分かれした形状から九州を模したいるのでしょうか。10人ぐらい入っても余裕がありそうです。

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 別角度からみると赤丸が源泉の湯口となっています。青色に四角で囲んだ壁は無機質で、レトロな湯屋には似つかわしくないブロックとコンクリートで何とも不自然です。九州北東部分を分断する壁の向こうにも空間があるようで、脱衣所入り口右手に貸切風呂があったので、囲いを作って貸切風呂にしていたのだと思います。現在は使われておらず。

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 上画の赤丸部分では、析出物が付いた中央の筒は源泉口。ダバダバ注がれています。右が冷水、左が沸かし湯か?源泉はとんでもなく熱く、本物を口にしたいと入れると「あっつ!!」と口の中に水泡ができる本気の火傷をしました。源泉と加水は半々といったところだが、加水してもなお湯力の底力を感じる。この湯口の傍だと、かなりの「あつ湯」を楽しめます。

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 源泉湯口傍から振り返ると入り口と洗い場が見えます。昭和浪漫を感じる鄙びが堪りません。冒頭に使った小浜温泉に魅せられた著名人の書を、洗い場に飾ってあります。ぬる湯がお好きな方は源泉口から離れて、枝分かれした鹿児島付近で入りましょう。

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 柱には析出物が層になって付着しています。水面よりしたのタイルは黒くなっており、硫黄効果だったりするのでしょうか。源泉の濃厚さが伺えます。

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 九州南端に位置するところには捨て湯口があり、小滝のようになってお湯がどんどん流れていきます。古き良きが好きな自分にはこの湯屋で宿泊日はダラダラと過ごさせて頂きました。ただ、真冬にはいいが夏は厳しいと思わしき湯温。訪れるなら冬か。

別館内湯

茂吉の湯

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 別館2階にある浴場に行くと、真ん中にある浴槽に対して広過ぎる不思議空間の湯屋。

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 反対側から見ても、やはり不思議空間です。かつては他にも湯舟があったのではないでしょうか。柱には「山頭火の湯」と同じように縁の方の書が飾ってあります。洗い場もお部屋の数からすると十分な備えです。

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 湯口を下から見ると、冷たい熱いがはっきりとしています。激熱の源泉を口に含むと玉子臭、にがりと塩、オイリーな風味あれど、鉄錆臭はないが同一源泉なんですよね・・・。

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 ハート型の湯舟には浅く区切りがあり、加水栓らしき向かって右の湯舟がわずかに「ぬる湯」か・・・。本来であれば「ぬる湯」と「あつ湯」で入り分けできるようにしてあるのかもしれませんが、正直なところ両方とも「あつ湯」派好みの温度でした。

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 山頭火の湯と同じく切り口の溢れ出しは湯量の多さを物語っています。身体を沈めると湯舟全体から溢れ出すお湯は贅の極み。

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 茂吉の湯には露天風呂が併設されています。外に出ると小浜温泉街を見て取れます。湯舟に浸かると眺めは空しかありません。ガラスの壁には外から見えないようにマジックミラー仕掛けとなっていました。

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 併設露天風呂の湯口は、源泉の投入量はかなり少な目のようです。左が沸かし湯、、真ん中が源泉、右が冷水なのかなぁ。ツルリとした浴感はあるが白湯に近いです。浸かると景色も今一つで、温泉というよりは夕涼みを楽しむ露天風呂です。

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 各浴場にはクレンジングとシャンプーバイキングがあり、化粧水から乳液と、髭剃りからシャワーキャップまで、値段帯からすると考えられないほどに備品が充実しています。

展望風呂

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 別館最上階にはオーシャンビューの展望風呂があります。浸かるとやはり空しか見えない。こちらは温泉ではなく白湯です。温泉好きにはスルーな浴場。やや消毒臭もありお客さんが来た気配もなく・・・。

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 訪れた11月には外気が冷え込んで、お風呂には湯温が下がらないように蓋をしてありました。設備として洗い場もあるものの、敢えてここで洗わなくても・・・。真夏は気持ちがいいのかもしれません。

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 壁の上から外を見ると確かに景色は良く、サンセットの時間が公式HPにあるぐらいなのでお宿の売りは夕日を倒しむお風呂のようです。

貸切風呂

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 2カ所ある貸切風呂は、白湯沸かし湯の展望風呂と、温泉の内湯です。迷いなく温泉の内湯貸切をいただきます。不自然に積み固められたブロック塀の向こうは「茂吉の湯」があります。昔は同じ浴場内にあった湯舟だったのを、仕切りを作って貸切風呂にしたような感じです。

