旅情
狭い通りに昭和の古い建物が軒をならべる台温泉。その中に目を見張る木造建築の旅館があります。それが中嶋旅館さんです。山の傾斜に沿って建てられた築100年木造4階建ての建築物が現存しているのはすごいです。
館内は階段、窓、天井に装飾が施されています。1階はスタッフルームになっているのか仲居さん達が忙しく出入りしておられました。玄関に入ると目に入ってくるのが、いきなりの大正レトロ感。
階段周辺の造り込みと3D的立体感は中嶋旅館さんならではないかと思います。吹き抜けスペースがとても多く建築された当時では珍しいものではないでしょうか。建物が横ではなく縦に上がる建造物なので階段がどうしても多くなります。また、エレベーターがないので最上階まではなかなかの運動量。
上階へアクセスする階段は2カ所あって、これはもう一方の階段です。格子天井の上はお部屋になっていて3階部分に相当。階段の上に吊り下げたようなお部屋があるのはすごい。右画像の洗面所がある所は、2階部分になりホールのように天井が高い造りになっています。
すべてのお部屋かどうかはわかりませんが、旅行サイトを見ているとバス・トイレ・洗面所無しのお部屋がほとんどで昔ながらのお宿です。画像上は風呂場出てすぐのところの洗面所、下は2階部分の洗面所になります。タイル張りの水場ですが、古さは感じずとても綺麗にしてありました。洗濯機なども置いてあったので湯治としての利用もあるのでしょう。館内にはお酒とソフトドリンクの自動販売機がありました。
お部屋
案内して頂いたのは「翁」という最上階にある特別室です。お部屋の入り口は組み木の屋根がついており、まるで一軒家の玄関のようになっています。
お部屋の間取りは本間8畳+次の間4.5畳+広縁3畳程+洗面所です。次の間にはすでにお布団敷かれてあって、御簾が掛けてありとても風情があります。
床に寝転がって天井を見上げると、2階分ぐらいの高さがあるように感じます。朝に目が覚めたときはその高さに驚きました。また、至る所に装飾が施され贅沢な造りとなっています。ここまで飾り細工があるお宿には泊まったことがありません。素晴らしいの一言です。お部屋には一式のアメニティ、ドライヤー、お茶菓子とお茶セット、冷蔵庫にはペットボトルの冷水が用意されています。玄関を出た目の前にリフォームされた新しいシャワートイレがあります。また、朝食中にお布団上げがありました。
お風呂
中嶋旅館さんの湯舟は3つあり、岩風呂、大理石風呂、家族風呂です。家族風呂は無料だったようですが、こちらの情報不足で家族風呂は利用できませんでした。岩風呂は基本的には男湯で大理石風呂が女湯のようです。本命は岩風呂なので、時間は短いながらも19:30~22:00までの間は女性タイムとなっています。泉質は弱硫黄泉となっています。体感的には無味で悩むぐらいの硫黄の香りに、ツルりとした感触があり誰にでもやさしい湯でした。湯上りは肌がしっとり。源泉が出ている湯口の温度はかなり高く長湯向きではありませんでした。しかし、入浴時間が短くてもかなり体が温まっていました。画像左に位置するタイル張りのレトロな洗面台があります。脱衣所には何もないので、こちらに据え置き式のドライヤーがあります。湯治用と思わしき洗濯機も。
岩風呂
この岩風呂は中嶋旅館さんのメインの湯舟となっていて、岩盤をくり貫いて作られたそうです。中心には円状にくり貫かれた深さ90cmの立ち湯があります。先人の記録を見ていると、かつては足元湧出していたようです。
岩への既出物の付着がそれなりにあるのですが、源泉の投入量は湯舟に対して多くありません。ただ、温度がかなり高いため大量に掛け流すと、適温での入浴が難しくなるのかもしれません。
