共立リゾートさんが手がけた2017年開業のお宿です。旅館棟の「佳雲」、アネックス棟の「月夜のうさぎ」という、二つの異なる趣向のお宿が隣接しています。浴場は旅館棟とアネックス棟は共有で、それ以外は別棟にしてあります。「月夜のうさぎ」さんではバイキングに対して、「佳雲」さんに宿泊するとグループ会社とは思えない、出雲ならではの会席料理をいただくことが出来ます。
チェックイン前に佳雲さんの目の前にある「弥山」に登山をしてきたので合わせてどうぞ。
※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。
旅情
目の前の駐車場に車を停めて玄関からお邪魔します。画像左手にある建物がアネックス棟の「月夜のうさぎ」さんで、「佳雲」さんとは玄関が異なります。
車を停めるとドアマンの方が荷物を受け取りに来てくれました。館内は完全にホテルですが、玄関は旅館の様相で瓦のキラキラが眩しい小さな門を潜ります。
門を抜けると石畳を進みます。草木が伸びる季節ですが、道の両サイドの植木は手入れに抜かりなく。
小さな橋には池があり金魚と鯉が泳ぎ高級感を醸し出します。
数部屋で営業しているかのような小さな旅館のこじんまりとした玄関。
玄関口に入ると右手には温泉露天風呂付の離れへの廊下があります。
玄関からは想像できないほどの広い今風の上がり框です。ご年配の方に優しく椅子等の備えば流石です。左手のフロントで記帳してチェックインです。
フロント前のオブジェには出雲らしいというにはどうか?能面が飾られています。
中央がフロントになります。館内は畳敷きになっており、私的には足が大きいのでスリッパは毎度毎度窮屈なので大変ありがたい。この大廊下、左手にはロビースペース、右手には売店とお食事処があります。
ロビースペースでは多くのお客さんがお茶を楽しんでいました。それもそのはず・・・
滞在中利用できるエスプレッソマシーン。
地物土産を茶菓子に用意し冷緑茶の用意もあります。時々によって、このサービスの内容は変わりそうです。ウェルカム茶はないのでチェックイン後にこちらで自由にお茶を楽みます。
ロビーから大廊下を挟んで反対側には「天雅」というお食事処と売店があります。
出雲大社周辺には「お土産屋さん!!」という、如何にもというお店はあります。ただ、お宿周辺は田畑と住宅街。取り敢えずお土産であれば佳雲さんの売店で事足りそうです。
ロビーの最奥にはお隣の1階の客室に行く扉と、右手には客室へのエレベーターがあります。
エレベーターを上がると和モダンな旅館雰囲気ですが、ホテル形式の廊下と客室が並んでいます。各階により様相は異なりますが概ね同じ情景です。
佳雲さんの建物の構成は2階以上が客室となっていて、2階部分でお隣の「月夜とうさぎ」さんと繋がっています。丁度その間の2階の共有スペースが浴場と湯上がり処となっている無駄のない構造です。
こちらは佳雲さんの最上階にある展望所です。
テラス席になっており出雲の町を眺める事ができます。手前にはウサギが餅つきをする石造りのオブジェ。
さて、お風呂のある2階に下りてきました。2階は湯上がり処やラウンジなど、アネックス棟と旅館棟の共有部分のサービスが集まった場所となっています。
赤矢印が旅館棟の佳雲からの道筋です。手前にラウンジがあり、ここから先は「アネックスのお客様はご遠慮下さい」という住み分けの案内がありました。青矢印が「雲の湯」の浴場、黄矢印が湯上がり処です。左の桃矢印は貸切風呂への廊下と、「夜食処」と言う湯上がり処があります。
雲の湯前にあるラウンジは往訪時は流行り病により営業はされておらず。
「夜食処」とある湯上がり処です。
夜食処とつくだけあって、お夜食に共立リゾートさん名物の夜鳴きソバをいただくことができます。
お夜食処には、これまた共立リゾートさんの共通サービスである「湯上がりアイス」の用意があります。
翌朝はアイスの代わりに乳酸菌飲料が用意されています。これも御馴染のサービス。
