いい温泉宿、おいしい料理宿

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再び訪れたいお宿探訪と趣味のブログ

大和屋別荘 【愛媛県 道後温泉】~全ての部屋に配湯された源泉かけ流しと、地物食材を使った創作豊かな料理を堪能、上質なサービスを提供する道後温泉街の高台にある別荘湯宿~

 大和屋別荘さんは道後の中心街を見下ろすように高台に建っています。同じ道後温泉街には大和屋本店を構えておられますが、本店よりも別荘ではワンランク上のステイが約束されています。

 数寄屋造りの館内には道後温泉に縁のある作家さんの遺物が飾られ、客間はそれぞれが離れ家のようになっています。接客は高級旅館らしく1つ後ろに控えつつも、肩肘張らずに南国らしい温かく気さくな対応で、厳かでありながらも実に心地のよい空間を演出しています。

※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。

旅情

 google先生に案内をお願いするも大和屋別荘さんの建物がどうにも分からない。それもそのはず、多くの旅館・ホテルでは通りに玄関が面していますが、青矢印の細い路地の先に玄関があるので一見してはとても分かりにくく、まさに別荘。

 玄関前に車を着けるとチェックインの時間よりかなり早く着いたので、車をあずけて道後温泉街を久しぶりに散策しました。

 時間に戻ってきたらすぐにお部屋に通していただきました。

 入り口には竹筒に盛り塩が置いてありました。ここで普段の穢れを落としてゆっくりと宿泊するという願いでしょうか。

 玄関の入り口はとても小さいが中に入ると、広い上がり框と壁や天井の数寄屋独特の装飾が目に入ります。

 振り返ってみると、やはり入り口は小さく大人の隠家的な雰囲気が何とも。

 靴を脱ぐと若旦那さん?のような下足番の方が靴をそそくさとしまい、お出かけの際はキビキビっと靴を出して下さいます。このような迅速な玄関捌きはみたことがありません・・・。

 ロビーには雑誌や新聞などが置いてあり「よろしければお部屋まで持って行っていただいて結構です。」とお声掛け頂きました。

 ロビーにある個室には周辺のパンフレット類などが置いてありました。

建物は中庭を取り囲むように建てられているようです。この中庭の手入れも落ち葉もなく素晴らしく手入れされています。

 ロビーをさらに進むとエレベーターが見えてきます。内装は和風の木造建築風なのですが、エレベーターが設置されているように建物自体は鉄筋造なのでしっかりとしています。

 ここからは右手に浴場、左手と上階には客間があります。

 客室廊下は別荘とはよく言ったもので館内は静寂に包まれています。

 廊下には床の間のようなというよりは、炉はないですが茶室の様にも見えます。

 エレベーターで2階に上がってくると、中庭を取り囲む内廊下なので光量は少なく落ち着いた景色です。

 全ての部屋に玄関が付いており、敷地面積に対して余裕のある19部屋だけというプライベート感。

 館内には会議室・宴会場もありました。19部屋しかないので景気のよかった頃は会社で貸切するような時代があったのでしょうか。

 こちらは3階の廊下だったと思います。同じような造りに見えても少しずつ設えが異なります。

 所々にあるショースペースには、見事なまでに生花が活けられています。ちょっとした小物や絵画も粋を感じます。

 1階の浴場前は水捌けのためか石畳みとなっています。

 そして、大和屋別荘さんの楽しみの1つである、飲み放題の生ビールサーバーが浴場前にあります。

 ここには給水機とアイスクリームも置いてあります。

 最初はサイダーのみ、次に除くとグレープ、バニラが追加され、夜には升にはいった自家製ミルクアイスも追加。本来であれば最中(もなか)で挟んで食べる自家製アイスですが、流行り病の御時勢柄、衛生面を配慮してモナカは中止で桝での提供でした。

 部屋に持ち帰りビールとアイスという何ともミスマッチですがあると食べてしまう。

 後を引かないあっさりミルクが美味しかったです。

 風呂上がりの生ビールは止まるところ知らず。夕食が食べれなくなってしまうので程よいところで飲み過ぎに注意。

 

