饗宴さんは4カ所の貸切風呂と、美食料理を謳う1日5組限定の料理旅館です。確かに温泉と料理は唸るほどに絶品です。
旅情
パッと見た感じでは旅館という印象はなく大きな一軒家のようにも見えます。玄関前に駐車場があって荷物を持って玄関からお邪魔しました。
玄関戸を開けると、すぐに女将さんが出てきて対応して下さいました。
ロビーにあるテーブルで煎茶と「きな粉」をまぶした「よもぎ餅」をいただきました。
とても口当たりが良く甘さに品があります。お料理のこだわりからすると、饗屋さんの自家製でしょう。
お茶をいただきながら、館内の説明をタブレットにしてもらうという斬新なチェックイン。お風呂の案内が複雑だったので、これなら分かり易い。
フロント横の暖簾のかかった所を抜けると喫茶コーナーがあります。
喫茶室にはウォーターサーバーとコーヒーメーカーがあり、冷蔵庫にアイスが入っていました。寸志でいただくことができます。アイスはもっちりとしたミルク味で、これも自家製ではないかと。
喫茶室から裏口へ降り表へ出ると、お食事処と貸切風呂のある「山草庵」の建物があります。
裏口出てすぐの所に水槽がおいてありました。仲居さんが岩魚を捕獲しているのを見ていると、「お夜食のお寿司になるのよ~」とのこと。
山草庵の入り口は「くぐり戸」になっています。入り口脇には1人1本飛騨牛乳のサービスがありました。お風呂上りの牛乳うまい!
くぐり戸から入ると何ともユニークなお食事処の扉があります。何ともとぼけた表情です。
お食事処の前を通り過ぎると、お食事処を取り囲むように廊下がついています。途中で天然水が注がれた飲水所があります。
お食事処の裏手には上り框(かまち)があり貸切風呂に到着です。
さて、ロビーに戻ってお部屋に行きます。フロント横には古風な家具が飾ってあり、奥飛騨古民家の雰囲気を保ちつつ、現代的に館内はアレンジされています。
レトロな家具が置いてあるお部屋から奥に行くと階段があり、1階は貸切風呂となっていて2階に宿泊部屋があります。建物は「お食事処の山草庵」と「宿泊棟の母屋」の2つと、とてもこじんまりとしたお宿です。
館内にはソフトドリンクとアルコール混合の自動販売機が設置されています。周辺には商店やコンビニもないので、必要な物があれば揃えてからのチェックインをお勧めします。食べ物はたくさん用意してくれているので、おつまみとかも不要かなぁと思います。
お部屋
案内して頂いたのは「かたくり」というお部屋です。
間取りは本間8畳+寝室7.5畳+洗面+トイレ+踏み込み1畳です。予約時は「笹ゆり」という一番お安いお部屋で予約したのですが、アップグレードされていました。
扉を開けて踏み込み左に洗面とトイレがあります。
饗屋さんの建物は昔の木造をそのままに、モダンにリフォームされたような印象を受けます。寝室にはあらかじめ布団が敷いてあり、お風呂上りにゴロゴロできるようになっていました。
座卓には小物入れ用の桐箪笥が置いてあったので、開けてみるとお茶菓子が入っていました。
夕食が終わってお部屋に戻ると、新しい浴衣とバスタオル、冷蔵庫には件の岩魚のお寿司、枕元にヒーリングミュージックのオーディオが置かれてありました。お寿司がまた美味しく、胡麻を混ぜ込んだ質の良い酢飯に、紅ショウガと紫蘇を岩魚でサンドしてあり絶品でした。オーベルジュと謳っていますが、サービスもとても充実しています。
お部屋の備えには金庫、空の冷蔵庫があり、洗面には過不足のないアメニティとドライヤー、冷水も夕食後に用意がありました。トイレは最新式のシャワートイレです。
お風呂
饗屋さんの売りはお料理だけではありません。客室数5部屋に対して貸切風呂が4ヵ所もあります。山草庵に2つ、母屋に2つあります。しかも、それぞれの湯屋は内風呂と露天風呂を有し、すべての湯舟において源泉かけ流しとなっています。
フロント横にある利用したい湯屋の鍵を持っていきます。こうすることで、後から来た人が使用の有無を分かるようになっています。泉質は無味無臭の単純温泉なので、湯力としてはあまり特徴がなかったりします。ただ、湯量が豊富で新鮮なお湯は、ツルさらりとした感触をまとい、茶色の湯の華は視覚的に効能を感じさせます。
