塩原温泉でも塩分を多く含むお湯が湧く秘湯があるという。かつては他に旅館があったかは定かではありませんが、現在はお宿が2軒しかなく、そのうちの1軒が柏屋旅館さんです。
旅情
細い林道のような道を進むと、手前には以前泊まった川岸風呂がある明賀屋本館さんの建物があります。そこからさらに奥に進むと渓谷に佇む鄙びのお宿「柏屋旅館」さんが見えてきます。
玄関棟の隣には現在使われていないと思われる宿泊棟の建物があり、かつての玄関であろう立派な車寄せは昔のままの姿を留めています。建物は昭和の香りがする鉄筋コンクリート造です。
玄関近くにある駐車場に車を停めて、派手な電飾の明るい玄関からおじゃまします。
玄関ドアを入るとすぐにフロントがあり検温と消毒をして宿帳へ記帳します。感染予防にセルフで荷物をもってチェックイン。
貸切風呂がたくさんあるので入り方などの説明を受けます。⑦の川岸の湯は、水害のたびに水没してしまうので現在は使用していないのだとか・・・。最近は雨量が多いので管理が大変そうです。
お部屋に歯ブラシやタオルはありますが、髭剃りや櫛など必要であればフロント前で頂くようになっていました。
館内はいたってシンプルです。ロビーには酒類とソフトドリンクの自動販売機が設置されています。値段設定も良心的。また、生ビールも500円とこちらも安く湯上がりに飲めます。パンプレット類も充実していて、観光の予定が決まっていないなら一度覗いてみてもいいかもしれません。
館内はフロント前のエレベーター移動で2,3,4階は宿泊部屋となっています。夕方に撮ったということもありますが、館内は暗く古い感じでたまらなく鄙びている。
地下にはエレベーター降りて左手にお食事処。右側には浴場への通路があります。地下1階というよりは谷に沿って建物があるので、川底に向かって1階下がるといった感じです。
お部屋
フロントで鍵を受け取って向かったのは301号室です。
間取りは10畳和室+6畳程の広縁ベッドルーム+踏み込み+トイレです。谷川ビューの清々しい眺めです。
お部屋は何となくリフォームしたような感じです。大きな踏み込みにはトイレがあります。温便座ではありますが、シャワートイレではありません。
2人で過ごすには余裕のある和室と、テーブルセットと洗面のある大きな広縁にはベッド。お布団敷を簡略できるのでお宿側も客側も気兼ねない。ただ、冬になると窓際にあるベッドでは寒さをかなり感じるのではないかと思います。金庫は100円を入れて使用するタイプですが、チェックイン時に200円を受け取ることができます。使わなかったので200円は返金しました。
冷蔵庫は空なのですが、商品を引き抜くと料金が発生するタイプの冷蔵庫なので余地がありません。簡易冷凍庫と扉側のみ収納ができます。お茶セットには黒糖の温泉饅頭のお茶請け。アメニティのタオル、浴衣、歯ブラシはお部屋にあります。それ以外はフロント前で。
お風呂
柏屋旅館さんを訪れた最大の理由は、6カ所の館内貸切の湯巡りをしてみたかったことに尽きます。何回でもそれぞれに趣のある貸切露天風呂が無料で楽しめます。お気に入りの露天風呂を探してしっぽり楽しめるのがうれしい。泉質はナトリウム-塩化物泉となっています。泉質からは分からない程よい塩味と強い鉄サビ臭。
湯舟をこすると指先には茶色い湯の花が付き源泉の濃厚さが分かります。そして、ツルツルスベスベの湯感に体の脂がとれて一皮剥けたように新鮮な素肌になります。なによりどの湯舟でも湯量が豊富で「ざぶりざぶり」とお湯が捨てられ、源泉かけ流しなので常に新鮮湯が楽しめるのが素晴らしい。湯の温度はやや熱めとなっています。
内湯
地下1階から浴場への非常扉を開けると、向かって右は「かもしかの湯」、左の階段を降ると内湯です。
男湯
開放的な湯屋ですが人に寄ると、いろいろと気になる方もいるかも・・・。そういう口コミがあるのも事実ですが、私的には床に沁みついた茶褐色の温泉成分を見るとは早く浸かってみたい衝動に駆られます。
バブリー以前の様相でしょうか。ガラス窓と天井の高さからの開放感と、源泉かけ流しの浴槽は建設当初では画期的でたくさんのお客さんが訪れたのでしょう。
湯舟は半透明の濁り湯で浸からなくても鉄錆の臭いがほんのり漂っています。
源泉の湯口は閉塞してしまいそうな程にキノコ傘の析出物が出来ています。遠慮がない源泉の投入は温泉好きには最高の眺めです。
オーバーフローはありませんが、浴槽端にある捨て湯口からは樋(とい)のような物がついており、壁伝いにお湯が溢れ出していました。
女湯
女湯の内風呂は男湯と壁を隔て隣にあります。ブロック塀に囲まれた殺風景な監獄湯と相方のお言葉。まぁ・・・確かに風情も何もない感じです。正面のブロック塀の先には小部屋があったそうですが、今は使われておらず。
これが男湯との境の板壁。開放感という点では男湯との差が開きすぎている感じは否めません。入れ替えも無かったので、ガラス窓が大きいので覗かれてしまうのを防止しているのかな?
