木屋旅館さんは江戸時代に庄屋として営業を開始。明治から旅館専業で150年以上前から三朝温泉でお商売をされています。画像の建物は明治からのもので2016年の地震で損傷をうけたようですが頑張って維持されておられます。
旅情
建物は明治、大正、昭和と時代と共に増築されてきており、現在は閉じられていますが、昭和の館にも入口らしきものがあり、建物の造りに違いがあるのが分かります。ディスプレイがあるので何かお商売されていたのでしょうか。対岸から見るとさらに建築物の種類の違いがはっきりしています。すべての建物は有形文化財に登録されています。昭和と大正の館だけが3階建になっています。
玄関を上がると左手に帳場と、廊下を進んで階段下には貸切風呂があります。館内は増改築によくある迷路構造になっています。お宿全体は大きいわけではないので、迷うことはないと思います。ただ、「部屋どこだっけ?」と自分の部屋を見失うお客さんがいたので、脳内でマッピングできない方は注意してください。
とにかく階段が多く直線移動ができません。上の画像以外にも2,3段程度の階段がちょくちょく登場し、通路もまっすぐ進めず分岐点の多さもなかなかで袋小路もある。
しかし、館内には趣向を凝らした職人さんの遊び心が、ところどころに垣間見ることができ造形美に飽きません。ちょっとしたお土産が置いてある売店もあり、アンティークな家具が目を引きます。
温泉地熱を利用したオンドルのお部屋も覗いてみました。ここでヨガをしたりするようで、このエクササイズルームは半地下にあるので、源泉の温度やラジウム放射線を感じるようになっているのでしょうか。このオンドル部屋は高温で、サウナのようなしっとり感がありました。浅い所から湧出している三朝温泉ならではないでしょうか。館内にはエレベーターはなく段差の昇降がいたる所にあります。多くの客室は2階より上ですが、1階に1室だけ自然温室の客室があるようです。当日は常連と思わしきお客さんがお泊まりしておられました。
湯あがり処にはウォーターサーバーがあり喉を潤すことができます。清涼飲料水を求めるのであれば、玄関を出て建物沿い左手に自動販売機があります。
お部屋
本来は「昭和の和室(B)」での予約でしたが、グレードアップで「昭和の和室(D)」の「若葉」というお部屋に案内してもらいました。
お部屋の間取りは本間10畳+踏み込み2畳程+床の間+広縁+洗面+トイレです。踏み込みにはトイレと冷蔵庫があり、床の間には金庫、広縁にはトイレとは別に洗面台もあります。お部屋にはお茶セット、冷水も用意されていました。
訪れた冬の時期には石油ストーブを置いてくれてありました。木造建築なので廊下にでるとそれなりの寒さを感じますが、源泉の湧出する深度が浅いためか何となく旅館全体は暖かくお部屋では寒さを感じることはありませんでした。
窓からの眺めは裏手の三徳川を臨みます。画像では正面におもいっきり街灯が写っていますが、対岸にはホテルしかなく、それだとつまらないので斜めにみるとこんな感じでした。
お風呂
木屋旅館さんの温泉はラドン含有ラジウム塩化物泉です。公式HPによるとラドンはラジウムの崩壊による気体で、これを吸い込むことにより体内へ吸収させ血液の巡りを良くするのだとか。肌触りにあまり特徴はありませんが、味は確かな塩味を感じることができます。ただ、泉温がとにかく高いので火傷に注意です。そのまま飲泉したら口の中が火傷しました。
浴室は半地下になっている2ヵ所の貸切風呂と男女別の大浴場があります。大浴場は残念ながら入れ替えはありません。理由として記事を見て頂けると分かるかと思います。貸切風呂は予約なしで空いていれば、いつでも利用できるタイプとなっているので何度でも利用することが出来ます。どの浴室も最低限のものは揃っていて、ドライヤーや化粧水なども各浴室に用意されていました。
河瀬の湯
こちらは男性専用の大浴場です。掛け流し量は多くはありませんが、オーバーフローがしっかりと見て取れます。貸切風呂が人気なためか、大浴場では他のお客さんと合う事はなく大浴場は独占状態。体を沈めるとお湯が溢れ出て贅沢な気分を味わえました。貸切風呂とは一変して湯温が適温に調整されているので入り易いのもいいです。また、こちらにしかシャワーとカランがなく貸切風呂は湯温も高いため洗髪洗体はこちらで済ませるのがいいかもしれません。
女性の裸体の壁タイルがあり完全に男性仕様となっています。個人的にはどうでもいいとは思うのですが、人によっては思うところがあるので男女入れ替えができないのかな・・・。私的には入れ替えで他の湯船も楽しみたいものです。
河鹿の湯
