いい温泉宿、おいしい料理宿

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再び訪れたいお宿探訪と趣味のブログ

向瀧【福島県 会津東山温泉】~泊まれる有形文化財第1号の気品、行き届いたおもてなし、伝統の料理に湯量豊富な源泉かけ流しの温泉は無上~

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 泊まれる有形文化財としては第1号に選ばれた向瀧さん。江戸の中期から現存する木造建屋は、1つとして同じ造りの部屋がなく、かつては多くの皇族の方々も訪れたそうです。

 予定していた磐梯山は雨天だったので、雨天ハイキングができる「裏磐梯山 五色沼」を歩いてきました。 良ければ見てください。

旅情

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 温泉街入り口近くにあり、温泉街に入ると湯川へ向けて掲げた「向瀧」の看板見えてきます。近代化された会津東山温泉の中にあって、タイムスリップしたかのような建物が突然現れるので脇見運転必至です。

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 少し早い時間ではりましたが、すでにドアマンの方が待機されておられ、車寄せで車と荷物を預けてチェックインです。

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 格子天井に少し薄暗い明かりは、重厚な情景を醸(さら)し出します。上り框(かまち)を上がってすぐ帳場というのは珍しい。いや、昔のありのままなのでしょう。ここから館内の見所がたくさんあるので長丁場になります。お付き合い頂ければ幸いです。

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 帳場横には古めかしいプレートが飾ってありました。昔ながらの形を留めた旅館さんでは目にすることがあります。

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 玄関を上がってすぐ右手に、売店があり郷土のお酒や物品を販売されています。

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 売店前の磨かれた床板の廊下を通り、館内の説明を受けながらお部屋へ案内して頂きます。

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 有形文化財のプレートが飾ってあるショーケースの所まで来ると、右には下へ下がる階段。左手には大広間へと続く上り階段がついています。

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 大広間へ寄り道してみました。前回の宿泊では見学を希望したら、向瀧さんの歴史から第1号泊まれる有形文化財のお話など、旅館を大切にしておられるのが物凄く感じられました。良き時代には大人数での会食もあり、使用されることも多かったようです。しかし、時代の波により使用されるのは年に数回だとか。

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 ショーケースのある所まで戻り、階段を降りると右手には外庭、左手には離れへの廊下が伸びています。離れは皇族の方が泊まるようなお部屋なので、宿泊者以外は立ち入り禁止の門がありました。その手前に「千両」というお部屋があって、かつては侍従さんや付き人の控え間だったのでしょうか。

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 そして、階段降りて振り返ると、半地下のような大浴場「きつねの湯」があり、この一画だけ見ても鄙びの銭湯屋のようです。

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 レトロプレートには「第二御浴室」。暖簾をくぐると当時のままの味わいのある大理石の洗面にワクワクします。

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 階段前の廊下は流行り病のこともあり換気がよくされていました。庭に門扉があり、昔は離れのための勝手口だったのでしょうか。

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 さらに進むと左手に池のある庭が広がってきます。ここがやはり最も情をそそる風景かなぁと思います。池の中の飛び石に柱がのった「石場建て」も凄い。廊下の端のショーケースには会津塗の螺鈿漆器の展示販売されています。

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 左を向くと庭園へ出ることが出来る縁側が付いてます。そして、4枚襖(ふすま)の中広間のような部屋が1室。

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 「松風」という広間は、網代天井などのあしらいはありますが、内装は現代和風にリフォームされている感じです。グループの宿泊や宴会などで使われるのかな。

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 螺鈿漆器が展示されているショーケースから振り返ると、左手の籠が置いてある所は、地下構造になっている3つの貸切風呂への入り口があります。また、さらに左手には今回お世話になったお部屋への階段。階段を上ってみます。

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 螺旋のような階段を上がりきると、今回泊まった「水仙」というお部屋の横にある物置台。昔は何に使っていたのか。食事が部屋出しなので今はお膳台として使っているのでしょうか。

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 お部屋前の廊下は湯川向きとなっています。なので、この棟のお部屋は中庭向きになるので、お部屋からの眺めは最高です。

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 中庭廊下へ戻り展示販売のショーケースの横にも階段があります。前回はここの「つくし」というお部屋に通して頂きました。

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 階段の脇をさらに奥へ進んで行くと、埋め込まれた玉砂利と切り株の床に変わり、全体としての趣きが変わります。ここから左を見ると・・・

