かつては「魚友」さんという名で開業。愛知県の不動産屋さんに買収?されて2014年に現名である「THE BEACH KUROTAKE」さんに名称を変えて営業されています。愛知県知多半島では珍しい源泉かけ流しの湯使いに、お料理の口コミが高評価だったので、以前から気になっていました。近日予約では全くと言っていい程に空きはなく、思い立った週末の予約は皆無で先延ばしになっていました。事実、「また来ます~~」と帰る常連客の多い事。
良いタイミングで「じゃらん」からのクーポンの配布と宿泊日がマッチングして急いで予約。宿泊して思うことは「リピーターが付くのは当然で、もっと早く訪れるべき宿だった」というのが感想です。冒頭で言うのもなんですが、すぐに再訪したいお宿の1つとなりました。
※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。
旅情
南知多道路の南知多ICを降りてgoogle先生の案内で北上するとお城のような建物が見えてきます。
お城の天守のようなバブリーな建物が印象的です。以前の「魚友」さんの古き良き時代に建てられたバブルの遺産は現代では還って新鮮な感じがあります。
愛知県なのに「しゃちほこ」ではなく、屋根に乗っているのはタイですな。
車を建物脇の駐車場に停めると係の方がすぐに出てきて荷物を取りにきてくれました。
玄関前には足湯の痕跡があったり、このような源泉蛇口が玄関横にあります。残念ながら足湯と源泉蛇口は可動はしておりません。居住空間の手は入れておられるようですが、細かいところは昔のまま;玄関周りの建物の老築化で大丈夫かなと思いつつチェックイン。
正面玄関横には源泉の間欠泉があります。自然湧出しているようで常時源泉が溢れ出していました。訪れた時は強風で源泉湧出は風に乗って飛ばされるぐらいでした。
建物裏側は岩礁と砂浜になっていて、お宿の名前のように海側ビーチで海水浴もできそるようです。海で遊んだ後に砂を流すシャワーも設置されてありました。水が出るかは分かりませんが・・・。
さて、改めて玄関からチェックインを。正面にはタイル?張りの真鯛がお出迎えしてくれます。
経営が変わっても、昔からあるバブリーな旅情はそのままです。
外観は以前のオーナーの頃のままのようで古さがありましたが、玄関周りはリフォームされて綺麗になっていました。
玄関を入ると開放的なロビーが見えます。手前の竹が差し込まれた枯れ庭はバブリーな情景です。
入って左には喫煙室と下階にはレストランがあります。奥には宴会場があり現在は閉鎖されていました。
夕食後は階段傍にデトックスウォーターとコーヒーのセルフサービスが置いてありました。
玄関入って右手にはフロントとお土産処。
郷土の物を中心としたお土産処に有料の選べる色浴衣。
チェックインはオーシャンビューのデッキロビーでしました。
ウェルカムドリンクはアイスコーヒー、ウーロン茶、オレンジジュースから。
ロビーにはジャンルを問わない本棚があり新聞も置いてあります。
客室とお風呂はフロント横の廊下から。赤矢印には自動販売機。
自動販売機は酒類は割高な物もあればソフトドリンクは標準的なお値段設定。周辺には車2分、徒歩15分でコンビニはありますが、車以外の交通手段であれば必要な物は事前の用意をお勧めします。
客室廊下はシティホテルのような様相です。
地下には男女別の浴場があります。館内全体の雰囲気としては地下は昔のままのようで、リフォームしきれていない印象です。これから手を入れていくのだと思います。
館内はほんとに無駄の無い造りとなっています。おいしい料理べて、いい温泉に浸かり、のんびり過ごす宿です。
お部屋
案内して頂いたのは206号室です。
間取りは本間10畳+直結の縁2畳+踏み込み1畳+トイレ+洗面です。
入り口ドアを開けると、半畳の玄関に上がり框も半畳強の広さがあります。
上がって左手には洗浄機付きのトイレにモダンお手洗いがあります。
洗面には強力なドライヤーも置いてあります。
クロタケさんになる前の、魚友さんの靴ベラがそのまま利用されています。
床間にテレビを配し広縁と直結したシンプルな本間10畳です。
広縁には冷蔵庫とお茶セット。よくあるテーブルセットではなく海を眺めるベンチのような机?