女性専用の岩風呂ですが男性の浴槽より小ぶりです。相方に感想を聞くと「誰も入ってない。」と贅沢に入れたようです。こちらにもシャワーとカランが2つ備えてあります。
岩の上から滝のように新鮮なお湯が投入されています。掛け流し量は男性風呂と同じように僅かですがオーバーフローを確認できます。熱過ぎず適温で入浴できるように調節されています。
手掘り家族湯
大正時代から利用されている手彫りの源泉の湯だそうです。手で掘れるぐらい湧き出し口が浅いのでしょうか。半地下になっているのは、温泉の湧出口により近い場所で入浴するためのものかな。本当の意味での新鮮温泉が味わえるので涎物です。
そして・・・足元湧出です。つまり、空気に触れて酸化することなく湯船に湧き出しているので常時新鮮。ただ・・・・・湧出口に座るとお尻が熱いです。源泉の温度が高いので入る場所によっては火傷に注意を。湯船の底の敷き板が浮かないようにしているのか、石臼がおいてあるのでその上に座って入浴するといい感じでした。とにかく熱いので水で温度が調節できるように加水ホースがありました。こちらにはシャンプー類はありますがシャワーはありません。
楽泉の湯
木屋旅館さんの本命風呂である「楽泉の湯」です。この浴室も半地下になっていて地下2mから自然噴出する温泉を出迎えにいきます。
正方形の浴槽が2つあって浴槽は繋がっているのですが、あつ湯とぬる湯があるのかとおもったのですが、両方とも激熱!!指一本も浸かってられない。野沢温泉も大概熱いと評されますが、地獄の釜ゆでのように熱いのが木屋旅館さん。「天然湧出の醍醐味を存分に味わっていただくために、あえて温度調節はなにもしておりません。」と公式HPより。加水なしの源泉を味わいたいですが、さすがにこれは・・・・・無理ですな。気合いでなんともならない自然の脅威に、加水しないと入れないので水を入れて適温になって、いざ入浴!足元湧出なのでお尻が熱いのは致仕方ないが、浴槽の横からも湧出しているところもあり、気軽に浴槽内で体をもたれると殺られます!!下も横も温泉が湧いているという油断ができない。湧き出しの多さは贅沢なのに気を抜けない熱さ。ちなみに浴室には一方の貸切風呂と同じようにシャワーの備えはありません。
浴槽だけでなく壁面のタイルや洗い場の床も暖かさを保っていて、この浴室自体がオンドルとなっていました。入るだけで浴室暖房状態です。場所によっては立っているだけで足裏が熱過ぎる場所もあり、良く見ると石タイルの間から温泉が漏れ出てています。この貸切風呂には飲泉所もあるのですが、冒頭でも述べましたが無茶苦茶熱いので気をつけて下さい。とにかく風呂に入らなくて床に寝るだけでも岩盤浴的な効果がありそうです。温泉熱と放射線の両方を浴室だけで味わう事が出来るという意味では屈指の浴室だと思いました。
お料理
夕食
食事はすべて手作りで味付けも濃過ぎず食べやすい内容となっていました。頂いた会席料理には、ちょっとした創作があったりと内容としては色々な味が楽しめるようになっていました。アップグレードで魚の焼物や鳥取牛が付くような会席もあるようですがが、基本プランでも十分の美味しさとボリュームがあります。
過去の宿泊からの書き起こしなので、頂いた献立、記憶、ビデオ内のコメントをたどって記していますので若干実際の内容と異なることもあるかもしれませんのでご参考程度に見て下さい。
【食前酒】:飲酢
【先付】:カニ味噌
【膳付】:おろし和え
季節によって内容が変わるのかわかりませんが、宿泊したときはブドウの風味がきいた食前酒でした。先付はカニ味噌独特の風味を上品に豆腐状に寄せてある一品です。これに少し甘味を持たせたお出汁に浸し、飾りにキャビアが添えられています。舌触りがまろやか。「膳付」という献立はあまり聞きませんが、最初に手をつけるお料理としての子供のお食い初めを意識したものでしょうか。サーモンとイクラを大根おろしで親子和えにしてあります。味付けは酸味があり酢の物を意識したポン酢?かな。
【前菜】:旬彩盛り
憶えているところから。一番右はベーコンで白葱を巻いて炙ったもの。お隣は柚子を荒目にペーストにして錦糸卵を乗せて押し固めたもの。ミニトマトの中身はチーズだったかな。怪しく適当になってきたのでこのへんで置いておきます。お皿左下の干し柿のミルフィーユとかを見ると厚さが歪でご自身のところで作っておられるのかなぁと思いました。計9品という手が込んで賑やかな前菜は、どこに泊まっても芸術的なセンスを感じます。
【椀】:そば
深い香りのする温かいお蕎麦と濃い目のお出汁に、和牛のしぐれ煮がトッピングされています。牛肉の脂がお出汁に溶け出し、お蕎麦にからめて食べると和牛の脂で口の中が幸せになります。
