旅情
明治5年創業から様々な画人や文人が訪れ、現在に至るまでの歴史が建物に詰まっています。正面玄関の横には、新井旅館さんのシンボル塔屋を頂きに持つ「青州楼」という建物があります。相方が塔屋に行きたいと従業員の方に聞いたところ、この塔屋は老朽化もあり一般の立ち入りはできないのだとか。
建物のほとんどが国登録の有形文化財に指定されていて、主は木造建築の建物ですが、鉄筋コンクリートの棟も登録されており珍しい。
また、建物だけでなく宿泊棟を繋ぐ橋であったり、湯屋も登録の対象になっています。ちなみにロビーにある喫茶の料金は意外にも割安で生ビール600円です。このクラスのお宿では安いような気がします。
敷地内は2つの池を取り囲むように宿泊棟が建てられており、明治から昭和初期にかけて増築してきたようです。しかし、建て増し建築によくある迷路のようにはなっておらず、敷地内にある建物の全体像がとても分かりやすくなっていました。
書画展示室には歴史的著名人が残したものがあります。正直なところ画や書にそれほど興味があるわけではないですが、見ているだけで感慨深くなります。展示室では観音菩薩様の身姿画を無料でいただけました。
新井旅館さんは有料で登録文化財ガイドツアーを開催しておられます。料金を支払えば宿泊者でなくとも参加ができるようです。自動販売機あり、売店あり、その他のサービスや設備は、ここで語るようも公式HPの案内が完璧なので、そちらを参照されたほうがより詳しく知る事が出来ます。配膳時などのおもてなしサービスはとても気持ちの良い接客をされておられました。
お部屋
新井旅館さんは宿泊棟がいくつもあります。今回は全4部屋からなる、あやめの棟にある「あやめ一号」というお部屋に案内して頂きました。
朝食の後に撮影したので、お見苦しいところは目隠しをいれております。間取りは、本間10畳+次の間3畳+広縁(洗面)+踏込+シャワートイレです。
踏み込みの玄関には冷蔵庫とお茶セットがあり豊富なお茶菓子がうれしい。最近では定番になっている冷水のサービスもあり、洗面所にはドライヤーから化粧水の類はそろっていてアメニティ類も過不足なくあります。
お部屋の装飾はぱっと見た感じ凝った装飾はなくとても落ち着いています。広縁からはリバービューになっていて、残り紅葉のシーズンだったので窓からの景色が奇麗でした。
お風呂
大浴場の「天平風呂」「あやめの湯」、露天風呂の「木漏れ日の湯」、貸切風呂の「睡蓮(すいれん)」「かわせみ」の計5つの湯屋があります。「睡蓮」のみ有料の貸切風呂となっています。「かわせみ」も貸切風呂ですが、空いていればいつでも自由に利用できるタイプです。源泉温度が高いので加水をしているとのことですが、アルカリ性温泉のツルッとした感触がしっかりとあります。消毒もしているとありました。しかし、無味無臭で塩素臭はまったく感じられず、ほんとに消毒しているの?というほどです。源泉温度が高いので、どの浴槽もあつ湯です。大浴場と露天風呂は、時間帯により男女入れ替えになっているので、温泉がお目当ての方は必ずチェックしておきましょう。櫛やシャワーキャップなどの備品はどの浴場にも備えてあります。タオルだけは、お部屋から持って行きましょう。
天平風呂
昭和9年に造られた新井旅館さん本命の文化財の浴場。浴室にかけてある燈火(とうか)は、なんと75年もこの湯屋を灯し続けているそうです。湯屋は大正ロマン風になっていて、館内の物音が聞こえてこないのでものすごく静かです。静寂な空間とノスタルジックな雰囲気を味わいながら入る温泉は最高です。
湯量は視覚的に気持ちの良いぐらいのオーバーフローが見てとれます。湯量も多いし温泉を楽しむなら天平風呂でしょうか。女性は夕食後から深夜まで、朝は朝食後にかけて利用できるので、私的には羨ましい時間割です。食事前は何かと忙しくなるのでゆっくり入るには食後のほうが好きです。湯量も多いし温泉を楽しむなら天平風呂でしょうか。女性は夕食後から深夜まで、朝は朝食後にかけて利用できるので羨ましい時間割です。
しかし、浴室にはシャワーは無く溜め湯槽から桶で湯をすくって、洗髪洗体をする昔ながらの様式なので女性には好みが分かれそうです。