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 池を挟んで中広間の「松風」の縁側を臨みます。建物は中庭を取り囲むように建てられ、その途中途中に浴場やお部屋が並んだ造りとなっています。

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 玉砂利床となっている棟の一番奥には大浴場「さるの湯」があります。そして、沓脱石(くつぬぎいし)で入るお部屋が点々とあります。

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 階段下の観音開きのお部屋には「会議室」とあります。

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 会議室は暖炉を備えた洋館風にしつらえてありました。前の宿泊では完全締め切りになって探険できず。この度は、空気清浄機も稼働してあったので、見学okなのか中が拝見できて楽しませてもらいました。

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 「さるの湯」と「会議室」がある玉砂利床から伸びる階段を上がると、改修されて綺麗にされた踊り場と廊下。

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 中2階に位置するのでしょうか。再び玉砂利と切り株に網代天井と風情が満載です。奥にも上にもそれぞれ客室があり、2階部分と3階部分で周回するように繋がっています。

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 物置部屋の扉には松の細工。ただ、この扉新しい。まだ、この細工を掘れる職人がいるのか、今なら3Dプリンターか・・・。

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 入り口に縁がついた客室があったりと、この棟の演出もこれまでの物と違っています。

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 こちらが最上階。向瀧さんでは最も高い位置にあるお部屋になります。恐らくお部屋からの景色は建物の全景が見えて、さぞ絶景でしょう。館内をうろうろと歩いていて見飽きない造形が素晴らしい。

 さてさて、館内散策の最後は向瀧さんの自慢の庭を、無粋なコメントなしで。

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お部屋

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 「水仙」というお部屋に案内して頂きました。

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 間取りは本間8畳+踏み込みと前室2畳程+広縁+トイレ+洗面です。

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 お部屋到着後に抹茶と板前さんお手製の、「ずんだ」と「小豆」の羊羹をちょうだいしました。甘みを抑えてすっきりと上品。

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 前室も広くとられているので、2人で過ごすには十分な大きさのお部屋です。

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 広縁と窓も大きくとってありとても明るい。天井には網代のあしらい。ただ、トイレと洗面が広縁からのアクセスなのでちょい面倒。

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 広縁からの眺めは壮観で前を見れば庭の全景。下を見ると池があり、庭をみるお部屋としては最も人気のお部屋なんだそうです。

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 洗面所は平成の香りがする水栓を捻るタイプでした。

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 冷水はあらかじめの用意があって、アメニティ類は足袋からお裁縫セットまで備わっています。部屋には冷蔵庫がないので、冷保存が必要な物は注意しましょう。また、館内や周辺には自動販売機がないので、事前の用意がおすすめです。

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 朝起きてお風呂に向かおうと襖を開けると朝刊のサービスがありました。

 

お風呂

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 向瀧さんは男女別の大浴場が2カ所と、貸し切り風呂が3か所もある贅沢な湯宿です。ただし、大浴場の入れ替えはありません。どの浴場においても湯量は素晴らしく、すべて源泉かけ流しとなっています。泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉となっており、ツルツルとした肌触りに微塩味です。湯上りはしっとりと潤い、万人に優しい泉質となっています。また、貸し切り風呂は空いていればいつでも利用できるという、これまたうれしいサービスとなっています。脱衣所にはバスタオルも常に新しいものを用意してくれています。

きつねの湯

男湯

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 湯屋に入ると白い格子天井と巨大な鏡が特徴な古風な脱衣所がお出迎え。

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 驚くのは脱衣所だけでなく浴場の雰囲気もたまらない。四方ガラス戸の明るい空間とレトロなタイル張りの床。天井の紋はなんだろうか?水瓶のようにも見える。昔は、きつねの湯ではなかったのかな?詳細は貸切風呂からご察しを。

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 湯舟は体を伸ばして3人つかる余裕があるほどの大きさ。

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 向瀧さんの浴場中では最も「あつ湯」設定となっているようで、夏には長湯はしんどいが、冬場は最高だろうと思います。析出物がモリモリと付いた溜め湯水槽は温度を下げるための物でしょうか。析出物をちぎって舐めてみると・・・。かなりミネラルしょっぱいw 塩とにがりの結晶です。湯口から注ぎが少ないなと思っていると、急にドバドバと注がれることもありました。お湯が減るとでるようなセンサーでもあるのかと思っていたら、定期的にいい具合のお湯が注がれ、注がれた傍らからどんどん溢れ出ていきます。

