皆生温泉(かいけおんせん)にあるお宿は、近代的な大型の旅館やホテルが多く見受けられます。海潮園さんもまた、時代と共に変革してきたお宿でありながら、木造の趣きを残した皆生温泉では最も古い建物を有するお宿です。かつては文人達も多く訪れたそうで、館内にはその時の名残りが所狭しと展示してあります。
海潮園さんに訪れる前のアクティビティは大山登山です。登山記録を掲載しています。よかったら登ってみてはいかがでしょうか。
旅情
海潮園さんは皆生温泉のメインストリートに位置するのでしょうか。海水浴場まで5分も要しない好立地です。
パッと見は木造というよりは鉄筋コンクリート造のように見える佇まい。しかし、根幹は木造建築の温かさを感じる建物です。駐車場も建物の隣にありとても便利。
玄関からお邪魔するとすぐに帳場があり荷物を預けます。チェックイン時にはコロナ対策としての検温。非常事態宣言解除以降、検温や消毒、会話をするときのマスク装着は、マナーやエチケットのようなものです。
チェックイン時に男女・子供問わず、色浴衣を選んでお部屋への案内です。
建物はリフォームされているとのことですが、骨組みは皆生温泉では最も古い建物で築50年以上経過しているのだとか。階段周りやロビーの囲炉裏などは当時のままのようで館内を見ていても所々にかつての木造部分や装飾が垣間見えます。
ロビーには改修前のお部屋で使われていたと思われる襖が展示されています。4枚分の絵は稀に目にしますが、6枚分の絵はあまり無いのように思います。見事な襖です。
ロビーにある階段を上がると2階は宿泊部屋となっています。思っている以上に奥行きがあります。
長方形の建物に敷かれた長い廊下は、回廊造りのように見えますが、繋がっているようで繋がっていない場所もあります。
1階の壁には司馬遼太郎さんの「昇降機」というお題の原文が飾ってありました。文学に詳しくないのでその価値は分かりませんが、お好きな方からすると希少な物なのだと思います。文人達が残したと思わしき展示物が多く飾ってあるのが印象的です。
2階は客室だけですが、1階は個室のお食事処も用意されています。左の黒と白の壁は引き戸になっていて、個室のお食事処となっていました。突き当りに喫茶&スナック、浜の湯という内湯があります。
喫茶&スナックにはカラオケマシーンが置いてありました。コロナ渦ではさすがに利用される方はおらず、ひっそりとした館内。
景気が良かった頃の粋が集められたスナックです。スナックなのに和の雰囲気はそのままに、中庭があって床はガラス張りとなっていて、足元に鯉を泳ぐ姿をみることができます。好景気だったんですなぁ・・・。
畳敷きのスナックの廻り廊下を進むと宴会場がありました。ハンガーの数からするとツアーの日帰りランチなども受け入れておられるか。
奥には2つの宴会場があります。「万両の間」では夕食の準備がしてありました。「千両の間」は舞台があるお部屋。今日はお休みでしょうか。スナックと宴会場があるこの場所は昔の面影がそのままであるように感じます。
お部屋
案内して頂いたのは「柊(ひいらぎ)」というお部屋です。
引き戸を開けると竹細工の踏み込みに、下駄箱と冷蔵庫があります。
踏み込み左手には洗面とトイレがあり備え付けの備品はドライヤーなどの最小限。