木漏れ日の湯
こちらは変則的な形の露天風呂。石を削ったような湯口からは十分な投入量があります。4人入ると手狭な浴槽。こちらには洗い場はありませんので、洗髪洗体は内湯ですることになります。
あやめの湯
画像は半円型のものですが、あやめの型どった浴槽が奥にあることに後で気がつきました。天平風呂ほどではありませんが、オーバーフローが見て取れるぐらいのお湯の投入量があり、ここにはシャワーが設置されています。普通に考えれば掛け流されているし、湯量もしっかりしているのですが、天平風呂といろいろと差がありすぎてなんとなく残念感があります・・・。
かわせみの湯
無料で利用できる貸切風呂です。湯屋は新しく杉の木の香りが残っています。お湯の投入量は控えめに見えましたが、湯船の大きさを考えると十分な量だと思います。こちらにもシャワーが付いています。
お料理
夕食
全体としてのバリエーション豊かで1つのお皿にメインだけでなく、飾りや彩が豊富に添えられていて色々なものを少しずつ楽しめるといった会席です。すべてが丁寧に作られていて関西風の上品な味付けだけに、ところどころに京野菜も登場します。肉料理を主体としたお料理は一切なく(鳥スープはありますが)、海のものと山の物で仕上げておられます。内容は献立に書かれているままの表記しています。味や献立に載っていないものに関しては、実際に口にした感想を交えて記載しています。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。
【箸付】(先付)
①白子豆腐(煮鮑、巻玉子、吹寄麩、千社唐、山葵、美味出汁)
②天城軍鶏スープ(茸、南瓜、蕪、枸杞の実)
①白子はタラでしょうか?フグだったら嬉しいところ。ですが味の違いは分かる程の舌は持ち合わせておりません・・・。濃厚な豆腐の上に優しく炊いた薄切り鮑を敷き、玉子を巻いたものと新緑色のチシャの輪切りに、11月なので落葉を模したモミジ麩が添えてあります。お出汁は少し甘味を持たせてありました。 ②思ったほど塩は強くないのですが、軍鶏(シャモ)の風味と脂で結構なパンチ力がありました。焼いてからスープにしているような香ばしさがあります。序盤でこの濃厚な味付けは、後のお料理に影響するかと思いましたが、意外に後味は引くことはありませんでした。
【前菜】
①寒鯖寿司
②鮟肝蒸
③丸十煎餅
④合鴨八幡巻
⑤牡蠣橙酢焼(だいだい
⑥京芋バター焼
⑦里芋田楽
⑧サザエ磯煮
⑨根三ツ葉浸し
とても賑やかで贅沢な品ぞろえの前菜です。すべての味付けはしっかりとしていて、添え付け物の一手間が好みです。⑦サトイモの上にある甘い白味噌に焼きが入っている。⑤カキは柑橘ダイタイ酢でさっぱり仕上げてあり、⑥ヤマイモは溶かしバターが塗ってある。⑨ミツバの飛び子の飾りに、②アンキモの煮凍りポン酢もいいです。味の変化に富んでいて品数の多い前菜は旅館のこだわりを感じます。
【御椀】:ズワイ蟹ふわふわ(焼地金目鯛、鶯菜、柚子、うす氷大根、京人参)
ズワイガニと白身魚を合わせたカニしんじょ。名前の通りやわらか触感でカニの風味がなんとも。キンメダイの脂とユズの香りが効いたお出汁に負けていません。京野菜の人参とウグイス菜の彩が視覚的にも映えます。
【御造り】:季節の御造り、妻一式
説明がなかったので食べた感触で。マグロ、カンパチ、ヒラメ、タイ。妻にはサメ皮で擦りおろす生わさびに、大根をかつら剥きをして重ねたものと、紅芯大根と大根のかつら剥きを巻きとった輪切りです。これは見なことがない盛り方でした。これにハスイモの茎が添えてあります。小鉢には鰹のたたき。大根の荒おろしと生姜葱ポン酢です。4種でも十分なのですが、小鉢で一品を別に味付けして出してこられるのが粋に感じられます。
【焼物】:塩鰤杉板焼、秋刀魚一夜干し、カマス柚香焼、紅芯大根甘酢漬、揚慈姑、人参、茗荷漬
