不思議な色の濁り湯に、一風変わった趣向の貸切風呂に入ってみたい。と、以前から気になっていた山田屋温泉旅館さん。
旅情
嬬恋方面から少し分かりにくい県道241号線に入ると、すぐに立派な門構えの建物が目に入ります。建物の道路を挟んで反対側に駐車場があるので、車を停めてチェックインです。
車寄せの前門からは中門が見え、さらに暖簾を抜けると玄関が現れます。
玄関の扉を開けて中に入ると若女将さん?らしき方が気持ちよく出向かえて下さいました。
ロビーには昭和レトロなグッズがたくさん展示されてあります。丁度フロント前にあったソファーでウェルカム茶を頂きました。
なんとも珍しい吞み口が2つある器。緑茶と白花豆?の甘納豆が仕分けて入れられています。お茶を頂戴してお部屋に案内してもらいました。
ロビーには無料で利用できるティーandコーヒーBARがあります。甕には麦茶のサービスも。宿泊券が当たるミニゲーム的なおみくじがあります。館内にはちょっとしたクイズが張ってあり、全問正解すると同じように宿泊券が当たるなど、お宿での時間を満喫できるように工夫がなされていました。
ロビーにある階段を上がると客室があります。廊下には柔らかいタイプの枕も置いてあり、好みで使い分けができるようになっています。
この棟には書庫もあります。
1階に戻ってフロント前の通路を奥に行くと女湯、左に曲がって奥に男湯があります。
男湯手前には下に行く階段があり、こちらはお風呂付客室となっています。男湯の右手にはお食事処があります。
フロント横の冷蔵庫にはペットボトルの飲料が、130円と良心価格で販売されていました。少しお高めですけども、カップラーメン、お菓子類の販売もあります。また、館内にはビール、酎ハイなどが売っているアルコールの自動販売機があります。ソフトドリンクに比べるとアルコールはお高め設定。館内は充実した品揃えですが、必要な物があれば歩いて15分程度のところにコンビニがあります。
お部屋
案内して頂いたのは「つつじ」というお部屋です。
本間10畳+踏み込み1畳+板の間4畳程度+洗面+トイレです。冬場の炬燵はうれしいですね。このお部屋だけ禁煙ルーム設定となっているようでした。
板の間にはマッサージチェアと冷蔵庫があります。冷蔵庫内にはウーロン茶とオレンジジュースのサービス。サランラップ、アルミホイル、果物ナイフもあって湯治用のものでしょうか。吊戸棚に金庫。アメニティは過不足なく、洗面所の備品も充足しています。シェービングフォーム、化粧水、ドライヤー等、考えられるものは全て揃っています。トイレは安心のシャワートイレです。
翌朝には玄関扉前に牛乳のお届けがありました。蛇口からもおいしいお水が出るので、飲み物に困りません。
お風呂
山田屋温泉旅館さんのお風呂は、何といっても自慢の貸切風呂が特徴です。3つとも趣向が違った造りとなっていてなかなかに面白い。チェックイン時に2カ所の湯屋を選ぶのですが、翌朝は利用することができないので、宿泊日当日に入浴することになります。当日は「れとろ」という貸切風呂はデフォルトで、「石」と「釜」のいずれかの選択となっていました。
大浴場は翌朝のチェックアウト時間まで利用でき、男女入れ替えはありませんでした。冬季は露天風呂の利用ができません。全部の湯舟に浸かりたい方は、暖かい時期に往訪する必要があります。サウナも付いていますが、夜中と朝は利用できませんでした。
泉質はナトリウム-塩化物、硫酸塩泉となっています。ツルツル触感に鉄錆の臭いと、吟味すると分かる極少の玉子の香り。微量な塩気に薄茶とも白濁とも言える濁りがあります。湯使いはすべて自家源泉のかけ流しとなっています。
男湯(内湯:吾妻の湯、露天:川原石風呂)
4人ぐらいで丁度の湯舟に、気持ち少なめの源泉の投入量と思いきや、加温したと思われる新しいお湯が、かけ流し口の下からじんわりと湧いていました。
湯口周辺は析出物がびっしりと付いています。手押しポンプは手動で押すと冷たくこれは井戸水?でしょうか。