朝には鳥が流れ込みに集まって何かをついばんでいました。遠くにタンカーなどが見えスーパーのんびり風景でリラックスできます。
お茶請けには銘菓の「なぎさ餅」です。
アメニティは高級旅館の仕様でバスタオル2枚に作務衣の用意です。
冷蔵庫には水2本、お茶セットはティーパックだったので、Kurotakeさんクラスのお宿ではではちょいと寂しいお茶セット。追加を頼むと普通にいただけそうではあります。
お風呂
男女別の大浴場が1ヵ所ずつあります。浴場の入れ替えはなく、ほとんど同じ造りとなっています。掛け流し好きにはたまらない大量ドバドバの源泉で、確かな塩味とニガリ風味に加えて緩い鉄錆臭を感じます。有馬温泉の金泉を物凄くマイルドにしたような珍しい湯です。念のために消毒もしていると表記はありますが消毒臭は全く感じられませんでした。
泉質はナトリウム-塩化物泉となっており、最初はヌルスベ感があり皮脂がごっそり持っていかれると、やがてツルツル感に変化します。カサカサ肌になるかと思いきや、湯上がりは意外にもしっとりとしています。ただ塩分濃度が濃く、鉄成分も強く鉄錆臭が身体に残るほどなので、肌が弱い方は湯上がりはシャワーで流した方が良いと思われます。
男湯 内湯
湯煙りが籠らないようにしてあるのか、湯舟の大きさに対して洗い場スペースがやけに広い浴場です。
内湯は2つに区切られていますが、区切りの下は繋がっていて、奥の小さな湯舟から手前の大きな湯舟に区切りの下から湯が移動するようにしてあります。
源泉湧出が敷地内にあることで、湯舟に注ぐころには42度と最適温となっています。なので、注ぎ口がある小さな湯舟は「あつ湯」設定となっています。源泉の注ぎもあるので、生源泉をフレッシュに入りたい人はこちらがお勧めです。
湯口には茶色の析出物が付着し、贅沢な湯量が惜しみなく注がれています。
挟んで反対側の大きな湯舟は「ぬる湯」となっており、長くゆっくり浸かりたい人には丁度良い湯温です。しかし、真夏だとそれでも熱く感じそうな温度です。
赤丸のエリアを見ると、小さな茶色の湯の花が舞っています。濁りはほどんどなく黄土色の色づきはモール泉のようです。
捨て湯口は延々とザブザブと湯が捨てられていきます。注ぎ口よりも何故か多く感じる湯量ですが、浴槽内に他の注ぎは確認できませんでした。満室であったのにも関わらず大浴場で合うお客さんは1,2人ほどで、ほとんど貸切状態でした。
男湯 露天風呂
内湯からアクセスできる露天風呂はスーパーオーシャンビューで、訪れた時は雨こそ降らないが暴風で波が高くアグレッシブな豪快ビューが楽しめました。
ただ、ビーチからは男風呂は丸見えです。
一番風呂を頂戴しに行くと青丸で囲んだところ、水面には湯の花が集まって浮遊していました。視覚的にも泉質の良さを楽しめる露天風呂です。
塩ビ管が縦に2本並んでいますが、出ているのは下の管からのみです。内湯同様に塩ビ管直径一杯満ち満ち注ぎの凄まじい湯量です。
こちらは捨て湯口なのですが、側溝に向かってざぶんざぶんと湯が溢れ出ていきます。
あ~・・・勿体ない・・・。が、ありがたい自然の恵。
岐阜県濁河温泉のような刺々しい析出物ではなく、岩造りの湯舟には反り返すように水面に素って優しいまるい析出物が付きます。訪れた春には長湯には丁度良い露天風呂。真夏だと熱く感じそうな湯温と直射日光。
湯舟に身を沈めると海はほとんど見えなくなってしまいます。しかし、湯冷ましに身体を揚げると、遠くを臨む水平線は最高の温泉に最高の景色を添えてくれます。
女湯 露天風呂
ほとんど同じ造りの浴場なので女性側の露天風呂だけ。ビーチサイドからは、男風呂同様に丸見えになってしまうので、女性サイドの露天風呂は目隠しが高くなっていたようです。
