開湯1400年を誇る辰口温泉は金沢から最も近い温泉地なんだそうです。多くの文豪に親しまれた辰口温泉にある「まつさき」さんは創業江戸時代。今では本館と新館でそれぞれの厨房を持ち、それぞれの料理長が献立を創作するという何とも贅なお宿です。
旅情
googleのナビで「まつさき」さんが見当たらないなぁと、車でぐるぐるしていると家紋に「まつさき」とある看板を発見しました。チェックインがやや早めだったのもあり、空きスペースへ駐車していると男性のドアマンの方が走ってこられました。しかし、お泊りに行くときはいつも曇天・・・。
荷物を預けまして、ここからは案内係の仲居さんにバトンタッチです。車寄せにある赤色で囲った待合室のようなところでは、仲居さんが所狭しとお客さんの到着を待っておられました。このようなスタイルは本当に稀かと思います。
仲居さんが待機していた車寄せには足湯がありタオルも置いてありました。
車寄せからは池の上を渡る廊下がロビーまで付いています。
渡り廊下の池には錦鯉が泳いでおります。手すりから顔を覗かせると、「餌クレー~~」とせがむように寄ってきます。「下々に餌を撒いてやろうか」と、餌をやると我先に食わせろと鯉達が大騒ぎで水しぶきの反撃を受けました。
さらに渡り廊下が続き終点がようやく玄関が見えてきました。
玄関を入ると最初に目に入るのが左にフロント、右にお土産処です。
入ってすぐのところに飾ってある陶磁器は展示販売となっていました。どれも尻込みするお値段がついておりました。
温泉街にはお土産屋さんらしい物がなく館内の売店は充実しています。
フロント横には館内の案内板がありました。ロビーと中庭を中心に点在する宿泊棟。ロビー直結の檜殿に寄ってから、鳳凰の棟へ探険してみます。
売店の横の通路を抜けて行くと、夜にオープンするお夜食処がありました。景気の良かった頃の大規模旅館やホテルには必ずあった館内居酒屋やラーメン屋さんです。まつさきさんは現役でオープンしています。
お夜食処の前には男女別の内湯があります。お風呂はまた後程の案内で。
お夜食処の隣、お風呂の目の前という好立地な場所に自動販売機があります。
さらに奥へ進むと「クラブ湖月」があります。訪れた時はご年配のお客さんがほどんどだったようで大賑わいとなっていました。
ロビーに戻ってきました。檜殿を背中にしてロビーをみた景色です。赤矢印が「松壽庵」方面、青矢印が「鳳凰」棟となっています。
ロビーからは自慢の中庭が見えます。紅葉の名残がありましたが、ほとんど散ってしまっていて、すぐに冬の様相となりそうです。雪景色も素晴らしかろうと思います。
ロビーにはラウンジがあり金箔ソフトをはじめお茶を楽しめます。また、フリーの新聞やパソコンもあります。
ラウンジを通り過ぎると左手に茶室風サロンなるものが現れます。
こちらもラウンジの一部で中庭を眺めながら、くつろいだりお茶を頼めるようになっていました。そして、右画像の赤丸の扉から表へ出る事ができます。少し寄り道してみます。
畳廊下の行く先は中庭のお池に浮かぶお茶室です。
渡り廊下の末には、お茶室入り口の壁絵に出合います。
入って右手には茶室があります。炉の切り方によっていろいろと呼び名があるので、自分でも調べたのですがサッパリ分かりません。茶道に詳しい相方に聞くと「八畳(上座床)」というスタイルなんだとか。やってる人からするとパッと見て分かるようです。ご年配の方に配慮して椅子席になっていました。炉の左の茶道具も展示販売。
本館の建物に飾ってあった将棋対局の写真。どうやらこのお茶室で行われたようです。
一般の御客さんには1杯650円で茶をたてていただけるようです。
対局の間の反対側に行くとお部屋が2部屋見えます。まず、手前のお部屋を覗いてみます。
中庭に向いてウッドデッキがついた池に張り出したお部屋です。もともとお待合のお部屋だったのか、現代風に喫茶として造りなおしたのか。こちらの陶器も一部展示販売されており、「お!?いいな!」と思う器はやはり値が高い・・・。
