下諏訪にある諏訪大社の宿場街には、現在も当時の姿を残すお宿があります。かつての街道の面持ちはなく、現代に沿って道は拡張されているところが多い。しかし、門前or寺社街らしい神聖な雰囲気は残っており、その一画にあるのが「旅館 奴」さんです。仕出しや日帰り客も受け入れておられるようで、訪れた時は流行り病のこともあってか、とんでもリーズナブルのお弁当を販売されておられました。
※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。
旅情
奴さんの弁当ランチメニューはとんでもなく安い。養鶏養豚とかしておられるのかというぐらい安い。事前予約が必要で、流行り病からの派生商品だと思うので、いつまで続けられるか分かりませんので問い合わせを・・・。後から思うとチェックアウトに合わせて、ランチを頼んでおけばよかった。
※記事をアップした際にはすでにサービスは終了している可能性があります。
下諏訪のお宿でお世話になるは2度目です。前回は鄙びのお宿「鉄鉱泉本館」さんにお邪魔しました。よければ滞在した記録もありますのでどうぞ。
奴さんの建物は街道に面して建物があるわけではないので、2回ほど通り過ぎてしまいました。赤矢印の砂利道の先に奴さんがあります。
一歩入ると民家が横にある生活感のある狭い路地。途中、住民の方が庭でBQQをされていたようで肉の香りが充満していました。子供時代を思い出すような光景です。
砂利路地を進むと、奴さんの建物が見えてきます。駐車場が一杯だったので、右のシルバーの軽自動車が泊まっているところに停めると、お宿のご主人らしき方が出てきて、「明日は雨が降るので、屋根の方へ停めて下さい」とお気遣いを頂きました。
玄関へは石畳み敷かれ、思っていたよりも外観の鄙び感はありません。
昔ながらの重みのある年季の入った玄関戸を開いてもらい、懐かしき昭和の佇まいがある玄関とロビーでお出迎えです。全5部屋というお宿の規模からすると立派な玄関構えです。正面の壁にはとても大きな一枚が飾ってあります。昭和とかいうと古めかしいイメージはありますが、かなり綺麗にされています。このノスタルジーな雰囲気を楽しむのも旅というものです。むしろご馳走です。靴箱上に活けてあるのは生花。私的にはこの時点で◎で、すでに過去に泊まったことがあるような錯覚すら覚えます。
ロビーを上がって左手には赤矢印には貸切露天風呂があり、青矢印は個室のお食事処となっています。
7年に一度開催されるという「御柱祭」の記念柱の輪切りの後ろには「貸切露天風呂」があります。
1階部分はかつては客室であったと思わしき部屋を、個室のお食事処にしておられました。夕食前なので廊下の電気は省エネモードだったので薄暗いですが、食事の時間になると明るくなっております。
ロビーに戻って玄関上がって右手、赤矢印は内湯と共同トイレがあり、青矢印には1階大広間と2階への階段にフロントがあります。赤絨毯は最近張り替えたかのように新しくふかふかです。
普段はトイレの紹介はしないのですが、お部屋のトイレは和式が主のようなので、階段下にあるトイレは最新の洋式となっているとだけ添えておきます。
こちらのフロントで記帳してすぐにお部屋へ案内してもらいました。奥の襖2枚の美人画は大広間となっています。下諏訪の門前街の案内などのパンフレットが置いてあるので、散歩に出かける際に持って行かれるといいかもしれません。歴史が感じられる街並みは、かつての宿場町の風情を感じる事ができます。
美人画の襖をそろりと開けると大広間は、当時流行り病下であった頃には使われることはなく。普段はお食事会場とかになるのでしょうか。
帳場前には2階への階段が着いています。この一角の鄙び感は特に旅情を誘います。
階段の壁には飾り戸が施され、ちゃんと開閉もできるようになっていました。また、階段上がって、画像左手に衝立があり2階の大広間となっています。仕出し・料理旅館というだけあって、大広間が2つもあり日帰り宴会などもされていたのでしょう。ちらっと覗かせて頂くと昔のままの宴会場の姿がありました。が、、、物置になっていたので、片付いたらこの広間で是非に食事をいただきたいという趣き。