さらにはソフトドリンクとアルコールの自動販売機もあれば製氷機もあったりと、ありがたくも一か所に集約されています。
お夜食処前からは5ヵ所の貸切風呂が並ぶ廊下があり、夕食前と夕食後には順番待ちの列ができていました。
貸切風呂前を行くと「月の湯」前に到着です。ここまでに「マッサージ処」などもあります。奥に行くとアネックス棟の「月夜のうさぎ」の客室に通じています。
月の湯前にはウォーターサーバーがある湯上がり処があります。
月夜のうさぎの客室はモダン和を醸し出しながらもシティホテルのような清潔感です。
ロビーは現代風の和テイストな雰囲気です。
時間的には夕食タイムで、お食事処はロビーサイドにありバイキング形式での提供のようでした。こちらもどのような物がいただけるのか気になります。
Freeかは不明ですがエスプレッソマシーンも備え付けてありました。
月夜のうさぎさんサイドにも売店があります。館内見所いろいろとありますが、館内探索はほどほどにお部屋へ戻ります。
お部屋
案内して頂いたのは207号室です。
引き戸の玄関戸を開けると、畳が敷かれて和様相ですが造りは完全にホテルの間取りです。新しいお宿なので室内も古さはなく。
玄関左手には最新式のトイレがあります。
続いて御簾があるベッドルームにはセミダブル程の大きさの寝具。ベッドの横の小部屋には洗面とバスがあります。
洗面所とお風呂の前には和室で言う縁に当たるところがあります。こちらには冷蔵庫やポット、水屋も設置されています。
窓からの風景はお宿の後ろを流れる堀川と田園風景でのんびりとしています。
玄関の隣の別室にもベッドが置かれてありトリプルルーム仕様となっています。ツインルーム仕様のお部屋がないようなので、ツイン利用だとこのお部屋になるのかと思います。
板の間の洗面所に、檜の湯舟は温泉ではなく沸かし湯の白湯です。お部屋のランクによっては温泉付きのお部屋もあります。
備品はフェイスとバスタオルは2枚ずつ、作務衣、色浴衣はロビーで自由に選べます。化粧水などの使い捨ての物を含め一式取りそろえてありました。基本仕様はホテルなのでペットボトルの水とお茶の用意もあります。島根県なのに静岡の天然水というのも共立リゾートさんならではですね。
お茶セットも完璧な用意ですが、感染症対策からかお部屋には恐らくエスプレッソマシーンがあったのではないかと。ドリップコーヒーでごめんなさいという説明書きがありました。
周辺施設ですが、忘れ物があっても問題がないぐらいの距離にコンビニがありました。館内のフリードリンクや軽食も充実しているので、多少の不備があっても不便を感じることは無いのではないかと思います。
お風呂
佳雲さんには「月華」「蒼雲」という男女別の大浴場が2ヵ所ずつ、無料の貸切風呂が5ヵ所あります。大浴場は露天風呂が併設されており趣きがことなります。貸切風呂は白湯を交えたエンターテインメント的な要素を交えたものから、大浴場と同じく源泉を使用した浴室もあります。源泉はウィスキーの水割りのような茶褐色の色付きがあり、無味無臭ながらもヌルヌルのヌメリの質感が物凄くモール泉を連想する特徴があります。湯上がりはやはりモール泉のような、ややヌメリの潤いしっとり感を強く感じます。湯使いは源泉温が25度のため加温循環加水のようですが、消毒臭は感じることなりません。ですが、泉質は単純温泉という扱いなので不思議です。それぞれの湯舟を見ていると、湯使いは湯舟の中のお湯が減った分だけ?決まった間隔で?加水源泉が投入されるのではないかと思います。
訪れた当時は化粧水、アメニティ類は脱衣所に用意がありました。女性側はシャンプーバイキングもあったようです。感染症がなければ浴場のアメニティはフル装備でしょうか。
大浴場
雲の湯「蒼雲」
浴場に入ってすぐ左にサウナがあります。正面には温泉内湯と窓の外には温泉露天風呂です。
サウナはこじんまりで3人入ると一杯の大きさでした。
洗い場は宿の規模に比べると多くはないですが訪れた時は混み合うことはありませんでした。