お部屋の装飾がとても凝っています。この庵で一泊して見たい。温泉引いて欲しい、特別料理とか食せないでしょうか・・・。
部屋の片隅にある躙り口(にじりぐち)、もともとお茶文化の発展は千利休さんから始まり武士のたしなみとなりました。お茶室は武士同士の密談の場。茶室では争いはご法度で、帯刀すると引っ掛かるように狭い入り口にしたと言われています。
奥の躙り口(にじりぐち)を潜ると3畳の小さな「平三畳(澱看席【よどみのせき】)」という茶室があります。密談よろしく茶室はわざと暗くして密室感を演出しているものが多いです。
茶室の浮島からは中庭の池を散策できるようになっています。まつさきさんに来たら是非に散策してみたいと思っていました。しかし!雨上がりのこの渡り廊下滑ります。池ポチャあります。注意! 気になったのは、お庭散策やお茶室見学しているお客さんが、ほとんどおらずリピーターが多いのか庭を愛でなくとも広いお家にお住まいなのか・・・。
木の茂りが濃く建物全体は見えませんが、季節が季節ならよい景観を堪能できそうです。ご時世的に木の剪定も間に合っていないか。
池の上に渡した池ポチャ廊下は、ちょうど鯉に餌を上げた付近に上陸します。広大な庭があるのはバブル時代からのお宿がほとんどです。維持が大変なので時代の趣向はともかく希少な遺産ではないかと思う今日この頃です。新造のお宿で池のある庭なんて見た事がありません。いろいろと管理が大変なんでしょう・・・。
さてさて、茶室風サロンの渡り廊下前まで戻ります。茶室廊下入り口前には、色浴衣は別料金?に、明治中期のオルガンの展示があります。希少な物品が何となく飾ってあり、場合によれば希少かもという調度品が自然に置いてあります。
「鳳凰」の1階は娯楽施設と宴会場になっています。宿泊棟に向かう手前には娯楽室「燕」があります。奥は書庫棚のある寛ぎコーナーです。
娯楽室は卓球台にエアロバイク、ピアノ、子供用バスケゲーム?もあったりと夕食後は賑わいを見せていました。
娯楽室を奥に進むと、読む人を選ぶ本がしまわれた本棚とヨーロピアンなサッカーなゲームが置いてありました。
書棚の先には客室へのエレベーターがあり、傍らには自動販売機があります。
エレベーター手前には個室宴会場があり衝立が立っていました。
夕食直前には衝立が外れていたので、ちょいと中をお邪魔致しました。手前も合わせれば30人以上は収容できそうな宴会場に2人だけの豪華な空間となっていました。
こちらは6席の宴会の用意がありました。窓からは茶室を臨むゆとりのある宴会場です。団体客用に造られた宴会場も、今のご時世ではお宿としても難しい扱いなのでしょう。
鳳凰の宿泊棟は各階により趣きが異なる廊下となっていました。新館となるこちらは温泉露天風呂付のお部屋となっていて一番お値段高めのようです。
最上階は男女別の露天風呂があります。一番奥に見える暖簾は貸切露天風呂となっています。
一度ロビーに戻って赤矢印の方面へ散策します。このロビーとフロントがあるところは「瑞雲」という本館にあたります。この本館にも宴会場と客室があります。
2階と3階に客室があります。いわゆる一般客室のようで、旅行サイトを見ているとお部屋には温泉が付いていないようです。と言ってもそれなりのお値段します・・・。
瑞雲の最上階は宴会場となっています。
舞台がある大宴会場があったり、50人ぐらいは余裕で入れそうな宴会場が4つもありました。景気の良かった頃はフル回転で、さぞ賑やかだったでしょう。今はご時世的に数人のお客さんに50畳以上の広間と何とも贅沢な使い方になっていました。
さて1階に戻りフロント前を抜けて「松壽庵」へ参ります。そういえば高砂庵の入り口が見当たらない。どうやら訪れた時は「高砂庵」は使用されておらず入り口は塞がれていました。
瑞雲から桃山庵と松壽庵へ向かう廊下です。
L字の先には桃山庵の小宴席部屋があります。
小人数で食事をいただくなら、大広間にぽつんとより手狭の方が落ち着くのは小心者だらからか。