貸切風呂
雄飛(ゆうひ)の湯
雄飛の湯へはお宿の玄関から一度外に出ます。すぐに橋があって画像中央赤矢印の所にトタンのほったて小屋があります。
鍵を開けて赤矢印の順に階段を数段下り、山小屋風の脱衣所を抜けて行くと露天風呂が見えてきます。
川床にほど近く水流の轟音を聞きながら、樹林に囲まれた緑も爽やかですが、紅葉時にはさらに満喫できそうです。
4人ぐらい入れる大きさがあり、ゆったりと浸かることができます。
実際には画像以上の注ぎが感じられ、切り口からはの溢れ出しは凄まじく、捨て湯口のパイプに渦ができる程。
湯舟底の栓に繋がれたロープがとんでもないことになっていました。析出物の付着が成分の濃厚さを物語っています。すでに材質がなにかも分からない。
かもしかの湯
地下1階から高低差なく行ける露天風呂です。扉を開けると湯舟はなく開けた空間。
露天手前には使われていないプラスチック製の湯舟があります。今は湯は張っておらず簀の子で蓋をしてありました。
さらに進むと析出物びっしりの湯舟が現れます。3角形の湯舟には茶色の湯の花が沈殿しています。天井は広くとられているものの眺望は今一つ。
湯量は気持ちのいい程のかけ流しとなっています。
かわせみの湯
こちらも高低差ははなく、「かもしかの湯」と対になっている双子の湯となっています。かもしかの湯の反対側に回り込むと、剥き出しの貯水槽の横に扉があります。中に入ると同じように使われていない空の小さな浴槽が2つあります。
奥に進むと「かもしかの湯」と同じような台形の湯舟が姿を現します。
「かもしかの湯」に比べると開放感のある眺望です。
かもしかの湯と同じぐらいのかけ流し量があり捨て湯口も同じ形状です。
桐の湯
湯屋への扉を開けると飛び込んでくるこの風景。???なんで部屋があるのよ!?かつては温泉付き離れや宴会場や共同の大浴場だったのか。
後々湯屋を増設したのか分かりませんが創業当時?の木造湯屋がそのまま残っているのでしょうか。柏屋旅館さんに訪れた理由の1つに、この湯屋を体感したいというのがありました。
欄間や欄干には時代を感じさせる細かな巧の装飾が残っています。
専用風呂として使っていたのなら、とんでもなく贅沢な湯殿だったことでしょう。10人ぐらい入っても余裕のある湯舟は「あつ湯」となっています。
切り口からは投入口からよりも、多く溢れ出しているように見えます。捨て湯の切り口は析出物で塞がってしまうのか、析出物の塊を砕いて取り除いたような跡がありました。
みどりの湯
桐の湯までは平坦な道のりです。しかし、谷底にある2つの露天へ行くには桐の湯から川に向かって鉄階段を下って行かねばなりません。30段?ほど下ったでしょうか・・・。その先に「みどりの湯」があります。
3人では手狭な大きさの湯舟は、訪れた日は最も湯の花の沈殿がありました。開放感はあまりないものの秘湯といった雰囲気です。
茶褐色の濁りが一番強いお湯は、酸化が進んでいると言えば聞きがは悪いが、湯舟に身を沈めると茶色の湯の花が大量に舞い、視覚的には濃厚湯でうれしい限りです。ただ、脱衣スペースが湯舟の延長になっているので、脱ぎ着する足元は常に濡れているという難易度が高い着替えになります。
捻りが付いた湯口は、右に捻っても左に捻っても湯量は変わりません。他の湯舟に比べると、かけ流し量はやや少なく感じます。
雷霆の湯(らいていのゆ)
みどりの湯から更に降るとダートの道に変わり、いよいよ山歩きらしくなってきました。雨が降っていると足元が大変そうです。しばらくすると、獣害避け柵のような扉を開けて倒木の下を潜り抜けると赤暖簾の湯屋が見えてきました。脱衣所は真っ暗なのでフロントでランタンを借してもらえます。
