いい温泉宿、おいしい料理宿

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再び訪れたいお宿探訪と趣味のブログ

石苔亭 いしだ【長野県 昼神温泉】~肌が喜ぶヌルヌルの極みアルカリ性泉は昼神温泉ならでは、能舞台を見下ろしながらいただく創作性の高い料理、格別のおもてなし空間は喜色満面~

 昼神温泉では多くのお宿が近代化に進み、縦へ建物を伸ばしているのに「石苔亭いしだ」さんは広大な敷地の贅沢な平屋造りです。しっぽりと過ごせる大人の隠家的空間は規模的には、伊豆の「おちあいろう」さん、高山の「八ツ三館」さん、芦原温泉の「灰屋」さん別邸、と並ぶ落ち着いた雰囲気があり、居・湯・食は高級旅館にしかないステイが約束されています。

※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。

旅情

 とんでも立派な門は夷毘沙門とあり、えべっさんと毘沙門天が仲良くしたという逸話があるそうな。そのまま車で門を潜りチェックインですが、自分達は裏門駐車場に着けてしまったようで、荷物を持って玄関にお邪魔するとドアマンの方が荷物を慌てて取りに来てくれました。

 門を潜ると正面に何かモニュメントのような物があります。モニュメント奥は自分達が駐車チェックインしてしまった裏手の勝手門があります。

 子孫繁栄と昼神温泉の守り神のようで最近になって採用された神様のようです。まぁ、逸話ってこんな感じで伝承されるのでしょうなぁ。

 この地方特有でしょうか。正月以外にも6月に大祓いを行うようです。

 玄関に伸びる車寄せには赤い風鈴が垂らしてあり、初夏の風が吹くと心地のよい音を奏でていました。しかし、モニュメントの存在感半端ない。正月でもないのに茅(かや)の締め縄があります。

 車止めからの屋根を進み玄関戸からお邪魔すると、旅館の規模からすると玄関の間口は小さいが気品があります。

 石苔亭いしださんでは、玄関からある七夕風鈴が名物のようです。常設かは分かりませんが七夕にはまだかなり期間があるような。バブリーなロビーに吊るされた壮麗な造形に見入ってしまいます。

 風鈴が飾ってある内庭の反対側に能舞台があります。舞台前の席でチェックインの手続きを行い、ウェルカム茶をちょうだいしました。

 ウェルカム茶は、お抹茶、ゆずみつ、スパークリングワインの3種からウェルカムドリンクを選べました。無論、スパークリングワインの選択肢しかありませぬ。

 無論、我々に迷いなどあろうはずがなくスパークリングワイン一択!! お茶請けには自家製と思わしき甘味を前面に押し出した花豆密煮です。

 同時にチェックインしたほとんどのお客さんは、やはりスパークリングワインのチョイスのようでした。まぁ・・・アルコールが苦手でなければ選択肢は1つしたありません。

 夕食後には毎夜、能舞台で何らかしらのイベントがあると公式HPであります。訪れたときには獅子舞など、地元出身の大道芸人さんに披露して頂きました。若い頃は何とも思わなかった催しも宿泊の楽しみの1つになります。いつまでも続けてもらいたいものです。

 ロビーは喫茶やラウンジも兼ねているようで、能舞台横にはバーカウンターがありました。能舞台でのイベントを楽しみながらお酒やお茶をお楽しみ下さいと公式HPにあります。

 ロビー周辺の施設として、左からフロント横にあるプライベートシアタールーム、売店、ブライダルサロン。

 売店前には新聞コーナー。常連らしきお客さんが朝刊を見ながらコーヒーを飲んでいました。席に座った瞬間に当たり前のようにコーヒーが運ばれてきたので、常連さんのルーティンを当たり前のように把握しているように見えました。