L字を曲がると落ち着いた雰囲気に変わり、ひんやりとした季節の外気になり、足元が柔らかく木造のような踏み心地です。
廊下の途中このような洋館のような場所があります。扉もついていますが従業員用で、何故にこの場所だけ?と思っていました。
温泉街を散歩していて分かりました。今は「まつさき」さんの従業員の駐車場になっている場所には洋館のような車寄せがありました。松寿庵は「まつさき」さんの建物の中でも最も古い趣きが残る棟だそうです。内装は完全に和ですが、外観は洋でもともと別のお宿だったのでしょうか。
かつての玄関のすぐ隣には、宴会場と会議室への階段の案内はあるが階段は見当たりません。今は壁で塞がれ行くことはできませんが、案内板は当時のまま残されてありました。
宴会場、会議場の案内板が残された所、翁(おきな)と媼(おうな)の像が飾ってある所からはさらに奥へ廊下がついています。
廊下の仕切り上には「松寿庵」の表札があります。内装はフルリフォームされていましたが、外気との接触の感じや建物全体は木造建築らしい雰囲気に包まれていました。
お部屋
案内して頂いたのは松寿庵の「望月」というお部屋です。
間取りは本間10畳+踏み込み玄関4畳程+4.5畳程の奥ノ間+洗面+バス+トイレです。
お部屋に到着して甘味のある煎茶と、「まつさき」さんの自家製栗羊羹をいただきました。栗が熟濃されて餡は滑らかで甘さ控えめで優しいお味です。この自家製菓子はロビーにある売店に売ってありました。このお味だと買って帰る方もおられるでしょう。
踏み込みは1.5畳ぐらいあり扉を開閉しても余裕がある心遣いです。
玄関上がって右手には水屋があり、左手には多機能シャワートイレがあります。水屋にはポットと冷水がすでに用意されています。冷蔵庫内は有料となっていました。
松寿庵を予約したのは「まつさき」さんで最も古い宿泊棟で古風な趣きを楽しみにしていたからなのですが・・・。端々には当時の趣向が残されている造りとなっていますが、完全に今風にリフォームされていました。ちょっと残念ながらも、古くて嫌だわという方でも全然問題なく宿泊できるほどに新しくなっています。従業員さんとお客さんの接触を少なくするための、あらかじめのお布団敷きとなっています。
広縁というには個室に近く「奥ノ間」とした小部屋には、館内の案内や飲み物のメニューが置かれていました。食事がお部屋食を考慮してなのでしょう。前もってのお布団敷は食事の匂い移りが気になるところです。焼物を焼くときには本間と奥間の障子を閉めて、換気MAXで縁の窓を開けました。意外に寒くもなく季節柄ムシの訪れもありませんでした。真夏や真冬だとそういうわけにもいかないので、今思えば気になるのでシーツを一枚被せてもらえるか聞いてみるべきでした。
お隣との目隠しがあるので景色は、まぁまぁwといった感じです。夕食はこの景色を見ながらだったので、景色のない個室食よりはずっと良かったです。
奥ノ間隣は洗面所があります。バスタオルも1人2枚付いて、バスマットも2枚の替えがありました。
今更ながらもアメニティ類の不足は全くありません。接客は素晴らしく色々と対応はして頂けそうな雰囲気ではありました。最安でも50000円以下にはならないお宿です、その都度申し出れば対応はして頂けそうです。
お部屋には温泉露天が付いています。洗い場も冬季の寒気よけに扉がある配慮はさすがです。
溢れ出しはなく源泉が溜まっていないのかと思っていたのですが完全循環湯のようでした。満ちたお湯は身を沈めると溢れ出しが気落ちいいが、減ったお湯は回復することはなく減ったままでした。源泉100%とありますが溜め湯にした後は源泉の追加投入はないようです。せっかくのお部屋露天なので物足りなさがあります・・・。
露天からの情景はまずまずで、まつさきさんの外庭?の松林でお湯を楽しみます。庭は手入れがされていて、くつろげる情景に源泉の追加があれば言うことないのですが・・・。
高級宿らしく備品にぬかりはなく不便はありません。館内には自動販売機があり、足りない物があっても徒歩5分圏内にコンビニもあるようです。