各湯屋には綿棒から化粧水・乳液に至るまで、お風呂に必要なアメニティはフル装備です。湯屋によってはマッサージ器も備わってありました。
陶の湯
2人でゆったりと入れる湯舟は鉄釜ではなく、湯屋の名前の通り陶磁器で作られた物です。源泉は湯舟の中へ直接流入するようになっていました。
この湯舟が最も湯量と湯の花が多く感じられ、溢れ出した跡の茶色い析出物が源泉の証です。
露天風呂は淵からの溢れ出しはなく吸い込み口があります。循環ではなく常に一定量捨てられているようでした。身を沈めると湯舟の淵から浴槽外へ溢れ出しました。
庭の景観や、露天風呂からの景色は「陶の湯」が最も秀逸。この湯屋にだけ付いてる特典があります。ワンタッチで星空を楽しめるというものです。相方が言うには当日は薄雲が張り出していたであまり見れなかったとのこと。
岩の湯
3人でいっぱいの内湯はやや薄暗い。
こちらも湯舟の中へ直接源泉が入れてあります。湧き上がってくる気泡と共にお湯が注がれ、切り口からゆるりと溢れ出ていきます。
露天風呂はパッと見、オーバーフローはないですが、こちらも「陶の湯」と同じく湯舟の底に捨て湯口があります。体を沈めるとお湯が溢れ出し、他の露天風呂の中では最も風情があります。
岩湯の見どころの滝湯は老朽化により廃止となっていました。その代わり?といってはなんですが、新造された湯口を覗くと「ぬる湯」と「あつ湯」が混合されていました。
檜の湯
総ヒノキ造りの湯屋は内湯は2人で丁度良い大きさです。
気持ちよく源泉が注がれ、切り口からお湯が流れ出ていきます。
石造りの階段を上がると露天風呂があります。サイフォン方式で筒からお湯は流れ出ていくので水位は変わらないようになっています。
岩づくりのかけ流し口には析出物がしっかりと付いていました。
宝の湯
檜の湯と隣り合ってあるのが宝の湯です。内湯は小ぶりの2人前。
露天風呂は「檜の湯」と同じような造りとなっていますが、こちらの方が小さくコンパクトで秘密基地感があります。源泉は檜の湯と同量程度の注ぎです。気持ち的には山草庵の2ヵ所のほうが、母屋の湯屋よりも湯量が多いような気がしました。
お料理
お待ちかねのお料理です。朝夕ともにお食事処「山草庵」の個室でいただきました。オーベルジュと謳っているだけあって、朝食も手抜きはなく調理もすごいですが、器と盛り付けも流石です。調味料の選別?自家製?もこだわりがあるのがよく分かります。とにかく一品一品の芸が細かく、付け添えの彩も目で食べるとは良く言ったものです。また、温い料理ではなく熱いか冷たいか、常にお料理が最も良い出来立てで配膳して下さいます。和会席なのに洋会席になっていくような不思議なレパートリーと味付けがまた面白い。
献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
【前酒】:山葡萄酒
甘味は控えめに酸味と野性味のある葡萄の渋みは大人味です。記念日プランだったのでワインも付いていました。
冬大根 飛騨地鶏・・・
【先付 一】:様々な野菜から出汁を取った 大根と地鶏のスープ
鳥風味が豊かに薫るお出汁は、ほんのり柚子にとても深みがあります。軽く塩を持たせて野菜本来の甘旨味が感じられます。具材は大根と鶏に葱を散らしてあります。小鉢は温められてあり、スープも熱々においしく口にできる気遣い。
【先付 二】:揚げ大根と地鶏ロースト 香味野菜と黒酢で
まろやかな黒酢にはゴマ油が香り付けされてあり、椀が席に届いた瞬間から匂いが漂います。じっくり火が通された鶏は、旨味が閉じ込められ、しっかりとした地鶏の歯ごたえがあります。大根はサックリと心地よさを残しつつ冬大根の甘味に、片栗粉?をつけて揚げて揚げ出しのように黒酢のソースに絡みます。薬味の彩りを添えるのは葱、スプラウト、ミョウガ、紫蘇花。ここでも熱々椀。
飛騨葱 飛騨サーモン・・・
【里肴 一】:蒸し葱、飛騨サーモンの軽いスモーク