 館内は赤線の中庭を取り囲むようにお部屋が配列されています。この敷地で完全な平屋造りというのが何とも贅沢な敷地の使い方です。

 見所は色々とあるのですが簡単に見学をしていきます。売店とブライダルサロンの間から出発です。

 廊下を最奥まで進むと外廊下に出ます。手入れされた庭でございます。これを右に大浴場側へ。

 外廊下からの扉を入ると目の前に大浴場のエントランスがあります。

 湯上がり処にはソファや書棚があり、ゆったりとした時間を過ごせるようになっています。

 湯上がり処には薬膳茶と柑橘のデトックスウォーターの用意がありました。オリジナルブレンドというところも高級旅館ならでは。

 最初のコーナーの右方面はお高めのお部屋が並びます。左方は回廊へと続く道。

 全ての部屋に同じデザインの物はなく、玄関からして全て異なる様相を持っています。次回は違う部屋に泊まるという楽しみがわきます。

 間取りも贅沢にとってあり、回廊は客室だけなので余計な音が響かずとても静かです。

 廊下の合間合間に和の造形を取り入れて和みを見せてきます。筧(かけひ)と盆栽のように仕立てた小庭の緑空間にふと足を止めて見入ってしまいます。

 格子の目隠し?が入った窓から見える中庭など、所々にある細工などに目がいきます。文化財のような木造ではないので景気の良い頃にお値段はりはったのでしょうねぇ・・・。

 ぶらぶらと散策をしていると最後のコーナーに辿り着きました。真ん中に立つ柱を境に右に行くとダイニング、左に行くとロビーへ戻る回廊となっています。

 夕食前には明かりが灯っていましたが、このダイニングはどのような用途で使われているのかは分からず。ランチの受け入れや、流行り病がなければお食事処となっていたのか。

 ダイニング前からはロビーへ戻る廊下です。

 高級旅館ならではの無駄がなく纏まった空間を演出されています。平屋造りなので大人数を集客するという感じでもなく、奥飛騨にある「ひだ路」を思い出しました。

 よろしければ「ひだ路」さんの記事にも寄り道してやってください。

 

お部屋

 案内して頂いたのは「千鳥(ちどり)」というお部屋です。石苔亭いしださんでは最も安価なお部屋の1つです。

 安価と言えども他のお宿では高級感満載の玄関口。

 和室一間で予約しましたが、通されたのはベッド付きのお部屋でした。間取りは本間8畳+8畳ベッドルーム+踏み込み3畳+縁廊下4畳?+洗面+トイレ+シャワールームです。

 少し変則的な間取りで上り框から本間へは二畳スペース。

 上がり間から入って右には冷蔵庫があり、テレビは壁掛けと現代風です。床の間の横には地袋のある円窓床。

 縁にはテーブルセットがあり、庭を挟んで反対側にはベッドルームが見えます。寝室と居間をしっかりと分けてあるタイプが好きな方にはうってつけのお部屋です。中庭は・・・これを風情と取るかというと難しい。手はしっかりと入れてあるのですけどね。

 水回りはホテル仕様です。トイレはもちろんシャワーなので安心。

 何故かシャワー室がついているという仕様です。大浴場が苦手な外国人さんもいるそうなので、こういうリフォームの仕方も増えてきているように思えます。

 縁からはこのような小上がりのような2段が付いており、メゾネットのようになっています。

 お部屋の中庭を取り囲むように寝室へ2畳廊下がついています。

 メゾネットタイプの寝室はシングルベッドが2つ。 和室への布団敷きの申し出もありました。日本人はやはりベッドよりも床で寝たい方がいるのも事実。せっかくベッドで用意してもらっているので、従業員さんの限りもあるでしょうし、有難くもお断わりしました。

 寝室窓からは裏庭が見えましたが、千鳥からの主景色ではなくお隣のお庭と言った感じです。ツツジが咲き終わりでしたが、庭の手入れは抜かりなく主庭ではなくとも緑の明かりが気持ちがいい。

 お茶セットには上煎茶のパック、お茶請けに「いしだ」とあるのはオリジナル菓子かな。

 冷蔵庫内のミネラルウォーターはフリーでした。

 アメニティは不足なく、乳液から化粧水・男性用リキッド類も。浴衣は2枚、お部屋にはバスタオル・フェイスタオル1枚ずつありますが、浴場にタオルが備え付けてあるので気兼ねなく使えます。

 夕食時のお茶セットの入れ替えあり、夕食前は夜叉の厳つい湯呑みから、かわいらしい女の子の湯のみに入れ換えてあるというギャップ。

 