間取りは本間9畳+寝室6畳半ほどです。
凝った装飾などはなく床の間周りもシンプルですが生花がいけてあります。昭和なダイアル電話に吊りダンス。
御簾(みす)の向こうにはベッドルームならぬ布団ルーム。
窓からは枯山水の中庭を見下ろします。障子を開けるとお迎えのお部屋とお互いに丸見えになります。
ウェルカム茶はコロナの影響かありませんでした。あらかじめ保温ポットに冷水の用意。冷蔵庫に麦茶も入れてくれていました。発泡酒は相方の持参品です。お茶請けはカニせんべい。うまい。冷水、麦茶はお願いすると追加してくれそうでした。
旅館前に良心的値段の自動販売機があります。また、コンビニも徒歩5分圏内にあって充実しているので手ぶらでINできます。アメニティ類は過不足なくといったところ。
お風呂
男女別の大浴場が1カ所ずつあり、男女入れ替え制となっています。泉質はナトリウム・カルシウム塩化物泉でツルリとした肌触りです。海の傍の温泉らしく、味はにがりのような海水そのものですが、まろっと纏わりつくような湯感があり湯上がりはしっとりと潤います。皆生温泉全体の総量だと思うのですが、源泉数19カ所で毎分4456リットルの湧出量があるのだとか。源泉の温度はとても高いため、温度管理のため加水されています。しかし、源泉の投入量も多く加水による湯力の衰えは全く感じられずいい湯です。
お風呂の備品は完璧に揃っています。フェイスタオルは常に新しい物を使えるようにしてあります。
珊瑚湯
ふむふむ、でっかい珊瑚やな。
L字型の7人ぐらいはゆっくりと入れそうな湯舟からは、ゆるりお湯が溢れ出ています。
浴室内にある坪庭に目をやると御水屋があり、その真下に浴槽への源泉湧出口がある。あれは源泉を冷ますためのものではないのかと疑う。この湯口の傍は源泉そのもので、新鮮な源泉を楽しむならここがベストポジション。だが、熱い。でも濃厚。
ぱっと見は淵からのオーナーフローは少なく、サンゴの器がある淵からザブザブ流れ出ています。このサンゴの器は加水用のものです。また、湯舟に直接注いでいる加水の注ぎ口もあります。あつ湯が苦手な方はこの辺りで湯を楽しむのがいいかもしれません。
身体を沈めると淵から溢れ出るお湯は爽快そのものです。客室数から思うと相応の湯量があると思われます。是非に源泉槽も作って欲しい物です。
浜の湯
皆生温泉で最も古いと言われる岩風呂がある湯屋です。
「浜の湯」は「珊瑚湯」に比べると小さめの内湯です。
朝一番に行くと湯舟の淵からオーバーフローが見て取れます。湯口で味見をすると珊瑚湯よりも明らかに塩とミネラルがエグイ濃厚海水。しかも、景気よく源泉が注ぎ込まれています。湯温が上がりすぎると加水が進むようになっているようで、一番いいタイミングで入れたようです。
「浜の湯」には皆生温泉最古の露天風呂が併設されています。水位に沿って析出物がしっかりと付いています。
湯屋の天井は新しく竹が突き抜けているという面白い趣きです。
塩ビ管から注がれるお湯の量より溢れ出しの方が多いと思っていたところ、じんわりと熱いところがあり浴槽内へ直接投入しているお湯もあるようでした。露天は外気により温度が低下するので源泉を楽しむのであれば、ここが最も浴感が良かったかもしれません。
家族風呂
家族風呂は珊瑚湯の前にあります。ここだけ化粧水類などはありませんでした。