宴会場の明かり窓?飾り窓?には燕と雨の装飾。
上がって右手を見た所です。内装は古めかしい所もありながらも、リフォームされて木造ならではの趣きは感じられません。ただ、電飾は昭和で足元の軋みは木造そのものです。汚れていると不潔に感じる若者もいるようですが、清潔だと1周回って昭和のノスタルジーが若者にとっては新鮮に思えるそうです。まぁ、確かにジィジとバァバのお家も近代化された物が多いので古い旅館は新鮮なのかもしれません。
部屋の扉は昭和を感じるベニヤ板はやはり昭和の香り。こちらは2部屋の客室があり、ベッドのある洋室ではないかと思われます。
階段上がって左側には客室は3部屋。一番最奥のお部屋でお世話になりました。古き良き昭和の旅情がたっぷりと感じられ、おっちゃん世代にはたまらない静けさを感じます。
他のお部屋もちょいとお邪魔させてもらいました。
踏込と襖の壁紙が印象的な踏込です。
小さな6畳間はテレビなどの備品などは外されており通常使いはされていないようでした。水墨画らしき欄間絵額も飾ってあります。訪れた時には生活感はなく、実働しているお部屋は3部屋ぐらいなのかも。
さらにお隣の205号室。
扉を開けると正面に小さな扉、左手にも小さな扉、右手には本間らしき畳間。
左手の扉はトイレがあり、やはり和式です。
正面の小さな戸は膝を折って入るバスタブがあります。蛇口には析出物があり、大女将らしき方に聞いてみると、お風呂があるお部屋はすべて温泉なんだそうです。
それだけでも有難いことですが、温泉であるが故に設備の維持も大変だろうと思ってしまう。
小さめの6畳間には孔雀の屏風に、レトロな角棚もあり豪華です。
セミダブルのベッドが広縁にあり、お1人様orカップル対応のお部屋です。セミダブルは2人で寝るにはちょい狭いので、和室スペースに1人前のお布団を敷いてもらうのがいいかと。
お部屋
案内して頂いたのは2階の一番奥にある202号室です。
案内後に冷緑茶と塩羊羹をいただきました。どうやら下諏訪大社宿場街にある歴史ある和菓子「新鶴本店」さんのものではないかと思います。自家製ならごめんなさい!! きめが細かくほんのり塩味は美味しい。冷緑茶も上品な甘い味わいです。
間取りは本間10畳+4畳飛び石の踏み込み+3畳程度の広縁+バス+和式トイレです。
お部屋の扉を開けると飛び石がある踏む込み玄関。踏み込みからは内湯、トイレ、本間にそれぞれの導線となっています。トイレは見て頂くと分かるように和式です。全てのお部屋が和式かどうかは分かりません。ただ、和式が苦手な方は1階内湯前に洋式トイレがあるのでそちらの利用をお勧めします。
踏み込みの天井を見上げると笹、竹枝のあしらいは新しい。流行り病下で勘愛のリフォームを一新したお宿も多い。もともとこういう装飾なのか、あつらえ直したのか。
トイレ前右にはバスの脱衣所があります。ん~緑の人工芝とか見ると昭和感満載です。
一枚低い壁を隔て、1人でいっぱいの浴槽と洗い場がありません。蛇口には白い析出物がこびりつき温泉だそうです。古びた湯船ですが使用できるとのこと。貸切風呂がすべて100%源泉かけ流しなので、お部屋のお風呂は源泉使用ですが利用しませんでした。貸切湯が源泉かけ流しで無ければ間違いなく部屋風呂を堪能したかと・・・。
本間10畳間は角面が窓に独占されています。朝がとんでもなく明るくカーテンが欲しいぐらいでした。
本間の窓からは「しもすわ今昔館おいでや」という時計に関するミュージアムと下諏訪の街並みが見えます。時計や自動車部品などの精密部品の製造が盛んな街ならではの景色です。
違い棚のような所にはテレビ。真ん中にはあまり見ないタイプの小さな床の間です。
奴さんの館内には所々に調度品が備えられています。螺鈿ではないものの、漆の家具は木曽の物でしょうか。