内湯は光の加減もあってか緑茶色の濁りがありました。実際には茶色に近い色です。左にある甕の湯舟は、温泉ではなくサウナ用の水風呂です。
湯舟の奥は腰丈の立ち湯となっています。
社を模したような湯口は、湯舟の中に直接注ぐように細工されていました。切り口からは明確なオーバーフローはありませんでしたが、お客さんが出入りすると溢れた分だけ湯口から新しい湯が入れ込まれているようです。
露天風呂は内湯と同じような大きさがあり、横並びで5人ぐらいは余裕で入れそうです。
半円盤の注ぎ口はとても熱く、湯口の5本のラインに沿って付いた析出物から察するに源泉のだと思われます。常時この湯量が注がれていました。
湯口のすぐ横にはこのような溢れ出し口がありました。温泉成分により茶色に変色した湯舟は泉質の良さが伺えます。脱衣所の説明では、この湯舟だけが掛け流しとの表記がありました。厳密には加温かけ流しになるのでしょうか。大浴場の中ではこの湯舟が最もトロみのある纏わりつきが強い良泉です。
月の湯「月華」
浴場に入ると開放的で左手には露天風呂、右手に洗い場、正面には内湯と少し変則的な浴場です。
掛け湯も温泉っぽい・・・実は掛け湯がもっとも新鮮湯なのでは・・・いうぐらいダバダバ注がれます。
お宿の規模からすると、こちらの浴場の洗い場もシャワーブースは多くはなく。ただ、混み合うことは不思議とありません。
内湯はとても細長の湯舟で、誰も入浴していないと水面に波すら立たたず。
茶色の析出物がある湯口は、思い出したかのように湯がガンガンと放出していましたが、どういう原理で湯が追加されているのかは、やはりよく分からない・・・。
サウナ前には汗を流すシャワーブースがあります。
内湯を堪能したらお隣の露天風呂へ移動します。
こちらの湯舟は5つの個別の座湯がありました。鉄泉のような完全な褐色を呈しています。
湯舟に体をあずけるとダーダーとお湯が溢れ出ていきます。内湯と同じように掛け流しではないが源泉の追加はやはり気持ちがいい。
見た目は完全に鉄泉の様相ですが、無味無臭でヌメリのあるモール泉らしい透明感のある湯。日の光による加減かこの湯舟は最も濁りが強く感じる湯舟でした。入浴者も多かったので、かき混ぜられて酸化したのかもしれません。
露天風呂の湯口はとても静かで湯の入れもなく・・・。ただ、水位が下がるとガンガンとお湯が投入され一定の水位までくると止まるようです。やはり、減った分だけ?投入されているように感じます。夜遅くに入るに行くとダバダバと出ていたので水位調節ではないのかも?やはり全く分からない・・・。
露天湯舟の縁に手を掛けるキュートなウサギちゃん。
貸切風呂
季の湯
季の湯というぐらいなので、その季節時々によって変わる季節風呂なのでしょうか。訪れた時には新茶の季節だったこともあり「緑茶の湯」となっていました。
白タイル壁はバブリーな時代を彷彿させるのは自分だけでしょうか。
貸切風呂はシャワーを備えた洗い場付きなので、大浴場が苦手な方や感染症などが流行っている時には貸切風呂で入浴事足りるのは佳雲さんの魅力の一つ。
天然水なのか井戸水なのかスベスベ感があるのは、はたまた緑茶効果なのか。減った分だけお湯が満たされるようになっていて浴槽一杯に満ちると湯口は停まりました。
緑茶が入ったネットはすでに煮出しが完了し尽されたのか茶の香りはなく。茶湯を楽しむには一番風呂に行かないといけませんね。
岩の湯
塀の上には明かり窓のように外と通ずる空間がありますが、ほとんどは室内風呂でやや蒸します。冬季だとよい寒気が入ってちょうどよいかもしれません。
この湯舟には大浴場と同じ源泉が使用されています。やはり一定の水位にくると注ぎが停止するようです。
木製の樋がある湯口を覗かせてみると塩ビ管が2本。1滴も流れることなく静かな物です。
身体を沈めると切り口から湯がザブザブ溢れ出ていきます。至福の瞬間です。
湯だってきたのでちょっと休憩を・・・と湯舟から身体を出すと・・・
いきなり湯口からジョバジョバと源泉が注がれ始めました!!