湯舟全体から溢れ出るお湯。洗い場に向かって流れ出る様は気持ちがいい。2人でもゆったりと入れる大きさです。子供がいるとちょっと狭く感じるかも。
頑張って確保した感じのある枯山水ビュー。反対側の建物は位置的に厨房でしょうか。
景気よく流れ出る湯口の蓋が開いたので、失礼して覗かせて頂くと3本の塩ビ管。言うまでもなく左が析出物びっしりの源泉。右が加水でしょう。源泉を味見すると「むお!熱い!エグイ!」完全にニガリですな。豆乳に入れると豆腐ができそう。源泉4:加水6ぐらいの割合でしょうか。この貸切風呂も加水はありながらも浴感は素晴らしい。
お料理
食事は朝夕共に個室食。「梅」というお部屋に用意して頂きました。海の傍の温泉地に来たのになぜか肉会席を食しました。なぜなら鳥取和牛を基調とした献立がとても豪華だったので誘惑に負けました。海鮮会席に負けず劣らず地の物ばかりを使用した肉料理は、牛の色々な部位と味を少しずつ堪能できる面白おいしい会席です。
お品書は無かったのですが、予約サイトからの内容と仲居さんから聞いた内容を記述しています。また、実際に食べた感触と個人的な感想を記載しています。ご参考程度に見ていただければ幸いです。
夕食
【先付】:烏賊の口 木の芽味噌
目にした時、最初は貝類か何かと思っていました。コリコリと軟骨の歯ごたえとカリカリ。どこかで食べたことある味なんだが・・・イカ?タコ?の軟骨?食感から口元ぽい?と悩んでいたところ。仲居さんにお尋ねしたところイカの口だそうです。そして、急に脳みそがイカ味を認識し始めました。これに優しい木の芽の香りがする麹味噌を。肉会席なのにイカがいるのも不思議だと仲居さんも少し困っておられましたw
【造り替】:牛たたき
脂がうっすらと含まれたランプやモモの食感と思わしきたたきです。もしかしたら2種類あったのかもしれません。噛めば噛むほど味が滲みだし赤身が濃く詰まっています。加味は醤油が強めの胡麻ダレに薬味は紅葉おろしとワケギ。つまは大葉、大根けん、こより人参。肉厚がある5切れのたたきは贅。
【小鍋】:鳥取和牛のしゃぶしゃぶ
霜降ったロース肉は脂の旨味が溶け込んでいます。
赤身が少し残るぐらいにお出汁に潜らせると口の中で解けていきます。肉料理が続く会席には少し小さめ切り身が丁度良く。漬けダレは柑橘酢は弱く醤油が勝るポン酢で。こちらの薬味は紅葉おろしにワケギ。お野菜もたっぷりに白菜、白ネギ、水菜、えのき、生麩です。この会席では貴重なお野菜もちゃんといただきます。
【焼物】:鳥取和牛朴葉味噌焼
すでに焼かれた状態で熱々に配膳されます。部位はバラ肉のような強めの脂加減。朴に刺してある櫛を抜いて葉を開くと、和牛と糀の香りが湯気と共に溢れてきます。味噌は酒と砂糖を足したと思われるコク深い甘味が、和牛の脂っぽさを抑えマイルドにしています。糀の分解効果なのかとても肉が柔い。お口直しにワンポイントの銀杏を添え付けてあります。
【台物】:鳥取和牛のカットステーキ
ステーキの部位は一口サイズのロースといった口当たり。
しゃぶしゃぶとは対照的に、しっかりとした肉質です。ウェルダンで火を強く通しても、ミディアムに赤身が残るように火を入れても、それぞれに味わいがあり美味。野菜にも旨味のある脂を滲み込ませておいしく。肉&肉なのでお野菜摂取!!
