景気の波に大型化された旅館やホテルが連なる玉造温泉街にありながら、昔ながらの木造旅館の風情を残す玉井館さん。全部屋6室という小さな旅館は、こじんまりと静かな空間を提供しています。
玉井館を訪れる前に大山で遊んできた記録があるので興味があればどうぞ。
旅情
温泉街の中心を流れる玉湯川沿いに、各々のお宿が並んでおり、そのうちの1つ古風な佇まいは玉井館さんです。
玄関に車を着けると荷物を降ろして、徒歩2分程度の所にある駐車場へ。普段は車のお預けなのかなのでしょうか・・・。この駐車場が一杯なら姉妹館の玉井別館の駐車場利用になるようです。これが徒歩8分と距離があるので送迎してもらえるようです。
客室6部屋のお宿としては立派な玄関に広々とした上がり框。臼には涼し気に金魚が泳いでいます。
コロナの影響かお茶出しはありませんでした。館内の簡単な説明を受けてチェックイン。
ロビーには夕食まで飲み放題の生ビールサーバーが!!お部屋に持って帰ることもできるので、お風呂上りにいただきましょう。錫(すず)の器で飲む生ビールは贅です。チェックインから2回お風呂に入って、2回がっぷり飲み干して最高です。
ロビーの階段下にはお食事処と、横手の廊下は浴場と奥には露天風呂付の特別室があります。
浴場がある橋を越えていくと特別室があります。人気があるので狙った時期になかなか予約が取れません。
お食事処前には謎の冷蔵庫が・・・。
冷蔵庫を開けるとイチゴとチョコのアイスが入っていました。普段、甘味をたくさん食べない自分ですが絶品アイスでパクパクと食べてしまいました。ぐぐぐ・・・腹立ってきた甘党ではないにしてもムカつくぐらい美味いやんけ!!太るから食べたくないのに、本能が敗北して食べやがる!!(注:良い意味です)それぞれ8個ずつぐらい食べてしまい・・・。こちらは18時から22時までのサービスでした。
ロビーの階段を上がり2階へ。ここはお食事付プランと訳あり食事付プランのお部屋があります。
さらに2階から3階得に上がると、稼働していないお部屋がたくさんありました。恐らく素泊まりと朝食付きのお部屋ではないかと思います。
お部屋を覗かせてもらうと、思っている以上に立派なお部屋もあれば、1人専用のようなお部屋もありました。電気ポットなども置いてあったので、コロナ渦でなければ売りに出されているのでしょう。和洋室もありましたが、現在は使われてはなそうでした。
温泉街には酒屋さんがありますが、最寄のコンビニは車で5分、徒歩30分の距離です。必要な物があれば事前に用意してのチェックインをお勧めします。
お部屋
「梅」というお部屋に案内して頂きました。
間取りは本間8畳+次の間2畳+踏み込み1畳+広縁+トイレ+洗面です。京間なので実質10畳ぐらいに感じます。
玄関戸を開けると広々スペースの踏み込みと次の間があります。
踏み込みには湯沸かし電気ポットとグラス等に冷蔵庫があります。進んで踏み込みにはトイレと洗面台です。
冷蔵庫にはあらかじめ冷水の用意。島根県地元の木次(きすき)ミルクコーヒーも。こういったちょっとしたサービスは何気にうれしいもの。
とてもシンプルなお部屋は無駄がないのに和風風情が豪華にも感じられます。
シンプルな中にも古い木造建築ならではの雪見窓、床脇の障子窓や天井には網代天井の装飾があしらわれています。
さて備品類です。冷蔵庫はあるものの金庫は見当たりませんでした。あらかじめ冷水の用意や基本的なアメニティ類の備えに不足はないが無駄もなく。うれしいのはバスタオル二枚です。
お風呂
客室数が少ないことで、他のお客さんと入浴が重なることは少なく、ゆっくりとお湯を楽しめます。浴場は「玉の湯」と「月の湯」の2ヵ所で、男女入れ替え制となっています。美人の湯と言うにしては、正直なところ肌触りはあまり特徴はありません。しかし、不思議と湯上りのしっとり感が素晴らしく一枚コーティングされたスベスベ感は低張性弱アルカリ性泉です。無味無臭で湯温は高めの柔らかいお湯です。湯使いは源泉掛け流しとありますが、湯舟によっては異なるように思います。脱衣所には髭剃り、歯ブラシ、シャワーキャップ、綿棒など一通りのアメニティは揃っていました。
月の湯
脱衣所の扉を開けると、洗い場と内湯があります。
内湯は3人だと気まずい大きさです。内湯はオーバーフローしていないが湯口はダバダバ。湯舟の底には吸い込み口らしき物があり微妙に吸い込んでいるような。でも、他に捨て湯口はなく吸い込み口が捨て湯口?