そして、湯口の蓋を忘れていてたので最強スプラッシュ!!!
ほんとうに湯舟の湯量が減ると、これでもかというほどに源泉が投入されます。チョロチョロの源泉かけ流しとどっちがいいかというと迷うほどです。そして、投入される湯温は低く源泉多めではないかと思います。ヌルンヌルンの強ヌメリが堪能できます。
大浴場は見学程度で、館内では泉質が最も良く感じられ、空いていればこの湯舟に常に入り浸っていました。
泡の湯
丸い桶の湯舟にタイル張りのノスタルジーな雰囲気の湯屋です。
泡の湯というのに泡は全くない。ゆるりゆるりと循環されているようで、循環中に人工炭酸泉にしてあるようで、青丸に線香花火のように光が弾けているのが見えます。
少し身体を沈めていると、まさしく某ラムネ温泉のよう身体に泡付き始めます。やはり天然物ではないからか、炭酸の独特な匂いはなく、弾ける勢いも弱くプチプチという感じはありません。それでも炭酸風呂としての一興としては面白くはあります。
漆の湯
朱の漆塗りの湯船には温泉が満たされています。こちらも減った分だけ入るのは変わりなく。全体としては暗転の雰囲気。
温泉が満たされているのは嬉しいのですが・・・2人だと・・・せ、せまいww
完全に1人用です。大人2人は結構窮屈さを感じます。
注ぎ口も岩の湯のようなアグレッシブさななく上品な注ぎです。こちらを使うなら岩の湯を優先的に楽しみたいかも。
絹の湯
絹の湯と呼ばれるこの浴場は、汚れが良く落ちるというマイクロバブルの湯です。
お料理
朝夕ともにお食事処「天雅」でいただきました。共立リゾートさんはチェーン旅館ではありますが、某バイキングリゾートチェーンのようではなく、行く先々によって郷土の色を大切にした料理を提供しておられます。
以前、宿泊した共立リゾート系列のお宿の記事も良ければどうぞ。
岐阜県 平湯温泉 深山桜庵 さん
静岡県 修善寺温泉 菊屋 さん
共立リゾート系さんには申し訳ないが佳雲さんの料理は、正直なところ期待していませんでした。ところがどっこい、一品一品は丁寧に作られた季節に応じた内容となっており、実に出雲らしい演習を盛み、八寸から食事まで出雲を楽しめる会席となっています。
献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
半個室のブースとなっており他のお客さんに気兼ねなく食事を楽しめます。最初の配膳は前菜と食前酒です。
いつもあるとは限りませんが、出雲に縁があって訪れた方へ瓶ビールとウーロン茶のサービスです。
【食前酒】:自伝酒のカクテル
調べてみると一度は衰退してしまった自伝酒というお酒が出雲で復活したそうです。酒と味醂の間の様だとあります。自伝酒をベースにして梅酒でカクテルにしたもので、梅の酸味はわずかに、やはり日本酒のような米風味は強く、味醂のようなまったり感もあります。これまで味わったことのない不思議な味。
【土器盛り】:
穴子八幡巻、紅葉南瓜、赤こんにゃく、ペコロス、海老黄身焼、空豆、子芋と無花果の胡麻掛け、鮑 茗荷 ハス芋
実に出雲らしい神様への供物を想像させる「折敷」に盛られた白皿。おこがましくも自分が神様にでもなったら、このように食するのかと思わせてくれます。
調理法として巻き上げることを八幡(やはた)と言います。アナゴでゴボウをしっかりと巻き上げ薄醤油に仕上げてゴボウの土風味は優しく背後に。かぼちゃは夏の青カエデに模してスタンダードにほっくりと煮てあります。赤こんにゃくは感じるか感じないかに柔くプリプリのこんにゃくと醤油味。下ごしらえに味が滲み込むように細かく切れ目がある手の込み様。