一か所だけ目隠しがないところを設けてあります。
周りには光を灯す建物は皆無で、夜には湯を楽しみながら星空も楽しめました。
お部屋に用意はなかったのですが、ハイクラス宿らしく髭剃りや化粧水類は浴場に備えてあります。脱衣所にはウォーターサーバーも置いてありました。
お料理
朝夕共に1階にある個室のお食事処でいただきました。フロント前の階段を降りていくと受付があります。何やら奥の方に板前さんの姿が見えますね・・・
案内の方について行くと板さんが調理しているオープンキッチンの前を通ります。板さんが「いらっしゃいませ」と声を掛けてくれます。ほとんどのお宿では厨房は見れないことが多いですが、KUROTAKEさんでは調理している方々のお顔が拝見できます。個室に入ってしまうので厨房がの風景が見れないのは少々残念ですが、こういう演出も「KUROTAKE」さんならではでしょう。
厨房手前には別注料理のハマグリ、サザエ、アワビが水槽で待機していました。直前まで生きている「活け」を出すという料理長さんの拘りを感じます。
朝夕共に同じ個室での提供でした。
お料理はかなり美味しいという口コミばかりで期待が膨らみます。噂通りと言うには申し訳ない、想像の上をいく品々が絶妙なタイミングでテーブルに配されます。京風ベースらしく、全ての食材が生きて活かされており、全てのお皿に1つとして邪魔をするものはなく、味付や調味・素材に無駄がない調和は完璧です。魚はその日に生け簀から揚げた物しか使わないという、お若い料理長さんの拘り切った素材の選定が素晴らしい。
献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
最初の配膳には食前酒、不思議な桶の前菜、台物のブリしゃぶが用意されていました。
【食前酒】:紀州梅モクテル
モクテルはノンアルコールカクテルの新しい呼び方だと思います。このモクテルは梅の渋みと甘味を強く持たせた物で、まったりとした口当たりはハチミツ仕立てのようです。
献立には「和紙を使ったパフォーマンス」とあり、和紙に火が入ると中心から縁に向かって燃え拡がっていきます。
和紙が燃え尽きると中から前菜3品が顔を出します。
【前菜】:遊び心 季節盛り合せ
①師崎産しらすポン酢 いくら醤油
知多半島の最南端で水揚げされたシラスには濃い口の醤油を浸した大根おろしとイクラを添え付けてあります。シラスとイクラの組み合わせは初です。イクラの旨汁によりシラスに深みが増すという不思議美味。シラスではなくイクラが脇役に回るという見事なコラボ。
②知多蕃茄赤ワイン煮
蕃茄(ばんか)とはトマトの漢名です。元々の甘さが、かなりありそうなフルーツトマトでしょうか。湯剥きをしたトマトをロゼワインで煮たデザートのような一品で、加糖してあるのかシロップ煮のように仕立ててあります。
③里芋豆腐 美味出汁
このサトイモの豆腐が絶品で、寄せてあるのに自然の甘さとネバリがしっかりと残されています。箸を入れると硬いのに、口に入れるとサトイモの口解け感。キャビア、ワサビ、クコの実で賑やかな彩り。
【煮物椀】:鰤のしゃぶしゃぶと野菜の力 針水菜 黄韮 新筍 原了郭黒七味
献立は煮物椀となっていましたが、完全に台物・鍋物です。
日本海ではやや早い時期ながらも知多では定期的にあがるんだそう。ブリは照り照りに活かり、竹笹にのっぺりと横たわっています。3㎜ぐらいの厚みに飽きることはなく丁度良い3切れ。献立は変更があったようで、お野菜は針水菜ではなくネギでした。
