いい温泉宿、おいしい料理宿

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再び訪れたいお宿探訪と趣味のブログ

しげの家【長野県 戸倉上山田温泉】~全8室の匠の料理を提供する宿は、目立った宣伝もなくあり続けるのは密やかなstayを求める客への配慮だろうか。約束された新鮮な源泉かけ流しの温泉と格別の料理をゆっくりといただく~

 戸倉上山田温泉街のメインストリートから車一台が通れる路地に「しげの家」さんはあります。築60年以上経過していることを感じさせないモダンな和宿は、8室しかなく隠れ家的なくつろぎを演出しています。

旅情

 周囲は鉄筋コンクリートで近代化された温泉街。メインストリート向きに玄関はなく千曲川寄りにあり見逃してしまいそうな建物です。ナビに任せて訪れたものの、赤矢印の路地を発見するまでに3回ほど行き過ぎてしまいました。

 路地を進むと「しげの家」さんの玄関が見えてきます。駐車場はこの玄関から5秒ほど目の前にあります。勝手ながらも、そちらに車を停めると仲居さんが走ってきて荷物を取りに来てくれました。蓼科方面でスキーをしてから訪れたので、スキー用品が入った重たいバッグを申し訳なくもお願いしました。

 小さい路地なので玄関前には車寄せスペースがとられ、奥に水車が見えます。

 玄関の様相は小道にある隠家的な雰囲気があり、思っていた以上に通りに溶け込む料亭のようにも見えます。

 石畳の小道を進み暖簾をくぐると装飾戸が入った玄関が現れます。

 昔のままの物か建て替える前から取り置いたものなのか、玄関の上の欄間の装飾に出迎えられます。しげの家さんの内装は文化財のような装飾が至る所に施されています。なのに古さを感じさせない雰囲気が特徴的です。

 玄関戸を入ると落ち着いた高級感のあるロビー。格子天井に加え庇屋根があたかも屋外のように張り出しています。建物のことを色々と尋ねさせてもらっていたら、玄関周りは往訪した時から15年ほど前に改修されたものだそうです。

 玄関とフロント方向を振り返ります。エントランスの真ん中には陶磁器の展示販売、中央フロント右には書棚があります。公式HPには館内図もあるので合わせて見て頂くと雰囲気が掴みやすいかもしれません。

 本棚の内容は色々です。本当に色々でマニアックそうなのが多いかと思えば小説もあります。展示してあった陶磁器はむちゃくちゃ高いのかと思うとそうでもなく、手に取りたくなるようなお値段でした。

 フロント反対側を見るとロビーとその奥に売店があります。

 お土産は「しげの家」さんのオリジナル商品から菓子類、戸倉上山田名産のあんずのジャム、お酒など、品数は少ないですがお勧め色々でしょうか。

 朝食会場にもなるロビーは傘天井の囲炉裏があります。

 ロビーには色浴衣の用意、ラウンジとしてお酒もいただけます。お値段はそれなりです。

 ラウンジ前にはとんでもなく大きな組子細工の装飾壁があります。この近所に職人さんがいるのだそう。ここまで大きい物は見たことがありません。

 余談ながらも1階にある共同トイレの戸ですらこの飾りです・・・。新しい物の様にも見えますが昔の物を再利用したのか。

 組子細工の壁を左手に客室と浴室がある廊下をそろそろと進みます。

 廊下進むと階段があり隣にエレベーター、その左手には1階客室への廊下が続きます。1階客室は「桂」という1室のみです。表記はないですがいわゆる特別室です。

 エレベータ前は男女別浴場と貸切風呂があります。

 エレベーター横の階段を上がっていくとなにやら不思議スペースが見えてきました。

 ちょこっとした枯山水のような箱庭はよくありますが、目に入ったのは巨大な石造りの小滝がある水庭の情景。

 水庭を挟んで反対側にある「信濃」というお部屋の玄関上にある欄間の掘り込みです。芸術的ではありますが、こちらは新しく見えます。職人さんの仕上げのようにも見えますが、現代では3Dプリンターやプログラムでの彫刻もできそうなので真相は分かりません。