お風呂
まつさきさんは新館鳳凰の5階に男女別の露天風呂と家族風呂、本館瑞雲に男女別の大浴場、計5ヵ所の浴場があります。部屋に源泉風呂が付いていたので、貸切風呂は利用しませんでした。泉質は全て含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉です。源泉は口に含むと微塩味があり、硫黄?というよりは弱いオイリーな風味があります。浴感はアルカリ性らしいツルツルとして肌触りが気持ちのいい湯です。湯使いはすべてを把握できませんでしたが、循環湯舟に循環放流湯舟もあれば、源泉浴槽?なのかなという湯舟もありました。
さすが高級旅館らしく脱衣所にはマッサージチェアがあり、乳液・化粧水類、髭剃り、シャーワーキャップ等すべてのアメニティが備えてあります。感染症が無ければバスタオルも脱衣所に置いてあるようでした。
露天風呂(玉竜)
脱衣所から浴室に入ると4人ぐらいは入れそうな内湯があります。こちらはオーバーフローはなく完全な循環湯のようでした。浴室内にはサウナが備えつけてあり、サウナ入口横の浴槽は水風呂です。
宿の規模からすると満室になると女性だとシャワー数が気になるところです。しかし、温泉付きのお部屋が多いので敢えて大浴場に入りに来るお客さんも多くはないかもしれません。
雰囲気がとても良い露天風呂です。大きな石造りの湯舟からは、お湯が捨てられている様子はなく循環湯のようで消毒のにおいが若干気になりました。辰口温泉の源泉は湯量が少ないのでしょうか。源泉の追加投入はなさそうでした。
湯屋の雰囲気や湯舟の大きさも申し分はないが、温泉好きにはちょと物足りない感じがします。
露天風呂(木犀)
新館の玉龍の対を成す露天風呂は、少し造りが異なりますが同じ設備です。循環の内風呂にサウナの備えですが水風呂はないようです。サウナはミストタイプとなっています。
露天風呂は「玉龍」に比べると開放感があります。
露天風呂は開放感があっていいのですが、瑞雲にある大浴場に源泉かけ流し浴槽があるので、こちらに来たのは1回のみでした。
大浴場(男湯 瑞泉の湯)
男女入れ替えのない大浴場は男性側から。20人ぐらい入れる大きな湯舟と赤矢印のところに小さな源泉槽があります。
大型旅館らしくシャワー数は申し分ない備えです。水面に顔が近づくと消毒臭が気になりましたが、鳳凰の露天風呂と比べても浴感は二段ぐらい上で納得のツルスベ感です。
循環湯といっても新しい源泉も入っているので、湯舟の淵はオーバーフローで満ちに満ちています。湯舟が大きいので何ともですが、これだけオーバーフローがあれば消毒いらなさそうなんですが基準とかあるのでしょうね。
そして、2人入るといっぱいになるメインディッシュの源泉槽です。ツルツル感とオイリー塩味の風味は何処よりも強く感じられました。他の湯舟に比べると明らかに見た目の色が違います。源泉の色というよりは湯舟に温泉成分が付いた色でしょう。訪れた初冬に入るにはかなり冷やっこい湯温となっています。チェックイン直後は消毒臭がして残念な気分でしたが、夜の入ると臭いは全くなく清掃時のにおいが残っていたのかもしれません。
それもそのはず。源泉の温度は36.5度と体温と同温なので、湯舟の温度はそれよりも低くなります。寒がりの相方は「寒い!」と言っていましたが、暑がりの自分からすると初冬でもずっと入っていられる湯温でした。この湯温ゆえにだれも利用しない貸切入浴でした。滞在中は他の湯舟に興味はなく、チェックアウトまで30分ほどダラダレと浸かること4回も入ってしまいました。
源泉槽から大きな湯舟へお湯が溢れ出ていきます。湯舟の隔たりである御影石には虹色の光沢が見られ、やはりオイリーな成分が含まれているからでしょうか。それもあってか、源泉温度が低くても湯上がりは寒さを感じずにいられました。
瑞雲の大浴場にはかつては可動していた小さな露天が併設されてありました。鳳凰の露天風呂ができるまでは使われていたのでしょう。