強いカツオの薫りに程よい酒の甘味と醤油。王道の黄金色の味しゃぶなので塩は少し濃い目の味付ながらも品のある味。ブリをゆったりと泳がしてもよし、がっちりと浸しても出汁がブリを包み込んでそれぞれの美味しさでいただけます。
京都祇園の原了郭さんの極香辛味の山椒と唐辛子のピリリとしたインパクトでブリ味をさらに引き締め旨さが増幅されます。 タケノコも上物のようで刺しでもいけそうな柔さで旨深く、この椀物はブリがいなくても、タケノコのしゃぶしゃぶでも十分に通用する一品です。とにかく、旬ブリとタケノコを活かす絶妙な旨汁でした。
「失礼致します」と部屋の扉を開けたのは何と料理長さん。ご挨拶を頂いて、三枚おろしをタタキにした片身を取り出すと、とんでもなくよく切れる包丁で切り分けてくれます。新しい片身だったので、どのお客さんよりも最も早い一番切り身をいただけました。
切り分けた後はバーナーで炙りを入れるパフォーマンス。
切り身を盛り付けて、背面にあるお野菜に「桜ドレッシング」を掛けて完成です。
【客前】:春鰹の炙り 赤玉葱 柚子胡椒 海ぶどう
春に始まる初カツオ。カツオ漁は本来3,4日出て遠洋漁業の後に帰港するので、その間に鮮度が落ちるそうです。KUROTAKEさんでいただくのは、近海で獲れた日帰り船で一本釣りされた物なので鮮度が違うと丁寧に説明してくれました。仕上げにはトウモロコシの新芽とエディブルフラワーで色を添えます。
「柚子胡椒とポン酢だけでお召し上がり下さい」とのこと。柚子胡椒の辛みは強度、スダチ仕立てと思わしきポン酢の酸味もかなり立つ。ちょっと刺々しい味付で口に入れると・・・なんじゃこりゃ!? カツオ味なんですが良く知るカツオではない。浅い・・・いや、深い!!いや~~浅いのか?恐らく、カツオが新鮮過ぎてCLEAR過ぎるのだと思います。口の中で泳がせていると、独特の赤身の臭みに雑がない、透き通るカツオのど真ん中だけ。棘のある柚子胡椒とポン酢でないと、逆にこの味は引き出せないかも。サカナというよりは新種の肉に近い。
造りの味付けでもある岩塩でいただきました。これはこれで美味しいのですが、強味の柚子胡椒とポン酢のタッグの後には霞しかない・・・。朝獲れカツオには少し棘がある味付けの方が確実に美味で味わえます。
つまが付け合わせではなく完全にサラダの一品です。黄色のトウモロコシの新芽は、新芽の状態でもトウモロコシ味がすでにある。これはとても面白い発見です。海ぶどうと甘々の新タマネギには「さくらドレッシング」を合わせてあります。がっつり桜味にゆるりと甘味があり、刻み新タマネギの甘味は爽やかで春が口の中に訪れます。
【料理長からの差し入れ】:ヒラメの肝、鯛の卵
献立にはない料理長からの心の一品です。
チェックアウトしてから、料理長さんが仕入れている魚問屋さんに足を運ぶと、「ヒラメの肝使うなんてあの人ぐらい」と問屋さんが言うぐらいです。通常であれば肝は廃棄部位だそうです。70㎝ぐらいの大きさのあるヒラメから取れる肝は、画像にあるような2㎝程度しかありません。極珍品のヒラメの肝は血生臭い苦味が微塵も感じられない。たが、肝特有のコッテリ感もない。ただただ、純粋な肝のコクとサックリしっとりとした食感は珍味にするには上品。 鯛の卵は花を咲かせて堅くならないようにふんわりと炊き上げてあります。蒸してから出汁に入れ込んだのでしょうか。カツオ?の出汁には脂が浮いているのは肝油でしょうか。丁寧すぎるショウガは搾り汁?を使い、臭い消しではなく出汁と珍味を調和させる薫り付け。
【御造里】:その日の市場にて
とんでもなく華やかな盛りで登場したお造りです。色々詰まり過ぎてどこから手をつけようかと悩みます。食べはしなかったのですが、カーネーションとスミレの花が添えてありますが、食べれるお花であるエディプルフラワーだったのか?