シンプルにペコロスの自然の甘味を、焦げ目をつけてそのままに焼き上げて、その上に黄卵を塗って焼いたオランダ焼きのようなエビと、とんでもなく甘く炊いた青い翡翠色のソラマメを乗せてあります。
子芋はサトイモのようにも見えますが、ねっとり感はあまりなくエビイモとかでしょうか。煮で味を付けてから焼き直し黒ゴマをアクセントにした物かと。無花果は完熟で果肉は赤く緩く、ゴマのクセがない中性的な練り胡麻を塗り添えてあります。
八寸の酸味にはプリプリ弾力の鮑です。白い切り口が眩しい。エビには黄身焼でしたが、こちらは黄身酢掛けです。黄身酢の他にもよく見ると皿の底には酢を敷いてアワビが浸されていました。ミョウガの漬酢汁でしょうか。ハスイモはお浸しにしてアワビの枕にしてあり、ミョウガは自然の味をそのままに。
【凌ぎ】:鯨切飯 山椒
「凌ぎとは空腹を凌ぐという意味」と献立に解説がありました。確かに「凌ぎは」箸休め、口休め程度に考えておりました。
切飯は型にはめてから四角に切ったものです。やはりクジラは哺乳類で魚というよりは肉の味。炊き込み御飯かと思いましたが、しぐれ煮のようにして混ぜご飯にしたのか。微量な醤油味で塩よりもクジラの脂旨さのほうが前へ出ます。添え付けの2粒の煮山椒の実が絶妙なアクセントで、全体の油味を清く引き締めます。山陰でクジラの要素ってあるのか?と、ふと頭によぎる。調べてみると、石見の付近ではクジラ飯を食する文化があるようです。
もう一貫所望と言いたくなるお品。
【先椀】:土瓶仕立て
凌ぎと一緒に先付のように配された先椀という珍しい献立。
具材は献立にある鱧(ハモ)、海老、順才、ひすい茄子、三つ葉、酢橘です。まずはそのままで、後半はスダチで楽しんでくださいというご説明。いわゆる椀物の透明感のある出汁を味わうというものではなく、土瓶蒸しらしい塩気のある味をしっかり持たせた物です。
お出汁はハモ、カツオ、昆布でしょうか。ハモは椀物のようにクズ打ちはされておらず、まさしく出汁素で瑞々しさは失われ、むしろハモの本来の味が分かりやすい。鮮やかなひすい色の小ナスは、焼ナスにして香ばしく出汁が沁みジューシーに仕上がっています。ヘタも柔らかく丸っと食せます。
【お造り】:鯛 中とろ 間八 鱚昆布〆 蛸 赤貝 山葵 酢味噌 醤油 あしらい
とにかく触感と旨味は新鮮の一言です。味の醤油は山陰の物にしては甘味がなく関西風のたまり、酢味噌はまったりたりの西京味噌と砂糖の強甘味。
左から。赤貝はコリコリで濃厚な味わいで、とんでもなくでかい!加味の酢味噌が絶品んですが、旨味を楽しむなら自然の塩味で加味は不要でした。昨今ではこのクラスの赤貝を生で口に入ることは珍しいかと。 大葉の下のキスは昆布締めで白身が締まっています。 ハスイモが添え付けてあるのはタイです。関東風の熟成ではなく、グモグモと噛み切りが困難なほどにたくましい。新鮮過ぎる白身魚は味がないと言われますが、噛んで噛んで唾液に混ざるほどに白身味がじわりと出てきて美味。 タイの隣には生ダコ。こいつも噛み切れないほど弾力がありタコ味が豊潤過ぎて、いつまでも咀嚼していられます。 カンパチは白色ではなく透明の身振りでギラギラと活かり、ゴリッゴリッと歯への響きが凄く味も見た目も澄み切っています。こいつも噛み噛みして唾液で口腔内調理すると旨味が増し増しです。
中とろはタイやタコとは違い、究極とはいかないですが、口解けがすばらしく純粋なマグロの脂と赤身を表現しています。そして、マグロの下には透明な下敷きがあり、刺身こんにゃくかと思うとゼリーのような口当たり。海藻エキスを寒天で寄せたような物でしょうか。細かい仕込みに食が楽しくなります。大型チェーン旅館・ホテルの仕込みではないですわww