見た目のオーバーフローはなく、淵より水位が低いところに捨て湯口があります。ここから溢れたお湯が露天に注がれます。このシステムにより露天風呂の湯温が維持できないとのことで、冬季は露天風呂の利用はできません。
浴室は衝立で洗い場が仕切られており、浴場全体が何とも味わいのある雰囲気です。こちらにシャワーが4基あります。
脱衣所は個別スペースが設けられ、ドライヤーと髭剃りから、男性用のリキッド、ヘアームースまで備わっていました。
女湯(内湯:小熊の湯、露天:ひの木の湯)
浴槽の大きさは男性用のものと同じぐらいのようです。
お風呂の名前が「小熊の湯」なのに、かけ流し口には狸が鎮座します。お湯が内湯から露天風呂に流れていく仕組みは男湯と同じです。女性の露天風呂は桧風呂となっています。女風呂にもサウナが設置されていました。脱衣所にある備品は男湯と同じ物があり、お顔ケアセットだけが女性用の物となっています。
貸切風呂「れとろ」
貸切風呂はすべて外湯となっています。「れとろ」は玄関を出て右手の敷地内にあります。入り口がなんと大きな桶を横に倒したものです。
脱衣所からして何とも風情のある名前の通りのレトロ感がにじみ出ています。これらの展示物は自分より年齢が上のはずなのに、何とも懐かしく感じる不思議。脱衣籠がトランクバックというなんとも粋な計らい。
内湯よりも明らかに源泉の投入量が多くドバドバと流れています。しかし、かけ流されたお湯はどこへ?淵と湯舟の隙間から流れ出ていました。湯舟への踏み台が赤褐色になっているのは、浴槽に入ると踏み台に溢れ出るからのようです。ドラム缶風呂というだけあって、ドラム缶を縦半分に切ってあるので湯舟が半円です。風情はあるが、これがなかなかにお尻の位置が定まりません。
源泉が大量に投入されるので、大浴場よりも明確な強い鉄錆臭とツルスベ浴感です。手押しポンプのかけ流し口には析出物を剥がした後があり、温泉の濃厚さを物語っています。貸切風呂には洗い場がないので洗髪洗体は大浴場でします。
石・釜風呂
石と釜の貸切風呂は県道を挟んで、駐車場がある反対側にあります。赤矢印が入り口です。
もう1つの貸切風呂は「釜」を選びました。脱衣籠が釜という演出です。こういう細かいところに山田屋温泉旅館さんの遊び心満載です。
泉質は同じで釜の大きさに対しての源泉の湯量はまずまずです。
かけ流し口が変わっていて、まず鉄瓶に注がれそこから湯舟である大釜に投入です。その下のパイプからもお湯がでており、手をかざすとかなりの高温です。冬季は気温がかなり低く、露天風呂なので熱めに加温されているのでしょう。
翌朝、ちょっとだけ石風呂も覗かせて頂きました。頭上の筒から源泉が落とされるという何とも珍しい湯舟です。わざわざ、上に一度汲み上げているのでしょうか。
お料理
朝夕共に男湯手前にある「こよみ処」でいただきました。夕食は全てのお料理に山の食材がふんだんに使われていて、山の物ではないのは、お出汁ぐらいではないかと思います。他ではあまり目にしないようなお料理もあり、バリエーション豊かでボリューム満点の里山料理となっています。そして、給仕中のお茶やお水などの配慮は行き届いて、お料理の説明も聞けば、わざわざ厨房まで聞きに行って必ず答えてくれるという、おもてなしも満点です。
献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
【食前酒】:季節の果実酒
山桃とブルーベリーのワインです。山桃はほんのり甘いロゼワイン、ブルーベリーは渋みが赤ワインの吞み口。
【八寸】
①雪輪蓮根、紅鱒寿司、菊芋煎餅、干し柿と柚子チーズ
②鹿肉ジャーキー
雪の結晶を模した優しい酢が入った蓮根の下に、軽く塩と胡麻を持たせた酢飯の紅鱒寿司。菊芋のチップスは珍味でお酒の当てに。干し柿は果肉の部分だけを使って、柚子クリームチーズを合わせてあります。 鹿肉のジャーキーは全く臭みがなく、塩も強過ぎずタンパクで食前酒のワインによく合います。