床の上には源氏香図という、お香の組み合わせを識別する為に使われる図式?が彫り込んであります。欄間にも同じあつらえがあり、これは最近の装飾のようです。真ん中にある床柱は昔からの物の様に見えます。素材は杉とかの針葉樹でしょうか。
天井は今風+職人芸を織りなした装いです。板の間に竹枝の横紋を。リフォームされていながらも、なかなかに楽しませてくれる装飾です。
強弱を使い分けれるという見た事のない枕行灯。
広縁は3畳程でクローゼットと洗面所があります。
広縁からは露天風呂を見下ろします。といっても、もちろん露天風呂は見えません。
洗面所は旧タイプの蛇口です。お湯は温泉ではないでしょうか・・・。ここには紙コップと歯ブラシ、ドライヤーの備え付けがあります。金庫や冷蔵庫の備えはありません。貴重品の管理と生鮮食品のお土産はお宿の方と要相談かと。
無駄なアメニティはないのですが、共用の石鹸類などが気になる方のためか、使い切りのシャンプーやコンディショナーの用意もありました。はて?なるほど!ここでようやくお部屋付のお風呂に石鹸類がないことに気付きました。お部屋で洗髪洗体したい方ようですね。
髭剃りとシャワーキャップは必要であれば、フロントに置いてあり自由に持って行くことができます。お風呂に向かうときは、貸切札をもってお風呂の入り口戸に札を掛けます。
到着時はお茶セットはありませんでしたが、夕食後のお布団敷と一緒にお茶セットの用意がありました。
温泉街には自動販売機などは見当たらず館内にもありません。しかし、徒歩5分圏内にコンビニがあり、早く閉まるようですが酒屋もあります。冷水などの用意はないので、お風呂上りの補水などで飲料が必要であれば、近くでの買い求めは可能かと思われます。
お風呂
奴さんには貸し切りの露天風呂と内湯が1カ所ずつあります。空いていればいつでも利用することができました。客室数5部屋に対して貸切風呂が2つという贅です。泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉となっていて、やや硬さのあるような感触で、無味無臭のツルスベとした肌触りがある誰でも入れる優しい湯です。湯使いは源泉かけ流しの「あつ湯」好きにはたまらない高温な温泉です。
貸切露天風呂
ロビー横から露天風呂への道筋。暖簾をよくみると男湯となっていました。
手前の扉を開くと使われていない露天風呂がありました。流行り病がなければ使われていたのだろうと思います。源泉も注がれているようでした。掃除もなされていて、最近までは使用していた痕跡があります。通常営業に戻って全力の奴さんの温泉を楽しみたいものです。
稼働中であった露天風呂の脱衣所では、蚊取り線香の匂いが漂います。訪れたのは初夏。脱衣所は露天風呂に直結した昔ながらのスタイルです。
左にある陶器の豚から蚊取り線香の煙がふわふわと立ち上っています。玄関とお隣のミュージアムから丸見えになるので壁は高く目隠しがあります。
湯船は結構な深さがあり、お尻が底につくと首まですっぽり。大きさとしては大人5人でも余裕があります。ファミリーで入るには丁度いい大きさです。
「あつ湯」なので夏場はしっかり浸かってしまうと、すぐにのぼせてしまいます。所々に出っ張った石があるのでそちらを椅子変わると胸ぐらいの水位で丁度よく。
かけ流し口は申し分のない源泉が注がれています。無味無臭ながらも白い析出物が成長しているのが見て取れます。
赤矢印の塩ビ管に加えもう1つ同じような捨て湯口が反対側にありました。どうやら、湯舟の底から排出するサイフォン方式なのかと思われます。気持ちが良い程に放流されています。
露天風呂にはシャンプー類が備えてあります。ただし、シャワーはなく昔ながらの古い蛇口だけあります。左の温水の蛇口には析出物の付着があり、どうやら温泉のようです。
実に雰囲気のいい湯屋は、夏には長湯は難しい湯温ですが冬はさぞかし気持ちがいい入浴ができそうです。
貸切内湯
内湯はタイルと石畳み壁の不思議なデザインです。