半地下のようになっている浴室内は、洋式神殿のような柱が立っており一見ローマ風呂のようです。しかし、岩風呂、灯籠、壁には瓦は明らかに和式。和洋が混在する変わった趣向の湯屋です。平日なのに10人以上の宿泊者がいたようですが、湯舟の湯量は多くお湯の弱りはなく楽しめました。浴場にはシャワー2基、カラン3基の設備。
大理石風呂
岩風呂とのギャップがあり3人ぐらいで窮屈になる小ぶりの湯舟。岩風呂が豪快なだけちょっと拍子抜けします。
悪い点ばかりではなく湯口からの源泉の投入量に大差はなく、新鮮なお湯の入れ替わりではこちらかもしれません。しかし、源泉が熱く湯舟が小さいと温度も高くなってしまうのは難点なところ。岩風呂と天井空間でつながっています。以前は岩風呂だけで混浴か時間交代制だったのかもしれません。
お料理
お食事は朝夕ともに2階にある大広間で頂きました。普段は衝立で目かくしをいれて区切っているようでしたが、当日は平日ということもあって貸切でした。お食事の時間になると仲居さんが、お部屋まで迎えに来てくれます。
夕食
お膳の一気出しでしたが、一部のものは暖かく提供してくれています。とにかく品数が多くバリエーション豊かで素材は新鮮で殿様料理のようです。味付けは素朴でスタンダードだけど仕上げは丁寧にしておられる印象でした。お献立がなかったので仲居さんから聞いた内容と、食べた感触から勝手に献立を作っています。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
【先付】:㊧あみたけのきのこお浸し、㊨烏賊の紅白なます
㊧塩はしっかりともたせてあり、あみたけの味がお出汁にでています。これに大根おろしを混ぜ合わせるとさっぱりとして良く合います。㊨イカはさっと湯通して柔らかく、紅白なますと蛇腹キュウリで色と味を整えます。酸味はそれほど強くなく酢の物というよりも、まったりとした甘味が強い甘酢漬けのようです。
【前菜】:蕗の煮物、豆腐田楽、茄子田楽
フキはしょうゆが強く少し硬めに炊かれている。豆腐田楽の味噌は風味はもろみ味噌のような麦味と甘みがある。豆腐は舌触りは絹だが柔さはなくしっかりとした噛み応え。茄子田楽は舌触りのよい京白みそ味。どれもあっさりとした品々で食べやすい。
【吸物】:松茸の土瓶蒸し
【お造り】:鮪、帆立、車海老
松茸がとても香ばしい土瓶蒸しです。具材は松茸、銀杏、鶏肉、結び三つ葉、海老です。松茸が薄切りですが3切れ入っていました。2人で一本程度。小ぶりだけど香りは強く国産品でしょうか。 マグロは切り口がぎらぎらと活かっていて新鮮さがあります。帆立には切れ込みがありそこへレモンを挟んであり風味付けしてありました。車海老もぷりっとしていて甘味もしっかりとあります。つまは唐草大根、大根けん、大葉、台座飾り人参、山葵、紫蘇花。
【焼物】:鮎の塩焼き
一気出しなのでアユは冷めてしまっていましたが、これまで見たことのない大振りNO.1です。アユってここまで大きくなるのかというレベル。塩加減は程よく身もたっぷりと乗っており、これだけでかなりお腹が膨れます。大きいこともあって頭や背骨は硬さはあるものの頭から尻尾まで食べれます。付け合わせの南瓜はしっかりとした噛み応えが残して煮てあり、菊花大根は唐辛子の辛味がものすごく強く付いていました。
【冷鉢】:冷しゃぶ
豚ではなく牛の冷しゃぶです。煮物が豚だからでしょう。使用しているのは恐らくこま切れ肉で、灰汁による苦み雑味はなく上手に下ごしらえしてあります。これを胡麻だれでいただきます。生野菜のレタスとタマネギもボリューム良く盛られていたので、タレはたっぷり用意してくれています。ミニトマトは大きく自家製なのかたくましい系のやつでした。
【蒸物】:茶碗蒸し
【煮物】:豚の角煮