 水庭をぐるりと囲むようにお部屋がならんでいます。しかし、ここは2階なのに水が流れる庭があるのがすごい。管理が大変そうです・・・。

 石庭をぐるりと反対へ回り込むと、天井は竹細工に格子があり、何の木かは分かりませんが、天井を支えるように立つ柱木が何とも魅力的な光景を醸し出します。

 石組の庭を回り込むと真ん中に消火栓が隔てて、右手が大広間、左手に客室廊下が伸びています。客室廊下は特筆することもなく・・・いやいや、天井とかの梁などの装飾はありますが見始めたらキリがないので敢えて取りあげることはなく。

 何が凄いかというと大広間の雅さが凄いのです。踏み込みがある天井細工がまずこれです。文化財級のお宿では当たり前でも、しげの家さんの建築装飾はどれも新しく見えるが粋があり過ぎて困惑します。

 広間にお邪魔します。アングルからすると広く見えますが、28畳ほどでそこまでは大きくはありません。「大広間を勝手に見させてもらいました!」というと、ご丁寧に説明頂き、天井が高く豪華に装飾された姿は、さすがに交換できるところは改修しながらでしょうが、建築当時かつてのままなんだそうです。保存状態がかなり良く手入れしておられるのでしょう。絢爛雅。

 

お部屋

 案内していただいたのは「撫子」というお部屋です。

 間取りは本間12畳+前室4畳程+踏み込み1畳+洗面+トイレです。公式HPを見ていると、しげの家さんのお部屋の中では、モダンなおとなし目のお部屋のようです。藤のお部屋に泊まりたかったが訪れた時には取れず・・・。

 ウェルカム茶はお部屋で。抹茶としげの家さんオリジナルの塩が効いた餡子の上品もなか、あんずは蜜付けかと思いきや変化球の甘酢漬け!

 さらにさらには、野沢菜とお新香でお出迎え。到着時のお酒の当てとしてのお楽しみでしょうか。ピリッと唐辛子の辛さのある沢庵、醤油を抑えた甘味のある野沢菜。にまりとするお味に、お料理が期待できそうです。

 踏み込みには使い捨てのスリッパがありました。前室は水屋、洗面、トイレへのアクセスです。

 水はfreeですが他の飲み物やおつまみは有料でした。

 水屋には、コーヒー、あらかじめ冷水の用意、湯沸かしポットと何でも揃っています。お茶は「ほうじ茶」「緑茶」と2種の用意。生茶葉の2種が両方とも良い物を使っておられるのが香りは凄まじく美味い。夕食後はお茶セットの入れ替えもありサービスも充実しています。

 安心のシャワートイレに洗面周りは化粧水から乳液まで備えは完璧です。

 トイレの戸にも組子の装飾を施してあります。トイレにここまで頑張らなくてもと思いますが高級感はぬかりなく。こういったところにも「おもてなし」です。

 本間はおとなし目としましたが、よく見ると所々にモダンながらの見せ場があります。床の間の大きな対の立派な一本柱、床の間のお花は生花と大変なご時世であっても、おもてなしは抜け目なく気持ちが伝わります。

 本間と前室の襖には金箔のあしらいと、ここにも組子の装飾がはめ込まれています。

 縁はなく室内から窓に向かって、振り子椅子?が2つ置いてあります。窓からの眺めは2019年に泊まった笹屋ホテルさんの駐車場を見下ろします。ベランダ?には植木が植樹されているのでワンアクセントはありますが眺めは今一つ。目隠し兼、小庭が付いているので夕涼みなどをするには丁度良いかもしれません。