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 雰囲気としてはこの浴場が一番のお気に入りです。湯舟に浸かっているとノスタルジーな気分にいざなわれます。ここにはシャワーやカランはなく、湯舟から直接お湯を救って洗髪洗体を行う湯治スタイルです。そのせいか滞在中、他のお客さんとは全く会わず貸切状態で満喫。

女湯

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 女性の方はやや小ぶり。2人程入ったらぴったりぐらいかな。

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 溜め湯水槽は白いタイル張りで、何となく女性らしいイメージ。

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 湯舟は小さくても溢れ出すお湯の量は男湯に負けず劣らず。身体を沈めるとザザザザーーーーとさらに溢れるお湯と、湯舟で顔をザブザブ全身で温泉を浴びると至極。

さるの湯

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 新設されたと思われる新しい浴場です。男女の浴場の造りはほとんど同じですが、さるの湯も男性の方が大きいようです。

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 湯舟の隣にかけ湯用の溜め湯があり、ここにも源泉が注がれ、溢れ出たお湯は湯舟に入るように無駄がない工夫がしてありました。

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 さすがにここはシャワーがあるのでお客さんの利用は多くありました。たしかシャワーも温泉だったんじゃないかと。なら、きつねの湯でも同じような気がします。

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 きつねの湯と比べると湯舟のキャパシティはかなり大きい。湯舟全体から溢れ出しが見て取れ、掛け湯の他にも赤矢印のところからもお湯が注がれていました

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 ここの析出物も相当です。注ぎ口があっという間に塞がってしまうのか析出物を壊したような跡も。

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 どっぷりと浸かって大きな窓から入ってくる緑が気持ちがいい。きつねの湯よりも確かに温いが、どちらかというと「あつ湯」です。

貸切風呂

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 貸切風呂は半地下のようになっていて、3つの貸切湯は同じ場所に並びであります。3つのお風呂にはそれぞれ名前があり、天井飾りに名前にちなんだレリーフがあります。

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 扉の摺りガラスには瓢(ひさご)と書かれています。レリーフはひょうたんが3つ。

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 すべての浴槽で互い違いに入って2人ぐらいでゆっくりと入れる大きさ。湯舟に対する湯量はやはり気持ちがいい程です。

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 こちらは蔦(つた)。レリーフは何の花でしょうか。蔦といっても色々な種類があります。

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 瓢の湯に比べると洗い場が少し大きい。湯量も変わらずたっぷりと。湯舟の大きさは同じほど。

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 最後は鈴(すず)。鈴カステラのようなコロコロのレリーフはかわいらしく。

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 ここの洗い場は一番大きい。しかし、湯量は一番少ないように見受けられました。貸切湯でゆっくりもいいですが、誰もいないのであれば、個人的には「きつねの湯」が一番かと。

 

お料理

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 朝夕ともにお部屋での配膳です。郷土の物しか盛り込んでいない向瀧さんのお料理はすべて手作りです。郷土料理と聞くと北国によくある、濃ゆい味付けかと思いきや万人に食べやすく仕上げてあります。少しずつ1口ずつ美味しい物を食べれる、食べ切り会席なのもうれしいところ。

 献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。

夕食

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【食前酒】:会津若松産 葡萄のしずく

【先付】:盆地長葱の鰹掛け

会津若松産のブドウを使って、日本酒と合わせているそうです。ブドウの酸味を抑え風味だけを取り出し、日本酒のほんのりとした甘味を加えた良いとこ取りの味です。 先付は白ネギのお浸しです。スルスルとした食感に、口の中でネギの自然甘味がトロー・・・と滴ります。甘みが非常に強く柔い、お出汁の甘さもネギによるものではないかと。これにシイタケの風味を加味し、カツオ節で香ばしさを足しています。調べると会津には「とろねぎ」なる甘味がかなり強い品種があるようです。使っているのはこれかな?

 

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【前菜】:生木耳の白和え、紅鱒の美酒佳肴焼き、焼き枝豆、、塩蒸し南瓜、秋茗荷の甘酢漬け、モロヘイヤの醤油漬け

 キクラゲは新鮮でコリプリとしておりサツマイモの甘みと深みが広がる白和えです。 紅マスは向瀧さん限定の美酒佳肴(びしゅかこう)というお酒で漬け込んで、マスの旨味をグッと閉じ込めて麹が薫ります。 焼き枝豆は煮るのはなく、焼くことで水分がとんで豆味だけが残り濃厚です。 えらくホクホクの南瓜は炊き物と思っていたら、献立を見直すと塩蒸しとありました。ふかし芋の要領で南瓜全体をほっこりと凝縮し南京の風味がましています。 秋茗荷は酢を控えた甘酢でしっかりと浸されておりさっぱり。 モロヘイヤは濃い口しょうゆに浸してカツオ節で味を調えます。