鰤は塩焼きとも塩麹の漬けともとれるような味付け。これを杉板焼で香りをつけたものと、サンマとカマスの柚子しょうゆ焼にしてあるものと一皿で3種の魚の焼物が楽しめます。どれも旬のものですが脂の多い魚なので、ミョウガとコウシン大根が口直しにとても合います。素揚げのクワエは松ぼっくりの飾り切り。杉板には「あらゐ」の刻印。
【煮物】:聖護院蕪土佐煮(白菜寄せ、人参、蕗、柚子、湿地茸)
聖護院蕪は千枚漬けにも使われる京野菜です。これに、カツオ風味に柔らかく仕上げてあります。他の食材も優しいそれぞれの素材の味が引き立てられています。どれも薄く味がする程度なのでお口休めに丁度いいお品。
【油物】:米茄子揚げ煮(カサゴ、蓮根、芹、紅葉麩、卸し餡、一味)
組肴と油物は同時に提供されての配膳です。ナスは果肉だけを使用し、カサゴは衣を付けてしっかりと餡に絡むようにしてあります。レンコンは軽く火を通して、セリと一味が彩と味へのアクセントをつけています。トップに秋らしく紅葉麩の素揚げを添えてあります。ほんのりと味付けがしてあるので、揚げ物ですがあっさりと食べれます。
【組肴】:長芋ソーメンいくら醤油漬、スモークサーモン絹田巻、海老芋胡麻餡掛け、鰯南蛮漬
最後に組肴(くみさかな)で締めくくりです。山芋の細切りにイクラの漬醤油をつゆとして柚子の皮でイチョウをあしらってあります。長方形の長手皿にはサーモンを大根で巻いて酢で漬けたものにマヨ、海老芋は柔く練りゴマの餡を掛けて上にザクロの赤いアクセント、イワシには焼葱とコウシン大根のモミジが乗せてあります。組肴で締める会席は最近では珍しいのではないでしょうか。
【留椀】:赤出汁
【香物】:キュウリ、ダイコン、ニンジン
【食事】:白米、荒削りカツオ粉
最後の食事についてきた荒削りのカツオ粉の香りがすごい。削りたてでしょうか。ご飯に散らしてお醤油を垂らしてふりかけのように食べるもよし。お茶漬けにしても出汁がいらないほどの風味の豊かさです。
【フルーツ】:林檎コンポート、人参羊羹、生クリーム、キュウイ
人参羊羹はきめ細かく、林檎の色づきが綺麗に見栄えがします。甘さ控えめで出る分だけ作っておられるのでしょう。配膳時にフォークが生クリームをかすめた模様。
朝食
小鉢1:しらす大根おろし
小鉢2:イカの塩辛
煮物:がんもどき、アイスプラント?
鍋物:ホタテ、豆腐、エノキ、白菜、白葱、紅葉麩、薄口ポン酢
お重1:玉子焼き大根卸添え、かまぼこわさび漬、山椒ちりめん、焼鮭、つくだ煮昆布
お重2:湯葉、大葉、わさび、金魚草
お重3:ひじきと人参の煮物
食事:白米、あさりの味噌汁、梅干し、漬け盛り2種
水物:オレンジ
他の方の記録をみても定番の朝食のようです。夕食の手の入れようからすると、朝食の残念感は否めないところ。特に三段重は開けると生湯葉とかもあるのですが何となく寂しい・・・。でも、煮物のがんもどき、湯葉辺りは手作りのお取り寄せ物かも?というところです。
まとめ
館内は手入れが行き届いていますし、文化財のお宿としての雰囲気や接客サービスは大変満足することができました。文化財ガイドツアーも面白そうなので、是非参加したかったです。夕食は季節の物を季節の飾り付けで楽しめる会席料理です。最初から最後まで飽きさせない趣向と品数で、お味も京風の好きな味付けでした。温泉は加水・消毒されているとありましたが、オーバーフローと温泉感はしっかりあるし、消毒されているようには思えません。ただ、天平風呂のインパクトが強く他の湯船がつまらなく感じてしまいました。朝食は悪くないのですが悩ましいところ。
宿泊料金
料金は同プランで公式HPからの予約だと11月の連休は58320円です。yahooトラベル(一休)と同料金だったので、クーポンとポイント利用で51590円で泊まったので、なかなかお得に泊まれたのではないかと思います。
宿泊日:2018/11(土曜日泊)
旅行サイト:yahooトラベル(一休)
プラン:<早期割45>45日前までのご予約でお一人さま1,500円OFF!
部屋タイプ:スタンダードタイプ(和室10畳) (和室)
合計料金:58320円(2人)
クーポン:1000円((yahoo!プレミアム会員特典)
ポイント:5730P(ポイント即時利用)
支払い料金:51590円
加算ポイント:515p