 縁の外から軒の裏側を覗いて見ると、洗濯物が干せそうな物干し竿は夏場の葦簀吊り用でしょうか。軒裏の竹細工の装飾は新しく見えます。よくよく見ると、植木の刈り込みの手入れが際立っていました。

 ブログの打ち込みはリビング隅の文机で行いました。レトロ風の電話がいい味を出しています。

 アメニティ類は不足はなく朝は部屋戸ノブに朝刊が掛けられていました。新聞のお届けは高級旅館のあるあるサービスです。

 館内には自動販売機はないですが、温泉街にコンビニが徒歩圏内すぐにあるので、あらかじめ用意しておくものは最低限で済みそうです。

 

お風呂

 しげの家さんには男女別の浴場と貸切風呂が1つあります。泉質はアルカリ性単純硫黄泉となっていて、肌触りはツルツルスベスベの美人の湯で皮脂がとれ、湯上がりは硫黄を纏い潤います。味もほんのり硫黄味でまろっとしています。かと思えば玉子の匂いと共に鉄錆臭も後からやってきます。湯使いは一部加温の源泉かけ流しとなっています。源泉地から引き湯をして溜め湯水槽を消毒していると案内にありました。しかし、消毒臭は一切感じられない新鮮湯です。

朧の湯

 浴場に入ると硫黄(硫化水素)が優しく香ります。手前に洗い場があり奥まった浴室です。

 横並びで4人ぐらいは気を遣わず入れる大きさがあります。訪れたのは芽吹き前の季節だったので、庭はやや素気ないですが季節が良ければ景色も楽しめそうです。

 夜にはライトアップもされて、また違う情景をを楽しめます。窓を開けると寒気が入り、さながら半露天風呂です。

 御影石の浴槽へはカエルが鎮座した湯口から程よい量の源泉が注がれます。湯船の大きさに対してはやや少ないようにも見える湯量か。

 洗い場側へのオーバーフローはなく、庭側に側溝があり湯船の淵全体が切り口となって溢れ出ていました。注ぎ口よりも捨て湯の方が多く感じられる不思議。

 脱衣所には冷水の用意もありました。湯温が高めなのでしっかり補水しましょう。

月待の湯

 少し湯船は小さく3人ぐらいが横並びで気兼ねなく入れる大きさです。

 少し湯船は小さく3人ぐらいが横並びで気兼ねなく入れる大きさです。

 トロトロと流れてくる湯口のレリーフは、湯屋の名前から察するに彦星と織姫がな。七夕とは関係ないか・・・。湯量はそこまで多くはない。しかし、源泉の温度が高すぎるので、大量に注げないというのが現実なのかと想像してみる。

 こちらの湯屋だけ露天風呂が付いています。一度に脱衣所へ戻り露天風呂案内から表へ出て檜造りの細い通路を進みます。

 通路を曲がると野趣が溢れる露天風呂が現れます。たまりませんねぇ、涎がでます。

 こちらも夜にはアライトアップが成されており、春前には良い湯温で夜気を感じながらいつまでも入っていられました。

 小振りの湯船は明らかな1人用です。お宿は満室のようでしたが、大浴場では誰一人とも会わずゆっくりとお湯を楽しめました。

 中庭の池に浮くように湯舟が付いており、湯舟下の鯉が泳ぐ池へオーバーフローがだばだばと落ちていきした。

内湯では分かりにくかったのですが、露天風呂の湯は少し緑がかかっており白い湯の花が舞っていました。

貸切風呂

 貸切風呂はそれなりに使用されていたようで、こちらでお風呂を済ましたお客さんが多かったようです。建物の壁に面しているためか薄暗い浴室。

 家族で入るには少々手狭な大きさの湯船です。

 貸切風呂の源泉投入量は多くはありませんが湯舟相応に注がれています。オーバーフローではなく「月待の湯」と同じような、木の淵に切り抜き口がありました。

 貸切風呂のカランには温泉成分らしきものが付着していました。ここのシャワーは温泉かな?