味付けは粉岩塩、酸味が強いポン酢、たまり醤油です。薬味として山葵が用意されてあり、たまり醤油といただくと極和テイスト。お野菜は南瓜、茄子、ししとう、ニンジン、ゴボウ、パプリカ。
【揚物】:大山地鶏天婦羅
献立は牛ばかりではありません。熱々配膳の地鶏の天ぷらがとんでもなくジューシーで、「ふわり」とスルスルとした歯応え。鶏の旨味が豊潤でこんな濃い鳥は珍しい。地元でない箱根湯河原にある伊藤屋さんでも、大山地鶏を使ったお料理が出たので食材選びには至高の一品なのかも。加味が黒コショウと塩なので食べ口もさっぱりで脂が後を引きません。付け合わせはスナップエンドウ、シイタケ、サツマイモです。大振りなシイタケもうまい。
【酢物】:合鴨ロースのサラダ
鴨は燻製であらかじめ風味付けしてあります。鳥取大山地方で造っている地物の加工品でしょうか。それでも旨いことには変わりなく、サラダにも肉を外さずブレません。ドレッシングは酸味が主張するイタリアンなので酢の物としています。サニーレタス、びっくりするぐらい薄いスライスミニトマト、ニンジン、水菜。最初から配されいますが、お肉が多い会席では、とてもありがたい生野菜。
【吸物】:鴨のつみれ汁
ベースは昆布出汁かな。塩加減は薄味で鴨だけを楽しむための椀です。抜群の弾力が歯が入るまでに抵抗感を出しており、一度歯が入るとプルりと肉汁が一緒に出てきます。団子に鴨の粋を閉じ込めたようなお品です。噛めば噛むほど鴨の密を味わうことができます。途中配膳でしたが留め椀の位置づけだと思います。
【御飯】:奥大山産特別栽培海藻米こしひかり『きより』
【香物】:三種
【水菓子】:自家製デザート
お部屋の案内にお米の説明が載っていました。『美里』と書いて『きより』と読むようです。ミネラル豊富な海藻を利用した土作りに秘密があるようです。こしひかり独特のもっちり感はそのままに甘みが強くあるように感じました。 お漬物は、瓜ぬか漬、大根甘酢漬け、大根菜浅漬けです。子供がいたこともあり、お米の御ひつは最初から用意してありました。肉会席なので肉と米を食したい方にはありがたい。 最後の〆のデザートは濃い目チョコレートムースです。
朝食
夕食とは違う個室に案内されました。もともとお食事処使用ではなく客室な雰囲気です。朝は座卓ではなく椅子席での用意。
中央にお重があり、白米を装うだけの事前配膳になっていました。
【お重4種】
・小松菜お浸し
・ほうれん草白和え
・ハムとポテトサラダ
・きんぴらごぼう、イカの塩辛麹、香の物と辛子明太子
・ウナギの茶わん蒸し
・カレイの一夜干し
・湯豆腐(白葱、シメジ、アカモク出汁)
・シジミのみそ汁
・白米
お重内は手作りの物と地の物を融合させた品が揃えてあります。海潮園さんの朝食は個別の食が絶品。ウナギの茶わん蒸しは、とろりとしたウナギが滲み出たお出汁が満点で幸せ度が増します。カレイの一夜干しはが水分だけが極妙に飛んで旨味だけが残る。湯豆腐は白葱の甘味が溶け出し熟された海藻出汁は最後まで飲み干してしまいました。どれも白米に合い、前日の大山登山で痛めた身体を修復しようと食べ過ぎるぐらいでした。
まとめ
皆生温泉で訪れてみたいと思うお宿の1つが海潮園さんでした。鳥取県の地域限定クーポンとgotoトラベルの併用ができるということで迷わず予約。お風呂は加水されていても源泉がしっかりと投入されているので満足度は高い入浴ができます。お宿の清潔感はよろしく、訪れたコロナ渦でも感染対策はきっちりと。肉々会席はやはりつらい!!と思いつつ、旨いのでしょうがない。牛と鳥を使った会席は良く考えられていると思いました。若者は海鮮会席よりも、白米茶碗を片手に肉会席の方が食を楽しめるかもしれません。お風呂もお料理も良く、次に訪れるなら海鮮会席も是非食してみたい。海鮮会席の〆である漬けマグロ茶漬けを是非食してみたい。
宿泊料金
鳥取県が発行していた地域共通クーポン10000円+goto35%での宿泊です。普段ではまずありえない割引率。肉プランは平日31000円~、休前日37000円~の値段帯。海幸の37000円ぐらいです。比較的安い海幸プランから豪華なアップグレード会席まで値段帯は色々です。今回のような激安宿泊は今後ないと思いますが、通常料金帯としては相応以上であることは間違いないかと思います。
宿泊日:2020/8
旅行サイト:楽天トラベル
プラン:【肉料理が大好きな方へおすすめ】お口に広がるお肉の旨み♪鳥取和牛会席
部屋タイプ:和室10畳
合計料金:37400円
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