【焼物】:島根和牛石焼 ヤングコーン じゃが芋 甘長唐辛子 なめ味噌 岩塩 卸しポン酢
味付けの「なめ味噌」は島根の郷土味噌のようです。大豆、麦、米の麹から造っているようで、金山寺味噌のような風味があります。これに青唐辛子を合せてピリ辛にしてあります。おろしポン酢は酸味は優しく、ポン酢で食べるというよりは、ポン酢を含んだおろしで食べるというスタイルで和牛の旨味をまろやかに包む。
御身は白とピンクの配色がいい島根牛は肩ロースです。あらかじめ粗削りのコショウを振ってあります。
そして、1㎝あるのかという厚みです。
焼き始めると脂が滲みだしてきます。見た目とは裏腹にかなりの噛み応えで、スジっぽいというのではなく柔い赤身と言った感じ。むしろ、中途半端に喉に送り込むのは勿体なく、しっかりと噛み進めて和牛の旨味を楽しみます。なめ味噌もいいですが、シンプルに塩が一番美味い。脂を中和して楽しみたいなら卸ポン酢を。
共立リゾートさん、あるあるの選べるお料理の時間です。献立の赤枠から1人2品選べます。献立の下には訪れた時には流行り病の事もあってか、会話を減らすためか簡単な説明書きも添え書きしてありました。文章に起こしてもらう方が従業員さんの労力も減ります。ただ、配膳係の方に直に説明してもらうのも旅の風情と言われると悲しい感じもします。効率か旅情か。
【心ばかり】
一、白海老と枝豆のかき揚げ
一、ふかひれ茶碗蒸し
一、イサキの煮付け
一、イカ黒造り 鰯南蛮漬
一、もずく酢 蒸し雲丹 とろろ芋
※お一人につき二品お選びください
白えびは品のある甲殻香ばしさが薫り、新枝豆と思われる青味と清らかに揚げてあります。これにはシュワシュワと口溶けが気持ちいい儚い雪藻塩と、カツオ昆布に塩味が強めの天つゆと大根おろしで。
触感が残らないほどの玉子地には、フカヒレ一色の餡が満たされています。どこを食べてもフカヒレの出汁&出汁。干したフカヒレの戻し汁とかでしょうか。高級品かというとそうではないのかな、献立の一品としては風味はかなり良く普通においしい。具材にはカマボコ、シャキシャキインゲン、シイタケ、ゆり根です。
イカの身を細切りにし、イカ墨・食塩等で樽に漬け込んでじっくり熟成した塩辛と説明にあります。普段口にする塩辛に比べると、ワタの磯風味は抑えてあり苦手な方も口にし易そうです。ただ、炭とイカのねっとり感はDEEP。南蛮漬けはお酢は抑えてイワシをふわふわに漬け込んで丁寧に調えてあります。
もずく酢は刻みショウガを混ぜ込んで、強酸味の米酢で会席の後半の酢の物にさっぱりと口をリセットできます。もずくは普段食べるものとは明らかに違うプチプチと弾ける触感。雲丹とトロロ芋は主張はせず彩色としての役割かな。
実はお一人2品なのですが「さらに追加で注文して頂けます」との申し出があり、最初にオーダーしなかった、イサキの煮付けをお願いしました。6月~7月は産卵期に当たる「梅雨イサキ」と言うようです。脂がのっているということですが、イサキにしてはむしろ身の締まりはがっつりです。甘い煮付けではなく醤油が濃く、添え付けには風味を整える役目のゴボウ、白髪ねぎを高く盛り山椒の葉を乗せてあります。
その場で選べるのに、仕込みの拵えは抜かりはなく修善寺温泉「菊屋さん」を連想させます。
さてはて、食事も好みによって食べ分けができるという粋な計らいです。
一、煮穴子のちらし寿司 赤出汁 地のり
一、冷やしそうめん
一、へしこ茶漬け
【食事】:3種類からの選択 ※白米もお選びいただけます。
そうめんは何となく想像がつくので「へしこ」と「アナゴ」の食事をそれぞれいただきました。