天井には百合と思わしきステンドグラスで雅な感じを演出してあります。時代を感じずにはいられません。
大人2人で入るにはきっちりで、子供がさらに2人入るとかなり窮屈かという大きさの湯舟です。露天風呂と同じくどっぷりと肩まで浸かってしまう深さ。さらに内湯ということもあり、湯温の高さからのぼせが早い。
オーバーフローが無かったので、まだ湯張り中かな?と思っていたら、捨て湯口を発見しました。そして、湯舟の中を除くと露天風呂と同じく湯舟の底にある塩ビ管はサイフォン方式で、湯舟の底からお湯が入れ替わる新しい温が常に楽しめる仕掛けです。
源泉湯口はそこまでは多くはない湯量で露天風呂よりは少ない。湯舟の大きさが違うので相対的には湯量はさほど変わらないかもしれません。
内湯の洗い場には1つだけシャワーがあります。これも恐らく温泉だと思われます。
露天風呂での洗髪洗体が気になる方はこちらで。
お料理
奴さんのお料理は四季会席となっています。その都度、仕入れにより内容は変わるのだとか。朝夕ともに同じ1階の個室のお食事処でいただきました。個室はもともと客室であったであろうあつらえです。これを個室食のお部屋にしてありました。派手さはありませんが地物を丁寧に仕上げた手作りの品々に加え、素材を活かした珍品と郷土を忘れない料理は流石です。その時の仕入れにより内容は異なるそうですが、大きな内容の変化は春夏秋冬の会席となっているそうです。
お品書がなかったので、給仕係の方から聞いた内容と、実際に食べた感触から献立を作っています。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
テーブルには食前酒と前菜が用意されています。
【食前酒】:梅酒
甘味は控えめで梅の酸味はほとんど感じられず、梅の風味だけを抽出したような爽やかなお味です。煮切っているようにも思われますが、ほのかに喉が熱くなる感触を憶えます。
【前菜】:胡瓜と糸瓜の酢和え、手長川海老、鱒粽、枝豆、小うるか白子
キュウリの青味とイトウリのコリコリ触感に加え、シイタケの香りと共に炒りゴマ香ばしい酢で包んであります。イトウリは瓜の仲間で年輪のような断面があるソーメンのようになっている野菜です。 手長エビは海のエビのような磯風味はなく、甲殻香ばしい味だけを残した旨煮です。
うるか(鮎)の卵巣は以前にも口にしたことがあるのですが、磯味を抜いた飛びっこや数の子のような味わいよりも清く精練されています。海産物のようなミネラルはないが、山間部の清廉な旨味を自然のままで、塩だけ加味してある?ような、とても希少な一品です。苦手な方はともかく、旨さを探求する方には是非ご賞味いただきたい。
「マスのちまき」はとても緩々の酢飯は黒酢仕立てでしょうか。マスのほぐし身も酢飯に一緒に入っている? 昆布締めしたマスを押し寿司にして笹で包んだものです。かなりがっちりとした「ちまき寿司」です。
【凌ぎ】:賀茂茄子
「かもなす」ですと配膳された一品。丸い形の賀茂ナスの1/4を使用しており身振りはとても大きいです。表面は片栗粉を打ってから素揚げにしてあるのかと思います。
打ち粉をしたことで表面ははカリっとしているが、中身はトロットロッにナスの旨出汁が閉じ込められて食感の対比がすごい。口に入れると熱々の甘いナス汁が滲みだしてきます。さらに甘みを足した信州味噌に纏わせていただくと、これまた絶妙な田楽になります。
【椀物】:蛤のお澄まし
蓋を開けるとハマグリの香りが嗅覚を撫でます。白濁した貝出汁らしい色合いには、酒とベースのカツオが僅かに香るような・・・。そして、酒蒸しのようにハマグリが主張しすぎない飲み口は、居酒屋だとパンチが足りない、京風だと上品。風味は強も弱も好きですが、もどかしいこの微妙加減もどかしい・・・。彩りの青はほうれん草でもなければ小松菜でもなく、はっきりとした青味は感じられず。旨さが濃縮された炙りシイタケには夏の青々しい山椒の葉が添えてあります。