お造りの代わりとなる一品です。熱々とは対照でキンキンに冷えた金属の銀皿には燻製サーモンと、青葱をシャーベット状にしてクラッシュしたものを散らしてあります。青ネギ冷凍してクラッシュとか発想がおかしいですわ。つまにはトロトロに蒸した甘々の白葱があしらわれています。川鱒(飛騨サーモン)は燻製にすることで味をグッと閉じ込めてあり香ばしく、舌触りはトロリとして紅身味が濃い。これを湯葉醤油でいただきます。醤油はやけにやさしい。湯葉を作る時の煮汁で割っているのかマイルドで、湯葉醤油に深く浸しても塩辛く無く調和してうまい。つまのシャーベット葱と一緒に食べても美味で、湯葉を絡めればしっとりと味がさらに落ち着き上品。
【里肴 二】:焼葱おこわ、飛騨サーモン塩麹漬けの低温調理、焼蕪 オリーブオイルと甘味噌で
葱の甘味がオリーブオイルと合うなんて不思議な味覚です。このソースをおこわに掛けてあります。ふんわり川鱒は麹の風味がたっぷりとして、旨味が締まり雑味がありません。滑らかな甘口味噌には辛子を合わせてあり味が引き立ちます。焼蕪は熱々でしっとりと口の中で崩れ、甘味噌と食べると田楽のようです。この一品だけで前菜を食したような感覚です。この器も熱い。
【焼物】:飛騨牛炭火焼、岩魚塩焼き
饗屋さんは飛騨牛取り扱い料理店に認定されたお宿です。配膳されるや、びっくりの肉厚です。フィレだと思うのですが、脂が乗った部分と赤身が多い部分と2種用意されていました。
脂加減は程よく、見た目以上に赤身の旨さが際立ちます。炭火で表面だけ強く炙ったレアで食べるのが一番美味でした。薬味は摺りショウガ、大根おろし、刻み葱、岩塩、特性ダレです。にんにくと玉葱が効いた特性ダレもいいのですが、自分的にはどこのお肉をいただいても塩がスタンダードで味が分かりやすい。
岩魚の塩焼きは身振りはとても大きい。さすがに養殖だと思いますが、よく運動させられているのか身が引き締まっていました。ワタを抜いて塩は強めに持たして表面はパリパリに焼き、身の締まりは味も締まっています。お食事処に入った時には、中心にある囲炉裏で炙られていました。口に入れると熱さで食べるのが難しいほどの熱々です。
冬白菜 飛騨食材・・・
【口替】
・飛騨産ベーコン入り トロトロ白菜の豆乳ポタージュ
・自家製胡桃パンで 白菜と飛騨産リコッタチーズのホットサンド
白菜と豆乳にある自然の甘味が詰まったポタージュは、味わい深く良質のベーコンの香ばしさが合わさると和から洋に一気に味覚が変化します。これに黒胡椒とパセリ粉をふって香り付けしてあります。これも、やはり熱々で提供してくれます。ほっこりと焼きたてのホットサンドには、しっとりさっぱりのリコッタチーズに白菜と玉葱を盛り込み、程よい塩加減にクリーム状に仕上げてありました。和製のチーズは癖がなくて口にし易く美味。口に入れると、焼き立てパン独特のほんわか感がたまりません。ポタージュと合わせると、いきなり品のあるランチに早変わりです。
【温物】:とちの実餅、里芋キクラゲ団子 揚げ出し 敷いてある茶碗蒸しをつぶしながら
1つのお料理に色々な物が詰め込まれた賑やかな揚げ出し?茶碗蒸し?です。とちの実餅は香ばしく海苔を巻いて揚げてあり、さらに香ばしく。里芋キクラゲ団子はもっちりとしており、彩りあられを衣として揚げてあります。飾りにブラウンエノキ、水菜をあしらい、餡には鰹と柚子の匂いが漂います。この餡が揚物2点にとても合います。このさらに器の底には茶碗蒸しの玉子地が敷かれてあります。それぞれが餡を中心として、とちの実、里芋、玉子地と独立した主張をしているのが何とも絶妙です。
【食事】:飛騨山之村 寒干し大根の炊き込み御飯
炊き込みご飯は加味が要らない程の醤油味に、ほんのりと大根の味が鼻から抜けていきます。お出汁は鶏かな。具材は赤い点々があったのですが人参?とお揚げに、荒削りの「えごま」を振ってあります。止椀は岐阜らしい醤油寄りの大豆のお味噌。香の物は赤カブと白菜を塩揉みして一日押した浅漬です。
【水物】:季節のデザート
ヨーグルトのムースに苺、ブルーベリー、リンゴのコンポート、バナナ、コーンフレークを盛り付けて、濃密な苺ソースを回し掛けてあります。最後は料理長のお手自ら配膳して頂いたのですが、二酸化炭素を使ったホイッパーで演出して下さいました。グレープフルーツを使用した物だそうで、果肉の感触と炭酸のプチプチ感が残っているグレープフルーツスカッシュのホイップ。上から順々に食べると味に変化があってパフェのようです。
朝食
飛騨春慶 箱膳 郷土料理
【お重上段】
①漬物