お風呂

 男女別の大浴場が1カ所ずつあり、それぞれに併設された露天風呂があります。そして、いつでも利用できる貸切風呂が1カ所あります。泉質は単純硫黄泉となっており、口に含むとほんのり香る硫黄臭(硫化水素臭)を感じます。共同源泉を貯湯してからの配湯のようで、加温、循環、消毒ありと物凄く残念のように聞こえますが、侮ることなかれ浴感はアルカリ独特のヌルんヌルんの美人の湯です。浴場の床でスケートが出来そうなほどヌルヌルになります。消毒臭なんて微塵も感じられない程の上質な美人の湯で、加水はなく新しい源泉の投入もある循環放流型のようで、湯力の強い昼神温泉源泉をしっかりと楽しむ事ができます。

内湯『石神』

 素材は分かりませんが、天井も壁も木材で作られた湯屋は湯気を逃がす湯屋天井です。

 湯舟に目をやると、面積の1/3が岩によって占められているという今までに見た事のない光景です。入る場所がないように見えますが、湯船の大きさは10人ぐらい入れる余裕あがります。湯温は季節によって変えておられるかもしれませんが、初夏にはやや熱く感じる温度。

 真ん中にある岩からドバドバと溢れ出ているのは循環湯と思われます。岩をなでるとヌルヌルしています。岩には白い温泉成分の析出物がしっかりと付着しています。

 源泉直入と表記があり、こちらの湯口は源泉ではないかと思われます。しかし、ヌメリが凄まじい湯です。

 湯舟には吸い込み口らしきものはなく、この溢れ出しが循環になっているのかは不明です。湯量からすると循環湯の切り口かなと思いますが・・・。

露天風呂『石神』

 「石神」の内湯に併設された露天風呂へ向かってみます。

 巨石で作られた露天風呂はこじんまりとしており、天気は悪く屋根もないので訪れた時にはお客さんはほとんどいませんでした。

 目隠しの壁は高くとられおり開放感はありません。外気と空を共に楽しむ露天風呂といったところです。

 岩仕組みで作られた洞窟のようなスペースがありました。雨や雪除けにはなりそうです。

 洞窟内にあった湯口は源泉?ではないかと。

 湯舟の端にあった塩ビ管からは、洞窟内の湯口と同じぐらいの湯が捨てられているようで、こちらも循環放流にしてあるのかと思われます。

 他にも湯が入り込む竹筒があったり、塩ビ管が埋め込まれたりしていますが、源泉なのか循環なのか、何を意味するのかよくわかりませんでした。改装に改装を経て使ったり使わなかったりしているようにも見えました。

内湯『清水』

 こちらの湯舟もユニークな造りです。浴場のど真ん中に巨石がドーンと鎮座する不思議な景色です。

 真ん中にある岩からは、循環湯と思わしき湯が噴き出しています。

 湯舟の角にあるピラミッド型の湯口からは、まずまずの源泉投入量を見て取れます。この噴き出しに溜まった湯を手に取ると、湯船のどの場所よりもさらにヌルヌルが強い!間違いなく源泉かと思います。

 チェックインしてすぐに湯を頂きに行った際には、赤矢印の切り口からの溢れ出しはありませんでした。

 食事前に2回目の風呂を頂きに行くと、切り口からのフローが見てとれました。実はこのフローした湯は併設されている露天風呂へ再利用されているようでした。

露天風呂『清水』

 露天風呂 石神とは違い、内湯から外にでるとすぐに露天風呂があります。大きさもあまり変わらないのかと思いますが、こちらのほうが身体の置き場所に困らないような湯舟の形です。

 もう1つの「石神」側よりも空は広くとられています。

 内湯側の壁に設置されたこの湯口は、内湯からのフローに寄る再利用の注ぐ口かと。内湯にお客さんが入ると溢れ出しも多くなっていました。

 気泡と共に勢いよく噴出する茶色の塩ビ管は循環湯かな?