加味は甘口のカツオ出汁醤油と、ポン酢はカツオの炙りでも食した物です。
薬味も色々です。生青さ海苔、モミジ卸し、本ワサビと岩塩。
・獲れたて名古屋河豚てっさ
薄造りというには失礼なほどの厚みがあり美しく新鮮。
添え付けには直径5㎜ほどの甘いマイクロトマトと湯引きフグに大葉。
名古屋フグとありますが、歯で噛み締めた旨味はどう見てもトラフグです。ただトラフグは寝かすことで熟成した旨さを引き出しますが、使われているのはヒガンフグらしく寝かさなくても弾力のある歯応えと旨味が楽しめるそうです。品のある白身と独特の甘味はスダチポン酢とモミジ卸しとネギが王道で美味。
青さ海苔を乗せて醤油をポン酢を垂らしていただきました。美味しく新しい味覚ですが、紅葉おろしが、やはり私的には好みかも。味変に色々楽しめるのもKUROTAKEさんならでは。好みの味を発見できる楽しみがあります。
・朝〆カンパチ 天使の海老 本鮪の中トロ
どれを見ても活かりまくりしかない造りの品々です。
カンパチは死後硬直のようなゴリゴリ触感。料理長さんお勧めの食し方で、青さ海苔に醤油を垂らして磯風味を付け加えて海味を楽しみます。 天使のエビは時々お造りの一品として盛り込んであるのを見ます。氷で締めて洗いのようにしてあるのかグモグモと硬く旨味が詰まっています。和エビのようなネットリ感はないのに、サッパリ海老風味が濃厚な海外産。パプアニューギニア産という説明でしたが、天使のエビと言えばニューカドレア産をイメージします。 マグロはギラギラと醤油水面に脂が滲み出てくる究極の中トロ・・・だが、白浜の長生庵さんで口にした中トロには数ミリ及ばないが究極。一言で言うと本マグロの真ん中の真味。
・妻替り うるい
早春のお野菜であるウルイを妻の替りとしたお品です。青味のない「しろな」と「小松菜」の間のような青味にはゴマ酢を掛けてあります。赤色は唐辛子ではなくパプリカかと。妻ではなく一品としての盛り込みは箸休めのお品です。
【強肴】:牛小屋さんの焼きしゃぶ食べ比べ 焼き野菜 自家製ぽん酢
ここでも拘りの素材が使われています。THE BEACH KUROTAKEさんから車で3分程にある、ご夫婦で知多牛を育てている「牛小屋」さんの精肉です。なんでも、子牛の買い付けはせず自家農場で生まれた子牛を育成しているそうで、ホルモン剤・抗生剤を使用せずビール粕や酒粕などを混ぜた100%天然飼料で育った100%知多生まれの不純物が一切ない有機牛。
見た目の色合いはA4和牛のようですが、和牛ではなく知多交雑種の希少部位「かめのこ」と「リブロース」です。
添え付けのお野菜にはシイタケ、ナス、山芋、芽ニンニク、パプリカ。野菜も新鮮素材だけ使ってあるのか青味がどれも明瞭。
どう見ても牛脂に見える「チチカブ」という部位は「生クリームのような」と表現されます。いわゆる牛の「乳房」です。見た目よりも脂はきつくなくサッパリとして歯応えもしっかりとあるゼラチンに近いのかもしれません。これを牛脂の変わりに脂を引きました。
焼きしゃぶは薄切り肉を「鍬(くわ)」で焼いた物をポン酢でいただきます。脂が多い「チチカブ」で脂を取ります。お野菜には、あらかじめ塩を振ってあるので、チチカブからでる脂を塗り塗りしてそのままいただけます。特にニンニクの芽の薫りが豊潤でうまい。
焼きしゃぶには「新タマネギを巻き上げて柚子胡椒でどうぞ」というご説明だったので、色合いが良くなったリブロースでロールアップします。
ポン酢は「カツオの叩き」や「フグてっさ」で食したポン酢からは豹変して「やさしい」・・・。手のひら返しのようで醤油の塩味と、スダチから甘夏のような柑橘酸味を抑えまくりに昆布出汁を合わせたような浸けダレ。その代わりに柚子胡椒が肉の旨さをグイグイと引っ張り出しています。