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 昭和館があるタイル張りの湯舟は、見た目以上大きさがあり2人だと窮屈さはなく快適に入れます。小さな子供さんが2人いても家族でくつろげる大きさはあります。

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 温泉好きにはたまらないのが、赤い蛇口は自由に捻ることができ、左の塩ビ管から源泉を好きなだけ投入できます。ただ、源泉の温度は高いので、掛け流してもそのままでは入れません。なので、ザブザブ入れさせて頂き、源泉の純度を上げてからの・・・湯もみ!!!湯もみ!!!湯もみ!!!生源泉を楽しむためによくやるやつです。

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 他の浴場にもあるのでしょうが、ここのタイルは白く肉眼で少数ながらも黒い湯の花が見受けられました。

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 湯もみの果てに浴槽内の温度は下がり、あっついながらも本来の温泉の質を楽しみます。いやはやツルツル感やしっとり感、塩味と硫黄臭がどこよりも濃厚でたまらん!切り口からは静かにお湯が溢れ出し、熱々のお湯だが濃厚な源泉を堪能できる素晴らしい貸切湯です。

 

お料理

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 朝夕ともに本館のお食事処でいただきました。別館の1階にもダイニングがあるようですが、宿泊する棟によって食事場所が変わるのかもしれません。夕食は流石海辺の温泉街というだけあって美味い海の幸が使用されており、晩秋らしい山の物や地物を上手に取り入れたお食事が配されます。配膳は献立通りではなく順不同だったので献立通りにしたためています。

 献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。

夕食

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 テーブルには先付、前菜、お刺身、焼物、釜飯などの事前配膳です。そして、アワビが生け簀から揚げられて間もないのか、ウネウネと身をよじり新鮮元気!!

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【小鉢】:銀杏豆腐

 柔いゼリー地は寒天か。お出汁はカツオの銀餡にショウガの搾り汁を入れた物かと。豆腐を口に入れると浸し出汁の味だけがします。そのまま飲み込まず噛み続けると、荒切りにされたギンナンの清涼な香りが口の中に広がってきます。装飾にはカニの剥き身とキャビア、軸三つ葉です。

 

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【旬菜】:五点盛り

①紅葉羊羹 ②うずら柿 ③含め牛蒡煮 ④素麺白和え ⑤焼さつまいも ⑥煎り銀杏 ⑦青栗

 献立には5種ですが、実際には7種。①もみじを模して上品な甘みのある羊羹に仕立ててあります。何かの果汁も入っているようですが分からず。 ②うずら卵を柿に見立てた一品。玉子は燻製でオレンジに色付けしてあり柄と葉は烏賊です。葉の緑はどうやって出しているのか・・・。 ③牛蒡は甘口醤油で炊いて振り胡麻。 ④水菜、ソーメン、菊花、シメジ、ニンジンを白味噌を使った白和えに。 ⑤姫サツマイモをもっちりと蒸し焼きにしてあり濃熟甘味。 ⑥季節の一品はそのままの炒り銀内。 ⑦これまた見た目が面白く青栗のとげを表現しているのは抹茶素麺。しかも松葉はやはり素麺で柄の部分はべっこう飴で寄せてあります。栗は甘露煮。仕事が細かい!

 

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【吸物】:いかの白子つみれ

 希少なイカの白子を練り込んだすり身です。イカの身も入っているのか、と歯を立てるとプルっと弾力があり、歯は入り始めるとスルスルとした噛み心地は、もっとりとした抵抗感がありマシュマロのような雪解けもある不思議食感。イカの旨味は濃く程よい塩加減に、上品な京風カツオ清汁を合わせてあります。添え色には彩カイワレ大根、巻麩。香りは帯柚子。

 

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【刺身】:オーロラ盛り オレンジ台 鯛 鰤 梶木 烏賊

 オーロラ盛りとは初めて聞く盛り名ですが、台座にポンカン?が敷いてあり、虹色のプラスチックアーチの結びを施してあります。これがオーロラ盛りの意かな?