露天からの景色が素晴らしいので、むしろこちらに湯を張って欲しいぐらいでした。
大浴場(女湯 八千代の湯)
女性側の大浴場はやや閉塞感があり、窓が大きくとられていないことで無機質な感じがします。こういう入れ替えがないところは、外から見える事情がある事が多いので窓も小さいのでしょう・・・。
源泉槽からは同じように大浴槽へ向かってオーバーフローがあります。相方が言うには源泉槽からの溢れ出しに近い大浴槽に浸かると、冷たくもなく湯のへたりもなく良かったそうです。
女性側にもかつての露天風呂跡がありました。岩に析出物がびっしりとついていたので、かつては源泉かけ流しだったのかなぁ・・・。庭の眺めは今一つです。
お料理
食事は朝夕共にお部屋のテーブル席でいただきました。「まつさき」さんのお料理は素材の味を堪能できる調理が施され、さすが小京都金沢と言わざるを得ません。地物とその時の良い物・季節の物を使い、品のある京風の味付けが主となっています。最初の配膳は食前酒、前菜、鍋物、焼物が配されていました。
献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
【食前酒】:柚子酒
柚子茶のエグ味を取り除いた透明感だけを残したようなお味です。「アルコールが1度だけ入っているのでお気を付けください」と配膳されました。まつさきさんのオリジナル商品のようで売店での販売がありました。飲み口さっぱりです。
【前菜】:①のど黒幽庵焼 ②銀杏素揚げ ③カマンベールチーズ ④小坂蓮根チップ ⑤海老てまり寿司 ⑥五郎島金時芋レモン煮 ⑦常節旨煮
①ノドグロは醤油ベースに漬け込んで旨味を凝縮し幽庵にしても脂の乗りが最高です。 ②ギンナンは瓶詰の水煮のようではなく自家処理のようで、たくましい硬さを残してギンナンの薫りを逃がさず塩加減もよい。 ③「普通のカマンベールです」と若い仲居さんの説明で、笑いが起こりましたww 敢えて燻製とかにはしないのは、笑いのための料理長さんの布石でしょうか。 ④金沢小坂区でとれたレンコンは素揚げでチップスにしてお酒のお供に。 ⑤寿司飯は絶品の酢と甘味にゴマを入れ込んで香しく。海老は半分に輪切りされ、ラップとかで型をとったように丸い寿司飯にぴったりと乗っています。 ⑥とても甘味の強い五郎島町のサツマイモは、上品なレモン風味をしっかりと付けて程よい柔さ。 ⑦トコブシはしっとりとした歯ごたえに噛めば噛むほど旨味が増します。ワタも一緒に頂いて磯風味を楽しみます。
【椀物】:蟹真薯 大黒占地 柚子 三つ葉
「辰口産の旬のユズも一緒にお楽しみください」と部屋付きの仲居さんから一言。保温機に入っていたのではないという証明である水拭きされた艶々の椀の蓋を開けると香ってくるのはユズとカツオです。芸術的な真ん丸真丈が視覚的にびっくりさせてくれます。大黒シメジは香り豊潤で美味高級食材ですが、この真丈の前では引き立て役です。三つ葉は長くとって尾の部分を軸結びにしてあり一手間が素晴らしい。
塩加減絶品で淀みのない好き通る気品の清汁に浸されているのは、ふわふわ泡の様に溶けてしまうカニ真丈です。柚子も浮かべてあるのに水面に油の浮きがない。この真丈は何度も重ねて蒸しあげてあるようで、カニの繊維身をそのままに白身魚と練ってあり、練りの間に入った気泡が弾けるジュワジュワジュワ・・・という食感も楽しい。
【造里】:鰤 なめら ふぐ 甘海老 花穂紫蘇 菊花甘酢漬け 山葵 ポン酢
モミジを意識したお皿にはギラギラと活かった海幸が盛ってあります。ナメラはあまり聞きなれない魚です。左紫蘇花下には通称名はキジハタという魚。鯛に深みを持たせたタンパクさがあります。「ナメラとフグは甘みのある自家製のポン酢でお召し上がり下さい」との説明がありました。味付けは他に、たまり醤油もあり両方で味見をしたところ。白身素材の味を殺さない旨ポン酢がとても合う。フグは大振りの身をそのまま軽く湯引き?して平造りにしてあり、コリコリ食感で口の中で噛むほどに旨味が滲みだします。旬のブリは中トロ、甘エビは子持ちでプリプリとプチプチの双方を楽しめます。あしらいは他に大葉、海藻クリスタル、スプラウト。菊花を甘酢で漬けて薬味にもってくるセンスは最高です。ポン酢はオリジナルポン酢のようで売店にも置いてありました。