脂身があるのに全々主張せず、有機牛だからなのか角と雑がはない肉質は、これまで味わったことのない味わいです。海外産は臭いのが美味しいです!と主張し、ブランド牛は脂の超絶配分を味わえ!と主張し、牛小屋さんの知多牛は「中性的な味ですけども健康には良いんですよ・・・ははは・・・」と空笑いした控えめな日本人気質です。
あまり聞かない「かめのこ」という部位は後ろ足の太もも、人間で言うと大腿四頭筋とかでしょうか。筋肉質なので赤身が強く脂の散りはA4ランク以上に見えます。
造りの薬味である本わさびで食してみると何か物足りない。和牛にはとても合う山葵ですが、脂が売りではない牛小屋さんのお肉は、料理長お勧め通り柚子胡椒がマッチングします。
KUROTAKEさんのお料理は味変するほうが裏目にでるのが多い。料理長さんお勧めの食べ方が最も塾考されているのがよく分かります。
【油物】:豊濱産春鰆と新じゃが芋の融合 一寸豆の天ぷら
献立名がすでに若者の発想です。
「コロッケです♪」とテーブルに置かれて「??」と思っているとちゃんと説明がありました。新ジャガイモをマッシュポテト様にしてから、サワラでジャガ生地を包みこんで細粒のパン粉を付けて揚げたのだとか。ホワイトアスパラのソースでお召し上がり下さいとのこと。
味は混ざり合うことなく、最初はコロッケで次第にサワラフライに移行するという独立した味を持っています。また、ポテトホックリ、サワラしっとり、衣サックリと3重食感です。僅かに塩味があるのは切り口にまぶした黄色のカラスミ?によるものかな。
ホワイトアスパラのソースは上から見ていると見当たらず底に敷いてありました。酒も入っていたためかアスパラ感はあまり感じられず・・・。サワラの魚味がやや強く出ていたからかも。
【御食事】:鯛雑炊 洗い葱
【香の物】:厳選二種盛り
食事は雑炊なので止椀はありませんでした。最後の食事の丁寧な仕事は、よくあるタイ味一色の雑炊ではありません。 お出汁にタイのアラ出汁などを使っているのかと思い、すすり食べているとタイ感あまりないな~~・・・思って所にタイ身が割って入ってくると豊満なタイTIMEが始まります。蒸した鯛で雑炊を作ってあるかのようです。
香の物は「厳選」とあり、ゴボウの梅肉合えに八丁味噌で漬け込んだかのような奈良漬け?がこれまた美味い
雑炊は纏めて炊くと米がふやけて膨らんでしまうので、1つ1つ直前に焚き上げているのだと思います。なので、お替りはないであろうとデザートを待っていると「お替りはいかがですか?」とのお尋ねがあり、お腹もいい頃合いでしたが是非にとお願いしました。通常であれば、このタイプの食事はお替りを想定しないものが多いが、KUROTAKEさんの雑炊はお替り可能。
しかも、お替りを頼んでから5分ほど時間を要したのですが、どうやら雑炊を小鍋で個別に作っているのかと。作り置きではなく直前で美味しい物を直前に時間を掛けず。
2杯目は「すじ青海苔」を混ぜ込んでちょうだいしました。海苔の磯とタイ風味は互いに譲りあっているようで喧嘩せずおとなしい。すじ海苔は焼き海苔や佃煮海苔をイメージしているとやられます。良く知る海苔風味が爽やかすぎて清く、海苔なのに海藻らしいプチプチとしたしっかり食感が残っています。海の汁物へのワンアクセントとしては品が良すぎる風味付けです。
【甘味】:おたのしみ
デザートは抹茶プリンと、キウイ・イチゴの果物2種です。 知多半島の直産市場でキウイとイチゴをよく目にしたので地物でしょう。抹茶プリンは甘さ控えめで堅めでよく知る味加減で特筆はないのですが、メインは抹茶プリンに乗るジェラートです。粗削りの蕎麦実を混ぜ混んであり蕎麦の薫りが豊満すぎます。口腔内で溶け出すと強めの甘味を感じながらソバソバ&ソバのボディブロー。麺としてのソバを食べるより圧倒的にソバ実を揚げたのかという程に極薫。追加料金で蕎麦ジェラートを食べたくなるほどです。 丸い麩菓子の様な物は「おいり」という香川県の伝統菓子です。初めて口にしたのですが、唾液に混ざると綿菓子のようにすぐに儚く融解されます。