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 バブリーな感じがする装飾盛りですが、海の街というだけあってどれも新鮮です。タイはゴリゴリ、ブリはコリプリと歯応えはまさしくその日に水揚げたかのよう。そして甘旨く生臭さは微塵もない新鮮さしかない海の幸。カジキも赤身味はしっかりとあり、イカはスルスルと入るスルメか。これを九州らしいまったり甘濃い口のたまり醤油で。つまは大根けん、大葉、青・赤トサカノリ。薬味は紅葉ニンジンに山葵、蓼。

 

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【焼物】:鮑踊り焼き

 事前配膳で、席に着いたときからウネウネと蠢いていた小振りの活アワビ。

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 火が入るにつれてアワビが残酷にも暴れ出します。1分もしないうちにチーン・・・。南無南無・・・。生食でも行けそうなほどに元気なアワビ。焼きあがったらお皿に移し添え付けのバターで味付けを。

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 奪った命はありがたく、きっちりといただきましょう。お好みの焼き加減で火から外して、ナイフとフォークで切り分けて。ミディアムレアで火からおろした食感は、コリッコリッでアワビ味が蜜。その御身を食したら残ったワタは、残り火に戻して溶けたバターでさらに加熱して海藻味のワタまで美味しく。浸け合せのエリンギ、パプリカもワタバターに浸けて足後までアワビを堪能しました。

 

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【温物】:胡麻そーめん

 カツオベースと思わしき出汁には、薄口の甘醤油出を合わせて、香ばしく摺り胡麻を混ぜた餡に仕立ててあります。表面に焼きを入れてから蒸したのか、鶏はとてもふんわりと柔く、その下に胡麻そーめんが仕込まれてあります。出汁を餡にしてあることで絡みがよく、摺り胡麻餡と黒ゴマを練り込んだソーメンの味と色の対比も面白く、黒と白の胡麻が握手している一品は新鮮な出会いです。餡にはシメジ、彩生麩、何故か大豆と珍しい。鶏には針葱と針唐辛子の薬味のあしらい。

 

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【鍋物】:牛すき焼

 最初からテーブルにとっくりが置かれていて、何だろうかと思っていたら、すき焼の割り下でした。霜降り具合はそこまでなく、バラ肉のような色付き。

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 給仕係の方が具材が盛られたお鍋をもってきて、どこで火に掛けるの??と見ていたら、アワビの焼物で使用した「ごとく」に、新しく固形燃料をくべ、鍋に割り下を注いで下さいました。砂糖の甘味と醤油が濃厚な割り下。

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 くたくたと煮えてきたら、あら?上品な和牛風味と醤油の香りが漂いアクも強くない。

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 真黄色の溶き卵に肉をダイブさせます。卵の深い濃甘味と、濃い味の割り下との相性は上品さはない。ただ、悪い意味でなく、すき焼きに関してはジャンキーな味は好みです。火が入る前の肉の質は、見た目が正直そこまで・・・と思っていたら、これがしっかり和牛味の脂がとても美味。雲仙での道がてら畜舎があったので、長崎和牛でしょうか。小浜温泉街にあるスーパーに立ち寄ると、都心のデパートで買うような良質なお肉が、びっくり価格で売っていました・・・。

 

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【蒸物】:茶碗蒸し

 スタンダードな茶碗蒸しです。地はかなり緩めになっていて、お出汁を流し込むような茶碗蒸しです。ワカメの磯が薫り、鶏の旨味が滲みだしています。むしろ、それだけしかない。質素で素朴というと安っぽい、ワカメの磯と鶏肉を純粋に楽しむなら上品な京風。お料理の感性って難しい。私的にはワカメの旨さを再確認した蒸しでした。余談ながら・・・なんでワカメ寿司とかないのかな?特上ワカメ握りとか、特上刻みワカメ軍艦とかあってもよさげなのにと・・・食べながらワカメに思いを馳せ。具材は鶏、銀杏、ワカメ、紅白かまぼこ、シンプルです。

 

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【替鉢】:海鮮グラタン

 これまでの流れからすると、いきなり右頬にブローをもらったのような和から洋への方向転換。濃い目のクリームソースに、トップにはたっぷりとチーズの層を厚く焦がして熱々配膳です。クリームソースは美味しいけど普通、濃厚チーズもあるあるスタンダードだなぁ・・・海鮮と献立で書いてあるので、どうせ冷凍物だろうと食べ進めると・・・。エビ、タコ、イカがプリップルっの弾ける歯応えに、噛むと食材の肉汁が溢れ出る瑞々しくジューシーな食感! なんじゃこら~~!!ノーマルグラタンがプラチナグラタンに格上げされました。それぞれの素材本来の旨さに加え新鮮過ぎる生食感が、各素材から溢れ出る旨味汁がスタンダードなグラタン地に馴染む馴染む。