 

お料理

 夕食はお部屋で、朝食はお部屋とラウンジから選べます。朝食後もゴロゴロしたい方はお布団上げを回避するためラウンジでいただけます。料理は地物を基調にしてありますが、必ずしも地物だけというこだわりはなく、その時々の旬の一番おいしい物を盛り込んだ季節の彩会席となっています。また、器もどれも映える物を使っておられ見栄えも楽しめます。

 献立は頂いたお品書きを元に書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。

夕食

 最初の配膳は食前酒、先付、向附から始まりました。

【食前酒】:自家製杏酒

 戸倉上山田温泉がある千曲市では「あんずまつり」が催されるほどで、「杏」が名産品となっています。しげの家さんほ自家製あんず酒はフルーティでありながらも、ほろ苦さがあり酒度もしっかりとある大人味です。

 

【先附】:菜の花辛子和へ 毛蟹酒煎り

 3月の長野には少し早い菜の花は、爽やかな春の青い薫り。辛子は風味だけを残し辛さはなく白味噌仕立てにしてあります。これに酒で嫌味を飛ばすように煎ったと思わしき毛ガニを盛り付けます。カニの風味と繊維質はしっかりと濃く残し、辛子と菜の花と一緒に食すると絶品の組み合わせになります。彩りのキンギョソウの酢漬けがとても鮮やかです。

 

【向附】:大王岩魚冷燻 芽吹き独活 オリーブオイル塩

 信州サーモンに次ぐ新品種の信州産大王イワナの燻製です。見た目からギラギラに活かっています。川魚独特の雑味やエグ味がまったくない純粋な川魚の旨味が楽しめます。これを桜チップ?で低温燻製にしたものだそうです。確かにしっかりとした身振りは川魚特有の臭さがない透き通る旨さがあります。妻は大根けん、スプラウト、菊花、ワサビ、ピンクペッパー。

 加味にはオリーブオイル塩でどうぞとのご案内。つまを巻いてオリーブオイルに浸して食べると、ピンクペッパーの風味も手伝って上品なカルパッチョになります。

 

【前菜】:春魁のおもてなし

①鉄皮の卸し和へ ②胡桃五平餅 ③諸子生姜煮(琵琶湖産) ④こごみサーモン ⑤海鼠吟醸和へ ⑥蚕豆姿焼き ⑦のどぐろ手毬

 ②はんごろしの五平餅には甘味とクルミが香ばしいタレを塗って焼き上げてあります。焼の香ばしさから炭火でしょうか。 ③なにゆえ長野県で琵琶湖の諸子なのか。諏訪湖にもいるそうですが、もともとは琵琶湖の固有種が全国に広がったので料理長さんのこだわりかな。あっさり生姜で煮てモロコ味のうま味。 ④こごみはしっかりとアクが抜かれ青々しさだけを残し、とろりとした信州?サーモンで柄を巻きルビーのザクロを散らしてあります。これに爽やかワサビマヨネーズで味付け。 ⑤実は④の下にはナマコを酒かす?味噌?明太子を使った麹和えが敷かれていました。ぷりぷりナマコに明太子ピリ辛アクセントに麹の深みがうまい。 

 ⑦この手毬が悩ましい。のどぐろに抱かせている黄色い物体。黄身寄せのようなものですが、じっくりと味わうとに裏漉(うらごし)した黄身に酸味を持たせてあるのか酢飯の代わりとしてありました。刻み生姜のワンポイントと苦味のある柑橘の香り。柑橘はキンカンではないかと。裏漉しの滑らかさと柑橘の酸味に加えノドグロの豊潤な味わいが色々と悩ましく美味。

 ⑥蚕豆は他に空豆、天豆とも書くことも。初春の味覚ソラマメの素焼きです。桜の下にいたのでピックアップ。この季節だけの味わいを楽しめます。

 珍味の毬鉢の①フグ皮の鉄皮(てっぴ)はよく絞った大根卸しに和え、柚子皮の煮詰めたもので風味を付けてありフグ味が引き立ちます。 

 