露天風呂は建物に囲まれているので、眺望はありません。適度の深さがあり雰囲気は心地よい。
露天の湯口からはダバダバと一見注がれているように見えます。でも、注がれている湯量からは明らかに少ない溢れ出し。湯舟の底にある排水口は夜間に入ると湯を吸っていました。体を沈めると溢れ出すお湯と、客室数が少ないことで新鮮に保たれたお湯は最高です。
翌朝は吸い込み口が止まっている時間もあり、湯舟の切り口からはオーバーフロー。露天風呂の端にホースが付いています。量こそ少ないですがこれが源泉でしょうか。にしては溢れ出しの方が多く感じられる不思議。
玉の湯
脱衣所から1段下がった半地下の浴場です。
不規則な形の湯舟は3人ぐらいで丁度の大きさ。かけ流し口付近は熱く、湯口から離れるとぬる湯で楽しむ事ができます。
源泉の投入量は多くはないようです。赤矢印から源泉が注ぎこまれ、湯冷ましも兼ねて、石の鉢に源泉を泳がせてから青矢印に吸い込まれます。吸い込まれなかった緑矢印のお湯は湯舟へ注がれます。
青矢印に吸い込まれたお湯は湯舟の中へ。湯の温度や湯の新鮮さを保つために、浴槽内で湯が偏らないように上下でお湯を入れる工夫は有難い。
多くはないですが溢れ出すお湯は気持ちがいい程に。湯舟に入ると洗い場全体に溢れ出すを湯は贅の極みです。私的には、湯を楽しむのであれば「月の湯」よりも「玉の湯」に軍配が上がりました。
お料理
夕食はお部屋食で、朝食は1階にあるお食事処でいただきました。海の幸を使用した海辺のお宿らしい食事内容となっています。派手さはありませんが、島根の名物と地産の食材で、素朴ながらも丁寧に仕上げてあります。びっくりなのは、お食事処に飲み物持ち込みOKという太っ腹さ。
献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
出雲四季会席
最初の配膳は先付、小鉢、お造り、台の物一式。
【先付】:もずく酢
【小鉢】:旬の珍味
とてもキメの細かい「もずく」です。歯ごたえもコリポリと食感は良く、酸味が程よい甘酢と彩りのキュウリにも酢を持たせてあります。タコを添え付けミョウガで香り付け。 小鉢は献立には旬の珍味とだけ。これがなかなかに面白い一品です。1つを口に含むとサバ?もう1つを口にするとマグロ?相方はタイ。これらの魚をほぐした上に、「天かす」を散らして煮凝りにしてあります。複数の魚が入っており、食べる場所によって魚の風味が違い、天かすの油でまったりとさせた後口です。
【季節のお造り】:三種盛、あしらい一式
鯛、鮪、白バイ貝です。タイとマグロは味に深みがあり身は柔らかい。関東風の熟成ではなく、死後硬直後の緩さといった触感。バイ貝は盛る前に水槽からあげたぐらいに、超絶ゴリゴリの歯ごたえに。磯の香りが濃厚で美味すぎます。あしらいはアカトサカノリ?、山芋、大葉、大根けん、紫蘇花、わさび。
【沢煮鍋):あご、ゆば、玉ねぎ、えのき、水菜、針人参
献立の説明書きには「あごの骨を焼いて取ったあご出汁です。あごは飛魚(とびうお)のことで、島根県の県魚です」とあります。本来の「沢煮」とは豚脂と細切り野菜の塩煮ですが、トビウオバージョンということでしょうか。焼き香ばしいトビウオのお出汁は香りが豊か過ぎてお出汁も最後までの干してしまいました。最初は分からなかったのですが、お出汁の隠し味は恐らく粉山椒かと。
そして、出汁だけでなく県魚というだけあって切り身も入っています。トビウオは脂身が多い印象ですが、焼いてあるためか思っている以上にタンパク。なのに薫りは強い。そして、ロールされた湯葉はグモグモと歯ごたえタップリタイプ。
【奥出雲ポーク】:ジンギスカン風、自家製だれ
焼く前のバラ肉はとても綺麗なピンク色です。野菜の付け合わせはニラ、もやし、キャベツ、赤パプリカです。
調べると奥出雲ポークは、保水性が高く脂が残りやすいのだとか。確かな脂身の旨味と食感。味は豚の雑味がない。と、言うと変な表現ですが、脂の嫌なエグ味がなくバラ肉とは思えない透明感。漬けダレは醤油ベースの焼肉のたれですが、味噌のような麹の濃厚さがありゴマが豊かです。ピリリと少し辛味があり、コクがある自家製たれ。濃い味のたれは、多く盛られた野菜が進みます。
【料理長おすすめ】:季節の煮魚
おすすめのお魚は「イサキ」です。初春から夏にかけての旬だそうです。一尾の大きな身振りはグッと締まった肉質。
脂分が少なく煮汁に脂がほとんど浮いていないというタンパクさ。煮汁は酒と砂糖の濃い味で、とても美味いが一匹はさすがに多い・・・。付け合わせはホクホクのレンコン、ニンジン、フキの煮物です。薬味に針ショウガを添えて。