②蕗のとう味噌(焼物取り皿の小鉢)
③飛騨ジュース
箱膳はとても賑やかなラインナップです。ちょっとした会席料理の前菜や八寸の様。①②は確実なお手製の味です。漬物は茄子、赤かぶ、大根。蕗のとうは早物であれば、この時期には出ているようです。③は濃厚ストレート・トマトジュース。ジュースというよりスムージーに近いです。
【お重下段】
④精進煮物
⑤飛騨産養鶏卵の温泉玉子
⑥小松菜と占地の浸し
⑦地山菜
⑧麩と蓮根
⑨野菜のマッシュサラダ
④煮物はほろりとした飛龍頭(がんも)、高野豆腐、丸こんにゃく、紅白かまぼこ、絹さやです。一品一品丁寧に炊き上げた炊き合わせです。⑤卵は濃厚で上品な薄味のお出汁に浸し、人参、かいわれ大根を添えてあります。⑥お浸しも薄い口触りは小松菜の青さが映えます。⑦山菜は「わらび」です。スライス玉ねぎとかつお節を付け添えた醤油マヨネーズ?仕立て。⑧生麩は「よもぎ」です。レンコンは歯ごたえがあり、味付けは滑らかな酢味噌です。⑨野菜のマッシュは南京なのですが、クリームチーズを一緒に練ってあるのかとってもクリーミー。トマトとブロッコリーの彩り。
【焼物】:川魚一夜干し
川魚は鮎の一夜干しです。これも饗屋さんの自家仕込みだと思います。この時期に鮎?といった感じは受けますが、鮎の色合いは素晴らしく瑞々しい小振りの若鮎です。
【蒸物】:手づくり豆腐、飛騨なめこ茄子のみぞれ和え
そして、手作り豆腐は大豆の甘さと「にがり」の苦味が融合したシルキーな滑らかさ。豆腐には、茄子を揚げ浸した醤油濃い目の物に、大根おろし、ナメコ、香りに三つ葉を入れ込んだタレを掛けていただきます。風変りな茶わん蒸しのようにいただけます。
【飯添】:奥飛騨山椒入り朴葉味噌
【御飯】:現近有機栽培 こしひかり、あぶらえ入り五平餅
【汁】:雑茸汁
五平餅の「あぶらえ」はエゴマのことを言います。絶妙な甘みと塩加減でエゴマが香り高く、餅は火にかけると溶けるように、ふんわりとした触感は美味過ぎます。味噌汁は椎茸ぐらいしか分かるキノコがなく・・・。汁物は1人2杯分と多めに。当たりがやさしい白味噌ですが、キノコからヌメり成分が解けたして一層まろやかに。
【水物】:季節のフルーツ
最後は手剥きのみかん、キウイ、ナタデココの蜜付けです。とにかく朝から贅沢で上品な手作り料理です。少しずつを品数多く盛られており、どんな味がするのか楽しみになります。料理自慢のお宿はたくさんあります。しかし、朝食はスタンダードなことが多く、饗屋さんのように、ここまで手を入れてこだわったお宿は珍しいかと思います。
まとめ
お部屋が5部屋しかなく、お風呂も源泉かけ流しで、すべて貸切風呂というのがプライベート感満載の宿です。お食事処もすべて個室のようでしたし、料理もバリエーション豊かで味も至高です。周りには何もないので、おいしい物を食べて良泉に浸かって、只々のんびりとしたい時に訪れるお宿としては最適ではないかと思います。些細なことですが気になったことを1点。当日は満室のようでしたが、予約時の「笹ゆり」という一番安いお部屋から、少しお値段が高い「かたくり」に変わっていました。このお部屋は朝日がよく入ったのでブラインドとか付いてれば、ありがたかったかなと思いました。とにかくお料理が素晴らしく、すぐにでも再訪して違う季節のお料理を食べてみたい。
宿泊料金
さて、宿泊料金です。「笹ゆり」のお部屋のスタンダードプランで40000円から45000円ぐらいの値段帯です。どこの旅行サイトや公式HPでも概ね同じ値段設定のようでした。基本、オンラインカードでの決済ができないお宿です。ただし、yahooで記念日プランのみカード利用が可能でした。ゾロ目のクーポンと10倍ポイントの旅旅サンデーを利用して、15%引き程度で泊まらせていただきました。
宿泊日:2020/3(土曜日泊)
旅行サイト:一休(yahooトラベル)
プラン:【ギフトプラン】日頃の感謝の気持ちを込めて旅に贈ろう!記念日のお祝いにも最適・グラスワイン1杯付
部屋タイプ:【202】笹ゆり(和室)
合計料金:46404円(2人)
クーポン:2000円(yahoo!ゾロ目のクーポン)
ポイント:4440P(ポイント即時利用)
支払い料金:39964円
獲得ポイント:399P