 機能してなさそうな湯口らしきものは何か所かあります。温泉の成分によっては、管がすぐに詰まってしまうらしいので管理が大変です。

貸切風呂

 かつては男女別浴場の片方だったのでしょう。貸切にしては大きすぎる浴場。

 お宿の規模からして大浴場とするには小振りの湯舟は4人は入ると気まずい大きさです。館内の改修に合わせて、かつての大浴場が貸切風呂になったという雰囲気。謎の浮島のような石がぽつりとあります。

 大浴場と同じ循環湯と思われる岩のカラクリも同じです。

 湯舟のコーナーにあった湯口からは少量の源泉?が注がれています。この周辺のヌルヌル感は最高潮で、徳島県祖谷温泉や愛媛県鈍川温泉同等か?それ以上の湯感です。

 切り口からのオーバーフローは源泉湯口よりも湯量は明らかに多い。大浴場の方が源泉投入量が多く見えましたが、巨石からの噴水が激しく飛び散るので、落ち着いて入るという雰囲気ではなく、多くの入浴タイムは落ち着いたこの貸切風呂を利用しました。

 脱衣所には、歯ブラシからシャワーキャップ、化粧水類、タオル大小とアメニティ類は完璧な備えで、手ぶらで浴場にいくことができます。

 

お料理

 時間になるとロビー横にある階段へ行くと配膳係の方が個室へ案内してくれました。

 朝夕共に「柳の下」というこのお部屋でいただきましたが、実は変わった場所にあります。

 ロビーのバーカウンターの上にあるという風情。

 御簾からは能舞台を見下ろすという何とも素晴らしいロケーション。もともとはイベント事を楽しむための観覧席なのかなと思います。

 さて、お料理の内容は信州の新鮮な食材をふんだんに盛り込み、全体としては純和風の創作会席ですが、カジュアルなお皿も一品あったりと変化を楽しめます。一手間が入った丁寧な味付けや仕込みは京風でもなければ郷土料理でもなく、敢えて表現するなら石苔亭いしださんのお味というのが的を得ているかと。リピーターが付くのも頷ける料理が配されます。

 献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。

夕食

 テーブルには食前酒、先付、前菜が配膳されています。

【食前酒】:みぞれリンゴの梅酒

 リンゴなのか梅酒なのかというと両方。酒度はほとんど感じられず、水面にはマイクロバブルの弾けがありスパークリングになっています。リンゴを擦って梅酒と炭酸で割ったようではありますが、甘味はほとんどなくウメとリンゴの風味を楽しむ大人のカクテル。

 

【先付け】:アスパラ豆腐

 豆腐からはあまりアスパラの風味は感じられませんが、白アスパラをペーストにして豆乳に溶いて寄せたような口当たりと風味です。とてもクリーミーな絹豆腐のようで、お出汁で茹でたアスパラとスライスラディッシュ、キャビアを添え付けてあります。浸したお出汁はカツオのような風味に醤油を合わした物。

 

【前菜】:①天豆 ②南瓜松風 ③穴子の八幡巻き ④三色手綱芋寿司 ⑤磯ツブ貝大船煮 ⑥枇杷百合根 ⑦花芽わさびの白和え

 ①ソラマメは薄皮を向いた塩茹で。 ②松風は炊いてからカボチャを寄せ、柔いムカゴを混ぜ合わせて蒸しているのか。まったり感に深みが出ます。 ③八幡は根野菜を巻いた料理の総称です。土風味をしっかりと残したゴボウを甘醤油で濃く炊いたアナゴで巻き上げてあります。 ④献立には芋寿司!? 実はシャリの代わりにシットリとしたサクサクの山芋が使われていました。ん~これを手作りでしているのなら凄いとしか言わざるを得ない。芋には酢を持たせてシャリ風にしてあり、キュウリ、キス?、エビの3色で巻き上げてあります。 ⑤大船煮(だいせんに)は貝類、昆布、大豆などと一緒に炊いたものをいうそうです。ツブ貝は一度取り出して甘醤油に煮付けてから殻に戻してあるのかと。 ⑥ゆり根でビワの実を模した一品です。ビワにはまだまだ早いこの時期、お砂糖で緩く味付けをしてあり、黒胡麻でヘタの部分を再現してありました。

 ⑦毬の小鉢を開けると予想外の白和えです。ワサビの芽は爽やかに辛く濃い目のお浸しにしてあり、その上へ摺りゴマと合わせた濃厚豆腐のあしらい。 

 