貝身はとても大きく、しっかりと火が入って歯応えがあります。お出汁の塩加減が、辛くもなく薄くもな、口に飽きさせない良いあんばいに仕立ててあります。
【向付】:馬刺し
とても肉厚な馬刺しがやってきました。「生で入荷したもので冷凍物ではありません」「脂身は少なく赤身の旨味を楽しんで下さい」とのご説明。信州では馬刺しは有名ですが、今ではほとんどが輸入物だそうです。手間がかかるので扱う業者さんが少なくなっていると聞いたことがあります。それでも、これまで見た中では赤身の艶が最も美しい物でした。
味付けはゆるりと甘さがある薄口のたまり醤油に浸します。噛めば噛むほど旨汁が口のの中に溢れ出します。脂の乗りはほとんどないように見えるのに、滑らかな脂風味が溶け出してきます。噛み続けるが口の中から一向に出て行こうとしない赤身肉質。一枚が大きくこれが8貫ほどあり食べ応えたっぷりです。薬味にはすりショウガとネギがありますが、臭味などは一切なく本来の旨味を楽しむにはそのままが良いかもしれません。
【蓋物】:金目鯛のみぞれ煮
蓋を開けると目に飛び込んできたのが鮮やかな赤です。お出汁はカツオと昆布の合わせか。これに大根の汁を切ったおろしを混ぜ合わせてミゾレにしてあります。醤油とお酒はあっさりと大根の辛味や雑味はなく爽やかに整えてあります。夏大根なのに嫌味がないのは下ごしらえがいいからでしょう。
キンメに箸を入れると思っていたよりも、しっかりとした繊維質です。しかし、口に入れると噛み心地は解けるほどで脂の乗りが絶品です。下ごしらえは片栗粉を打ち粉してから、揚げて南蛮漬けのように仕上げてあるのかと想えば揚げ香ばしさはなく。揚げると皮の鮮やかさも失われそう。蒸してから打ち粉をして、仕上げにみぞれ出汁で軽く煮たように感じます。
【焼物】:岩魚の塩焼き
やけに黒々とした小振りのイワナが配されました。以前、桟温泉旅館で食べた物に似ていたので、醤油を塗って焼いたりしているのかと尋ねると。「活岩魚を櫛に打って塩を持たせて1時間かけてじっくりと焼き上げてあるので、骨まで柔ららかく食べれます」とのご返答です。さらに、流行り病渦で活イワナが手に入らない時期があったそうで、活以外の岩魚で同じ調理法をしても焼きは黒くならず、身も波を打つような焼きあがりで美しくなかったそうです。イワナの隣にあるのは川魚によくある蓼酢ではなく、搾りスダチが用意されてあり、これがまたよく馴染み美味。酢?らしくない。自然な酸味すぎるけどなぁ・・・と思案。美味すぎると思っていたら全て飲み干してしまいました。これも聞くと酢橘のまんまの搾り汁で酢は加えていないとのことでした。
ガブリとかじりつくと、やはり漬け焼いたかのような味を舌が最初に感じ取ります。が、無駄な味はなくやはり塩味しかない。水分は1時間の焼きで完全に飛んでしまっていて、ぱさぱさとしているが、シットリ潤い旨味だけが残されています。干物のように味が凝縮されているのも関わらず、脂はそのままに残されているようで、ホクホクなのに一夜干しのような濃熟味に仕上がっていました。
【揚物】:どんこ、鱧、茗荷
天つゆはカツオと昆布の合わせ出汁に、醤油は優しく塩とみりんを強く持たせた甘味、ふわふわ衣に良く滲み込みます。普段、薬味の大根卸しは入れないのですが、この天つゆには是非に入れたほうが相性が合って美味しい。
とんでもなくでかいドンコのシイタケは、揚げる前は直径10㎝ぐらいあったと言うと、大袈裟かもしれませんがそれぐらい大きい。シイタケがかなり熟濃されて肉厚で、信州のスーパーに行くと必ず見る素材です。調理する前からスンスンと香りが猛々しい。かぶりつくとシイタケ出汁がジュルジュルと惜しみなく飛び出し熱々な汁が口の中で躍ります。
ハモもびっくりの厚さがあり、もともとのハモの大きさに想像が至りません。普段いただくハモのお澄ましや湯引きの倍ぐらいの厚みがあります。脂を吸ったのでは?と言われるとそうかも・・・。ただ、味は濃く美味しいが自分の舌では判別難しい。最後にお口直しにミョウガで締めます。