部屋

 案内して頂いたお部屋は「橘」というお部屋です。

 ウェルカムドリンクは、愛媛県らしく抹茶だけでなくミカンジュースも選択できます。お茶請けはフワッフワッの黒糖饅頭で、餡子たっぷりですが甘さ控えめ上物。

 本間8畳+玄関2畳程+広縁+洗面+バス+トイレの間取りです。 

 大和屋別荘さんでは最もお手軽に泊まれるスタンダードな客室です。

 この部屋の良いところは浴場に最も近い。つまりビールサーバーにも最も近い。

 他の部屋と同じように1畳程の玄関があります。

 豪華な一枚板の上がり框があり、左手に水屋、奥に本間が見えます。

 京間なのか8畳にしてはとても広く感じます。

 広縁は一段下がる外縁のような造りにも見えます。草履が用意されているので表に出ることができました。

 縁にある吊り箪笥の中には細かな仕掛けがありました。

 文学にはあまり興味はありませんが面白い物を見つけました。大和屋別荘さんの竣工祝いにとオーナーさんに内緒で、斎藤茂吉さんの「赤光」のレプリカをばらして、全室に仕込んだんだそうです。オーナーさんがこの仕込みに気付くのに3年掛かったというエピソードがあります。

 外から見えないように目隠しの樹があるので景色は今一つ。見えても建物の屋根ばかりで眺望はありませんでした。

 欄間はアーチ状に切ってあり、天井は斜めに屋根に沿って張られた天井板。

 本間からは何やら「筧(かけひ)と蹲(つくばい)」が見えます。

 蹲のある小部屋には手ぬぐいが掛けられてあるので、手洗い所としての演出なのかなと思います。

 天井は竹枝の美麗な細工が施されています。

 「筧(かけひ)と蹲(つくばい)」の横には洗面所があります。

 露天風呂が付いているお部屋もありますが少々お値段が張ります。スタンダードのお部屋も小さいながらも檜風呂には源泉を注ぎ入れることができます。

 お部屋のお風呂は湯を溜め始めると石膏のような温泉臭が充満し始めます。源泉の温度が高温なため一度満タンにして冷ましてから、少しずつ足し湯すれば100%源泉掛け流しを楽しむ事ができます。湯量が多い温泉地ならではの贅沢です。

 アメニティ類は無い物はないのではいかと言うぐらい充実しています。ダイソンドライヤー、化粧水類、足袋、USB、コーヒー、冷蔵庫には天然水と高級宿らしいものは全て揃っています

 やけに雅な模様が入った金庫、地産の砥部焼(とべやき)のキーホルダー、華やかな柄のお茶セットなどなど趣向も変わっています。

 夕食が終わると、お布団敷の際に寝巻用の新しい浴衣も持ってきてくれました。素晴らしい充実したサービスです。

 

お風呂

 大和屋別荘さんでは客室に源泉を引いてはいますが、露天風呂が併設された男女別大浴場も1ヵ所ずつあります。男女共に同じ造りの浴場で、入れ換えはありませんでした。

 肌感としてはツルツルとして、口に含むと明らかな石膏、石灰のような香りのアルカリ性単純温泉となっています。わずかに消毒臭があり、公式HPでは循環濾過式(無加水)とあります。ただ、溢れ出しもあったので源泉も投入されている循環放流のようです。

 各部屋に源泉かけ流しができる湯舟が備わっているので、敢えて大浴場を利用するお客さんはいなかったのかなと思います。しかし、湯量豊富のほぼ貸切状態で利用でき、身を沈めた際の溢れ出しなどは感無量です。泉質が強くなく長湯を楽しめるのも道後温泉ならではです。

 脱衣所にはフェイス、バスタオルが用意されているので入浴の度に新しい物を。洗面台周りの備品もぬかりなく揃っています。

内湯

 内風呂はチョロチョロと、湯が溢れ出している音だけが響きます。この浴場を反転させると女性側の造りとなります。大浴場を利用するお客さんはほとんどおらず常時貸切状態で利用できました。

 湯舟は3人ぐらいであればパーソナルスペースが確保できる大きさです。

 こちらの湯口は放射能泉のような黒い析出物が付いています。恐らくこれは源泉湯口で投入量は多くはない。石膏や石灰のような「粉臭い」に加えオイリーさを感じるか感じないか・・・。