【吸物】:伊勢海老スープ仕立て 黒胡椒 菜花

 説明書きには日高昆布と本枯節(ほんかつおかれぶし)の和出汁とあります。本枯節は鰹節の最高級品です。蓋を開けるとまず飛び出すのが海老の湯気。お出汁を口に含むと海老が来てからカツオと昆布の合わせ出汁が通り抜けていきます。上品すぎる出汁は塩味はほとんど感じず贅沢に風味だけを楽しむ椀です。

 真丈は何を合せてあるのかスタンダードにタラかな?粗ほぐしの伊勢海老と蒸しあげて、スポンジのようにじゅるっと出汁が含んだしっかり生地の真丈はイセエビの甲殻香ばしさが濃密です。

 足が一本入っていたので食べてみました。真丈と出汁でイセエビを主張する一方でうっすいエビ味。イセエビは元々筋肉質で他のエビのような濃厚な甘さは少ない。どうやらお出汁用の足を彩りとして添えたのでしょう。黒胡椒はあまり感じられない隠し味。青物は菜の花を入れ込んであります。

 

【造里】:鮪 白魚(霞ヶ浦産) 蛍烏賊(富山産)

 春の旬物2品と、文句のつけようがない至高の中トロマグロです。陶器の籠には氷を散らして冷をとってありました。春先の日本海の名物であるシラウオは茨城県から。透明感のあるタンパクな味わいです。ホタルイカも3月から4月にかけた日本海の名産です。軽くボイルしてあり、ぷつりっと弾けてスルスルとした触感と優しい磯は新鮮そのものです。魚には甘口の醤油を、ホタルイカには酸味を抑えた上品な酢味噌でいただきます。

 お品書きにもあった、長芋隠し切りはマグロの台座で、ホタルイカは信州リンゴの枕を敷いてあります。細かい気の利いた仕込みです。

 

【焼物】:鰆春香東寺焼き

 桜花の器に持ってあるお品は、パッと見ると玉子焼きにも見える東寺焼きは湯葉を使った料理方法の総称です。春香(しゅんこう)は春の訪れを感じる食材を使った料理を言います。サワラを覆う地は、湯葉、あおさ、タケノコを混ぜ和えてサワラに乗せて焼いた物かと思います。

 サワラに箸を入れるとスルスルスル・・・。口に運ぶと最初に主張するのは大豆が香る湯葉です。次にみじん切りのタケノコのしゃくしゃくとした食感。最後に脂の乗ったサワラの肉汁が出たかと思えば、あおさで脂味を整えるという何ともバランスの良い焼きでした。しっかりとした肉線維があり噛めば噛むほどに、あおさと共にサワラを深く味わえます。

 

【名物】:滋味鍋 信州牛、太郎ポーク 浅蜊(熊本産) 添え野菜

 料理最後になると準備していただける鍋料理。献立にある聞きなれない滋味という言葉は「うまい味わい」という意味があるんだそう。付け添えのお野菜は、白菜、水菜、ニンジン、ブラウンエノキ、タモギ茸、マロニー。薬味は善光寺七味。

 お出汁はアサリに加え、カツオ、昆布、牡蠣醤油だそう。湧く前に味見をするとカツオが強く昆布の深み、沸き立つとアサリが強くなります。カキ醤油感はあまりなく、薄味だが深みはがあるのはカキ醤油のおかげでしょうか。しゃぶしゃぶにアサリそのものを使うという発想がいいですね。

 最初は純粋な和牛の味を楽しむため、信州牛からしゃぶしゃぶにとご説明書き。ん~開げてみたら厚みもさることながら、見た目は豪華なサーロインステーキのそれではないですか。3枚ぐらい重ねると完全なステーキになります。でも霜降っているわけでもなく、ヒレやお尻のランプに近いのか赤身が多い。

