高峰温泉さんは浅間山に抱かれるようにひっそりと佇む秘湯の宿です。周辺にはスキー場のアサマ2000パークや、黒斑山などの浅間山系の登山を楽しむことができます。しかし、お客さんの多くは温泉目当てに訪れる方が多いのではないでしょうか。宿泊だけでなく日帰りのお客さんもとても多い人気の温泉です。
旅情
外観は近代的な建物で、館内は山荘といった雰囲気です。横長の建物にお部屋がある様や、ロビーの吹き抜けのランプの飾りは山小屋の小景を連想させます。
ロビーにはそば茶と自家製の甘酢梅のサービスがありました。売店もあってお土産を売っていましたが、登山用品も充実しています。登山客の支持が高いのが分かります。
高峰温泉さんは催しがとても多く忙しい宿です。到着してからは温泉療法講座、夜には天体観測のイベントがあります。天体や温泉のことがわからなくても、詳しく説明をして頂けるので気軽に楽しめます。天体観測後の冷えた体にクルミ味のミニ五平餅のサービスがありました。
夜の野生動物観測ではキツネとタヌキが訪れてくれました。朝は野鳥観察教室があり、鳥だけではなくリスもヒマワリの種を食べに来ていました。動物を観測しながらクマザサ茶も賞味。温泉も入らないといけないのですべてに参加すると「時間が足りないわぁ」と思いました。館内には飲泉所があり、自動販売機も設置してありました。
お部屋
泊まったお部屋は、2階の「えなが」という8畳トイレ付きのお部屋です。鳥の名前が由来のようです。お山の宿ですがサービスは旅館と同じで、お布団引き、浴衣、アメニティ一式、お茶セットが不便のない程度に揃っています。イベントが多過ぎてお部屋にいる時間がこんなにも少ないお宿は今までなかったかも。
お風呂
浴室内にシャワーとカランがあります。しかし、自然保護のため石鹸類はすべての浴室で使用できません。代わりに創生水という水の粒子が細かく油分を落としやすいとされるものを使用されています。これだけだと山登り後の汗が流せた気がしないので、源泉浴槽から温泉をすくってガシガシこすって、最後に創生水で流すのが一番汚れが落ちたような気がします。
泉質は含硫黄カルシウムナトリウム硫酸塩泉です。なかなかのエグ味のあるお味で、どの浴槽も白濁色をしており白い湯の花が舞います。
雲上の野天風呂
絶景を眺めながら入り大自然と一体になるためのような湯船。のはずだったのですが、残念ながら宿泊した日はあいにくの天気で景色は全くありませんでした。こちらには洗い場はなく景色とお湯を楽しむ湯船です。厳冬期や雨季などでは開放を見合すこともあるとか。男女別に浴槽があるので気兼ねなくはいれますが、宿泊日は夜には天気が荒れるとうことで、翌朝の入浴はできませんでした。こちらは源泉温度が低いため加温しているそうです。
ランプの湯
内湯はどの浴槽も源泉槽と加温槽に湯船が分けてあり、交互入浴をすることができるようになっています。お湯は綺麗な白濁色をしており、源泉槽はお湯が新鮮なのか透明感あります。泉質は硫黄泉ですが、飲泉すると硫黄の香りと共に鉄臭の後味があります。こちらは源泉槽と加温槽の両方からお湯が投入されて気持ちの良いオーバーフロー。また、日帰り利用客はこの湯船だけの利用となっていました。
高峰の湯、四季の湯
「高峰の湯」が男性風呂で「四季の湯」が女性となっていて入れ替えはありません。相方に聞くと女性風呂も同じくらいの大きさのようです。源泉槽は1人でいっぱい、加温側は三人でも余裕の大きさ。
掛け流し量は申し分ありません。源泉槽だけにお湯が投入され加温槽は循環加温のみです。ランプの湯の方がオーバーフローは多かったかな。どの浴槽も区切りを設けているのですが、この区切り・・・木を詰めて留めてあるだけなので、普通に動かすことができます。入浴した時は詰めがとれて浮いていました。区切りの下では隙間があり温度調整のため左右の浴槽が繋がっていました。ここでは飲泉もできましたが、飲泉所のほうがエグ味は上です。
お料理
朝夕ともに食事処での食事です。椅子やテーブルは、この建物を建てる時に伐採した自生のカラマツを利用したものだそうです。この机がとても立派。しかし、長椅子をみんなで共有なので若干座りにくさがあります。一度着座すると他の方が座っているとポジションが変えれないので、腰が不安な方はポジション注意です。