 湯舟の底には3つの穴がありじんわりと噴出している。また、横壁にも緩い噴き出し口があり、この噴き出しは恐らく循環によるものではないかと。

 見た目にはオーバーフローがないので源泉が本当に入っているかな?と思うところですが、湯船にできた隙間のあちこちからお湯が滲みだしていました。

 洗い場の反対側には捨て湯の溝があり、画像奥と手前に2ヵ所の捨て湯口がありました。源泉湯口の湯量からすると漏れ出しの湯量は湯口を超えているようにも感じます。もしかしたら、黒い湯口以外からも源泉の投入があったりするのかもしれません。

露天風呂

 内湯に併設された露天風呂。こちらは男湯の方ですが、女湯の方がより開放感があるようです。

 露天風呂は1人で寛ぐには申し分ない大きさです。

 先人たちの記録によれば露天の消毒臭はないとありました。しかし、自分の往訪時には内湯よりも、しっかりとした消毒臭を感じました。道後温泉は消毒が義務付けられているのでこればっかりはしょうがない。

 露天風呂には2ヵ所の注ぎ口がありました。ポコポコと気泡と共に湧き出していますが、いずれも湯量は多くはなく。一カ所だけ明らかに湯温が高いところがあり、湯口は見当たらないが加温された湯が投入されているのだろうと思います。捨て湯口も見当たらないが、浴槽内に洞穴があり手を入れると上向きに塩ビ管を手に触れました。こちらからの排湯かと思われます。

本店のお風呂

 別荘に泊まると歩いて数分の姉妹館である大和屋本店さんの貰い湯ができます。

 チェックインしたお客さんが少なかったのか、湯がヘタらずツルツルというよりヌルっとした感触がしっかりと残っていました。別荘とは違い無味無臭で気持ち消毒臭はあるが気にならないほどです。湯使いは循環濾過とあり源泉の投入は不明です。

 本店に貰い湯にきた別の目的は日本酒BARと駄菓子BARで一杯やるためです。辛口の日本酒がキレッキレッのドストライクで好みでした。

 訪れた時の駄菓子は「うまい棒」のみ。棚を見ていると日によっては違う駄菓子も用意されるのかも。

 こちらのサービスは21時まで。

外湯

 画像は2023年の物です。道後温泉といえば道後温泉本館の外湯が有名です。道後温泉本館は重要文化財に指定されており、長い年月を掛けて補修工事が行われています。制限はあるようですが入浴は可能でした。温泉好きであるなら一度は入っておくのも一興です。以前入ったことがあるのですが、とにかく入浴客が多すぎてゆっくりできなかった記憶があります。

 

お料理

 朝夕ともにお部屋での用意でした。公式HPでは地物を使用して一品一品の手作りにこだわって調理しているとありました。その言葉どおりでポン酢などの味付からなにまで自家製らしい味覚が詰まっており、純和風ながらのとにかく色とりどりの手の込んだ会席を味わうことができます。

 献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。

夕食

 時間になると、お部屋付き担当の仲居さんが準備をしてくれます。お料理が配される半月盆とは別に、お品書きを乗せた広蓋も隣に置かれています。もともと広蓋は進呈物や供物に用いる盆ですが、献立を添えるという丁寧な古風の演出はさすがです。

 夕食の最初の配膳は食前酒、先付、八寸です。

 

【食前酒】:梅酒

【先付】:利休麩胡麻和え

 梅酒はウメの明瞭な酸味ですが甘さは控えめで、酒度は飛ばしてあり焼酎の風味がしっかりと残っている大人味となっています。入れ込んだ朱の小梅の酸味は微量な甘さを吸収したすっきり味。 

 利休麩は大徳寺麩とも言います。利休と付く料理はゴマを使用した総称です。お品書きには甘辛く味付された生麩を油で揚げた物とあります。キュウリ、シメジ、菊花、利休麩を練りゴマのように滑らかクリーミーに仕立て蓼をトッピングしてあります。

 