 いざ、お鍋の中へ。完全に火が通ってしまう前に引き上げてます。赤身が多く脂は思っている以上に主張はなくヘルシーです。赤身は噛んで味わってなんぼです。噛めば噛むほどに和牛の淀みのない潤沢な赤身汁が溢れ旨い!!美味い!!時折混じる脂身が甘い!!お出汁の塩味を抑えてあるので素材の味がこれまた生きています。

 豚は独特な臭みはなくシルキーな信州ポーク。みゆきポークはよく聞きますが、太郎ポークは上田地方の地産地消の三元豚なんだそうです。海外産の肉独特の臭みが好きだぜ!!という方には頼りないかもしれないほどに品がある透明感。訪れる頻度が高いというのもあるのですが、長野県のブランド豚はどれも豚独特の灰汁が少なく、口に広がる絹のような豚の味わいは他にはありません。

 

【食事】:若草ご飯 芹 三つ葉 菘 こごみ じゃこ有馬煮

【止椀】:赤出汁 菘

【漬物】:沢庵 赤カブ 奈良漬

 食事と留椀は蓋つきで配されました。七草粥ならぬ若草ご飯は七草のうち3種を盛り込んであります。少しづついたただくとあまり若草の味は感じられず。口いっぱいに頬張ると紛れの無い春の青さを感じます。そして、山椒で甘辛く炊いたじゃこを、ご飯の真ん中へ添え付けてあります。 京仕立ての赤出汁には菘(すずな)の根にできる根野菜のカブの盛り込みです。 漬物はチェックインの時にお部屋でいただいた物とはまた一味違う香の物で自家製ならびっくりの専門店の味です。特に奈良漬けは自家製か!?とてもやさしい味わいで、間違いなくお酒と一緒にやりたくなる味です。

 

【水菓子】:林檎酢と白湯のゼリーカクテル

 初春なのに、えらく涼し気なデザートがやってきました。見た目はパフェのようでフルーツカクテルのようでもあります。キウイ、白桃、メロンを入れ込んで林檎酢を浸して、白桃ゼリーを投入したのち生クリームとミントを添え付けた物。さすがに信州で初物のモモは早いような気がしますが、桃の節句もあるので季節のフルーティで最後の〆です。

朝食

 朝食後もゴロゴロしたいので、ロビーのラウンジでいただきました。朝食は手の込んだプチ会席のような内容となっています。自分達はカウンター席でいただきました。最初は盆だけでしたが、席に着いてすぐに料理が運ばれてきます。

【おめざめジュース】:林檎、野菜、牛乳から

 3種のジュースを選ぶところから始まります。野菜をチョイス。野菜はスムージーのようで自家製?

・三段

 献立には三段とあります。箪笥のようになっており、引き出しにそれぞれお品が盛り込まれています。他のお宿でも目にしましたが、引き出しの装飾やミニ箪笥はこれまで見た物で最も新しく綺麗です。一段一段見ていきます。

【先付】ほうれん草胡麻和え、もずく酢、しらすおろし、醤油豆

 珍味入れに盛られた先付は所狭しと4品収まっています。左下ほうれん草は練りゴマ仕立て、右下のモズクには刻み山芋と山葵のあしらい。右上の醤油豆は細切りのイカと昆布を和えて塩辛風に仕上げてあります。左上はキメの細かいおろし大根に醤油を浸したシラスです。

【煮物代】:餡かけ豆腐

 豆腐は揚げ出しに仕立ててあり絹と木綿の間のような口当たりです。人参、しいたけ、エノキ、タケノコ、里芋、ほうれん草、の具だくさんの餡には甘酢餡は温かく配膳です。

【焼物】:ほっけもろ味噌焼き 山葵椎茸佃煮

 ホッケはもろみ味噌西京焼きで味噌のコクが滲みて熟成味です。ほんのり温かさが残っていました。付け添えの昆布の佃煮には刻みワサビでピリリ。佃煮昆布と一緒に食するとなかなかに相性がよく。 