【吸物】:鱧葛打ち 順才 ズッキーニ

 ハモにはしっかりと葛を打ってあり、昆布とカツオの合わせと思われるお出汁をしっかりと吸い込んでいます。それによりハモの旨味が閉じ込められ、ホロホロな身振りとタンパクさが美味い。ハモの椀では珍しく塩加減はやや強めです。彩りのズッキーニは射抜きをしてワタをとり、シイタケは出汁の1つとしてシイタケ風味も加わっています。そして、最も不可思議なのが水面の油の浮きは・・・なんでしょう? ハモに葛を打ってから揚げてから椀に盛り、出汁を注ぎ入れたのかなと私的には思うのですが。

 

【お造り】:海の幸三点盛り 信州名物馬刺し

 3点は本マグロ、タイ、ヤリイカです。本マグロは中トロと赤身の間ぐらいで赤身と脂身の程よいバランスは口にし易い。タイは脂がギラッと活かっており、硬さが残る新鮮な歯応えに白身の甘味がよくわかります。馬刺しはトロトロで部位は分かりませんが、牛でいうとロースや肩のようなとろけ具合があります。馬肉独特の風味と脂が味わっていると、トロのように自然と溶解してなくなっていきました。他の肉類にはない後口さっぱりとした脂がたまりません。

 ヤリイカは焼海苔を巻き上げてあります。こちらも透明感がありコリッとスルスルと弾発力のある触感。イカの旨さと海苔の磯が合います。これらを馴染のよい溜り醤油でいただきます。

 

【凌ぎ】:信州黄金卵茶碗蒸し 蟹あん

 凌ぎは見た目がどうみても卵しか連想できない器で登場です。蓋を開けると金色の玉子地と赤いカニ身のシンプル美しい。

 玉子地はどちらというと極柔のプリンといったイメージです。口に入れるとニヤけてしまう程の濃密な玉子味が広がります。合せてあるのは昆布多めの合せ出汁でしょうか。餡はカニとありますが風味はほどんど感じられず、カニ身は蒸しあげた後に添え付けた物ではないかと。献立にある黄金とはよく言ったもので、器から玉子を取り出したような体現を楽しむ一品です。

 

【焼物】:魚料理 桜鱒の粕漬け 又は 肉料理 信州プレミアム牛朴葉焼き

 選べるメイン料理です。グループごとではなく1人1人好みで選択できました。

 サクラマスはあっつあっつ配膳でお皿までかなり熱されていました。酒粕によって熟されたマスはぎゅぎゅと旨味と身振りが締まっています。

 箸で解くには硬く、かぶりつくと鮭でもないサーモンでもない、まろやかな紅身の味わいは身の中にまで粕が浸透しています。甘味と麹風味はかなり深く酒粕に醤油や砂糖などを合わせて漬け込んであるように思います。また、みりんを塗ってあるのか、かなり照り照りに仕上げてありました。添え付けにははじかみと、季節の山桃の密煮が添えてあります。

 もう1つの選択肢である焼き物は信州ブランドのプレミアム牛です。焼く前の見た目はロース?ですが、焼き上がるとモモといった歯応えのある触感でした。肉の背面にはかなり大きなシイタケ、赤パプリカ、ブロッコリーが敷いてあります。

 焼きながら食したいところですが蓋をして朴葉と共に一気に焼き上げます。お味噌は信州味噌をマイルドに甘く仕立ててあるが、肉汁が味噌に溢れ出るので混ざりあうとフレンチ味噌ソースのように一層まろやかになります。これが良かったのか朴葉の移り香がさらに進み、黒コショウが味噌と肉汁に洋風アクセントを加えます。ただ、肉汁が出すぎた感があるので、一枚ずつ焼いて食べた方がおいしくいただけそうでした。

 

【強肴】:海老真丈 海鮮春巻き

 海老真丈?そんなものどこにもありませんが?

 ただ、何とも見た目からして早く口に入れたくなる揚物が目の前にあります。

 早物の小ナスをお尻から4つに割ってエビ真丈を抱かせて素揚げにしてあるようです。噛み心地も面白く、豊満な海老の香りが泳ぐ真丈はプリっとしたしっかり生地に対して、ナスに差し掛かると油を吸ったナスの旨味がジューシーに溢れ出すという、今までにない触感に感動。