【八寸】:青味大根西京漬け 雪中椎茸 銀杏安倍川

 「愛媛の季節の移ろいを、伊予の食材を用いて表現した」とあります。見た目はシンプル、中身は自然の味が密な八寸です。簡単な説明はありましたが、これが困ったことに全部ではないのでmy tongueで実食してまいります。 ①エビ真丈を車麩のような厚みがあり硬めの麩で巻き上げて圧縮した珍品です。 ②季節の山の恵みはムカゴです。温かさはないのにホックリとは変な言い回しですが「ほおける」という表現がふさわしいか。これに味噌と雲丹(うに)の練りでワンアクセント添え。 ③雪中で育った椎茸というわけでなく、山芋トロロを雪に見立てたという意かと。トロロを掛けてオーブンなどで焼き、加味はなく椎茸の炙り汁が山芋に移って自然な旨味をいただきます。 ④晩秋ギンナンをペースト状にしてから白身?卵?で混ぜ合わせて蒸しているのか、しっとりとケーキのようでギンナンと言われなければ分からない風味。砂糖、塩、きな粉をゆるりと纏わせて「あべかわ」風に。 ⑤甘酢に漬けたレンコンへブランド品と思わしき辛子明太子を押し込んで、辛子レンコンならぬ辛子明太レンコンにした輪切りにしたものです。 ⑥青味大根は京野菜の郡大根(こりだいこん)の1種のようです。西京漬けとのご説明だが、よく知っている強西京漬けではなく伊予の味噌に漬けたものかと思います。伊予の白味噌は風味と塩がゆったりとした、本州からすると変わった特徴があります。味が締まりコクが増しているが漬け物のように塩は強くなく、旨味のある浅漬けのような口当たりです。 ⑦サツマイモのペーストを包んだパイです。黄身を塗って焼き上げてあるようで、幾層にもなっている本格的パイです。しっとりとした表面はパリっと中身はしっとりとした生地にイモは鳴門金時とかでしょうか。とても変わった逸品。 ⑧柿のゼリー寄せです。柿本来の薫りはゆったりとしており、甘く炊いた後?干し柿?からのペースト状にして寄せなおしたような味わいです。

 

【椀】:牡蠣豆腐

 「大和屋別荘伝統の味をおたしみください。」と献立にあります。朱と金の塗りが眩しい椀蓋を開けると、柚子とカツオの匂いが、ふわふわと立ち込めてきます。黄、緑、茶、白と色の配分が絶賑で立体的な盛りは下から覗き込みたくなります。

 白髪ねぎと柚子にどいてもらうと緑の彩りは菊菜。その下にある立方体は牡蠣を使った豆腐です。練り物ではなく豆腐を作る工程で牡蠣を混ぜ込んであるのだとか。椀の底にはヒラタケ?を浸してありました。

 豆腐は出汁が絡みやすいように少しパサリとした木綿豆腐に近い食感です。が、出汁が沁み込むとじゅわり・・・緑色を呈しているのは牡蠣のワタによるものでしょう。牡蠣ワタが主張するわけでもないが、牡蠣の旨味がしんみりと味わい深く。引っ込むのか出るのかもどかしいカキの旨味が絶妙に調整された美味さです。

 

【造り】:鯛 火取り鰆 鮪

 何ともギラついた、活かる照り照りのお刺身が配膳されました。当日の瀬戸内産の仕入れだそうです。天然物のマダイは流石の瀬戸内産です。荒波に鍛えられたタイの身はゴリゴリ・コリコリとしており噛めば噛むほどタイの白身旨味が広がります。 サワラはタタキにして味を閉じ込めて凝縮させてあります。サワラのくせに!なんという食感か!歯応えのあるサワラはなかなかありません。 マグロはピンクが美しい色合いの本マグロの大トロです。これは多くを語る必要はない肉です。さすがに本マグロは瀬戸内産ではないでしょう。 つまは大根けん、大葉、酢橘、本山葵、蓼。味付は濃い口のまったりとした「たまり醤油」です。

 

【煮物】菊花蕪フカヒレ餡掛

 塗りの蓋を開けると豊かなショウガとフカヒレが飛び出してきます。吸い込まれそうな放射模様の真ん中には、見た目にワクワクする立体は何だろうか。カブと浸し餡は別に調理してあるようで、薬味には細切りの新生姜と葉山椒を飾ってあります。餡のベース出汁はカツオに乾燥フカヒレの戻し汁?煮汁?風味は薫高の和中華。