1つは煮穴子のちらし寿司を選択しました。ふっくらと蒸しあげられたアナゴに甘ダレが掛けてあります。お酢も甘さも優しい酢飯には、錦糸卵、桜でんぶ、しいたけ佃煮、絹さやをバランスよく盛り付けてあります。半膳ぐらいの量で最後までしっかりといただけます。赤出汁は京風であおさ海苔と麩の盛り込みです。
もう1つはへしこ茶漬けです。へしこは郷土料理のサバのぬか漬けです。サバ身の水分は抜け、干物の様なしっかいり身振りには、旨味だけ残し麹と強塩が沁み込みんでいます。「出汁茶漬け」かと思ったのですが、本当の緑茶漬けでした。白飯とへしこの間には焼き海苔を敷き、白ネギを盛もって香り高い摺り胡麻を散らしてあります。これを全部混ぜると、ヘしこから旨さがお茶に滲み出て一気にヘしこの出汁茶漬けへ変貌します。摺り胡麻が良い仕事をして一層旨味風味が増します。漬物は柴漬け、茄子、奈良漬けです。
【水物】:出雲神在 マンゴープリン 西瓜 レモンケーキ 巨峰
ぜんざいは出雲が発祥だそうですで、神在祭(かみありさい)という祭りで、神在餅(じんざいもち)の振る舞いが訛って「ぜんざい」となったのだとか。甘さ控えめで小豆の一粒がしっかりとして、まん丸白玉団子はもっちり弾力で米が濃い。 マンゴープリンは他の共立リゾートさんのお宿でも食べた様な・・・さすがにこれはグループ共通デザートか。口当たりがよくなかなかのマンゴー感がありソースはブルーベリー。 早物のスイカと巨峰も甘く、レモンケーキはムース地にレモンをゆっくりと持たせてあり、スポンジはタルト地のようにしてありムースとよく合います。
【夜食】:夜鳴きソバ
さて共立リゾートさんのお楽しみの1つである夜鳴きソバの時間がやってまいりました。提供時間になるとアイスのあった湯上がり処でお店が開店します。宿泊料金に含まれているので、これを食べないわけにはいきません。
冷凍の袋麺ですが、どこで食べても同じ安定の鶏ガラ醤油の中華そばです。共立リゾート系列のお宿に泊まったら外せない一品です。
朝食
お食事処に行くと案内されたのは夕食と違う半個室のようなテーブル席です。
席に着いてからの後出し配膳です。宿泊客の年齢層が低めなのか。品数がとんでもなく多くボリューミーです。
【座付】:季節の果物ジュース
【お心づかい】:
・ひきわり納豆
・温泉玉子
・きんぴらごぼう(蜆入り
・海苔の佃煮
・もろみ味噌
季節のジュースはオレンジでした。選べる小鉢で「お好きな物をどうぞ」と給仕係の方からの申し出。「全部下さい」「はい、どうぞ」と全部頂きました。どれも地物のような感じですが、それぞれに美味しさはあり、きんぴらごぼうはシジミと一緒に炒めてありました。お隣のアネックス「月夜のうさぎ」さんからのバイキング料理からのお品のようにも見える。
【箱膳】:
・浜田赤天、生姜醤油餡 五目卯の花
・出汁巻き玉子 染め卸し 蜆柚子胡椒
・蛸ぽん酢ジュレ
・オクラ胡麻和え
やはり海辺の練り物は美味しいです。どうやら赤天は島根のB級グルメのようで唐辛子とすり身を合せたものです。これにトロりとした生姜の搾り汁を合せた餡と一緒に。ここでもシジミを使った一品に柚子胡椒。宍道湖のシジミは特産なのでそちらのものかと思います。ジュレタコもコリコリと新鮮で朝には酸味がやさしい。
【小鉢】:糸瓜と水菜のお浸し じゃこ
【サラダ】:夏野菜とサーモンのサラダ オニオンドレッシング
小鉢は細切りのシャキっとした瓜と水菜の薄味でワサビがほんのり香るお浸しにシラスを添えてあります。 サラダの盛り込はグリーンリーフ、レタス、オクラ、ミニトマト、ズッキーニ、トレビス、こよりキュウリです。サーモンは軽く燻製に仕立ててありトロっと瑞々しさもあります。ドレッシングはオニオンです!という物ではなくとてもマイルドな棘のないやつです。