 海鮮春巻きは生春巻きの薄いライスペーパーのような物で巻いたからか、見た目はさくさくに美麗に割けており触感はパリパリパリと、カラカラに乾燥した春巻きがあっちこっちに弾け飛ぶほどです。にしても、こんなに網々の形状をライスペーパーだけで再現できるのか?もしかしたら切れ目とか入れてから揚げてあるのでしょうか?しかも層があるようにも見え二重に巻いてある?ん~分からん・・・。お味は中華風に味付けがされていましたが、触感はソフトだったのでイカとかエビっぽくもなく、自分の舌ではどの辺りが海鮮だったのか分かりませんでした。ただただ、美味しい。

 

【煮物】:鴨茄子饅頭 五色餡

 華やかな初夏緑椀の蓋を開けると、薄切りの翡翠ナスで巻き上げた真ん丸饅頭に、散りばめられたお野菜はカボチャ、ニンジン、ズッキーニ、大根、シイタケです。餡はやはり合わせ出汁ぽい。

 トロトロになった翡翠色のナスを切り分けると出てきたのは鴨のつみれです。献立では煮物ですが、焼きナスのような香ばしさもあり、ナスを焼いてから鴨のつみれを包んで、さらに蒸しあげたような感じがします。つみれは弾力があるのにグモグモとした物ではなく、ふわっとして山芋を練り込んであるかのようです。カモ団子からでた肉汁が溢れ出すと餡は一気にカモ出汁に支配されました。

 

【酢物】:信州サーモンのサラダ風

 この一品だけやけにカジュアルな洋を呈しています。お皿に回し掛けしてある強酸味のソースは黒酢と黒蜜を混ぜたような香りです。

 信州サーモンは桜チップの燻製にしてあります。やはり、信州サーモンは燻製にしてもまろみのある紅味と脂が際立ち紅身味にクセや角がありません。野菜の紫タマネギと水菜にはあらかじめユズドレッシングと思わしき味付けがされており、彩りにはエディブルフラワーのスミレをあしらってあります。

 酢の物という位置づけですが、紅身の旨味は締まって味わい深く、ソースには甘味もあり酢の物が苦手な方でも洋食のカルパッチョとして食せそうです。

 

【食事】:阿智村産こしひかり

【止椀】:蜆の赤出汁

【香の物】:信州漬物三点盛り

 白米も止椀も蓋つきで配されました。茶碗も汁椀も彩美しい模様です。信州にきて美味しくないお米は食べたことはありません。甘味と粘りがあるコシヒカリは鉄板の味です。3枚の大シジミが入っている赤出汁は塩分がかなり抑えてあり自家製でしょうか。薬味はネギだけで、山椒などの追い味は一切ない味噌の麹を味わう椀です。漬物は大根、野沢菜、小茄子。

 

【水菓子】:イチゴ豆乳ムース 

 これまでの料理とは一変してイチゴだけのシンプルなデザートです。ムースの縁を見て頂くと反りあがっていて、固める際に型に引っ付いていた跡があり自家製なのがよく分かります。口に入れても溶けていくといった触感ではなく、スムーズな泡豆腐のようで、豆乳のまろやかさとイチゴの甘い薫りは上品な口当たり。大口一杯に食べたいムースです。小振りですが鮮やかなイチゴも添え付けて華やか。

朝食

 朝食も同じ個室でいただきました。洋食と和食から選ぶことができます。また、事前連絡により31膳という小皿がずらりと並ぶ特別朝食にも変更できるようです。今回はスタンダードに和洋を選択、31膳は次回のお楽しみにとっておきました。

和食

・お粥 クコの実

 まずはクコの実を添えた温かいお粥をいただきます。塩が効いていて温泉粥でしょうか。

・かまぼこ 山葵漬け

・明太子

・金山寺味噌

 珍味3種と大豆濃厚の冷奴は定番のお品。

・ざる豆腐(葱、擦り生姜、鰹粉)

・焼き海苔

 見るからに手作りの豆腐は水気を良く切ってあり大豆がとても豊か。

・さつま揚げ、ロールキャベツ、ほうれん草の煮物

・出汁巻き玉子 卸し大根

 煮物は飛龍頭ではなくすり身にキクラゲとニンジンを混ぜた揚げ香ばしいさつま揚げでした。ロールキャベツにはエビの真丈。出汁巻きは砂糖の甘味が効きしっかりと焼き上げた玉子焼き風に仕上げています。

・烏賊素麺(大葉、摺り生姜)
・あじ一夜干し

 イカ素麺はスルメイカのような触感に盛りが多く食べ応えがありました。アジも肉厚でたくましく温かく配膳してくれてあります。

・白米

・なめこの味噌汁

・水物(オレンジ、キウイ)

 白米はやはりぴんぴんに立ち、朝食の汁は優しい白信州味噌仕立てです。意外にも白米のおかわりはいらない献立でお腹の収まりも良い内容でした。お粥を食べたからかな?