 

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【伝承の一品】:会津藩直伝!江戸時代からの鯉の甘煮

 向瀧さんの名物料理「鯉の甘煮」です。江戸時代からの伝承料理で、小骨の多い鯉なのに骨ごと食べれてしまうほど柔く炊き上げてあります。

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 臭みはまったくなく、粘りのある醤油蜜のような煮汁と、脂のこってり感はなかなかにヘビー級で胃袋にガツンときます。薬味にほんのりとショウガを加えて炊いてあるようです。食べきれない方は真空パックでお持ち帰りできるという配慮。1つはパックでお願いして、一皿を2人で分けて丁度よい量でした。

 

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【強肴】:にしんの山椒漬け

 会津郷土料理の1つです。醤油、酢、山椒の葉で長期間漬け込んだもの。もともと保存食の1つで、醤油の塩が強く干物のように仕上がり、噛めば噛むほど熟された「にしん」とゆるりと山椒の風味が漂います。

 

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【焼物】:薫る秋 会津地鶏の朴葉味噌焼き

 酸味のない甘味を強く持たせた赤味噌に、地鶏とシイタケ、マイタケ、薬味の青ネギ、彩りパプリカを盛ってあります。味噌の甘さはみりんや酒の様。

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 地鶏はモモ肉。脂分は少なく口当たりはグモグモと平飼いのようなたくましさ。口の中で踊らせると濃潤な鶏の旨味がじわりじわりと感じられ味噌と混ざり美味い。焼けすぎないように、とろとろと火が通る程度の燃料の気遣い。前の宿泊では豚トロだったかな。

 

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【向付】:秋山河 鯉月見

 鯉は洗いではなく加工無しの生での提供です。部位にもよると思いますが、脂気は少なく臭みも全くない、あっさりとした川魚と類似した味です。

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 これにウズラの黄身玉子を真ん中に添え付けて、うっすらと甘さのある醤油を回し掛けてワサビと溶くと鯉のユッケの完成です。黄身とミックスされると不思議と鯉の脂が際立つようになります。前回もこれはかなり美味しく、また食べたい定番の一品。

 

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【お凌ぎ】:会津大川 岩魚飯

 おしのぎには丁度よい小振りの一口サイズのイワナ飯です。「イワナを使った炊き込み御飯です」とのご説明。炊き込み御飯というには、お米への醤油の付きがまばらです。醤油は後入れかな?また、イワナは焼いてから炊き込んであるのか焼き香ばしさも感じられました。温かさが残るように配してくれます。

 

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【新肴】:福島酵母牛の姫すてーき

 あれ?献立から察するに、予想とは違うお皿が配膳されました。ステーキなのに目の前でジュウジュウしたりしないの?

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 蓋を開けると、ふわ~~と和牛の匂いが立ち上ってきました。福島県あだたら地区には、日本酒の酵母で発酵させた飼料を使って、育てている和牛があるのだそう。発酵作用により牛の腸内細菌が安定し栄養の吸収がよくなるんだとか。部位は赤身のようで、口に入れると確かに雑味はなく脂感は弱い。かといって、脂が乗っていないわけではない。もともと牛の旨味を凝縮した和牛に対して変な表現ですが、和牛のコクはそのままに、まろやかにしたような味わい。スッと歯切れのよい柔さを持ち合わせながらも歯応えもある不思議食感。ほどよい塩味に焼き加減はミディアムで、姫らしく一口サイズにオクラの彩。

 

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【煮物】:会津伝統の汁 こづゆ

 もともと祝いの席でだされる郷土料理のお品。ホタテの貝柱でとったお出汁は、うっすらと香りながらも具材のそれぞれの風味が感じられます。個々の風味は豊かでありながら食べ口はとても優しい塩加減。具材は糸こんにゃく、銀杏、里芋?大根?、麩、キクラゲ、貝柱、三つ葉。

 