脱衣所は目隠しはあるものの、湯舟は他の露天風呂と同じく野ざらしです。
4人ぐらい並んで入れる不規則な湯舟。身体を湯舟に沈めるとザザザザーと淵から川へ源泉が溢れ出します。
湯舟に滔々と注がれる湯量はとても豊かです。湯舟の中へ腰を据えると、足の裏とお尻が茶褐色の湯の花が大量に付きました。
湯量も湯の花も素晴らしいですが、雷霆(らいてい)の湯の魅力は、やはりこの御馳走絶景でしょう。桐の湯に続いて、雷霆の湯からの景色が見たくて柏屋旅館さんに来たと言っても過言ではありません。すべての露天の中ではやはりここが一番のお気に入りでした。
捨て湯口からコバルトブルーの川へとお湯が溢れ出ていきます。真夏だと浴場から川遊びをして温まれそうな程です。
気になったショットは下流を覗き込むと、明賀屋本館さんの川岸露天風呂が見えました。明賀屋本館さんに泊まった時は、上流側に湯屋があるなぁと眺めていました。まさか、柏屋旅館さんの雷霆の湯だったとは当時は知る由もなく。人気の湯屋のようで利用が多かったですが、空きがでたらお部屋に連絡をくれるサービスもしておられました。
湯屋の電灯はそれなりに明るいのですが、夜間は闇に吸い込まれ光は届かない。ここまで辿り着くのも真っ暗でした。
朝一番に雷霆の湯をいただきに向かうと何となく気配が1つ。湯舟から右へ振り向くとヒキガエルが一匹。温泉の温かさに寄せられたのでしょう。ジ~~~と観察していると、居所が悪くなったのか、ノロノロと石組みの壁を上り始めました。足のかかりが悪いようで踏み外しが多く、なかなかに上がれない様子でした。寒くなってきたので、そろそろ冬眠の準備をしないとな・・・。
お料理
朝夕共に地下1階のお食事処でいただきます。お料理に派手な創作性はありませんが、家庭的でありながらも良い素材をふんだんに使っておられます。素材本来の味を活かしたお料理にほっこりと身も心も温まります。
お品書がなかったので、配膳係の方から聞いた内容と、実際に食べた感触から献立を作っています。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
席に着くと土瓶蒸しと陶板焼きに火が入ります。
【先付】:つる紫とピーナッツ和え
見た目はほうれん草かと思って口に入れると粘りのあるつる紫かな。シャキシャキ感を残し、少し甘味を持たせたお醤油とクラッシュピーナッツで和えてあります。献立のなかでは唯一青味が清いお品。
【煮物】:筍と湯葉の炊き合わせ
最初からの配膳でしたがほんのり温かさが残っていました。具材はタケノコ、サトイモ、湯葉、キヌサヤ。タケノコはいかにも自家調理の切り口。他の物もそれぞれに調理してあるようでした。湯葉は幾重にも巻き上げた、日光のたくましい系の湯葉。マイルドなしょうゆ味で炊き上げてあります。浸してある出汁はタケノコ風味たっぷりの煮出汁。
【向付】:4種盛り
サーモン、鯛、マグロ、イカの4種です。正直期待はしていなかったのですが、これが思っていた以上においしい。サーモンはトロリとして紅身が濃く、鯛、マグロも本来の味がしっかりと乗っています。水臭さなどはなく新鮮そのもの。イカは甲イカ?スルメ?でしょうか。旅館調理のようでイカソーメンに仕上げてあります。造りは濃い口の醤油と薬味は本山葵で。つまは大根けん、大葉、たんぽぽです。
【焼物】:和牛の陶板焼き