【焼物】:のどぐろ一夜干し 塩鮭 あごの焼き
【煮物】:烏賊飛龍頭
小振りのノドグロは最近食べた物では脂の乗りは今一つだが味はさすがのノドグロです。さらにサケと、あごの厚切りカマボコも添えてあり一緒に網で炙ります。朝から魚2種は若い方は白米がとまらないでしょう・・・。 飛龍頭(がんも)には贅沢にもたくさんの烏賊の角切りが練り込まれていて、飛龍頭というにはさつま揚げに近いホクホクの練り物です。
【台の物】:大山鶏治部煮 焼葱 豆腐 小芋 粟麩 水菜 針人参
大山の鶏はやはり鳥味に深みがあり、汁一杯に出汁が滲みでています。つみれかと思ったのですが、歯応えタップリのモモ肉に打ち粉をしてあり出汁が絡んでいます。強めの醤油味で、旨汁もしっかり飲み干してしまいました。お野菜もたっぷり具沢山。
【飯物】:白米 とうもろこし粥(仁多米)
【香物】:セロリ浅漬け、瓜糠漬け、梅干し
【汁物】:大和蜆味噌汁 打葱
席に着いたら粥か白米かのチョイスです。ただ、後から白米も粥もおかわりは可能でした。奥出雲の地米を使い、粥はトウモロコシ風味があるわけではなく、粥にトウモロコシを散らしたものでした。 味噌汁は白味噌仕立てで、大量のシジミをいれこんであります。やはりここでも特産のシジミが活躍。
【甘味】:ドライフルーツヨーグルト掛け わらび餅 あんこ
スタンダードなヨーグルトにはゴロっとドライフルーツ。きな粉が豊かに香る手作りわらび餅は、サッパリ甘味のあんこと共にちょうだいしました。
品数が多く賑やかな美味朝食でした。
まとめ
何度か共立リゾートさんのお宿に泊まったことがあるので、安く予約が取れたので安定感は間違いないであろうと思い往訪しました。目的はもちろん黄金色のモール泉。循環使いだがこれがなかなかに良い湯で、加水ながらもモール泉らしいヌメリ感がある極上湯でした。ただ、日帰り利用もやっているようなので、時間帯によっては湯がヘタっている可能性もありそうです。
お料理は泊まってみないとやはり分からないもので、これまでの共立リゾートさんのお宿と同じように無茶苦茶に手の込んだものはありませんが、丁寧さに特化するなら最も手仕込み感満載でした。八寸に「折敷」を使う神様への供物の演出は、おもてなしの真骨頂のような演出です。
一点気になる所としては、お隣のアネックス棟である「月夜のうさぎ」との共有スペースであるお風呂や湯上がり処、夜鳴きそばはコアタイムだとやや騒がしい感じがします。佳雲宿泊客でない客が佳雲棟に入ってきているようでしたが、私的にはこの度の宿泊料金では余裕の許容範囲でした。
宿泊料金
通常だと底値が平日だと40000円~、休日50000円前後から、特別室だと料金は1.5倍ぐらいです。共立リゾートさんのお宿はどこも少し高めの値段設定のところが多い印象です。が、積極的にセール商品を販売されておられるので、タイミングが合えばお安く泊まることが出来るかなと思います。特に楽天トラベルのスーパーセールでは平日だけでなく、休日にもお部屋を売りに出しておられることが多いです。楽天スーパーセールのOFFとクーポン利用で30000円近くお得に泊まっています。
宿泊日:2021/初夏
旅行サイト:楽天トラベル
プラン:【楽天スーパーSALE】20%OFF【源泉食材?主雲替わりのご縁会席】季節の日本海の幸を楽しむ出雲度★
部屋タイプ:檜風呂付・和洋室・・・36~48平米/お任せ×1部屋
合計料金:44000円(2人)
クーポン:12500p(スーパーセールクーポン10000円+5%off)
支払い料金:31500円
加算ポイント:315p