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【揚物】:会津丸茄子とコシヒカリ

 小振りの丸ナス2/4程を素揚げにして,カツオ出汁?と醤油が強い餡を掛けてあります。正直なところ、前回は輪切り調理で、このクラスのお宿の料理としては今一つかな・・・と思っていました。しかし、今回は厚みを持たせて切られたナスは、濃い味の餡に絡むと醤油の辛さにナスが瑞々しい。口に入れると、ジュわりと茄子旨味が溢れ出し、餡との相性が良く品がある。揚げ茄子はやはり厚みがないと!これを際立たせているのが、生米を揚げた物を餡に浮かべ、米の揚げ香ばしさも加わるとナスがさらに豊潤に。紅葉の象(かたど)りは人参です。言うならば、この餡には肉厚茄子が絶品かと思いました。

 

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【汁】:小松菜と油揚げのお味噌汁

【ご飯】:米どころ会津のこしひかり

【香の物】:手作り佃煮と小茄子漬け

 汁の油揚げは自家製か?とても香り高い。小松菜の青さが映え、優しい味噌は胃に沁みます。香の物は古漬けキュウリに小ナスは醤油要らずの漬け。サンショウの風味が溶け込んだ佃煮昆布もうまく。白米はツヤツヤに立っており米の甘さが際立ちます。

 

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【でざーと】:会津りんごのジュレ掛け

 旬には早いリンゴのデザートです。ジュレはリンゴの搾り汁を加糖せず、そのまま固めたような甘さ控えめですが、リンゴはとても豊かな爽やかさ。盛り込まれたリンゴは蜜漬?したかのように甘い果肉。シャクシャクとした歯ごたえから察すると天然の甘味かも? ジュレに合わせると、リンゴの甘さだけを取り出したかの様な透明なお味。

朝食

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 朝食もお部屋でゆっくりといただきます。

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・ほうれん草の鰹掛け

・ナスの揚げ浸し

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・オクラたたき

・向瀧の温泉玉子 玉三郎

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・紅マスのせいろ蒸し

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・椎茸のつくだ煮

・お漬けもの(瓜、キャベツ、蕪)

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・なめこの味噌汁 田舎味噌仕立て

・契約農家直送 会津のまんま こしひかり

・かぼちゃぷりん

 スタンダードだけど丁寧に作り込まれた手作り朝食です。ほうれん草はシャキシャキお浸し。ナスの揚げびたしも上品に仕上げてカツオ出汁が旨い。「オクラたたき」はミョウガとキュウリで爽やかな食べ心地。せいろ蒸しは紅マス。あらかじめ麹で漬けてあるのか、ほんのり甘みと濃い深みがあります。シイタケの佃煮はカツオ節仕立てで思っているよりも味は濃くなくそのままでいけます。香物のカブは紫蘇漬けですがまるで梅です。味噌汁はナメコと豆腐でシンプルでやさしい塩加減。さすがの米どころに白米はうまく、お口直しのかぼちゃプリンは濃密で甘さも程よい。全体の分量は美味しいものを少しずつ。ボリュームは程よく昼食に支障がない量で、手作りの品出しは丁寧な仕上げでした。

 

まとめ

 前回の往訪も9月でした。細かい所は仕入れとかにより変更はあるようですが、前回の宿泊とお料理の内容は類似していました。おそらく、四季会席なのと、郷土料理の定番メニューかなと思いました。なので、季節を選ぶと違う料理を楽しめるかもしれません。私的には要望があれば、お料理内容も希望に応えてくれそうなお宿かなと思います。温泉は源泉かけ流しのツルツル湯と鄙びと新の演出に非はありません。前回もそうでしたが従業員の方々への教育は言うに及ばず、館内と庭園をうろうろして時間を過ごす贅沢な時間は、逗留すれば1冊の小説を書けてしまうのも頷けます。

宿泊料金

 離れ、お風呂付、中庭向き、川向きによってお値段が異なるようです。前回の「つくし」は湯川面の少し眺望が残念なお部屋でした。なので、2回目の宿泊なので同料金ならばと、「水仙」を指定させて頂きました。さすが向瀧さん要望に応えてくれる配慮。お料理はおおよそ定番ですが、お部屋の指定は重複が無ければ応じて頂けるようなので、公式HPなどで好みのお部屋に泊まるのもいいかもしれません。もともとお部屋を安くは売りにだされないので、今回はgotoの割引のみです。

宿泊日:2020/9

旅行サイト:じゃらん

プラン:日本旅館を感じるレトロな温泉宿!

部屋タイプ:中庭に面した和室8畳

合計料金:46200円(2人)

クーポン:16170円(Go Toトラベルクーポン)

支払い料金:30030円

加算ポイント:1155p

会津東山温泉 向瀧 宿泊予約

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