洋食

・グリーンスムージー

・選べるドリンク(トマトジュース、リンゴジュース、紅茶、コーヒー、牛乳、他)

 最初はグリーンスムージーから、色から察するほどに青味はほとんどなくメインはバナナで飲みやすい。画像はないのですが、選べるドリンクがありました。トマトジュースをチョイス。奥飛騨のトマトジュースを連想していたので激濃かと思っていたところ、トのエグ味はなく口にし易い優しい風味でした。

・サラダ(レタス、キュウリ、湯剥きプチトマト、ホワイトアスパラ、紫蘇ドレッシング)

・コーンスープ

・卵料理(スクランブルエッグorオムレツ)

 卵料理は2種類から選べます。オムレツを選択しました。ほのかにバターの風味でトロトロの半熟仕上げてにパンによく合います。

・肉料理(ベーコン、ハーブウィンナー、ほうれん草ソテー)

・イチゴジャム、粒マスタード、ケチャップ)

 ベーコンやウィンナーも良い物を使っているのか味が調っています。酸味がない口にし易い粒マスタード。

・パン(白パン?、クロワッサン)

・ヨーグルト、スイカ、オレンジ、キウイ

 パンはお取り寄せでしょうか。とにかく軽くふわっとしているので中身カスカス?かと思いきや、しっとりもっちりもあるという不思議なパンでした。ヨーグルトには早物の甘いスイカも盛り込んであります。

 超欲に関しての手の入れようは洋食よりも和食かと思います。

 

まとめ

 高級宿としてのサービスは全て充足しており従業員さんの対応が素晴らしかったです。平屋造りということもあり、とにかく落ち着いた空間作りもとても上手だと思いました。チェックインのスパークリングワインと手作りの花豆甘煮から始まり、温泉は源泉かけ流しではないもののツルヌルの湯感はさすがの昼神温泉で自由に入れる貸切風呂もあり、食事は季節の盛り込みと信州の名産の美味しいところを少しずつ、なにより配膳のタイミングがカメラでもあるのかというぐらい絶妙でした。毎夜しているという夕食後の能舞台でのイベントも大人の余暇の過ごし方として楽しめます。

 ハード面もさることならがら、ソフト面である従業員への教育がかなりしっかりとされている印象です。チェックアウト時だったと思うのですが、担当の方からのメッセージカードが添えられていたり、色々な場面での目配り気配りにぬかりはなく、過ごしやすい空間を演出するのはやはり人なんだなと思わせてくれました。至高の時間は必ずまた行きたいと思わせてくれること間違いなしです。厚かましくも1つだけ物申すなら、夕食が凝っているので、朝食にも変化球を持たせてくれるとうれしいなぁ。さらに、1つ付記すると訪れた時の料理長さんは御年70だったそうで新旧備えた献立には恐れ入ります。

宿泊料金

 通常料金は平日でも60000円~のお宿なので決して安くはありません。何を求めるかにもよりますが、スタンダードステイで同じ料金帯のお宿からすると、スタッフの方々のqualityが素晴らしすぎるので空間代、料理の手の込み様、温泉の質というバランスからすると私的には安いと思います。ただ、源泉かけ流し、高級食材の料理等々を主軸に置くのであれば高く感じるかもしれません。流行り病下で客足が遠のいた合間での宿泊だったので超格安料金でしたが、私的には高級旅館で空間を買うのであれば、通常料金でもお釣りがくるかなと思っています。

宿泊日:2021/初夏

旅行サイト:じゃらん

プラン:【じゃらん初夏SALE】人気の定番☆美肌の湯と信州会席を味わうスタンダードプラン

\部屋タイプ:円満井タイプ(和室一室)※禁煙※

合計料金:48400円(2人)

クーポン:2500円(初夏セールがお得になるクーポン)

支払い料金:45900円

加算ポイント:1210p

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