【冬瓜の冷やし鉢】:そば米あんかけ
夏の涼である定番の「冬瓜(とうがん)」です。餡がとても面白い。そばの実を出汁?に浸し柔くして、ほんのり甘みと塩を持たせて磯風味の海苔を加えてあります。ベース出汁はカツオ?かなぁ・・・。そばの風味が良い薫り過ぎて分からず。冬瓜はシャクシャクと心地良いぐらいに歯ごたえを残して下味をつけ、そばの風味が移って味が華やかに。そして、カニ身とワサビが冬瓜の上に盛られています。献立には「わさびを溶いてお召し上がりください」とあります。混ぜると、そばの山幸、海苔の海幸を山葵が爽やかに包んでいるようです。
【出雲そば 山掛け】
献立の説明書きを。「出雲そば(割子)は冷たいそばに、薬味やそば出汁を直接かけて食べるのが特徴です。よくかきまぜてお召し上がりください」とあります。コシはあるがボソボソ感もある10割蕎麦の香り。
出汁はとてもまろやかな醤油。辛くもなく甘くもない主張がない中性的な合わせ出汁か。ただし、盛り込んである「とろろ」を混ざると生卵を溶いた様に深みが増し絶妙に絡んでそばが際立ちます。頼りないと思った麺つゆが化けました。
【島根県産こしひかり】
【宍道湖七珍味のひとつ】:しじみ赤出汁仕立て
【香の物】
山陰のお米は東日本のお米とは違った旨味があります。私的には環境と水が違うからと思っています。赤出汁にはシジミが入っています。宍道湖(しんじこ)で獲れる産物の1つに「しじみ」があるようです。とても優しい酸味と塩味。香の物も変わっています。キュウリ、ナス、大根、ニンジンを椎茸の戻し汁でつぼ漬けのようにしてあり、風味のアクセントに紫蘇花も漬け込んであり、これがまた御飯に美味しく。
【アイスクリームバイキング】:チョコ、イチゴ
お食事処前の冷蔵庫にあったアイスクリームが甘味となっています。アイスはチョコが一番人気、イチゴが二番、マンゴーもあるそうですが意外にも最下位。食べ放題で振る舞うには、生チョコのようなチョコアイス、蜜なイチゴのアイスは美味しすぎます。手作りではないかと思って聞いてみたら、板長厳選の物だが手作りかどうかは分からないそうです。企業秘密のアイスです。夜10時まで自由に食べれる、ありがたいサービスです。冒頭でも述べましたが、甘党でない自分でもかなり美味しく、節操のない程に食べてしまいました。いや、本当においしかった!!毎日食べたい味です。
朝食
・焼き鮭 ・玉子焼き
・ほうれん草と揚げのお浸し ・昆布と人参のきんぴら
・紅白なます ・炊き合わせ(里芋、エビ、えんどう豆、ちくわ)
・ちりめん山椒 ・カニ身入り湯豆腐
・しじみの味噌汁 ・釜飯
定番である焼き魚の鮭と、砂糖を甘く持たせた玉子焼きはそれぞれ温かく配膳です。小鉢に昆布のきんぴらという珍品に、紅白なますは少し酢を強くもたせて胡麻とちりめんじゃこを合わせてあります。煮物もそれぞれに下味を付け、緩く塩をもたせてやさしい味付け。さすがの日本海、日湯豆腐はカニ身を入れ込んで豪華な一品。味噌汁は夕食と同じく具材はしじみ。このしじみ大量盛りで20個ぐらい入っていました。滑らかな白味噌で胃に優しい味噌汁です。白米は直前に釜で炊き上げてあり、小2膳ほどの量はおかずの品数と丁度よく食べ切りサイズです。
まとめ
本当は露天風呂付のお部屋に泊まりたかったのですが、日程が合わず急遽一般客室に変更して宿泊しました。温泉を楽しむのであれば、次回は露天風呂付のお部屋にしたい。しかし、露天風呂付客室泊で同じ料理だと、お値段的には割高かなと思いました。季節や好みに依る所もありますが、贅沢をいうと、冬瓜の椀のような創作性のあるお品がもう1品欲しい・・・。でも、次に宿泊する時も、生ビールやアイスの誘惑に負けそう・・・。
宿泊料金
実際に泊まってないので、何ともですが。前述したように、露天風呂付きのお部屋は55000円~なので、同じ料理だと私的にはやや高いと感じます。一般客室であればgotoなくても相応の料金だと思いました。よくある安いアイスではなく、お菓子屋さんのアイスと生ビールが料金に含まれているのがいい。
宿泊日:2020/8
旅行サイト:Yahooトラベル(一休)
プラン:【スタンダードプラン】<1泊2食>出雲の旬の味覚と玉造の”源泉かけ流し”美肌の湯を満喫
部屋タイプ:スタンダード和室「藤」「梅」【6畳or8畳・トイレ付】
合計料金:35200円
ポイント即時利用:1140p
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支払い料金:21740円
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