朝食
朝食は同じお部屋に用意されていました。テーブルには朝からびっくりサイズの大鍋、おっきい釜飯、大きな重箱、見た目は夕食の配膳にしか見えません。
・うに醤油
・桜ドレッシング
うに醤油はウニだけでなくイカのワタを使ったかのようなコクさあり、お重に入っている「うにサラダ」に掛けてお召し上がり下さい」とのご説明。 桜のドレッシングは夕食でも使った物でやはり桜の芳香。後に配膳されるヒイカのしゃぶしゃぶの味付。
・切り干し大根の煮物 ・ちりめん山椒
・コンニャクと揚げのきんぴら ・ヒジキと切り干し大根の煮物
・サトイモの甘煮 ・カツオ梅、らっきょ
・冷奴(擦りショウガ、刻みネギ) ・たらこ
お重の中はどれもこれも手作りの物ばかりで、お取り寄せらしき物も美味しい物を使っておられます。一口ずつ美味しい物をいただけるのは、若者には少々物足りないが年配者にはありがたい。やはり、どれも拘り地物なのかな。
・ウニのサラダ(新タマネギ、水菜、海藻クリスタル、ウニ)
朝から豪華にウニが乗っております。夕食ではなく朝食に出してくる悪戯な感じが何ともです。前述したウニ醤油は新タマネギの清々しさと濃密なウニとのコントラストに絆を持たせてます。ウニサラダは、白米に乗せてプチウニ丼を一口堪能です。
・ヒイカのしゃぶしゃぶ 野菜一式(削ぎ大根・人参、シメジ、エノキ、チンゲンサイ、白菜)
鍋が大きいのでフグちりやカニちりのような完全夕食模様です。
主であるヒイカは照りついた捌きたての様で、とても瑞々しく朝に水揚げされた物でしょうか。ゲソも添え付けてあり無駄がありません。
お出汁にうっすらと匂うのは昆布出汁だろうか。5~7秒程度しゃぶしゃぶするのが料理長さんのお勧めです。
味付はスダチの酸味が強い方のポン酢で。丸まってしまうので見た目は何ともですが、コリコリスルスルとした食感とやんわりとしたイカの甘味と旨味。スルメや甲イカとはまた違い、ホタルイカと足して2分割したような清くも磯が顔を出す旨味があります。
私的にはヒイカは桜ドレッシングとの相性は微妙でした。生or半生のカルパッチョなら絶対に美味しいでしょう。なので、美味ドレッシングは野菜に絡めていただきました。桜花の薫りの出し方ってチャレンジしたことはあるのですが、繊細過ぎてオリジナルの味を出すのって物凄く難しい。このドレッシングの作り方は是非に知りたい。調い過ぎているのは自家製ではないのかも?
・出汁巻玉子
・トロサバ塩焼き
出汁巻玉子は後から配膳でしたが冷たい物でした。焼きの層がない本物一体型タイプには、塩味しっかりの強カツオ出汁餡に浸してあります。
サバは近海であがったトロサバだそうです。トロというには脂加減はさらりとしており、切れ目を入れて焼き上げる過程で、無駄な脂を削いであるのかと思います。サバ独特の胃に溜まる脂はなくホクホクで温かくやってきました。
・荒炊き
もう色々とおかしくなってきた朝食ではない朝食です。料理長からサービスの荒炊きがドーンと配膳されました。コッテリとした炊き汁のように見えますが、かなり甘いのですが醤油はゆったりで酒が勝っていて朝に合わせて食べ易い味付です。兜はブリでしたが、兜の下にはゼラチンの糸が引くほどのふんわりとした荒身も入っていたのは他の魚の物? もう白米が何杯あっても足りない。ディナーにしてもランチにしてもボリュームやばし。やはり、愛知県の朝食としてのイメージなのか。
朝食の白米は特大の固形燃料を使った釜飯です。釜飯ですが白米を燃料で炊き上げます。知多米なのか粘りを主張するコシヒカリのような味わい。
・釜炊き白米
・しじみ汁
白米に合わせる止椀であるシジミ汁にもこだわりがあります。国産シジミを冷凍した商品があるようで、湯を注ぐだけで割烹の椀になるという代物を使っていると料理長さんから説明を受けました。地物のシジミ出汁の風味も豊潤でありながらも、ニガリを使ったかのようなミネラル潮が何故に滲み出すのか。