【食事】:新生姜ごはん、きのこ味噌汁、香の物
飯と汁は蓋つきで配され、蓋の裏側にも模様がある粋な器です。主張しすぎない新ショウガには醤油をゆるりと混ぜて炊き込んであります。そのままでも、お漬物でもどちらでも食せるようになっています。 エノキと舞茸は生のまま椀に盛って、信州味噌汁仕立ての濃い目の汁を注いでいます。それゆえにきのこはゴリゴリとした生触感が強く素材をそのままに。 香の物も自家製のようで、小カブとニンジンは味噌麹漬け、キュウリはぬか漬けと細部まで旨すぎます。
【水物】:豆腐の寒天
『「豆腐を寒天」で包んだデザートです、茶色いのは黒蜜です」とご説明頂いた通りなのですが・・・。テーブルに配膳せれた時には??? 確かに豆腐らしき物が寒天にプルプルにコーティングされてあります。豆腐は杏仁豆腐とかでしょう?と推測を立てていると・・・。
どれどれ、豆腐寒天をスプーンですくってみると、弾力がある寒天地に対して豆腐地はかなり柔い。口に運ぶと寒天地は味付けのないクリア味、豆腐は絹ごし豆腐のように緩々で滑らか。自然派の舌触りを楽しむ純和風の清涼さが際立つ水菓子。秀逸なのは黒蜜にあり。黒糖はまったりたりたりに煮詰められており、ねっとりとクリアな寒天豆腐に絡むと一気に豆腐大豆のタンパクが「俺(豆腐】がいないとお前(寒天)の良さは分からないだろ?」と前に出てきます。かねがね豆腐はスィーツに成りえると思っていましたが、豆腐と味付けが絶品であれば、やはりスィーツになるのだと思わされる逸品でした。
朝食
朝食も夕食と同じ個室でちょうだいしました。テーブルには小鉢がたくさん乗ったお膳が用意されてありました。左上から、
・出汁巻き玉子 ・信州サーモン?
・納豆、オクラ ・ワカメとイカの酢の物
・しらす大根おろし ・イタドリ?とゴボウのきんぴら
・蜂蜜梅 ・白菜浅漬け
・山芋擦り流し ・焼き海苔
・味噌汁 ・白米
・赤肉メロン
種類が豊富でバランスがとてもよい朝食は夕食と同じく手作り感満載です。納豆は大粒でオクラを混ぜ込み味付けは好みで醤油を。酢の物のイカは火を入れて酢は強くなく上品。きんぴらは微ゴマ油で炒め、ヌメリはイタドリ?季節は外れてはいるが分からず。出汁巻きは温かく配され、焼目の層がなく時間が経つとお出汁が滲み出てくる本物です。熱々の焼き魚は信州サーモンとしたのは、いわゆる鮭のような濃い紅味がなく油の乗りにまろやかさがあったので献立表記にしております。長芋の擦り流しと説明をうけたのは、おそらく強粘りの大和芋かと思われます。かつお出汁で溶いてあり薄っすら塩味で熱く配膳。お粥のように食せます。味噌汁にはたっぷりのお麩とわかめの具材に夕食と同じく信州味噌仕立てです。白米はいうことなくピンピンにツヤツヤで旨く。最後には赤肉のジューシーなメロンで締めました。
まとめ
小さな旅館なのでご家族経営でされているようでした。といっても、佇まいはやはり旅館で落ち着いた上品な接客でもてなして下さいます。お料理はやはり馬刺しに1時間焼きの岩魚は他では口にできない物かと思います。お風呂も5部屋に対して2つの貸切風呂なので混雑することもなく利用できます。大人の隠れ家的な雰囲気があり喧騒を離れて、のんびりしたいときには最高の時間が過ごせそうです。季節会席ということもあり、季節を変えて温泉と料理をまた味わってみたい。
宿泊料金
源泉かけ流しの貸切風呂が入り放題で、派手さはないですが丁寧な手作り料亭料理からすると、定価でも値段以上に楽しめる良宿でした。じゃらんのセールのクーポンを利用で26200円での宿泊です。
宿泊日:2021/夏季
旅行サイト:じゃらん
プラン:【全室完全個室】源泉かけ流し貸切風呂1泊2食プラン
部屋タイプ:和室
合計料金:35200円(2人)
春セールがお得になるクーポン:9000円
支払い料金:26200円
加算ポイント:7474p(ポイントUP)
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