【造里】:地魚5種
イカそうめん、海老、ひらまさ、カンパチ、バイ貝だったかな。三朝温泉は山に囲まれているので山間部のようなイメージですが、実は海が近く新鮮でお刺身がコリコリしています。関西風のたまり醤油で。あしらいは大根けん、大葉、こより人参、わさび、赤のりです。
【蓋物】:かぶら蒸し
カブを擦って卵白を合わせて火を入れて覆い蓋を作ります。中に入っていたお魚は恐らくタラではないかと。さらに木屋旅館さんのかぶら蒸しは柔く炊かれたカブも入っています。餡は薄味に仕上げてあってキクラゲとニンジンで彩をとってありました。手間のかかるお料理にしっかりしたお味。
【名物】:パン釜
木屋旅館さんには外せない名物料理のパン器の牛タンシチューです。内容量としては多くはなく会席の終盤にでてきますが適量で頂けます。ベースは和牛仕立てでしょうか。臭みのない脂の甘い香りにゴロっとタンがはいっており、彩に赤、黄のパプリカに、緑のピーマンと生クリームを添えてあります。パンは器にするぐらいなのでしっかりとした生地かと思えば、意外にもしっとりと柔らかい。
【揚げ物】:アナゴ
献立には「アナゴ」とだけ記載されてありました。最後の最後に揚げ物はちょっとしんどいところですが、てんぷらではなくカラりと揚げたカツだったのが返って良かったのかも。手前にあるのはサツマイモ、奥がアナゴなのですが、このカツ味付きです。揚げる前に下味を漬けているのかそのままで食べれました。アナゴは少し麹の香りがしていたので味噌漬けにしてから揚げているのかもしれません。味付けはソースでというイメージを覆す、これはとてもおもしろいと思いました。飾りに白髪ねぎ、カイワレ、ニンジン。
【雑炊】:カニ
【香の物】
【水菓子】:特製デザート
水菓子がカボチャのプリンだったかな。蜜をかけて滑らか触感のパンナコッタの様だったと記憶。カニの雑炊は量が多いです・・・・。しかし、冬だったので旬の風味は豊かでサラサラりと食べることができました。「白米もお替りできますよ」と勧めて頂きましたが、さすがにお腹いっぱいだったのでお断り致しました。
朝食
【3種盛り皿】
・揚げ巾着
・焼きサバ
・マーブルチョコパン
【6種盛り皿】
・半熟卵
・赤カブの漬けもの、梅干し、野沢菜漬け
・オレンジ
・レンコン、ニンジン、鳥の煮物
・インゲンゴマ和え
・ちくわ
【単品】
・サラダ
・コーンポタージュ
・お海苔
・なめこの味噌汁
・白米
朝食も手作りで仕入れによって内容が変わるみたいです。夏に宿泊した際は3種盛り皿にベーコンが、巾着の代わりにガンモが盛られていました。ポタージュは前回はじゃがいもの冷製でした。野菜多めでちょっとずつ色々なものを口にできるのはいいですね。なぜかのチョコパンは意外でした。
まとめ
入ってよし、食べてよし、泊まってよしと文句なしのお宿です。温泉を楽しむなら秋冬に行くことをお勧めします。とにかく源泉の温度が高く、夏だとその泉質を楽しむ前にのぼせてしまいます。夏と冬の両方に訪れてわかったことは、お宿全体が温泉効果によるものか、ほどよく暖かく夏だとお風呂からでる館内も暑く汗が止まりませんでした。建物は木造建築なので音がよく通り、古さを趣と楽しめる方には最高です。建物を大事にされているので清掃が行き届いて清潔感があります。お隣の声もまた旅情と思える方は是非。また、お料理に関しては先人達の宿泊記などを見ていると、季節や仕入れで変化があるようです。手作りで丁寧に仕上げて創作性もあるのでお料理の期待度も高いです。1回目はお食事少な目のプランだったのですが、物足りない感じがあったので基本プランを選ばれるほうがいいと思います。次回も基本プランのお料理で、お安めのお部屋で泊まりたい。
宿泊料金
さて、お値段です。木屋旅館さんは安売りされるのを見たことがありません。この宿泊日より以前に鳥取県で地震があって「復興割クーポン」を利用しました。公式では同時期で32000円からなので復興割クーポンの使用でだいぶ安く泊まらせていただきました。現行ではyahooトラベルからゾロ目のクーポン、旅!旅!サンデー、5の付く日などの5%ポイントアップを利用するほうのが一番安く泊まれるのではないかと思います。
宿泊日:2016/12(土曜日泊)
旅行サイト:楽天トラベル
プラン:基本プラン 「迷ったらこれ」 【登録有形文化財、木造三階の宿】【日本遺産の三徳山、三朝温泉】
部屋タイプ:昭和の和室(B)×1部屋
合計料金:35640円(2人)
クーポン:10000円(復興割クーポン)
支払い料金:25640円
獲得ポイント:256P