 

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【御飯】:釜飯

【香物】:3点盛り

 食事の途中で火が入ったのは、桜エビの炊き込み御飯です。お出汁は昆布を一切れ。

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 エビの甲殻の匂いと、お釜の底にあるお焦げ醤油が混ざりあうと、甲殻香ばしさが増し増しになります。小さなお茶碗2膳分ありお腹いっぱいです。香の物はお新香、奈良漬け?、高菜炒め。画像のワサビはお刺身から引越し品です。ワサビを釜飯に混ぜ込んでも旨い。

 

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【水菓子】:フルーツ

 デザートは手の込んだ物ではない果物一線。晩秋・初冬の完熟の柿で締めくくりです。パリッとした秋の食感ではなく、サクッ・・じゅるじゅる・・っと濃密な柿独特の甘味がとろけます。もともと柿は好んで食べませんが、これなら是非にも食べたい。 

朝食

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 朝の最初の配膳はお重と、七輪で焼く海苔と焼物セットが置かれてあります。

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 七輪に火が入ると、まず海苔を炙ってパリパリに炙り上げます。

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・焼き海苔、アジとイワシの干物焼き

 海苔の仕上げた後は、鰯の煮干しとアジの一夜干しを炙り台に乗せます。アジには胡麻を振って風味を加えてあります。火が入ると青魚の風味が充満して食をそそります。

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・ネギ出汁巻き、緑黄色野菜練り込みカマボコ、カツオ節佃煮、小魚みりん干し

・イカソーメン イクラ添え(大根けん、レモン、パセリ)

・しっかり地の冷奴(ネギ、ショウガ)

・明太子

・一口蕎麦

・クラゲ粕和え

・ひじきの煮物

・香の物(大根菜、大根、梅干し)

 お重の蓋を開けると地物の海産物を盛り込んだ種類が豊富なおかず。 イカソーメンには朝から贅沢なイクラを添えた彩り。 冷奴は木綿タイプだが瑞々しく大豆濃厚に美味い。これまで泊まった九州のお宿では定番のようにある明太子。 九州はどこでも明太子は美味く、本州の明太子は正直・・・偽物です。いや本物だけどもw やけにあっさりとした麺つゆに浸した蕎麦にはイカソーメンのワサビを溶いて風味よくいただきました。 クラゲの酒粕漬けは見たことのない珍品で、ピリッと唐辛子の辛味を持たせてあります。 手作り感と地元食材が感じられる内容となっています。

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・白米

・お味噌汁

 おかずがどれも一口ずつなのでお米の配分に丁度良い。南国のお米はもっちりタイプではなく少し硬めの炊き上がりは私的には濃い味の海産物にとても合う。お味噌汁は甘味のある京風の白みそです。同じ食材であっても地域によって味が異なる、シジミの磯の香りが満にひたります。 

 

まとめ

 いつかはと思い、やっとこさ訪れた春陽館さん。本館の木造建築はどこか懐かしい昭和の風情です。特別なサービスはないですが、従業員の方の対応は気持ちよく昔ながらの温泉宿です。温泉は源泉が激熱なので加水は仕方ないところですが、手ごたえのある温泉感と源泉の湯量がすばらしい。むしろ、源泉が熱過ぎるから、源泉かけ流しにできないというのが正解ではないでしょうか。お料理はお値段からすると、海産物の新鮮さと内容からするとお釣りがきます。お値段と気持ちの良い滞在時間が良い意味でミスマッチしたお宿であると感じました。つまり、コスパは最強で近くにこんなお宿があれば、1か月毎に1回は行きたい、そんなお宿です。

宿泊料金

 季節にもよると思われますが、同じ料理内容で本館のお部屋が通常安値10000円を切ることが有るとも無いともという料金体系です。お料理の内容、温泉の湯使いからしても、考えられない値段設定でコスパが良すぎます。訪れたのは世間的な連休だったので、高めの値段ですが、定価でも定期的に泊まりたいと思わせてくれるお宿です。

宿泊日:2020/11

旅行サイト:じゃらん

プラン:大人のゆるり旅★ザ・定番≪獲れたてアワビ躍り焼き&牛すき焼き≫会席★夕日が美しい宿

部屋タイプ:オーシャンビュー【本館8畳~10畳】心落ち着く木造レトロ客室

合計料金:28600円(2人)

goto割引クーポン:10010円

支払い料金:18590円

加算ポイント:629p