【酢の物】:ずわい蟹 蛇腹キュウリ 金時草 レモン 土佐酢
「加賀はズワイガニが名物ですが、今日のは申し訳ありませんがカナダ産です」と言わなければ分からないのに、丁寧な申し出はすばらしい気遣いです。つまり冷凍蟹です。これが悪ではなく、他宿での安カニプランではよくあるかと思います。本物の蟹目当てなら宿に「活けカニですが?」と聞くのが良いかと思います。流行り病による仕入れの問題、温暖化による不漁とかでしょうか。
冷凍物はやはり風味は劣りますが、身離れは素晴らしくカニの甲殻旨味もがっちりしています。最近の冷凍技術は素晴らしいです。カニ酢は薄味の物が多い印象ですが、まつさきさんは酸味と昆布が強い土佐酢で私的には大好きです。
【焼物】:和牛もも肉鉄板焼き 万願寺青唐 百万石椎茸 南瓜 フルーツトマト
最初の配膳時には用意されていた焼物は和牛陶板焼きです。石川県産の能登牛かなと思ったので訪ねてみると、「能登牛を使用することもありますが、この度は産地が違います」とのお答え。お品書きにはモモとあるが肩ロースのようなサシの入った色合いです。
火が入るにつれて肉汁が溢れててきて、添え付けのバターの風味が薫ってきます。こんがりと焼きあがった頃には、歯応えがしっかりとした食感はやはりモモ肉か?表面をしっかり焼くと旨さが内に入り確かな上品な和牛味。モモはしっかり焼いた方が私的には好みです。溢れ出た肉汁を金沢銘品の百万石椎茸に馴染ませると風味が倍増します。漬けダレはニンニクとタマネギが熟された和焼き肉ダレ。
【蒸し物】:粟蒸し 鰻 木耳 銀杏 百合根 白玉団子 散らし麩 べっ甲餡 山葵
座布団料理長こだわりに一品なんだそうです。粟(あわ)のつぶつぶが残るように半殺しで、モッチリともち米のように蒸して寄せてあります。雑穀の一種ですが、トウモロコシのような甘さがほんのりとあり香ばしい。
器にはウナギのタレ焼き、フワッコリッの生キクラゲ、ギンナン、たくさんのゆり根、白玉団子を敷いて粟餅を被せ、カツオ出汁の黄金餡を掛け山葵を添え付けてあります。散らし麩と献立にあったのですが見当たらず。紅葉を模した生麩か、揚げ麩なのかなと思いつつ。
【鍋物】:水魚鍋 水菜 葱 豆腐
鍋物も最初から配膳されていたものに火をかけてもらいます。お出汁が沸き立つと豊かな山椒の匂いが漂ってきました。鍋の蓋を開けると食材の上にある茶色の斑点が粉山椒で、かなり香りの強い山椒でした。お出汁は悩みましたが、恐らくこれもカツオか。みりんのようなお酒の甘味が強く、ゲンゲのゼラチンと強調し合います。豆腐も大豆が濃く旨い。
水魚は石川県で流通しているノロゲンゲという深海魚の仲間です。皮膚は深海魚らしくゼリー状のゼラチン質に覆われ、柔い身はさっぱりとしているのにアナゴのような旨味、甘味、コクの深さがあります。
このゲンゲ、とにかく実がほろほろと崩れていくほどに柔く箸ではうまくつかめません。なのにゼラチン質の皮は身と反比例して離れが悪いほどに粘りが強い。もともと高級魚ではなく捨てられていることも一時期あったそうですが、旬のカニの底引き網などでかかった珍品でコラーゲン食として重宝されているようです。干して焼いてもおいしいそうです。今ではちょっとしたsoul foodのようなものでしょうか。
【食事】:源助大根 蟹身 油揚げ 釜めし
【留椀】:赤もく 葱
【香の物】:大根、胡瓜、小茄子の酢味噌和え
源助大根は自然交雑で生まれた加賀野菜です。背の丈が短いずんぐりとした大根で甘味が強いのだそう。カニのほぐし身はもりもり盛り込まれ、油揚げの油がお米一粒ずつを解いてまろやかに仕上げてお出汁が潤い旨い。お米は辰口産とお品書きにありました。留め椀は海藻のアカモクと献立にはないトロロ山芋でとろりと仕立てたお澄ましとなっています。京料理よりも酒飲み寄りの塩加減だが品は損なわない。お品書きにはなかった、香の物は大根とキュウリは糠漬け。茄子は最後まで手間を惜しまず酢味噌で和えてありました。