焼き物は霜降りの和牛です。栃木牛でしょうか?いい加減に熱が入ると若旦那さんが火を止めに来てくれました。火が入りすぎるとせっかくの霜降りが硬くなるからでしょう。5㎜以上に分厚く切られたロース肉には黒コショウを振ってあります。
焼きというよりは蒸しに仕上げた肉質は、口にいれると滑り込むように解けます。上品な和牛脂はまろやかに、スタンダードなポン酢でいただくとさっぱりとして美味すぎる。牛脂が付け合わせのタマネギ、シメジ、ピーマンに沁み込んでこれまた旨い。
【御凌ぎ】:手打ちうどん
料理長お手製でしょうか。お料理の説明では「手打ちうどん」。
さぬきうどんのようなコシコシしたしっかりタイプではなく、弾力はありながもモッチリと麺が切れる感触。薬味は刻み白ネギに合わせ出汁の「温出汁をぶっかけ」でいただきます。お刺身のワサビも入れ込むと爽やかな辛味で食せます。
【温物】:舞茸の土瓶蒸し
止椀の代わりになる土瓶蒸し。舞茸の風味は豊かに濃い目のしょうゆと砂糖のお出汁。何度か口に運んで、ベースのお出汁が気になっていると、甲殻系の薫りが後味に含まれています。海老か?蟹か?と悩んでいると、具材を食べる時に桜エビが入っているのに気づきました。面白い組み合わせです。
【食事】:白米
【香の物】:胡瓜
【水物】:巨峰
白米はツヤツヤで甘味が強く和牛の陶板焼きでグイグイ進みます。自家製と思われるキュウリはしっかりとした浅漬け。水物の巨峰も甘味が強く瑞々しいものでした。
朝食
・焼き鮭 梅干し添え
・アスパラベーコン陶板焼き
・生卵
・オクラおかか和え
・焼き海苔
・サラダ(フレンチドレッシング)
・白米、ナメコと豆腐の味噌汁
・フルーツヨーグルト
飾り気のないスタンダードな朝食で、夕食と同じく使われている食材は新鮮な物ばかりです。焼き鮭はふっくらと少し暖かく。お野菜がとにかく活きており、オクラもサラダもしゃきしゃきです。味噌汁は丁寧にこされてあり具材のナメコ風味と豆腐の大豆がかなり美味く胃袋に優しい一品です。
卵は陶板で目玉焼き、もしくは生食でも食せます。目玉焼きにしてから御飯の上にダイブさせていただきました。黄身がプリッとして濃厚です。
まとめ
建物は古く館内も少しくたびれた感じです。清掃はされているので、私的には旅情を誘うので嫌いではありませんが、リゾートホテルのように泊まるのであれば人を選ぶお宿かなと思います。お部屋は清潔感があるので宿泊には問題はないかなと思います。温泉は内湯に貸切風呂6ヵ所はとても贅沢な構成です。雷霆の湯(らいていのゆ)は一番谷底にあるので行くのは難儀ですが、湯量と眺めは最高で何度も入ってしまいました。風呂に浸かりながら景色を肴に一杯やるというのも良いかもしれません。料理に派手さはありませんが、自家製の畑から採ってきているのか、とにかく素材の味が深く本来の旨さが楽しめます。
宿泊料金
平日で25000円~ぐらい。休前日だと33000円~なので、平日とお休み前の値段差が大きいです。予約時はお肉量増しのアップグレードプランしかなく、シルバーウィークということもあって少しお高めとなっています。お風呂は温泉好きなら一級品です。お料理は25000円~30000円ぐらいのお宿かなと言った印象。温泉+料理というと30000万ぐらいが妥当なのかなぁという感想です。
宿泊日:2020/9
旅行サイト:楽天トラベル
プラン:【アップグレード】【1泊2食)】~やわらか和牛グラムアップ陶板焼き~現金特価
部屋タイプ:和洋室(10畳+ツイン)
合計料金:35200(2人)
クーポン:12320円(Go Toトラベルクーポン)
支払い料金:22880円
加算ポイント:229p