本当に湯だけでこの味になるのか疑ってしまうほどです。なので、チェックアウトしてから車で数分の所にある、販売元のマルジュウさんの所で尋ねたら下味は付いているとのこと。KUROTAKEさんのは湯を注ぐのではなく、開封せず少し茹でて出汁をさらに抽出してから鍋で再加熱をしているのだそうです。
荒炊きの旨汁を白米に掛けて余すことなく食したい。すでに朝食の料理ではなくランチです。
・マンゴー みかん レモン
何故かレモンが一緒に盛り付けてあり、まさかそのまま食するわけでもなく思考していました。
マンゴーに掛けてみると、これが実によく合い甘味がより強くなるようです。オレンジはミカンではありませんが和オレンジの甘い種かと。
・ヨーグルト 苺ソース
ヨーグルトはよくある濃厚チーズタイプではなく、あっさりと酸味のある物で牛舎が多い知多の地物でしょう。 ソースには旬のイチゴを一点を自然のままに。
献立の他にもオープンキッチンの前に、クロワッサン、コーヒー、ジュース、牛乳もセルフサービスでいただけます。 クロワッサンはバターがギットリとした物ではなく、あっさりもっちりとした日本人好みの触感にしてあります。牛乳はまろやかな知多産でしょう。
まとめ
中上級の値段帯なので行きたいと思いながらも、お得に泊まれる良い日柄がなかったので足が遠のいていました。口コミ評判は良い。泊まってみるとステータスの振り幅が料理と温泉に突出しています。2014年開業と比較的新しいお宿ですが、お部屋や館内の設備などはリフォーム前のところも目立ち正直なところ二の次です。この当たりは好みが分かれます。ただ、どのお部屋もオーシャンビューと言うのは得点は高い。
サービスもデトックスウォーターやfreeのコーヒーもあるのですが、部屋の水周りのアメニティは値段からすると微妙。ただ、料理と風呂がいいんだからと言われると全くといって気にはなりません。
有馬温泉や蔵王温泉のような癖の強い極上泉もいいですが、視覚的、肌感的、味覚的に「ど真ん中の良い湯」はとても希少性が高い。パンチがあるわけでもないが頼りないわけでもない湯を、たっぷりの源泉かけ流しの「あつ湯」と「ぬる湯」の中間点で海を眺めながら入るという贅の限り。しかも、満室という案内でしたが大浴場は混み合うどころか、ほとんどが貸し切り状態でした。
料理は地産地消の食材を惜しみなく使っており、料理長のパフォーマンスなど、お客さんと調理場の距離が近く親近感が持て自信を持って提供されておられるのがよく分かります。とにかく素材の選び抜きが凄まじく、海辺のお宿なのに濃い味ではなく素材を活かす繊細さ、調理後の醤油やドレッシングなどの味の選択肢も多く色々と楽しめます。
何故にもっと早く行かなかったのかと後悔の念が絶えないお宿で再訪待ったなしです。
宿泊料金
お部屋に露天風呂付きだと60000円ぐらいからのお値段帯。一般客室は45000円ぐらいです。プライベート感を重視しないのであれば、温泉好きでも大浴場での源泉は十分に堪能できます。ホスピタリティは高級旅館らしい接客で、私的には料理と温泉のステータスが偏向していることで、定価でも値段以上の納得ステイができると思います。
定価45800円から「じゃらん」の年末年始特別クーポン10000円引きで泊まっています。流行り病でまだまだ予約が伸びなかった時の特別クーポン利用なので、これ以上安くは難しいかもしれません。これからお値段は上がっていくのではないかと思うお宿の1つです。
宿泊日:2023年春
旅行サイト:じゃらん
プラン:令和4年10月からの予約はこちらから”コロナ対策万全!個室確約プラン♪夕食人気NO.1会席料理【彩麗】
部屋タイプ:オーシャンビュー 和室10畳(禁煙室)
合計料金:45800円(2人)
クーポン:10000円【年末年始特別】全宿泊施設で使える10000円分クーポン
支払い料金:35800円
加算ポイント:1374p