③黒胡麻豆腐
④南瓜冷製スープ
黒胡麻豆腐はお酢を合わせた出汁に浸して、胡麻のまとわりつく濃厚さがあるのにあっさりと後を引きません。 南瓜のスープはとてもクリーミー。南瓜はポタージュのように滑らかに裏ごしされています。恐らく豆乳で伸ばしているのかな。南瓜チップスをトップに、中にはサツマイモレモン煮を入れ込んであります。
【お造り】:大岩魚昆布〆、銀光
岩魚は軽く昆布締めにしてあるようで、鰹と昆布の佃煮、岩魚卵の醤油漬けを上に添えてあります。これを和えるように混ぜ込みます。佃煮で下味が付き、卵を噛むと程よく岩魚に絡み、お醤油要らずの「いくらソース」。彩りに紫蘇花を散らしてあります。 「銀光」というブランド虹鱒です。脂の乗りは程よくプリプリした身振りに、鮭やサーモンとは一味違う旨味があります。鰹の甘口出汁醤油でいただきます。つまは大根けん、蓼、山葵、スライスラデッシュ、金魚草。
【お椀】:海老芋まんじゅう、すっぽん仕立て
ふんわりフワフワの海老芋風味豊満な饅頭です。生地に人参と椎茸を練り込んであり、すっぽんを刻んで旨煮?にした物を包んであります。繋ぎはもっちりとして餅粉かな?ベースのお出汁は鰹なのですが、すっぽんと言われなければ分からない程にほんのりと普段口にしない脂の旨味があります。これにインゲンと針葱を盛り付け、香り付けに紫蘇花が散らしてあります。給仕して頂いた係の方のお話では、すっぽんは足が早いので、生きたものを買い付けてお店で捌いているのだとか。
【焼き物】:岩魚塩窯焼き
お品書きを見ていると塩窯焼きか、なるほどね。と、思っていたら想像以上に巨大な塩窯とハンマーが登場しました。他の席でガンガン!!音が響いてきていたので、何事かと思っていました。いざ、自分も割り始めると「わ、割れへんやん・・・」、お上品に割れるような強度ではなく、「皆さん、ごめんなさい」と心の中で謝りながら、お行儀悪く割らせて頂きました。飛び散る塩!
苦心して割り終えると・・・。身振りの大きさに驚愕です。何このデカすぎるBIG岩魚。15-20㎝ぐらいのものが多いですが、この大岩魚は火が入って尚、25㎝ぐらいあったんじゃないでしょうか。川魚とは思えないほどの食べ応えがあります。風味付けにレモンが付け添えてあり、強めの塩味に丁度いい酸味です。
【くわ焼き】:上州牛と大和豚、浅間石皿盛り
くわといっても植物の桑ではなく、畑で使う農耕器具の鍬(くわ)です。このお料理のために、あつらえた物だそうです。とんでも演出です。食材は浅間山の噴石から切り出されたお皿に盛られて出てきます。
上州牛は過去に何度か口にしたことがあります。若干硬めの食べ応えのある、たくましいタイプが多かった印象です。山田屋温泉旅館さんの上州牛も、ヒレ肉のタンパクさと、やはりたくましさがあり、和牛の旨味をしっかりと持ち合わせています。甘味の強い豚ロースも透明感のある肉質でジューシーです。付け合わせの野菜は温野菜となっていました。味付けはニンニクとタマネギが効いた醤油だれに、塩とワサビです。
【鍋物】:猪の柚子香鍋、下仁田ネギ
鰹にお醤油と強めの味醂を加えた甘口出汁です。ここからは仲居さんの説明から。キノコと野菜を入れます。しばらくしてから、猪肉を入れて火が通ったころに、火をとめて輪切りの柚子を入れると絶品のお出汁の完成です。
最初のお出汁の風味からは想像もつかない柚子が豊かなコクのあるお出汁に変化します。芹の薬味、下仁田ネギの甘味が溶け込むのでしょうか。猪肉からはいい具合に味が滲みだし美味。
【食事】:大根ご飯、煎りからすみ、味噌汁、香の物
旬の釜炊きは大根ご飯です。ほんのりと醤油を効かせてあり、大根の葉の青さと根の瑞々しい香りに、ついつい食べ過ぎてしましいます。塩が適度に感じられる煎ったカラスミを粉にしたものが添えてあります。ふりかけのように食べて下さいと説明がありました。味見はしたものの、大根飯だけでも十分おいしく加味は不要でした。止椀と香の物は、やさしいナメコの味噌汁に、向こうが透けそうるほどの薄切りたくあんと野沢菜です。