【温物】:朴葉焼き

 信州味噌を使った朴葉焼きは、うれしくも野菜の具材がとにかくたっぷりです。紫芋、軸榎木、蓮根、南瓜、栗甘露、里芋、椎茸、絹さや、筍と盛りだくさんの根野菜とキノコの饗宴です。まろやかな甘い風味の味噌を絡めながら、ゆっくりと焼き上げてほっくりと美味しくちょうだいしました。しげの家さんの朝食で一番印象にある一品です。

【蒸し物】:茶碗蒸し

 茶碗蒸しは硬すぎず、お出汁ひたひたと言った感じでもなく。葉を浮かべるでもなく、刻んだ三つ葉の散らしが青々しい。エビはスプーンからはみ出る程の大きさです。百合根と柚子で春と冬の薫りを感じます。

【食事】:蕎麦粥  野沢菜きざみ 

【汁物】:信州味噌汁 糸寒天 わかめ なめこ ねぎ

 ソバ風味満載のお粥は一粒一粒のソバ粒が感じられトロミを帯びています。絶品の硬さと柔さで、風味付けの野沢菜がいい仕事をしています。信州味噌は裏漉しをしてなめらかにしてあり朝の胃腸に優しい上品な塩加減の白味噌仕立てでしょうか。

【食事】;姨捨棚田米

【漬物】:三種盛

 そば粥の他にも白米の用意もあります。つやつやの白米に、佃煮昆布、梅干し、野沢菜のお供を。野沢菜はチェックインの時にいただいた物と同じでした。白飯が進む手の込んだ朝食です

【水菓子】林檎 パインナップル ヨーグルト・杏ジャム

 朝食にも水菓子がありました。左器のヨーグルトにトッピングしてあるのは、しげの家さんの自家製杏ジャムです。名産の杏を使ってくる外さない粋さ。酸味と甘味がほんのりと薫ります。

【食後】:珈琲 または 紅茶

 食後の飲み物にはコーヒーと紅茶が選べます。茶たくとカップが対になっており、終始器へのこだわりを感じずにはいられません。

 

まとめ

 宿全体としては大人の湯宿という雰囲気で、ほとんどがご年配のご夫婦という客層でした。8部屋ということもあり朝食会場以外で他のお客さんと、空間を共有することはほとんどありませんでした。貸切風呂があるので、訪れた時はそちらのお風呂で満足したお客さんも多かったようで、大浴場は貸切状態で楽しめたのはうれしいところ。特に1人用露天風呂が最高でした。料理は和を崩すことないが創作性も高く端から端まで季節の物が堪能できます。季節によっては異なるのかもしれませんが、郷土よりも今まさに旬に食材で美味い料理を!!という献立でした。せっかくなので郷土の物を味わいたいという方でも、しげの家さんの料理を口にすれば、来てよかったと思わせてくれる内容であることは間違いないかと。私的には是非に季節を変えて、すぐにでも再訪して味わってみたいです。流行り病がなければサービスの質はより高いものを提供されておられるのではないかと思います。

宿泊料金

 宿泊時点ではセールに参加したり等、お安くお部屋を売っておられるのを見た事がありません。通常では「じゃらん」のspecial weekや季節saleでのクーポンで1割引きぐらいがギリギリかなと思います。

宿泊日:2021/初春

旅行サイト:じゃらん

プラン:【板長お奨め】しげの家会席◆旬の食材をふんだんに、お部屋食で【北信濃エリア】

部屋タイプ:モダン和室12.5帖【撫子の間】

合計料金:52800円(2人)

クーポン:15000円 じゃらん春セール

支払い料金:37800円

加算ポイント:1161p

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