 細切りショウガにちょっと席を外してもらうと見えてきたカブは、なんと菊花の蕾に見立てた掘り込みが入っています。細かい職人芸です。

 カブを割ると中には鳥つみれの仕込みです。しゃっくりとした食物線維とジュワっとした肉汁の混在した歯ざわりが気持ちがいい。つみれには甘醤油の下味がされているようで、「ほぐしながら食べてください」と配膳係のお言葉。カブの底に穴が開いていたので肉を詰めてから調理したのではないでしょうか。つみれの脂が餡に溢れても負けない強いフカヒレとの融合は絶品です。まるでカブ肉まんです。

 

【焼物】:国産牛ステーキ

 メインのステーキはフィレは脂加減に雑味がないまろやか。あらかじめ緩く塩を僅かに持たせて、加味には醤油と酒が強い割り下のようなタマネギソースと、自家製ではないかと思われる藻塩です。

 焼き加減はミディアムにしてありトロリと肉汁が出ています。山遊びの多さから岐阜や長野の和牛を口にすることが多いですが、これまで食べた和牛の味とも違う感じです。献立には「料理長厳選の国産牛」とあり、配膳係の方に聞いてみると伊予牛ではなく北海道牛なんだとか。最近地方のスーパーで北海道のブランド牛を目にすることが多くなったように思います。厳密には和牛ではなく交雑種なのだと思います。和牛のように脂と赤身の旨味を主張せず、私的にはパンチもキックもない後を引かない中性的なうまさ。交雑種になると若干臭みのある物が多いですが、それを感じさせないのは大和屋別荘さんの調理の仕方なのかなと思います。

 

【蓋物】:河豚徳利煮

 なんともユニークな徳利で配されたのは河豚の一品です。

 上部と下部が分離するタイプは、プラスチックや漆器などで見た事がありますが、陶器かつ九谷焼の物は初見です。

 中蓋を開けると沸き立つシイタケとフグが濃縮された美食の薫り。

 上段にはポン酢、中段には紅葉おろしと刻みネギ、下段には煮物の盛り込みです。

 薬味皿にもなっている中蓋の側面にも金箔で模様が描かれているというレアな骨董品。

 下段の器には河豚身、水菜を巻き上げたロール白菜、シイタケ、白ネギを所狭しと入っています。器の底には・・・フグのアラと昆布、白菜、ネギ、椎茸を一緒に炊いたブイヤの美味出汁があります。通常はフグというとグッと締まった白身をイメージしますが、このフグの身はかなりの肉厚があるのに、ほぐれがとても柔く舌で潰せるほどです。圧力鍋のような物で蒸しあげてあるのか、はたまたそういうフグの品種なのか。味付のカツオが強い酢橘ポン酢がよく合います。ちょっとしたフグの小鍋です。

 

【御食事】:ひめの凛、香の物

【止椀】:赤出汁

 米と止めには蓋付きでの配膳でした。愛媛県のブランド米「ひめの凛」は大粒で透き通るような美しさで上品な甘味とあります。これが説明のままでコシヒカリに近いような品種で、西の地で好みに合うお米に出合えるとは思いませんでした。恐らく米だけでなく炊き方にも秘密があるのかと思います。香の物も白菜浅漬け、大根べったら漬け、ラッキョウ甘酢漬けの3種がこれまた上品な深い味で米が進みます。

 止椀は京赤出汁と粉山椒仕立てに、エノキと三つ葉に加え椀の底にあったのはイワシと里芋?山芋?のつみれです。

 

【水菓子】:紅まどんな

 愛媛県ブランドのみかんが今夜の水菓子でした。冬なのでまさに旬の物です。皮の部分がとても薄くほとんどがオレンジルビーのような艶のある果肉、したたるような甘い完熟の瑞々しさに柑橘独特のエグ味苦味が全くなく「みかん」の甘くて美味しいところだけをさらに凝縮したような柑橘です。これまで小振りの物は食べたり見たりしましたが、このオリジナル「紅まどんな」はかなり大きく食べ応えもありました。さすがの原産品種。

 