地は柔すぎず硬すぎず、スプーンを入れるとお出汁が滲み出る好みの茶碗蒸しです。具材は海老、銀杏、三つ葉、しめじ、鶏肉のスタンダード。 甘口の醤油で炊かれた豚の角煮は、お肉はほっこりとして箸でほぐせる程に柔らかくしてあります。お出汁はトロッとしておらずサラりとしており、味醂の甘味が強いような南の方で使われるような醤油の味がしました。お出汁には彩のチンゲン菜の風味もお出汁に移り、味を爽やかになじませていました。
【揚物】:カレイの揚げ浸し
カレイは衣をつけてカリカリに揚げてお出汁に浸してあります。小ぶりなので頭も丸っと食べることができました。魚を餡かけなどはよく目にしますが、揚げ浸しにしているのは初めてです。このお出汁にカレイが浸っても、かなりしっかり揚げているので衣が柔らかくならず漬けダレのように食べることができます。色に獅子唐の素揚げに、薬味の紅葉卸とわけぎが添えつけてあります。
【酢の物】:帆立の甘酢餡かけ
盛り付けの頂きには衣をまぶして揚げた帆立、素揚げズッキーニ、輪切りトマトの順に積み上げられています。その下にはさらによくさらした薄切りタマネギ、周りに赤・黄パプリカとピーマンの細切りで色をとっています。甘酢の酸味と塩はかなり抑えられていて、とても清々しい一品です。
【食事】:雑穀米
【お椀】:赤とさかのりとお麩の味噌汁
【香の物】:キャベツと胡瓜の浅漬け、柴漬け
【水物】:葡萄
ガス窯炊きの雑穀米だそうです。よくある雑穀のような味はせず中性的で食べやすい。お味噌汁は赤のりとお麩がたくさん入っていました。お味噌の味は酸味や塩辛さはなく少し甘さのある京白みそのようでした。 葡萄は一粒の大きさが揃っており甘味があっておいしい。見てもらうとわかるのですがとにかく量が多い。普通なら3玉と他の果物とかなのですが、半房ぐらいの大きさがあり20粒ぐらいついていました。ある意味贅沢な水物です。
朝食
・きんぴらごぼう
・烏賊の昆布じめ
・冷奴
・鮭の塩焼き、巻き昆布
・温泉卵
・お海苔
・高野豆腐となめこの味噌汁
・白米
・胡瓜の古漬け、梅干し
日本のスタンダードな朝食といった感じです。きんぴらは手作りで、烏賊の昆布じめは昆布のねばりと生姜風味がおいしい。冷奴は木綿豆腐なのに柔らかいタイプで、温泉卵がとても大きく濃厚でした。華やかさはないですが、癖なくとれる朝食は長旅にはありがたかったです。
まとめ
建物は文化財に指定されてもおかしくないほどの美しい造りとなっています。木造建築好きには館内をうろうろしているだけで楽しくなってきます。岩風呂の風情は思っていた以上にすごさがありましたが、女性の方は岩風呂が常に楽しめないのは残念なところ。お料理はスタンダードですが、品数は多く素材もいいものを使っておられ大変おいしく食せます。お酒のメニューがなかったので、お値段気になりましたが300ccの冷酒は800円と良心価格。値段帯を考えるといいものがギュッと詰められている感じで、あれもこれも楽しめるといったところです。
宿泊料金
さて、宿泊料金です。中嶋旅館さんは大きな割引をされているのを見たことがありません。旅行の計画を立てていた時に、丁度じゃらんのバザールをしていたので2000円クーポンを利用しました。そして、プランの中に10%ポイント還元があったので、ポイントを2000ポイント使用させてもらいました。じゃらんと公式は同料金だったので4000円引き程度で泊まったことになります。「翁」のお部屋プラン以外にも2人で20000円前後のプランもあるので気軽に訪れることができそうです。
宿泊日:2019/9(平日泊)
旅行サイト:じゃらん
プラン:【4階 翁の間】※ポイント10%※
部屋タイプ:翁(おきな)の間
合計料金:33780円(2名)
クーポン:2000円(じゃらんバザールクーポン)
ポイント:2000P
支払い料金:29780円
獲得ポイント:3378P