【水物】:フルーツパイ包み焼き 林檎 キウイ バナナ カスタードソース ベリーソース ハチミツ チャービル
とても珍しい温物デザートで最後を締めます。暖かさがありましたが、パイはさすがに焼きたてではなく、ワーマーで待機していたものだと思います。ナイフとフォークで品よくいただきます。ラズベリー主体のようなベリーソースは酸味は強いが、ソースの端にある透明なソースはハチミツでまろりと調整できるようになっています。
パイ生地が前に出すぎないように薄く3種のフルーツを包み込み、カスタード地は緩やかにクリーミーに仕立てているかと思いきや、時折口に入るキウイの酸味アクセントは熱が入っても飽きさせない計らいでしょうか。美味しいのですが、会席の最後にとんでもボリュームのパイはさすがに想像もできず。15時のお茶とコーヒーにいただくhotパイは、昼下がりのスィーツ的なやつでした。
朝食
夕食と同じようにお部屋のテーブル席で朝食をいただきました。
・リンゴジュース
・焼き海苔
・ちりめん山椒
・ほうれん草胡麻和え
・香の物(大根酢漬け、白菜浅漬け、佃煮昆布)
まつさきさんの手作り朝食はご飯に合うものばかり。ちりめん山椒は辛味を抑えて食べやすく、ほうれん草はシャキシャキ感を残し、摺り胡麻ではなく炒り胡麻で香り高い。香の物はあっさりとした自家製でしょうか。
・佃煮海苔
・明太子
・オクラとめかぶ和え
山中塗のお弁当箱には珍味3種。のりの佃煮は青味豊かで塩は控え、コリコリとしたクラゲを混ぜ込んであります。スタンダードな明太子に、オクラとめかぶはお互いの粘りでよく絡み香り付けはゴマ油を。
・温泉玉子
・フグ西京漬け?、カレイ一夜干しの鉄板焼き
硬めの温泉玉子には薄味の出汁。小振りの切り身はよく漬かった西京漬けの小フグ、カレイの一夜干しと軽く焼いて香ばしく。
・サラダ(レタス、胡瓜、ハム、トマト、和風のドレッシング)
・お味噌汁(フグ、エノキ、ネギ)
・白米
お味噌汁にはフグのアラが入っており、とても上品な白味噌を合わせてあります。白米はコシヒカリのようなもっちりとした食感です。北国の米はやはり美味く、夕飯と同じ辰口産でしょう。
・ヨーグルト、マンゴー
酸味まろやかなプレーンヨーグルトに熟したマンゴーを二切れ盛ってあります。お好みで甘味を足していただけます。
まとめ
実はまつさきさんの所へ訪れるのに、なかなか腰が上がらなかった点がありました。1つにお値段ハイクラス。2つ目はお風呂事情です。源泉かけ流しと公式HPにはあるのですが、先人の記事やその他の情報ではかけ流しではないというものもあったからです。gotoが後押しとなり宿泊して結果的に公式HPが正解でした。お料理は旬の物を使って手の入った内容で満足しましたが、お値段帯からするともう一品あってもいいのかなと思いました。大浴場に源泉風呂があるので問題はないのですが、お部屋のお風呂も掛け流しにしてもらえたらと贅沢を言ってみる。
宿泊料金
通常1人平日でも25000円前後からの値段帯です。gotoフィーバーで宿泊した時には通常料金のお値段です。記事をしたためた時には、感染状況により休前日でも23000円以下のプランもありましたが、これは異例かなと思います。最近では旅行サイトによっては、積極的に楽天スーパーセールなどに参加されている印象です。お部屋の種類によってお値段は変わりますが、セール時期等を選べば50000円台でも宿泊できるかもしれません。
宿泊日:2020/冬季
旅行サイト:じゃらん
プラン:本館【スタンダードプラン】金澤会席~日本海の旬材がたっぷりの会席料理~
部屋タイプ:【源泉露天風呂付】伝統の客室 松寿庵//本館禁煙木造棟
合計料金:70400円(2人)
gotoトラベルクーポン:24640円
じゃらんクーポン:2500円(秋セール)
支払い料金:43260円
加算ポイント:1548p