【夜食】:おにぎり

 食事を終えてお部屋に帰るとお重とポットが置かれてありました。

 お布団敷きの際に用意して頂いたのはお夜食のおにぎり。漬物と昆布の佃煮も一緒に添えてありました。

朝食

・煎茶、小梅

 お布団上げの後には、朝食前に温かいお茶を入れて下さいました。朝の目覚めに酸っぱい小梅を添えてあります。

 このような御もてなしは、下呂温泉水明館にある青巒荘に宿泊して以来です。

 小盆と大盆に盛られたほどよい品数に、見た目から分かる手抜き一切なし手作り感にお腹が鳴ります。

・釜揚げしらす大根おろし

・香の物(キュウリ紫蘇漬け、大根菜浅漬け、大根つぼ漬け)

・みかんじゅーす

・焼鮭(レモン、佃煮昆布)

 もりもり一杯を器に盛り込んだ柔いシラスは自然の塩味で醤油要らずで食せます。香の物も塩加減は控えてお茶の当てにも丁度良いぐらいで丁度よい塩加減です。ミカンジュースはチェックインの時に出していただいたものとは違うもので、甘いが柑橘の酸味が少し強く、もしかしてこれは自家搾りだったりするのか。焼鮭は公式HPに1尾買いから捌いて塩引きという塩加減絶妙調理をしているそうです。かなり大きく脂の乗りが照り照りで、白米がどんどんお腹にしまわれました。添え付けの佃煮昆布もゴリゴリと歯応えたっぷりの自家製感が美味です。

・あおり烏賊造り

・湯豆腐(刻み葱、擦り生姜、出汁醤油)

・出汁巻き玉子

・白米

・味噌汁

 イカはコリコリスルリと新鮮で、恐らく夕食とは違う薄口のたまり醤油? 大豆が濃い湯豆腐は、牡蠣豆腐を作るぐらいなのでこれも自家製かと。加味はポン酢ではなくカツオが良く香る出汁醤油です。出汁巻きは時間が経つと出汁が溢れ出してくる本物巻き、かなり厚みをもって巻いてあり食べ応えがすごく、一切れなのに3切れぐらい食べたような腹具合。白米は四国らしくない信越で口にするような艶々でプリっと豊潤な甘みがあり、味噌は京白味噌のようで巻麩と野菜具沢山でした。

 

まとめ

 大人の湯宿ですが離れ家のように泊まれるので、年齢制限はなく子供連れとしての受け入れもあります。実際、訪れた日には小さな子供さんがいるファミリーでの宿泊もありました。訪れた時には他の御宿では騒がしさあるようでしたが、値段も高めなので客層はとても穏やかでした。サービスも申し分なく心身を休めるステイをしたい方には最適かと思われます。

 明記はなく定かではないですが、全てのお部屋で温泉が楽しめると思います。そのためか、往訪時は大浴場はほぼ貸切で利用することができました。だれでも入れる優しい泉質も道後ならではです。源泉を楽しむなら部屋で、開放感を求めるなら大浴場と入り分けできるのもいいところです。

 料理は繊細で京風寄り。いずれも手の込んだ献立で他では味わえない内容ですが、肉料理は地物の伊予牛をいただきたかったというのは本音のところです。訪れた時にはまだまだ、流行り病のこともありコスト面のこともあったのかもしれません。ただ、全体としては高級食材に頼らず味で勝負する内容は個人的にはとても好みでした。 総括からするとお値段に見合ったステイが約束されているように思います。とてもバランスのいい大人の隠宿で、接客の心地よさは再訪したいなと思わせてくれます。

宿泊料金

 高級宿ながらも2021年以降辺りから色々なセールに参加されておられる印象です。2024年1月現在でも楽天のスーパーセールの10000円クーポンの常連となっています。流行り病以降お客さんが戻ってきたらセール売りから外れる可能性もあるので、今行くべきお宿ではないかと思います。

宿泊日:2021/初冬

旅行サイト:楽天トラベル

プラン:【LUXDAYSセール】一番人気:季節の懐石料理を楽しむスタンダードプラン

部屋のタイプ:【8畳】和室スーペリア

合計料金:85500円(2人)

LUXDAYSクーポン:11000円

支払い料金:74500円

加算ポイント:745p

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