食事の大根ご飯が1人2膳強ぐらいあったので、夜食のおにぎりにしてもらいました。桶盛り受け渡しで、さらに大根の漬物まで付けて頂くというお気遣い。
【甘味】:甘酒ムース
グラスを逆さに被せてアイスドームをイメージしてあります。ゆっくりと薫る丁寧に仕上げた甘酒のムースに、極薄のスライス苺を張り付け、リンゴを乗せてその上に苺のアイス。さらに杏?とパセリで見た目が華やかで、クリスマス仕様のようです。苺の甘さと、杏の酸味は、甘酒ムースのトッピングといった感じです。留めは苺のアイスの甘さで締めます。周りにはクラッシュアーモンドと粉砂糖を散らしてあります。
献立に載っていない炭火で炙って食べる饅頭が付いてきます。パンのように、ふっくらとしていながらも、もっちりとした感触があり米粉から作っているのかな。これを味噌ベースの甘味ダレを刷毛で塗り塗りと付けて香ばしく焼き上げます。
朝食
【籠盛り】
・リンゴジュース
・柚子ヨーグルト
・サラダ(人参、いんげん、紅芯大根、サツマイモ、レタス、たまねぎドレッシング)
・紅白なます(人参、大根)
・香の物(キャベツ、梅干し)
・シラス大粒納豆
・ほうれん草と数の子のお浸し
・炊き合わせ(筍、レンコン、ひねりこんにゃく、スナップエンドウ、梅人参)
・海老旨煮
【焼き石の蒸し料理】:ウィンナー、カレイピカタ、ニンジン、ブロッコリー、出汁巻き卵
【お手製の味噌汁】:舞茸、シメジ、茗荷、白葱、人参、水菜、白菜、大根、揚げ
・白米
・コーヒー、紅茶
いずれも丁寧な手作りで籠盛は華やかです。煮物は梅の飾り切りに、筍も盛られて春を先取り。数の子のお浸し、海老の炊き物、紅白なますは年始の風物としての季節料理もあります。目の前で蒸しあげてもらえる蒸し焼き料理は卵、魚、肉と熱々のメインデッシュ。魚籠にたっぷりと盛られたキノコ、白菜、青物、茗荷から種類豊富な食材の味噌汁です。これだけで鍋料理のようで満腹になります。白米もたっぷりと用意してくれていますが、さすがに食べきれませんでした。夕食と同じく素材の味が際立ち、野菜がボリューミーでヘルシーな朝食でした。
まとめ
公式HPなどを見ていると、レトロ用品に目がいってもっと古い建物なのかと思いました。しかし、訪れてみると近代的な建物に、昔の風情を持たせてあって懐かしい気持ちになります。泉質は想像していたように、湯量が豊富な濃厚源泉で大満足です。貸切風呂は「石」と「釜」に入る予定だったのですが、「れとろ」がデフォルトだったので入れませんでした。しかし、「れとろ」が恐らく湯量が最も多く、湯屋の趣きも楽しかったので、個人的には1番気に入った湯舟となりました。お料理も丁寧な仕上げで、新鮮素材を存分に美味しく味わえます。また、「くわ焼き」などの趣向が面白く、盛り付けなども目で楽しめる物も多くあります。客室数も多くはないので人の出入りは少なく、ゆっくりと温泉とお料理を楽しめることは間違いないお宿だと思います。
宿泊料金
さて、宿泊料金です。年始の宿泊では、公式HPと他旅行サイトでも同じ41600円±1000円でした。私的には山田屋温泉旅館さんが、値引きでお部屋を売っているのを見たことがありません。なので、特別なプランがない限りは、じゃらんで稀に配布されるクーポン利用が一番安く泊まれるかもしれません。期間限定ポイントがあったので2000p利用し5000円引きで泊まっています。
宿泊日:2020/1(年始泊)
旅行サイト:じゃらん
プラン:【特定日限定!にごり湯満喫ぷらん】上州牛付里山の会席を個室でお食事&貸切風呂無料
部屋タイプ:【和室10畳+広縁(禁煙)】マッサージチェア付!4名定員
合計料金:41600円(2人)
クーポン:3000円(エリア限定クーポン)
ポイント:2000P
支払い料金:36600円
獲得ポイント:366P