夕食
お食事は夕・朝ともにスタンダードな里山料理です。しかし、素材が新鮮!!そして、山の物しか献立にとり入れないこだわりと、味付けは素朴ながらに雑さはなくごまかしがありません。春、初夏は山菜好きにはたまらない内容となっていました。
【食前酒】:梅酒
【前菜】:芹お浸し、栗麩田楽、筍土佐煮
酒度が30度あるという・・・。下戸泣かせの食前酒ですが、ソフトドリンクに変更も可能です。配膳係の方からもゆっくりと飲んで下さいとお声掛け。 セリの青い香りはそのままにしっかりとした味付けに擦りゴマをふってあります。栗麩には白味噌と炒った蕎麦の実かな。旬の筍は歯ごたえは柔くカツオ節のうまみ。
【冷物】:ビシソワーズ
【造里】:刺身蒟蒻
【煮物】:若鶏、春大根
ビシソワーズはじゃがいもベース。これにタマネギ、バター、生クリームかな?舌では荒さがあるけど飲み口は滑らか。 コンニャクはさすがに宿で作っていないと思いますが、コリプリとした歯ごたえほんのり香るコンニャクの土の香り。 鳥の味が良く出ているのにクセのない煮物。彩はホウレンソウと餅麩。
【鍋物】:信州豚レモン鍋(占地、水菜、白菜、白葱)
レモンの香りがきつくなりすぎるとエグ味が出過ぎるかなと思いながら少しづつ投入。熱が入るせいかレモンの苦みはなく、風味が飛ぶので最後には全部入れて丁度いいぐらいでいた。出汁との相性がいいのか、さすがにうまく調整されている。豚は脂の甘味がしっかりとしていて灰汁も少なく良いロース。
【焼物】:鮎塩焼き
5月はアユの解禁ではないので養殖でしょうか。時期的にも小ぶりなので身付きも少ないですが、焼き方が良く身は柔くほくほくした触感があります。よくある子羊、若鶏と言った感じで若魚を楽しむ一品でしょうか。頭から背骨まで軟らかさがあり、夏の成魚のアユに比べるとほっこりとした甘味があり、川魚独特の臭みがなかったように思います。
【揚げ物】:季節野菜の天麩羅(菊芋、芹、独活、こごみ、こしあぶら)
春の山菜のフルコース天麩羅です。好みはありますが山菜をこれだけ揃えて出して頂けるところは訪れたことがありません。大体は2種ぐらいと定番のサツマイモとか多い印象です。サクサクのてんぷらは卸し大根と天だしで頂きます。私的には山菜は塩かなと。塩はテーブルに用意があります。
【御食事】:御飯、お味噌汁
【香物】:野沢菜
ダイコンとホウレンソウのお味噌汁に長野県産の白米。お漬け物は長野県定番の野沢菜漬けです。
【水菓子】:豆乳プリン
濃厚というよりは「かんてんぱぱ」のプリンを豆乳で作っているのかな。これにバニラの風味を強くもたせて家庭的なプリンを上品に仕上げてある感じでした。
朝食
・小松菜の煮浸し、
・ひじきと人参の煮物
・温泉卵
・がんもと南京煮物
・焼鮭
・焼のり
・お味噌汁
・香の物(梅干し、野沢菜)
・白米
朝もすべて手作りで山の食事です。見た目は少なく見えますが、適量で白米2杯を食べるぐらいの味付けになっているので、翌日の山登りやスキーのようなパワーアクティビティにも対応しています。野菜が不足がちになる旅先での野菜中心の献立はとてもありがたい。
まとめ
第一印象としては山荘のような雰囲気なのに、お値段は高めだなぁという感じではありました。しかし、いざ宿泊してみるとお値段以上の価値があったように思えます。個人的な感想では、お料理は素朴な山里料理なのに味付けは繊細で手作り。宿全体は清潔感があって自然観察などの付属サービスが素晴らしく飽きさせない。メインのお風呂。雲上の露天風呂は曇っていて景色こそありませんでしたが、内湯の泉質は素晴らしく人気があるのに納得しました。リゾート系のサービスがお好きな方は、料金とお料理、設備が相応かというところは個人差があるかなと思います。私的には他のお宿とは違った楽しみ方ができるのは良かった。季節を変えてまた行ってみたいものです。
宿泊料金
さて、料金です。大きな割引もなかったので電話での直接予約です。割引がないのであれば日本秘湯を守る会のスタンプを頂きましょう。どのサイトをみても定価料金で人気の宿なので、繁盛記では予約が難しいみたいで。同日宿泊者さんのお話では半年待ったとおっしゃっておられました。
宿泊日:2018/5
部屋タイプ:8畳トイレ付き
支払い料金:32400円(2名)